終活ノート(エンディングノート)の書き方・使い方。記載しておきたい項目や注意点を解説。 終活ノート(エンディングノート)の書き方・使い方。記載しておきたい項目や注意点を解説。

終活ノート(エンディングノート)の書き方・使い方。記載しておきたい項目や注意点を解説。

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「終活ノート」という言葉が、あちこちで聞かれるようになりました。書店ではさまざまな終活ノートが販売されており、ちょっとしたブームの様相を見せています。終活ノートは「エンディングノート」とも呼ばれており、いつかくる人生の最期に備えて、自分の思いや身のまわりのことについて、家族に伝えておくためのノートです。

終活ノートは、その名のとおり「終活」のためにつけるノートなのですが、いったい何歳から書きはじめるべきなのでしょうか。また、ノートを書く際には、どんなことに気をつければよいのでしょうか。

行政書士で遺言書の作成サポートなどを専門としている池邉和美先生に、終活や終活ノートについて解説してもらいます。

目次

終活ノート(エンディングノート)とは?

終活ノート(エンディングノート)とは?

終活ノートがどんなものかを解説する前に、まずは「終活」について説明します。

「終活」とは、人生の最期を迎えるにあたって、自分の死と向き合っていく活動のことです。具体的には、遺言を書いたり、お墓について準備したり、介護について家族に要望を伝えたりすることなどです。身のまわりを整理しながら、自分の死後にどうしてほしいのかについて、明確にしていくことですね。

これまで日本では「死」について話題にすることが、どちらかというとタブー視されてきました。しかし、「自分が死んだときのことは、ある程度、自分で決めておかないと、家族が困るだろう」と考える人が増えて「終活」という言葉が一般化しました。

「終活ノート」とは、そんな終活のために考えるべきことを整理したノートです。終活ノートが必要な理由は、自分自身のためであることはもちろん、残された家族や親戚のためのものでもあるのです。

終活ノートに書いておきたい項目。

終活ノートに書いておきたい項目。

終活ノートには、どんなことを書くのでしょうか。ゼロから終活ノートをつくるのは大変なので、書店で売られていたり、葬儀会社や生命保険会社から配られたりする市販のノートを用いるのが一般的です。それぞれ市販されているノートのタイプによって、記載内容は異なりますが、スタンダードな項目を1つずつ挙げていきましょう。

自分自身について。

まずは、自分自身のことについて書いていきましょう。名前や生年月日など、自分についての情報を記載します。

加えて「10代のころにうれしかったこと」のように、過去を振り返り、個人的な思い出を綴るような終活ノートもあります。自分の過去と向き合うこともまた、終活ノートを書く大きな目的の1つです。

そのほか、配偶者や子どもなどの相続人を含めてどんな家族がいるのか。下記のような家系図のツリーを埋めておきましょう。特に今は年賀状のやりとりも減ってきているため、きちんと血縁関係を書き残しておかないと、家族だけではすべてを把握するのが意外と難しいです。

相続関係図について

参考:ミラシル編集部にて作成

あわせて、過去の本籍地についても記載しておくと、家族が戸籍などを必要になったときに調べる手間が省けます。終活ノートは、いわば家族への申し送り事項でもあるので、自分に関する情報をきちんと残しておくことが重要です。

ペットについて。

「自分が亡くなったあとの一番の心配ごとはペットです」という人は少なくありません。誰にどのように世話をしてほしいのか、自分のペットについての申し送り事項を書き残しておきましょう。

ただし、終活ノートには、法的拘束力がありません。仮に「妹の〇〇に、猫のミーちゃんを世話してほしい」と書いたとしても、実行されるかどうかの保証はないということです。ペットの世話について、詳細は終活ノートに記載するとしても、あらかじめ家族と直接話し合っておくことをおすすめします。

