鉄オタ界の巨人・南田裕介さんの夢は「列車内で国境越え」。老後に必要な備えとは。
※記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
「鉄オタ」とは、「鉄道オタク」のこと。鉄道への深い愛と圧倒的な知識を持ち、車両を見たり特別な列車に乗るための旅に出たり、写真を撮ったり……。南田裕介さんは、そうした「鉄オタ」として、真っ先に名前が上がる1人。芸能事務所・ホリプロの社員として所属タレントのマネジメントや営業にいそしむかたわら、鉄道系バラエティ番組への出演や鉄道ドラマの監修なども務めています。
でも、鉄道という趣味を続けるにも、それなりにお金はかかります。これから先の退職後まで見すえて、「趣味を一生楽しむために」どんな備えがあるとよいのでしょうか?
そこで今回は、同じく“鉄オタ”でウェブサイト「にゃっぽりんごの鉄誌」を主宰するファイナンシャル・プランナー 大塚泰正(にゃっぽりんご)さんと対談していただき、鉄道の魅力とともに、来るべき老後にも楽しく“鉄オタ”活動を続けるための資金面での準備について、大いに語り合ってもらいました。
芸能マネジャーの南田裕介さん「“鉄活”は自腹です」。
──南田さんは“鉄オタ”として知られていますが、ホリプロの社員でもいらっしゃいます。普段はどのようなお仕事をされているのですか?
南田 ホリプロ所属タレントのスケジュール管理・ギャラ交渉・セールスを担当しております。いわゆる芸能マネジャーのお仕事ですね。
大塚 素朴な疑問なのですが、ご自身のテレビやイベントへの出演は、会社的にはどういう扱いになっているんですか?
南田 出演料は会社に入り、僕は会社員なので給与所得となります。ロケやイベントでいろいろな車両に乗せていただくことはありますが、自分で好きな列車に乗りに行ったりする個人的な鉄道の活動は自腹です(笑)。
大塚 そこは一般の鉄道オタクと同じですね。
──そもそもお2人は、なぜ“鉄オタ”の道に入られたんですか?
南田 動く大きなものに夢中になるのは、基本的に男の子が必ず通る道だと思うんです。もはや義務教育の一環ですね。あとは卒業するかどうかで、僕はずーっと留年し続けているっていう(笑)。
大塚 わかります!
南田 僕は奈良県出身なんですが、小学校に入るまでは大和西大寺という近鉄沿線で、その後は国鉄沿線、高校へはJRと近鉄で通学する環境で。さらに、毎年夏休みに東京の祖母の家に新幹線で行っていて、小5のときに初めて寝台列車の急行「銀河」に乗ったんです。そこが“鉄オタ”の確定ポイントでしたね。
大塚 私は小学生のときはあまり電車に乗らなかったんですが、中高一貫の学校に進んで本格的な“鉄オタ”と出会い、JRの「いい旅チャレンジ20,000km」キャンペーンにのめり込みました。
南田 するとJRを全線踏破されたんですか! いつ達成されました?
大塚 中2からはじめて、高2で達成しました。
南田 3年は早い! 当時は何を使いました? 青春18きっぷですか?
大塚 はい。青春18きっぷと周遊券ですね。
南田 周遊券はきっぷのエリア内なら特急・急行乗り放題ですよね。学割を使うと、うんと安くなりますし。
「オトナの“鉄活”」、お金のかけどころは……?
──旅費のほかに、“鉄オタ活動”ではどんなところでお金がかかるものですか?
南田 たとえば鉄道模型のコレクションや廃品のオークション、撮り鉄だと撮影機材とか。鉄道の“車庫ビュー”を売りにしたマンションを購入される方もいます。
──そんな物件まであるんですね。お2人は、お金をかける、かけない、どちらのタイプですか?
南田 かけません。
大塚 私もかけないほうですね。
南田 これは鉄道会社への挑戦です(笑)。いかに出費を抑えて電車に乗るか。
──とはいえ、若いころと今ではお金のかけ方も違うのではないですか?
南田 そうですね。学生時代は暇でしたし、とにかく遠くへ行きたいという強烈な本能を満たすために粗食で旅費を捻出していましたけど、今は出張で鉄道に乗ることも多くなり、各地のおいしいものを食べたい欲が出てきています(笑)。
大塚 私も最近は鉄道に乗るのはもちろん、おいしいものも食べたいですね。たとえば、2015~2016年ごろから増えた観光列車。各地の食文化も楽しめて最高です。
南田 近ごろでは新潟・富山あたりが最高ですよね! 食も、鉄道もおいしい! 少し高いけど、昼食を何回か節約すれば乗れますし(笑)。大塚さんはどの列車がよかったですか?
