眠れない人必見!早く寝るための方法を眠りの専門家が伝授
「ベッドに入ってもなかなか寝つけない、明日も早いし寝なければ……」と思うほど目が冴えてきてしまう。そんな眠れない夜も、ご自身の中にある「眠る力」を引き出すちょっとしたテクニックを知っていれば安心です。
長年、女性の眠りについて研究・治療してきた睡眠が専門の医師・渋井佳代先生に、よい眠りのための具体的な対策方法を伺いました。
目次
- 早く寝るには、体内時計・体温・ストレスのコントロールが重要。
- 早く寝るための日中の過ごし方。
- 早く寝るための入眠前の過ごし方。
- 早く寝るために心がけたい生活習慣。
- どうしても眠れないときは、ベッドから離れてみる。
- 寝る前に「やりたいこと」リストづくりでリラックス。
- 寝つきの悪さには、女性特有の原因も。
早く寝るには、体内時計・体温・ストレスのコントロールが重要。
早く寝るためには、体内時計・体温・ストレスをコントロールすることが大切です。
体内時計は、体温や睡眠、ホルモンの分泌などをコントロールし、約1日のリズムをつくっています。これを「概日リズム(サーカディアンリズム)」といいます。
約24時間周期というのは地球の自転のリズムによるものですが、人間の体内時計の周期はそれよりも1時間ほど長い約25時間であることがわかっています。この1時間のずれをリセットすることが、早く寝るために大切になってきます。
次に大切なのが、体温のコントロール。体温は明け方がもっとも低く、ゆるやかに上昇し、夕方から夜(19時~20時)にかけて高くなります。その後、徐々に下降し、就寝と同時に一気に1℃ほど下がるのが一般的です。
そもそも、人は体温が高い状態から低い状態に下がるときに眠気を感じるとされています。その落差が大きければ大きいほどスムーズに入眠でき、翌朝もすっきり目覚めることができます。
最近は活動と休息のメリハリがつかず、体温リズムが乱れている人もいるため、夕方にきちんと体温を上げることが、快眠のために大切なことの1つとなります。
3つめに大切なのは、ストレスのコントロール。体温の管理だけでなく、夕方以降に心身をリラックスさせる副交感神経が優位になるような行動を心がけることも大切です。現代では忙しい人が多く、さらに在宅勤務の割合が増え、オンオフの切り替えがむずかしい人もいるのではないでしょうか?
体内時計・体温・ストレスのコントロールをあわせて行うことで、徐々に快眠モードへの切り替えができ、「ベッドに入ればすぐに眠れる」状態になります。
早く寝るための日中の過ごし方。
早く寝れるかどうかは、入眠前の過ごし方だけでなく、日中の過ごし方も大きく影響します。ぐっすり眠るための準備は、朝から始まっているのです。
朝日をたっぷり浴びて、体内時計をリセット!