ペットの好物や日常生活のルール、散歩の時間など、終活ノートにペットの世話にまつわる内容を書いておくことはもちろん重要ですが、ペットへの「思い」も書いておきましょう。「子ども同然にかわいがってきた」など、ご自身のペットへの思いも記載しておくと、残された家族がこれから育てていく際の指針の1つとして役立つでしょう。

医療・介護について。

医療・介護について。

医療について、終活ノートで特に書いておくべきなのは、脳死判定を受けたときのことです。延命治療を希望しない場合は、その旨を書き残しておくと、家族にとって重大な決断をする際の1つの判断材料になります。または終活ノートだけではなく、「尊厳死宣言公正証書(※)」という公正証書に自分の意思を残しておく方法もあります。

※ 自らの考えで尊厳死を望む、すなわち延命措置を差し控え、中止する旨等の宣言をし、公証人がこれを聴取する事実実験をしてその結果を公正証書にするもの

介護については、入所したい施設などがあれば、記載しておきます。また、介護に対する自分の希望を書いておくのもよいでしょう。

たとえば、「家族で無理に介護せずに、施設に入れてほしい。そのためのお金は用意してあるから」といったことを書いておく人も多いです。自分が認知症になって判断できなくなる前に家族に伝えておくということですね。

というのも、子どもは親を介護施設に入れることに心理的抵抗を抱く場合も珍しくありません。親があらかじめ書いておいてあげることで、家族の心理的な負担は軽減されます。

もちろん、逆に「自宅で介護してほしい」と希望する人もいるでしょう。ただし、医療にしても介護にしても、終活ノートで書くのは、あくまでもご自身の希望に過ぎません。必ず実現できるわけではないので注意しましょう。

また、医療や介護については、ご家族の意向もあることかと思います。いきなり1人で決めて書いてしまうのではなく、事前にご家族と話し合いをしておくことが大切です。

そのほか、加入している保険についても、証券番号や担当者を書き残しておくと、本人が亡くなったときに家族は手続きがしやすくなります。

葬儀・納骨について。

葬儀・納骨について。

終活は「自分の葬儀をこういうふうにしてほしい」と生前に自分の葬儀について決めておくことから、始まったといわれています。

葬儀については「できるだけ簡素にしてほしい」といった葬儀の方法や、「この葬儀屋さんに頼んでほしい」といった業者の選定など、内容はさまざまです。葬儀社も生前からの相談を受けつけているので、見積書とともに終活ノートに葬儀についての記載を残しておくと、家族は本人の希望に沿った葬儀を行えます。

葬儀についてとりたてて希望がない場合でも「自分の宗派は何か」「つき合いのある寺院はあるか」など、葬儀にまつわる情報を残しておくと、家族にとって役立つでしょう。

納骨については、通常はお墓に埋葬することが多いですが、永代供養や海への散骨、樹木葬など、こだわりのスタイルがあれば、書いておきましょう。

ただし注意点として、漠然としたイメージだけで納骨について書き残すと、家族の負担になることがあります。たとえば「骨は海にまいてほしい」といった要望を終活ノートに書かれても、勝手に骨を海にまくわけにはいきません。実際には海洋散骨を行う業者に依頼して、漁業の影響が少ない場所で行うことになります。

特別な納骨方法を希望するならば、あらかじめ業者を探しておいて、終活ノートに記載しましょう。「家族の負担にならないように」という思いからの要望が、かえって家族に対して大変な手間になってしまうこともあります。葬儀や納骨についても、やはり終活ノートに書くだけではなく、よく話し合っておきましょう。

相続財産について。

預貯金や土地、建物など自分の財産について、できるだけ詳細に記録しておくことも終活ノートでは重要です。家族と別居している場合、子どもが親の財産を手がかかりもなく把握するのは非常に困難だからです。