大塚 日本酒の飲める「越乃Shu*kura」ですね。呑み比べセットが最高です。
南田 酒蔵さんによる振る舞い酒もあるんですよね。
大塚 そうそう! この列車は始発駅から乗るのが絶対おすすめです! お酒を楽しむ列車なので、途中駅から乗ると、車内のノリに追いつくのが大変でした(笑)。
南田 新潟だと、私は「えちごトキめきリゾート雪月花」ですね。午前便で出てくるハムサンドは世界一うまいと思ってます。窓がワイドで眺望がいいのも魅力です。
大塚 えちごトキめき鉄道って、2015年の北陸新幹線開業時にJRから北陸本線と信越本線が経営分離されてできたんですよね。「雪月花」は、そのときに新潟県からのオーダーで予算も計上されて。
南田 古い車両の改修じゃなくて、新車をつくったんですよね!
車両の引退に立ち会えず「悔しい思い」も。
──ほかに最近注目している鉄道はありますか?
南田 仕事をはじめてからは時間もとれなくなって、車両の引退に立ち会えないケースがよくあります。だから、なくなりそうな車両には積極的に乗っていきたいですね。
大塚 乗り損ねた車両はありますか?
南田 悔しかったのは、上野―金沢間を運行していた寝台特急「北陸」。いつでも乗れると思っていたのに、2010年に廃止されたんです。
大塚 最近だと、北陸新幹線の開業にあわせてなくなった列車は多かったですよね。
南田 そうなんですよ。あとは旧国鉄がつくった車両もどんどん姿を消しているので、今のうちに見ておきたいです。たとえば、電気機関車の「EF81 303」。関門トンネルを走行するのに漏水で錆びないよう車体がステンレス製で、今、最後の1両が走っています。
南田 あとは、武蔵野線に乗っておくといいかもしれない(笑)。
大塚 なるほど(ニヤリ)。JR東日本の武蔵野線って、いろいろな路線で引退した古い列車の“お下がり”が走るんですよね。そのあとは海外に譲渡されることもあって、たとえばインドネシア・ジャカルタの通勤鉄道では、JRの205系や東京メトロの7000系などが走っています。私、現地まで乗りに行きました。
南田 大塚さんは今、海外の鉄道を中心に乗っているんですか?
大塚 いえ、結局、「きっぷのほう」にきました(笑)。
南田 ほほう。
──「きっぷのほう」というのは?
大塚 たとえば、こういうきっぷなんですが……。
大塚 皆さんが新幹線とかのきっぷを買うと、印字された緑色のチケットが出てきますよね。通常、16区間の経路までは端末から発券できるんですが、それを超えるとこういう手書きの「補充券」をつくってもらえるんです。
南田 全部がきっぷなんですよね(笑)。
大塚 鉄道って、ルートの組み合わせ方が無限で、それを考えて実際に旅をして、こうした自分なりの記録を残して楽しめるのが「きっぷ鉄」の魅力です。
リタイア後にチャレンジしたい「車内イミグレーション」。
──今後乗ってみたい列車はありますか?
南田 僕はJR全線踏破を達成していないので、定年後にじっくり挑戦してみたいですね。特急なし、新幹線なしで普通列車だけで時間をかけてやってみたい。
大塚 私は月並みですが、超豪華クルーズトレインの「TRAIN SUITE 四季島」で妻と旅がしたいです。
南田 あと私、国際列車に乗ったことがないので、ぜひ車内でイミグレーションをやりたいです。たとえばハンガリーからウクライナに入る列車では、2国のレールの幅が違うから国境越えの際に、車両を持ち上げて台車を差し替えるんですが、その作業に3時間ぐらいかかるらしいんですね。情勢が落ち着いたら、ぜひ体験してみたいなあ。
「一生“鉄オタ”を続けるため」に必要な備えとは。
大塚 南田さんは、将来に向けて何か準備をされていますか?
南田 いろいろ考えないといけないとは思っているんですが、恥ずかしながら貯金のみです(笑)。
大塚 いえ、預貯金はもっとも強力かつ基本的な備えだと思います。会社員の南田さんには厚生年金がありますが、公的年金はあくまでも日常の生活を支えるという前提です。ですから今後も乗り鉄を続けられるのであれば、現役時代から準備しておくに越したことはないと思います。
南田 たとえばどういうものがありますか?
