意外と知られていない音楽の力!「音楽」で心と体を癒やそう。
音楽を聴くことで自然と気分が向上したり、リラックスしたりするなど、音楽は人の心と体にさまざまな影響を与えてくれます。そこにはどのようなしくみがあり、音楽を日常や子育てに取り入れることで、どんないい影響があるのでしょうか。
子どもたちの発達支援、障がいがある方や認知症高齢者の機能回復訓練や心のケアに音楽を活用されている、NPO法人 日本ミュージック・ケア協会理事長、一般社団法人 日本音楽療法学会理事の宮本啓子さんにうかがいました。
目次
音楽が心と体にもたらす影響とは?
音楽が人に影響を与える要因として、まず挙げられるのが「1/fゆらぎ(f分の1ゆらぎ)」です。これは、自然界の風の音や川のせせらぎ、小鳥のさえずりなどの間で起こる微妙なずれで、人の心身を癒やす効果があるといわれています。1/fゆらぎは音楽の中にも存在し、特に人が演奏する音楽では奏者の呼吸やコンディション、さらには聴いている人の心身の状態などで微妙なゆらぎができます。
また、音楽は人の脳に影響をおよぼすともいわれています。たとえば、コンサートなどに行って音楽を聴いて思わず体を動かしてしまうことがあるのは、脳の運動野に音楽が刺激をもたらしているからです。こうした効果を活用して、音楽を使って特定の動きや運動を誘発するリハビリテーションなどにつなげられます。
音楽はゆらぎの効果や脳への働きかけで、人が健やかに生きる助けになるといえます。中でもクラシック音楽は、1/fゆらぎがあるのはもちろんのこと、拍子や緩急がはっきりしている、同じメロディーやフレーズが何度も繰り返されることで、情緒の安定や自己肯定感をもたらしやすいと考えられています。たとえば、ミュージック・ケアの現場でも、モーツァルト作曲の「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」や「トルコ行進曲」などたくさんのクラシック音楽を使います。
気分を変えたいときは音楽の力を借りよう!
音楽の持つ力を日常に取り入れることは、気持ちを切り替える、生き生きと過ごすことに役立つといえます。ただ、ここで気をつけてほしいことがあります。
興味のない音は、耳に入ってこないことも。
人の耳というのは実は非常に精巧にできています。それだけに、「聴きたい」と意識しているものはよく聞こえる一方、興味がない音や聞きたくない音はシャットアウトされることがあります。たとえば、「落ち込んでいるから音楽を聴いて明るくなろう」と軽快な曲を聴こうとしても、耳に入ってこないということもあるのです。
自分の心に寄り添った曲を選ぼう。
日常的に音楽の力で体や心をケアしたいと考えるなら、まずは自分の気分に寄り添った曲を選ぶことが大切です。
たとえば、落ち込んでいると感じるときは、それにあわせて少々暗めの曲から聴きはじめて、やがて明るく気持ちを高揚させていく音楽に切り替えていくようにすると、気分を変えやすくなります。
なお、どのような音楽に耳を傾けたいかは、あくまで十人十色。何をどう聴きたいかは、その人の性格や好み、そのときどきの気分によって変わるので、自分の心の状態を意識して、そのときに「聴きたい」「ピンときた」などと思う音楽を選んでみましょう。
例として、私が次のようなシチュエーションで取り入れている音楽を紹介します。
●宮本啓子さんが日常生活で取り入れている楽曲。
- 朝、起きてやる気を出したいとき
- 「四季」より「春」(ヴィヴァルディ作曲)
- イライラを解消したいとき
- 「クシコス・ポスト」(ネッケ作曲)
- 「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」(ビートルズ/レノン=マッカートニー作曲)
- 集中したいとき
- 「ペルシャの市場にて」(ケテルビー作曲)
- 入眠時にリラックスしたいとき
- 「ドナウ河のさざ波」(イヴァノヴィチ作曲)
※ 日常で聴きたい音楽は、個人の好み、そのときの気分などによって変化します。
上記は宮本さん個人が聴きたいと考える楽曲で、人によっては聴いても合わないと感じる場合もありますので、ご理解ください。
日常生活に音楽を取り入れるなら、家族で一緒に聴くのもいいでしょう。たとえば、大人にも子どもにもわかりやすいクラシック音楽を親子で鑑賞するのもいいはず。音楽がもたらす一体感、最後まで通して聴ききった達成感、さらには「いい曲を聴けたね」という感動体験などを分かち合うことができ、家族の健やかなコミュニケーションに役立ちます。
生演奏で当日限りの音楽体験を楽しもう!
音楽はCDなどで聴くのもいいですが、生の演奏にはまた格別の魅力があります。
生演奏のよさは、なんといっても奏者と聴衆の間に一体感が生まれること。会場によっては、演奏する人の動き、息遣いなどすべてがハーモニーとなって伝わってきて、より深い感動を味わえます。
演奏するホールの空気や、当日の気候や天気、さらに、演奏する人や聴いている人たちのコンディションなどに影響を受けて音楽が成立するので、どれか1つ、誰か1人欠けても音楽が変わってしまいます。生演奏を聴く会場では、まさに当日限りのかけがえのない体験ができるはずです。
ここまで、音楽療法の専門家である宮本啓子さんに、音楽が心と体におよぼす影響をうかがってきました。人の心身にいい影響をもたらす音楽の効果、さらにはクラシック音楽を奏でるオーケストラの迫力などを、ぜひ会場に足を運んで生で楽しんでみてはいかがでしょうか?
写真/Getty Images、PIXTA
宮本 啓子
NPO法人 日本ミュージック・ケア協会理事長、一般社団法人 日本音楽療法学会理事。龍谷大学短期大学部社会福祉科卒業後、知的障がい児の入居施設、老人保健施設に勤務。1978年にミュージック・ケアの生みの親である加賀谷哲郎氏に師事。1997年に日本ミュージック・ケア協会を設立し、音楽療法と指導者養成に取り組んでいる。
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