体内時計は朝起きて朝日を浴びることでリセットされ、そこからおよそ14時間後に眠気を促すメラトニンというホルモンが分泌されるしくみになっています。
「遅く起きた日は、遅くまで眠れない」というのは、メラトニンの分泌リズムからみれば当然です。また、朝起きてもカーテンを開けて日の光を入れなければ、体内時計はリセットされず、朝と夜のメリハリが失われた生活になってしまいます。
起床直後の光がもっとも効果的なので、起きたらまずカーテンを開けて自然の光を部屋の中に取り込みましょう。
夜更かし・朝寝坊が続いて睡眠リズムがずれてしまったと思ったら、思い切って朝早く起きて朝の光を浴び、体内時計をリセットするよう体に働きかけましょう。朝食をしっかり食べて体を動かし、1日アクティブに行動すれば、夜には自然と眠くなります。
午後~夕方によく体を動かして、体温をしっかり上げる。
コロナ禍以降、眠れないという人の多くは、日中に体をしっかり動かせていない可能性もあります。パソコンの前で目と頭を動かす活動ばかりで、歩く距離は減っていませんか。
体の疲労は深い眠りをもたらしますが、脳の疲労やストレスは眠りを浅くしてしまいます。毎日少なくとも5,000歩は歩きたいところ。スマートフォンの歩数計を利用すると便利です。
- コンビニにお昼ご飯を買いに行くのに遠まわりしてみたり、途中の公園に立ち寄ったりして散策する
- 少し遠いお店まで早歩きで行ってみる
- エスカレーターではなく階段を使う
また、運動は、体温のピークとなる昼から夕方にかけてがおすすめ。睡眠のために新しい生活習慣をつくるのは大変ですから、今やっていることの延長で何ができるかを考えるとよいでしょう。たとえば、犬の散歩を夜にしていた人は、夕方に変えてみてはいかがでしょうか。
早く寝るための入眠前の過ごし方。
自然と眠くなるためには、入眠前の過ごし方がとても大切。ここではスムーズな入眠に誘う、就寝前の過ごし方についてご紹介します。
スマートフォン・テレビ・ゲームは寝る約1時間前にシャットアウト。
スマートフォンやパソコン、ゲーム、テレビなどの明るすぎる画面は脳を刺激し、せっかく眠る準備に入っていた体を覚醒させてしまいます。夜遅くまで見ていると、体内時計が「まだ起きていてよい時間」と認識し、自然な眠気がこなくなります。
心地よく眠れる状態でベッドに入っても、そのあとにスマートフォンやパソコンを使用しては台無しです。「寝なければ」と思うとさらに気持ちが高ぶり、眠れなくなるもの。「自分のために、よい睡眠をとろう」と決めたなら、スマートフォンやパソコンにも就寝時間をつくってください。
就寝する約1時間前には、見るのをやめましょう。そして、これまで寝る前の習慣だったメールチェックなどは翌朝にまわします。カーテンを開け、朝の自然光を浴びれば、脳をハッキリ目覚めさせてくれます。
入浴はベッドに入る1時間~2時間前に。
運動同様、入浴も体温を上げるためにはとても効果的です。じっくり時間をかけてお湯に浸かると、体のすみずみまで血行がよくなります。同時に、筋肉のコリが和らげられることでリラックス効果も得られます。
お湯の温度は38℃~40℃ぐらいのちょっとぬるめがおすすめ。15分~20分ほどゆっくり浸かると、次第に体が心地よくだるくなります。好みの香りの入浴剤を入れると、よりリラックスできるでしょう。寝る1時間~2時間前にお風呂に入り、お湯から上がって自然に発汗し、ベッドに入るという流れがベストです。なお、もっと早い時間に入浴するなら、うたた寝をしないよう気をつけましょう。夕方以降の仮眠は、夜の深い眠りを妨げます。
寝る前に軽いストレッチをする。
眠れないとき、ベッドの中でじっとしているよりも、少し体を動かすほうが気分転換になって寝つきやすくなります。部屋の中を軽く歩いたり、手指をぶらぶらさせたり、「気持ちいい」「ほっとする」など体がリラックスして、気持ちが和らいでくるような動かし方を工夫しましょう。
たとえば、手指の「グーパー体操」も簡単でおすすめ。手指をギューッと握り、パッと広げます。筋弛緩法といって、筋肉をぎゅっと縮めておいて急にゆるませると、体はリラックスするのです。腕を上げたり、首をぎゅっとすくめたり、緊張させてからその力をすとんと抜くとリラックスします。各部位2回~3回繰り返してみましょう。
