ひとり親家庭のための、公的支援による手当と学資保険の活用方法。 ひとり親家庭のための、公的支援による手当と学資保険の活用方法。

ひとり親家庭に知ってほしい、児童扶養手当などの公的支援と学資保険の活用方法。

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※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。 
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」、生命保険料を「保険料」と記載している部分があります。

シングルで子どもを育てる「ひとり親家庭」にとって大きな助けになるのが、子育ての公的支援。国や自治体のさまざまな制度によって、子育ての金銭的負担を軽減することができます。さらに、こうした公的支援にプラスして、将来の教育資金を準備する方法の1つとして考えておきたいのが「学資保険」です。この記事では、ファイナンシャルプランナーの八木陽子さんに、公的支援と学資保険について聞きました。

目次

ひとり親家庭が利用できる制度。

ひとり親家庭が利用できる制度。

ひとり親家庭を対象とした代表的な制度は「児童扶養手当」です。そのほか、各自治体によって、ひとり親家庭への公的支援が用意されています。

ひとり親家庭への、国による支援制度。

国による子育て支援には、中学生までの子どもがいる世帯を対象とした「児童手当」と、ひとり親家庭を対象とした「児童扶養手当」があります。「いずれも養育者の所得などに要件があるものの、ひとり親家庭にとっては非常に助かる制度」と、八木さんはいいます。

児童手当は、ひとり親家庭に限らず、中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の子どもを育てる全家庭が支給対象です。たとえば、所得などの要件による制限がない世帯なら、0歳~3歳未満までは月額1万5,000円、3歳~小学校修了前までは1万円(第3子以降は1万5,000円)、中学生には1万円が支給されます。制限がある世帯で、定められた所得制限限度額以上かつ所得上限限度額未満の場合は、特例給付として一律5,000円が給付されます。受給するには、居住する市区町村への申請が必要です。

ただし、2022年10月支給分から、定められた所得上限限度額以上の場合には特例給付が支給されません。居住する市区町村に確認しましょう。

参考:内閣府「児童手当制度のご案内」 
参考:内閣府「子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案の概要」

児童扶養手当は、18歳まで(18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の子どもを養育するひとり親家庭などに、所得などの要件に応じて支給されます。1人目の子どもで、要件による制限がない場合は月額4万3,070円、ある場合は1万160円〜4万3,060円。2人目は、制限がない場合は1万170円、ある場合は5,090円~1万160円が加算。3人目以降は1人につき、制限がない場合は6,100円、ある場合は3,050円~6,090円が加算されます。なお、両手当は同時に受給できます。

参考:厚生労働省「児童扶養手当法施行令等の一部を改正する政令の施行について」 (2022年)

ひとり親家庭への、自治体による支援制度。

自治体独自の支援制度もさまざまなものがあります。18歳の誕生日後の最初の3月31日までの子どもを育てるひとり親家庭などに対して、所得などの要件に応じ、たとえば東京都の「児童育成手当」なら子ども1人につき月額1万3,500円が支給されます。愛知県の「愛知県遺児手当」なら5年間、一定額が支給されます(子ども1人あたり、支給開始1年~3年目は月額4,350円、支給開始4年~5年目は2,175円)。

また、愛知県名古屋市の「ひとり親家庭手当」は、申請して認定を受けると、所得などの要件に応じて申請した月から3年間、一定額が支給されます(全額支給の場合で、1年目は月額9,000円、2年目は4,500円、3年目は3,000円)。なお、名古屋市に住む人なら、愛知県遺児手当と名古屋市のひとり親家庭手当、国の児童扶養手当を同時に受給できます。