自分では意識していない預貯金や財産がけっこうあったりする方も多いようです。終活ノートでは、細かい自分の資産を洗い出し、記載しておきましょう。

たとえば、つき合いで開設したものの、まったく使っていない銀行口座などはないでしょうか。預金額が数千円だとしても「そもそも残高がいくらか」を調べること自体が、ご本人がいなくなってからだと簡単ではありません。使っていない銀行口座については、生前に解約して整理しておきましょう。

証券口座についても銀行口座と同様に漏れなく記載しておくこと。特にネット証券の場合は、紙の書類が残っていないことが多いです。手がかりがまったくなくなってしまうので、口座がどこに存在しているのかを明記しておいてください。

相続財産について。

次に土地や建物などの不動産関係です。不動産の場合は年に1回、固定資産税の納税通知書が送られてきて、そこに一覧表が掲載されています。たとえ本人が亡くなっても、それをもとに家族は本人の所有する土地や建物について知ることができます。

しかし、注意点が2つあります。1つは、山林など固定資産税を支払う必要がないような安い土地は、一覧表に掲載されないことがある点です。そのため、終活ノートに土地について記載する際には、軽視しがちな「評価額の低い土地」のほうがむしろ大事です。漏れのないように記載しないと、家族が把握することが難しくなります。

もう1つは、共同所有している土地についても、しっかり記載しておくこと。なぜならば、固定資産税の納税通知書は、代表者にのみ送られてきます。友人や地域で共有しているような土地、あるいは私道などは存在をつかみにくいので、意識してチェックしましょう。

また、会員権や貸付金、借入金についても忘れずに記載してください。特に借入金については、家族にしてみれば「親が借金をしているかどうか」について確信がもてない場合も少なくありません。借金がない場合は「借金はない」と明記しておくと、家族は安心です。「貸金庫」についても、ないならば「ない」と記載しておくことで、家族が余計な探索をせずに済みます。

そのほか、骨董品やトレーディングカードなど、趣味でコレクションしたものもあるかもしれません。値打ちのあるものがあれば、終活ノートに記載しておくと、価値を知らない家族が無料で人に譲ったり、二束三文で業者に売ったりしてしまうことを防げます。

また「親からもらった形見の指輪」といったような、自分にとって価値のあるものについても記載しておくと、本人の意思を尊重して置いておく、といった行動を家族がとることができます。

遺言について。

遺言については2点、注意事項があります。1つは「終活ノートは遺言ではない」という点です。繰り返しになりますが、終活ノートに法的拘束力はありません。遺言は終活ノートとは別に、きっちり家族に遺すようにしてください。

もう1つは、遺言を書いて保管してある場所を終活ノートに記入しておいてほしいという点です。家族がそれを探して見つからなければ、そもそも遺言の意味がありません。現時点で遺言がまだ用意できていない場合は、その旨をいったんは記載しておきましょう。

連絡先について。

万が一のときに誰に連絡してほしいのか。亡くなってからは聞くことができませんから、終活ノートに書き記しておいてください。今は電話帳もなく、スマートフォンや携帯電話にデータが入っていることがほとんどです。葬儀に呼んでほしい人などの連絡先を記載して、家族と共有しておきましょう。

ご家族へのメッセージ。

家族1人ひとりへのメッセージを終活ノートに書き残しましょう。

もちろん、記載方法は自由ですが、1点だけ注意があります。それは、「終活ノートにうらみつらみは書かない」ということです。

軽い気持ちで書いたちょっとした苦言でも、亡くなってからだと、想像以上に相手に重く響く場合もあります。文句はお互いが生きているうちに直接言うようにして、終活ノートでは感謝のメッセージを綴るようにしましょう。

終活ノートはいつ書けばよいのか?

終活ノートはいつ書けばよいのか?