寝室の照明は、暖色系の間接照明で。
明るい照明は、人体に日中の活動期間と認識され、催眠作用のあるホルモンである「メラトニン」の分泌が抑えられ、眠りに入りにくくなってしまいます。とはいえ、いきなり電気を消して真っ暗闇の中に入るとそれも刺激となり、目が冴えてしまう人もいるでしょう。
心地よく眠れる明るさは人それぞれなので、自分にとっての「快眠照明」を見つけましょう。電球や蛍光灯の光の色は「電球色(暖色系の光)」「昼白色(白っぽい光)」「昼光色(寒色系の光)」の3種類ですが、一般的に電球色の光が月明かりのような明るさで、メラトニンが分泌されやすいといわれます。
ホテルの客室のぼんやりとした明るさに近い、文字を読むには暗すぎると感じる程度が目安です。また、間接照明も効果的です。ベッドスタンドは枕元ではなく足元に置き、壁や天井に向けて光をあてて、置き方を工夫するとよいでしょう。
早く寝るために心がけたい生活習慣。
普段、何気なくやっていることが、実は寝つきを悪くする原因だった……なんてこともあります。生活習慣を見直すことで寝つきが改善されるケースもありますので、ご自身の生活を振り返ってみましょう。
夕方以降は、コーヒーや紅茶などカフェイン入りの飲み物は控える。
コーヒーや紅茶、緑茶に含まれるカフェインには神経を刺激する作用があり、覚醒効果が期待できます。しかしその作用は6時間ほど維持され、夕方以降にも何杯も飲んでいると、寝たい時間になっても目が冴えてしまうことにもなりかねません。朝のコーヒーは、頭をすっきりと目覚めさせてくれるのでおすすめです。
眠気が起こりやすい14~15時に、15分程度のお昼寝時間をつくると午後のパフォーマンスを上げるのに役立ちます。このとき、コーヒーを飲んでから寝ると15分後、目覚めたときにカフェインの覚醒作用が眠気覚ましになってくれることがあります。コーヒーが苦手な人は、濃いめに淹れた紅茶でもかまいません。
寝る1時間ほど前には、温かい麦茶やカモミールティーなどノンカフェインの飲み物を飲むのがおすすめ。体が温まってから、体温を発散して下げる効果で寝つきがよくなります。
お酒はほどほど、タバコは寝る1時間前まで。
お酒を飲むと寝つきがよくなります。しかし、アルコールの分解過程でできるアセトアルデヒドには覚醒効果があるので、眠りが深くなっているわけではありません。アルコールには覚醒作用があるので、逆に眠りが浅くなります。また、利尿作用によってトイレが近くなり、夜中や早朝に目が覚めてしまいます。
寝酒はかえって睡眠の質が悪くなり、朝方に目が覚めます。もともと眠りが浅い人は、トイレのために起きてそのまま眠れなくなる「トイレ覚醒」が起こり、結果的に朝までぐっすり眠ることができません。結果として、睡眠満足度は低くなります。
体内のアルコールが分解されるには、最低でも2~3時間程度かかります。それを見越して、夕食時に適量をたしなむ程度ならリラックス効果もあるのでよいでしょう。そのあと眠気に任せてうたた寝はせず、趣味を楽しんだり、よい音楽を聴いたり、ほろ酔いを楽しみながらゆったりした時間を過ごしてから、本当に眠りたいと思う時間にベッドに入るとよいでしょう。
お酒を飲むとタバコが吸いたくなる人もいます。タバコを吸うと手足の末梢の血管が閉じてしまうため、よい眠りのために必要な熱の発散がしにくくなります。つまり、就寝前にタバコを吸うと睡眠の妨げにもなるのです。不眠を感じている喫煙者の方は、寝る1時間前までにしておくほうがよいでしょう。
体に合った寝具を使う。
寝具に「正解」はなく、金額もさまざまで、こだわったらきりがありません。寝具専門店やバラエティショップなどで、眠るのが楽しみになるような、自分にとって気分が上がるアイテムを探すのも楽しいもの。「気持ちいいなぁ」と感じることを大切にして選びましょう。
寝具選びのポイント
- ふとんカバーやシーツ、パジャマは、吸湿性がよい天然素材を
- マットレスは体が沈みすぎず、寝返りが楽にできるものを
- 枕は高すぎず、体と枕のすき間がピッタリ埋まる(首が持ち上がらない)高さを目安に