参考:東京都中央区「児童育成手当」 
参考:名古屋市「ひとり親家庭手当・愛知県遺児手当」

医療費や学費などの補助制度も活用しよう。

医療費や学費などの補助制度も活用しよう。

「自治体ごとに、ひとり親家庭に対して医療費や学費、税金などを補助・免除してくれる制度があるので、ぜひチェックしてください」と八木さんはアドバイスします。

医療費の助成制度。

たとえば、東京都には「ひとり親家庭等医療費助成制度(マル親)」があり、外来で診察を受けた場合の医療費負担は1割になります(負担額の上限は1世帯1万8,000円/月)。これは、子どもだけではなく、ひとり親家庭の母または父にも適用されます。さらに、1年間の自己負担額の上限は14万4,000円となり、これを超過した場合、申請すれば超過分が払い戻されます。

また、入院の場合の自己負担も1割になります(負担額の上限は、条件に応じて1世帯5万7,600円/月)。ただし、住民税が非課税の世帯は入院・通院ともに自己負担が免除されます。

参考:東京都福祉保健局「ひとり親家庭等医療費助成制度(マル親)」

医療保険などは、上記のような制度を確認のうえ加入をご検討ください。たとえば、中学卒業まで医療費の自己負担分の全額が助成される場合もあります。なお、子どもが医療機関で診療を受けたとき、自己負担分について助成を受けられる「こども医療費助成制度」といった制度の適用期間や金額などは自治体により異なります。詳細はお住まいの市区町村にお問い合わせください。

学費の補助制度。

2019年度から、全国の「子ども・子育て支援新制度」の対象となる保育所や幼稚園などで3歳~5歳児の保育料が無償化されました。ひとり親世帯については、0歳〜2歳児も所得などの要件に応じて保育料が軽減されます。

小中学生は、児童扶養手当を受けているひとり親家庭なら「就学援助制度」の対象になります。給食費や学用品代、修学旅行費などを援助してもらえるので、忘れずに申請しましょう。

高校生の場合、文部科学省による「高等学校等就学支援金」や「高校生等奨学給付金」があり、国公私立問わず、所得などの要件を満たす世帯に対して補助金が支給されます。

高等学校等就学支援金は、たとえば、全日制の国公立の高等学校で世帯年収約910万円未満などの要件を満たす場合は11万8,800円/年、私立の高等学校で年収約590万円未満などの要件を満たす場合は39万6,000円/年を上限に支給されます。高校生等奨学給付金は、高校生がいる低所得世帯(生活保護受給世帯、非課税世帯)を対象に、授業料以外の教育費(教材費や学用品代、修学旅行費など)が支援されます。

参考:文部科学省「高等学校等就学支援金(リーフレット) 」 
参考:文部科学省「高校生等奨学給付金(リーフレット) 」

また、高校に通う子どもがいる世帯に独自の支援制度を定めている自治体もあります。東京都には、私立高等学校が多いため、子どもの進路の選択肢を増やすべく「私立高等学校等授業料軽減助成金(特別奨学金補助)」があります。たとえば、全日制・定時制の私立高校の場合、世帯年収約910万円未満の世帯に、高等学校等就学支援金と合算して最大で46万9,000円/年が支給されます。

参考:公益財団法人 東京都私学財団「私立高等学校等授業料軽減助成金事業」

2020年度からは、国による大学無償化(高等教育の修学支援新制度)もはじまりました。大学・短期大学・高等専門学校・専門学校について、住民税非課税世帯、およびそれに準ずる世帯の場合、入学金や授業料が免除または減額されます。さらに、住民税非課税世帯の場合は、生活費として年額約21万円~91万円が支給されます(自宅生・自宅外生/国公立・私立で異なる)。ただし、成績や学習意欲が条件になるため注意が必要です。

参考:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」

住宅費・交通費の補助などを受けられる自治体も。

ひとり親家庭が所得などの要件に応じて、住宅手当または家賃補助、電車やバスなどの乗車賃の割引、所得税・住民税の軽減、水道・下水道料金の減額などを受けられる自治体もあります。「申請できるのに見逃しているひとり親家庭も珍しくありません。一度、自分の家庭に該当する補助制度がないか自治体の窓口に相談してみましょう」と八木さんはアドバイスします。

