叱り方とほめ方にもコツがある!しっかり響いて子どもが育つ伝え方
子育てをしていると、子どもを叱らなければならないシチュエーションが多々あります。ガミガミ言っている自分に嫌気がさしたり、きつく叱ってしまったことを子どもの寝顔を見ながら後悔したり……。でも悩んでいるのは、それだけ子どものことを真剣に考えている証拠で、落ち込むことはありません。子育て中の親に向けたアンガーマネジメントに関する講演や著書も多い、日本アンガーマネジメント協会の篠真希さんが「子どもに響く、叱り方と褒め方」について解説します。
目次
こんな叱り方は要注意!NGな叱り方とその理由。
子育て中は、叱ることも子どもの成長を手助けするのに必要なこと。決して悪いことではありません。大切なのは「叱り方」。間違った叱り方をすると、子どもの心を傷つけてしまうこともあるのです。
「叱る」は子どものため、「怒る」は自分のため。
「叱る」と「怒る」の違い。それは「子どものためか、自分のためか」です。子どもの成長や改善を願っているのであれば、それは正当な「叱り」です。気をつけたいのは自分本位な「怒り」。自分の思いどおりにしたい、自分が安心したい、自分の要求を通したい。そんな親の欲求で子どもに怒りをぶつけていませんか。これは「叱り」ではなく「怒り」と言えるでしょう。
自己肯定感を損なう「人格否定」。
部屋が散らかっているとき、テストで失敗してしまったとき、どんな言葉をかけますか?「本当にあなたはだらしないわね」「ダメね」といった言葉をかけていないでしょうか。これらの言葉は、子どもの言動ではなく人格を否定しています。子どもの心に残るのは「僕はだらしない人間なんだ」「私はダメな子なんだ」という否定的な刷り込み。「部屋を片づけよう」「勉強しよう」と奮起するどころか、論点がずれ、自信を失わせてしまいかねません。
「怒鳴る」「脅す」は子どもの成長に効果なし。
「いい加減にしなさい!」「もうお母さん出ていくからね」など、怒鳴ったり脅したりすると、その場では言うことを聞くかもしれません。しかし、何度も繰り返せば子どもも慣れてきますし、親はどんどんエスカレートして最終的に罰や力でねじふせようとしてしまうことも。親だって人間です。つい怒鳴ってしまうこともあると思いますが、子どもの成長には効果がないことは肝に銘じておきましょう。
親の理念をきちんと伝える!上手な叱り方。
叱るときに重要なのは、「こういう子どもに育ってほしい」「こういう感情を育みたい」という親の理念です。感情的な怒りやイライラをぶつけるのではなく、親の理念をきちんと子どもに伝えるために、上手な叱り方のコツをマスターしましょう。
叱り方のコツ1 要点のみを短く簡潔に伝える。
叱るときは、子どもの言動のみに焦点を当て、短く簡潔に伝えましょう。「片づけなさい」「早めに準備をしなさい」だけで十分です。「だいたいあなたはいつも……」と別の問題を取り上げたり、「本当にのろまなんだから」と人格を否定したりすると、話の論点がずれていき、怒りの気持ちもエスカレート。子どももマイナスな感情だけが心に残り、親が本当に伝えたい事柄が、伝わらないままになってしまいます。
叱り方のコツ2 子どもの様子を見極める。
もし本人が失敗してしまったことを悔いていたり、反省したりしているようであれば、それ以上追い詰める必要はありません。クドクドと説教せず、「次はがんばろうね」と励ましの言葉をかけてあげましょう。叱られている理由がわからない子、反省していない子には、どうしていけなかったのか、どうすればよかったのかをきちんと話してあげることも大切です。
叱り方のコツ3 ぶれない自分軸をもつ。
勉強・整理整頓・礼儀・マナーなど、叱るポイントは家庭によって違います。夫婦で考え方が異なることもあるでしょう。重要なのは、親が「自分軸」をもち、「ぶれない」こと。日によって言うことが異なると、子どもは「結局は親の都合や機嫌によるんだ」と思い、耳を傾けなくなります。周囲の目や意見に振り回されず、「どのような子どもに育ってほしいか」という自分軸に沿って判断することが大切です。