- いびきをかく人には、横向き寝ができる枕もおすすめ
冬の寒い時期、体が冷えて眠れない人は、ゆるい靴下をはいて寝るのもよいでしょう。脚をしめつけず、寝ている間に脱げてしまうくらいゆるいものが最適です。
どうしても眠れないときは、ベッドから離れてみる。
眠れないとき、「寝なければ」と思うと、心と体の状態を活発にする交感神経が高ぶり、余計に眠れなくなってしまいます。一度ベッドからを離れ、身も心もゆったりくつろげる時間をつくりましょう。
ただし、ここでスマートフォンを見ると、さらに目が冴えてしまいます。読書をする場合、結末が知りたくなる小説より、ゆったりした気分になれる風景写真や旅行ガイドなどを。テレビを見るならば内容を知っているものなどにして、風、水の流れ、木の葉の揺れなど「ゆらぎ」のある映像がリラックスでき、眠りに入りやすくなります。
朝早く目覚めて眠れないときも、無理に寝ることにこだわらず、ベッドから出てゆっくりと朝食をとったり、家事をしたり、有意義なことに使いましょう。今日やるべきことを早めにすませれば、午後は趣味の時間やティータイムなどに使うこともできます。朝早くから活動することで、夜も早く寝られるようになるでしょう。
寝る前に「やりたいこと」リストづくりでリラックス。
失敗したり嫌なことがあったり、怒りで感情が高ぶってしまったりしたときは、交感神経にスイッチが入っています。ベッドに入ってもそのことを考えてイライラしてしまうときは、とても熟睡できる状態ではありません。
こんなときは、原因になっているストレスを簡単に書き出し、それに対する自分の思いを書くと気持ちが静まります。さらに「どうしたいか」「できそうなこと」を書くと、ネガティブな体験をポジティブな思いに変える工夫になります。もっと簡単に、気持ちよく眠れる方法として「これからやってみたいこと(ストレス解消法)」をできるだけたくさん書き出し、リスト化するのもおすすめです。
最初は「やりたいことなんて、そんなにない」と思うかもしれません。でも、「●●の入浴剤でお風呂に入る」「△△の〇〇を食べる」「~へ買い物に行く」「ドラマの~を観る」という日常的なことから、仕事での目標、家族でやりたいこと、行きたい場所、夢やあこがれに近いことまで、慣れてくるとどんどん出てくるようになります。
自分を癒す方法が多くなると気分はリラックスし、明日への意欲もわき、安眠に導いてくれること請け合いです。
寝つきの悪さには、女性特有の原因も。
ほとんどの女性が、月経前など女性ホルモンの変動に関連して「眠いのに眠れない」「眠りが浅い」「だるくて眠気がとれない」という悩みを経験しています。女性の体は「月経」「妊娠・出産」「閉経」を通して、大きなホルモン変化にさらされ、それに伴って睡眠も変調をきたしやすいのです。
また、がんばっている人ほど仕事や家事、子育てなど、したいことやしなければいけないことが多く、時間が足りません。つい、睡眠時間を減らしたりすることもあるでしょう。
「心」「体」「環境」を背景とする睡眠によくない生活習慣が、寝つきが悪い原因になっているのかもしれません。朝や日中の過ごし方を少し工夫して、気持ちよく眠れる生活習慣をつくりましょう。
よい睡眠をとるためのヒントはたくさんあります。ベッドに入る前のひとときに、スマートフォンやお酒、嫌な記憶など、脳が興奮するような要素をできるだけ避けることも、よい眠りへと誘うことになります。今の生活の中で無理なくできることを取り入れて、心地よく眠れる“快眠”生活を取り戻していきましょう。
なお、睡眠不足で日中の仕事や家事に影響が出ているときは、睡眠が専門の医師に相談してください。
写真/Getty Images イラスト/オオカミタホ
渋井 佳代
スリープクリニック銀座院長。睡眠学会専門医。信州大学医学部卒業。東京都職員共済組合清瀬病院神経科を経て、国立精神・神経センター精神保健研究所研究員として勤務、また同センター国府台病院精神科で睡眠外来を担当した。共著に『女性のための睡眠バイブル』(主婦と生活社)がある。
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