公的支援と組みあわせて、学資保険を考えよう。

公的支援と組みあわせて、学資保険を考えよう。

前述した公的支援と組みあわせて検討したいのが「学資保険」です。18歳まではひとり親家庭に対してさまざまな公的支援がありますが、18歳以降、特に大学の費用については教育ローンや奨学金などでまかなうケースが多くなります。そのため、大学の費用を考えるうえでも、学資保険は検討できる方法の1つです。

学資保険の特徴。

学資保険は、子どもの教育資金を準備するための保険です。商品やプランにもよりますが、親にもしものときなどがあった場合の保障と貯蓄性を兼ね備えており、将来の教育費を計画的に用意するのに適しています。ただし、途中で解約すると多くの場合、受け取れる金額が支払った保険料の累計額を下回るため、注意が必要です。

学資保険に入るタイミングは、早ければ早いほどいいでしょう。加入に際しての年齢制限や、加入時の子どもの年齢が高いほど、契約によって定められる将来受け取れる金額が減る場合もあるため、早めに検討しましょう。

リンク:ミラシル「学資保険、加入のタイミングはいつ?年齢別のメリットを紹介。」

ひとり親が学資保険に入るメリット。

多くの学資保険には契約者(親)の死亡時の保障がついているため、万が一のときは、その後の保険料の支払いが免除され、予定通りの学資金や満期保険金が支払われます。そのため、将来の教育費をあらかじめ計画的に確保したい人にとって、学資保険の意義は大きいといえます。

学資保険を検討する際のチェックポイント。

学資保険を検討する際のチェックポイント。

学資保険を検討するにあたり、チェックしておきたいポイントを2つ紹介します。

返還率(返戻率)はどの程度か。

貯蓄性を求めるのであれば、返還率が高い学資保険のほうが将来の受取金額が多くなります。返還率とは、保険が満期を迎えたときに、払った金額に対して戻ってくるお金の割合のことです。学資保険の返還率を高くするには、「早めに加入する」「特約を付加しない」「払込期間を短くする」「年払いなどでまとめて払う」といった条件があります。無理のない支払いができそうなら、返還率に着目して契約してもよいでしょう。

リンク:ミラシル「保険選びのポイントはさまざま。学資保険の返還率(返戻率)って?」

特約を付加するかどうか。

学資保険には、子どもが病気やケガをしたときに給付金が受けられる「医療保障特約」や、契約者に万が一のことが起こった場合、満期まで一定の年金を受け取れる「育英年金特約」などがあります。ただし、特約を付加すると返還率が下がる傾向にあります。

医療保障は、ひとり親家庭なら所得に応じて医療費の助成を居住する市区町村に申請することができるので、必ずしも付加する必要はありません。また、ほかの保険に医療保障がついていることもありますので、チェックしてみましょう。

学資保険は計画的に将来へ備える方法。

学資保険はひとり親家庭にとって、もしものときの保障と貯蓄性、そして子どもへの思いを残せるとても大事な資産になります。ぜひ選択肢の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。

写真/Getty Images イラスト/こつじゆい


八木 陽子 
ファイナンシャルプランナー 
東京都在住。1男1女の母。出版社勤務を経て独立。2001年、ファイナンシャルプランナーの資格を取得後、マネー記事の執筆やプロデュース、セミナーなどの仕事を行う。2008年、家計やキャリアに関する相談業務を行う株式会社イー・カンパニーを設立。著書に『マンガでカンタン!お金と経済の基本は7日間でわかります。』(Gakken)など。


※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。 
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。 
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。 
※ 税務の取り扱いについては、2022年5月時点の法令等にもとづいたものであり、将来的に変更されることもあります。変更された場合には、変更後の取り扱いが適用されますのでご注意ください。詳細については、税理士や所轄の税務署等にご確認ください。

(登)C22N0082(2022.6.23) (登)C22N0205(2022.12.14)
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