大塚 まずは少額投資非課税制度のNISAと、個人型確定拠出年金のiDeCoですね。NISAは株式・投資信託を購入して運用する商品で、「一般NISA」と「つみたてNISA」があります。前者は投資する銘柄を指定できるのですが、リスクも発生します。後者は国が指定した銘柄にしか投資できないという制限があるぶん、リスクは低いんです。
NISAがいつでも解約可能なのに対して、iDeCoは60歳以降になるまで解約することはできません。掛金と運用益の合計額から算出された給付を受け取ることができるしくみです。NISA、iDeCoとも投資という前提ですので、元本保証ということにはなりません。
南田 なるほど。
大塚 もう1つは個人年金保険。これは日本の生命保険会社の商品で、円建ての場合、払い込んだ保険料を年金総額が下回ることはありません(※)。
※解約すると多くの場合、受取金額が保険料の累計額を下回ります。
南田 払い込んだ保険料が保証されるところで個人年金保険にちょっと魅力を感じます。これはいつ加入したらいいんでしょう? 早ければ早いほどいいですか? 自分で保険料の金額も決められるんですよね?
大塚 はい。将来の厚生年金の支給額をベースに、たとえば「JR全線踏破」するのにいくらかかるから、毎月この程度余分に欲しいな、という前提で保険料を検討されるといいと思います。
南田 金銭的にリタイア後も趣味を続けやすくなりますね。
大塚 “鉄オタ”を一生続けていくという前提で考えると、個人年金保険は向いていると思います。円建ての場合、大きく増えるわけではありませんが、月々支払った保険料プラスαで支給がされます。また、所定の条件を満たす場合、支払っているあいだには個人年金保険料控除として税負担の軽減ができるというメリットもあるんです。
南田 僕の老後の“鉄オタ”活動のビジョンで考えると、国内の普通列車でJR全線踏破の場合、交通費は20万円ぐらいで、一気にやろうとすると1か月ほどかかると思うので、ホテル代はまあ30万円ぐらい。おいしいものを食べても100万円もあれば実現できますね。
国際列車に乗る夢のほうは海外に行くことになりますけど、もういい年なのでビジネスクラスで行きたいですし、もしヨーロッパに行くなら一度でいいから一等車というかプレミアムクラスに乗ってみたいな。……となると、1回行くだけで100万円近くかかりますね。厚生年金だけじゃ、やっぱり厳しいかも。普段の生活もありますから。
大塚 個人年金保険というのは、基本的に公的年金があるなかでプラスαとして受け取るもの。非常に安全な仕組みだといえます。
南田 払い込んだ金額よりも多く受け取れるということであれば、小樽に行ったときの寿司を「上」から「特上」にすることができます。あるいは、ヨーロッパでインターシティ(ヨーロッパ各国で都市間を結ぶ特急列車)に乗るときにファーストクラスからプレミアムクラスに格上げできます(笑)。
大塚 そうですね。もし仮に支給開始以前に加入者が亡くなったときには、商品によっては、払い込んだ保険料相当額が死亡保険金として給付されるものもあるので、遺されたご家族がいらっしゃる場合にも安心です。公的年金をベースに個人年金保険をかけて、平行して「つみたてNISA」を行うというやり方もありだと思いますね。ひとつひとつが大きく増えるわけではありませんが、公的年金では足りないところを今から準備されておくのは決して悪いことではないと思います。
南田 よくわかりました。さっそく僕も、未来に向けてちょっと真剣に考えてみたいと思います!
国民年金基金連合会「iDeCo公式サイト」iDeCoの特徴・iDeCoのイイコト
取材・文/武田篤典(steam) 写真/金玖美 撮影協力/バー銀座パノラマ渋谷店 写真提供/駐日ハンガリー大使館観光室
南田裕介
みなみだ・ゆうすけ●ホリプロマネジャー・鉄道オタク。ホリプロの社員としてタレントマネジメントや企画立案などの業務をこなしながら、著名な“鉄オタ”として知られる。バラエティ番組や鉄道イベントへの出演、鉄道を題材にしたアニメやドラマの監修も務める。
にゃっぽりんご(大塚泰正)
ファイナンシャル・プランナーの資格を持つ“鉄オタ”。鉄道の運賃制度やおトクなきっぷ、全国の観光列車・リゾートトレインの乗車記などが充実のウェブサイト「にゃっぽりんごの鉄誌」主宰。
※この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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