叱り方のコツ4 決めたルールは親が必ず守る。
子どもが何かできなかったとき、罰を与えることはあまり推奨しません。しかし、ときには必要なこともあるでしょう。そんなときは「罰を親の武器として使わない」ということを心がけてください。「今度○○したら二度と遊びに行かないよ」などの非現実的なものは、ルールや約束ではなく「脅し」です。「二度と遊びに行かない」ことはあり得ません。ルールを決めるときは、「時間を守らなかったら1週間ゲーム機を取り上げる」など、具体的で実現可能な内容にすること。そして、親こそルールを実行すること。口先だけの約束や脅しは禁物です。
子どもは親の鏡。
子どもは思っている以上に、親の言動をよく観察しています。怒鳴る親の子どもは怒鳴るようになり、悪口を言う親の子どもは悪口を言うようになるでしょう。子どもにさせたいことは、親がまず実践すること。「あいさつをする」「片づける」「悪口を言わない」「整理整頓をする」など、日々の親の言動を観察して、子どもは真似をしながら成長していくのです。
子どもの成長にあわせて変化!年齢別、子どもの叱り方。
2歳の幼児と10歳の小学生では、叱るべき事柄や伝え方は当然変わってきます。イヤイヤ期や反抗期などに振り回されず、子どもの成長過程に寄り添った叱り方を心がけましょう。
未就園児(1~3歳)。
「できること」と「できないこと」が混在し、子ども自身がたくさんの葛藤を抱えるイヤイヤ期。
イヤイヤ期は子ども自身の葛藤期間。
「イヤ!」「〇〇ちゃんがやる!」「ダメ!」の連続で毎日うんざりし、「もうイヤ!」とお母さん・お父さん自身がイヤイヤ期に突入していませんか。イヤイヤ期は、子どもが自分自身と葛藤している順当な成長過程。親がイヤイヤ期に突入しないようにしましょう。「葛藤しているんだな」「成長しているんだな」と一歩引いて、温かく見守る姿勢に徹しましょう。無理に説き伏せたり、言うことを聞かせようとしたりせず、そばで寄り添ってあげることが大切です。
ほかの子どもと比べない。
子どもは1人ひとり性格も違えば、成長する速度も異なります。特にこの年代は、違いが顕著に現れます。日によって、子どもの体調や機嫌も異なるでしょう。ほかの子どもと比べて「あの子はできるのにうちの子は……」と思い悩んだり、「いい子ね」「すごいわね」と他人から褒められることを期待したりするのはやめましょう。不安や焦りをもつと、ついイライラして、子どもを不用意に叱ってしまいます。「みんな違って、みんないい」の精神でのんびり構えてください。
幼稚園~小学校低学年(3~9歳)。
先生や友達など他者と接する機会が増え、少しずつ社会のルールやマナーを身につける時期です。
繰り返し伝えて、すぐに効果は期待しない。
「あいさつしようね」「靴をそろえて」など、教えたいことは繰り返し伝えましょう。ただし、すぐに効果が出るとは限りません。子どもが同じことを繰り返してしまってもムキにならず、その都度、根気強く伝え続けることが大切です。
時間に余裕をもって声をかける。
出かけるとき、公園から帰るとき、急に「もう行くよ」と言っても、子どもはすぐに行動できません。用意に時間がかかったり、「もっと遊びたい」と駄々をこねたり。そんなときに「早くしなさい」「もうお母さん行くからね」と𠮟ったり脅したりするのはNG。あらかじめ「あと10分で行くよ」と早めに声をかけましょう。そして10分経ったら、いくらごねても時間を延長しないこと。一度決めたルールは簡単に変更しない、という姿勢もこの時期には大切です。
小学校高学年~中学生(9~15歳)。
子ども自身の意思が芽生え、親への甘えと反抗心が混在する時期。
親子ゲンカは負けるが勝ち。
反抗期になると、親が叱ったことに対して子どもが反論し、親子で言い合いになることも多々あります。そんなときに心に留めておきたいのが「負けるが勝ち」という言葉。たとえ言い合いになっても、最後の言葉はぐっと我慢をして、子どもが勝ったところで終わらせましょう。親に論破されてしまうと、「ああ言えばよかった」「こう言い返したかった」という悔しさが反省以上に心に残ります。親が一歩引いて終わることで、言いすぎたかなという後悔や、何が悪かったのか、親は何を言いたかったのか、考えたり反省したりする心の余裕が生まれます。