終活ノートは、主に60~70代で関心をもつ方が多いようです。とはいえ、持病を抱えていたり、自営業で早めに後継者のことを考えなければならなかったりと「もしものときのために準備したい」と考えるタイミングは、人それぞれです。何歳からはじめるかも、状況に応じてその人なりの時期があると思います。「終活ノートを書こう」と思い立ったときに、書きはじめるのがよいでしょう。

ただ、大きな変化や転機があったときに、終活ノートを書きはじめる人が多いようです。具体的に、それがどんなタイミングなのかを挙げていきましょう。

定年退職を迎えたとき。

健康寿命が延びて、今は会社を定年退職してからも働く人が増えました。しかし、それでもやはり会社の定年退職というものは、大きな区切りであることに変わりありません。また、自分が残すことのできる資産が見えてくる時期でもあります。

定年を迎えるのをきっかけに、終活ノートを書くというのは、これまでの歩みを振り返って整理して、第2の人生を満喫するためにも、よいのではないかと思います。

健康に不安を感じたとき。

自分の最期を意識するという意味では、健康不安を感じたタイミングで終活ノートに取り組む人も少なくありません。いつまでも元気でいたいけれども、人生の最期は誰にでも平等に訪れます。もし健康不安があれば、深刻な病状に陥る前に、終活ノートを書きはじめるのもよいかもしれません。

将来のライフプランを考えたとき。

子どもが独立したり、あるいは事業をはじめたり、逆に事業を畳んだりと、これからのライフプランを考える時期は誰にでも訪れます。そんなときも、終活ノートを書きはじめるよい機会といえそうです。

終活ノートの上手な活用方法。

終活ノートの上手な活用方法。

終活ノートを活用するときに気をつけたいことが2点ほどあります。見落としがちなところなので、確認しておきましょう。

定期的に内容を見直す。

終活ノートは、1年に一度は見直して、必要に応じて更新を行ってください。書きっぱなしだと、家族も書いてある内容がどこまで正確なのかわからなくなってしまいます。特に、子どもが独立したり、財産の内容が変わったりと、大きな変更があった場合には、記載内容を見直して、最新の情報に改めるようにしましょう。

家族にノートの存在を知らせる。

せっかく終活ノートを書き上げても、家族に存在を知らせなければ、それを残した意味がありません。家族が見られる場所に常に置いておくか、信用できる人に預けるなどして、いざというときに家族がノートを確認できるようにしておくとよいでしょう。

ただし、終活ノートの保管場所として貸金庫はNGです。本人が亡くなると凍結されてしまい、金庫を開けるためには相続人全員の承諾が必要となり、非常に厄介です。

また、終活ノートのフォーマットがあるため、最近はパソコンで作成する人も増えました。その際には、必ず紙に出力しておくことがポイント。パソコンのパスワードがわからないために家族が閲覧できなければ、せっかく書いても参考にすることができませんからね。

終活ノートをとおして、残された家族に自分の思いを伝えよう。

終活ノートは、残された家族に自分の思いを伝えるためのものです。これまでの思い出を振り返りながら、情報も整理できるので、正式な遺言を残す前に取り組んでおくとよいでしょう。

一方で、終活ノートそのものには、なんら法的な拘束力はありません。法的な拘束力のある遺言のベースにしたり、自分の思いを綴ったりするためのものが、終活ノートの役割です。残された家族が不本意な争いをすることがないよう、正式な遺言の作成も忘れずに行いましょう。

写真/Getty Images


池邉 和美(旧姓:山田 和美)
なごみ行政書士事務所 / なごみ相続サポートセンター所長。行政書士・CFP。
1986年、愛知県稲沢市生まれ。大学卒業後、名古屋市内のコンサルティンググループに就職。2014年3月独立開業。税理士・司法書士など各専門家とチームを組み、愛知県の知多半島を中心に総合的な相続サポートを行っている。
行政書士会支部研修のほか、岐阜県司法書士会・岐阜県土地家屋調査士会・日本FP協会愛知支部・金融機関や葬儀社などでの 講演多数。著書に『お金の終活』(すばる舎)、『残念な実例が教えてくれる「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方』(日本実業出版社)がある。


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