子どもの声に耳を傾け、聞くに徹する。
年ごろになると、親に隠し事をすることも出てきます。子どもが間違った方向に進んでいると感じたときは、話を聞き出すことも必要です。ただし、話を聞いた末に叱りつけるのはNG。子どもは「助けてくれるかも」「許してくれるかも」と思い、勇気をもって話しています。話を聞くうちに、間違っていると感じることや口出ししたくなることもあると思いますが、そこはグッと耐えて、あくまでも聞くことに徹しましょう。
子どもの自己効力感を育む!上手なほめ方。
間違っているときにはしっかりと叱る一方で、日々、ほめられて育つ子どもは自己効力感が育ちます。「自己効力感」というのは、自分が判断し行動することが問題解決や目標達成につながる、という自信のことです。やってみたらできた、がんばったら達成できた、という小さな体験によって自分を信じる力を積み重ねていきます。大げさに考えることはありません。日々の小さな「できた!」に目を向けることからはじめましょう。
成功体験で自己効力感を高める。
できなかったことができるようになったとき、努力が報われて結果が出たとき、子どもと一緒に大いに喜び、褒めてあげましょう。ただし、「ほら、お母さんが言ったとおりにやればできるでしょう」というのはNGワード。あくまでもがんばったのは子ども。親の手柄ではありません。子ども本人の手柄だと自覚させることで自己効力感が高まります。
「ありがとう」をたくさん伝える。
特別すばらしいことをしなくても、日々の生活に褒める種は散らばっています。ものを運ぶのを手伝ってくれたとき、心配してくれたとき、「ありがとう」と一言添えてみましょう。小さな「ありがとう」の積み重ねが子どもの心を健全に育みます。
具体的にほめることで再現性を高める。
せっかくの成果を次につなげるためには、「いい子ね」「えらいね」という抽象的な言葉ではなく、より具体的に褒めることが大切です。「食器を片づけてくれてありがとう」「妹の世話をしてくれて助かった」「あきらめずに最後まで走ってえらかったね」など、具体的な行動を褒めることで何をほめられたのかが明確に伝わり、「またがんばろう」という意欲と再現性を高めます。
ご褒美は親から提案しない。
「食器を洗ったら100円」「テストで90点以上とったらおもちゃを買う」など、子どものモチベーションが上がるという誤解からご褒美をあげる家庭もあるかと思います。しかし、ご褒美はあまりオススメできません。行動する動機が「人に喜んでもらうこと」「目標を達成すること」ではなく、「ご褒美」になってしまうからです。子どもが自ら提案してきた場合、ご褒美の内容をきちんと話し合って妥当なものに決めるのであれば、ときには活用するのもアリ。ただし、親から積極的に提案することは避けましょう。
まとめ
「上手に叱る」というと、「感情的に怒らない」「叱る前にひと呼吸おく」など、小手先のテクニックで叱り方を変えようと考えがちです。しかし、大前提として大事なのはテクニックではなく、「子どもにどのように育ってほしいか」「どのような感情を育みたいか」という親の想い。不安や迷いが出てきたときは、自分がどこに向かっているのか、その最終的なゴールを頭の片隅に置いて行動してみてください。
写真/Getty Images イラスト/tent
篠 真希さん
アンガーマネジメントトレーニングプロフェッショナル
大学卒業後、総合商社秘書室勤務。その後7年にわたる海外での子育て経験を経て、アンガーマネジメントを学ぶ。日本で初めて「母親のためのアンガーマネジメント入門講座」を開催。キッズ・ティーン向けプログラムの開発、およびインストラクター養成講座の立ち上げに携わり、全国各地で指導者を育成。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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