胃もたれにはどう対処すればいい? 医師に聞く対策と予防法。
「食後、なんだか胃が張っている」「脂っこいものを食べると胃がムカムカする」といった、不快な胃もたれの症状。20代〜30代でも、以前よりも感じやすくなってしまったという方は、一定数いるのでは。
この記事では、胃もたれの原因、胃もたれを防ぐ方法やすぐできる対処法、病院にかかる際の注意点などについて、消化器内科医の吉良文孝先生に解説いただきました。
目次
胃もたれってどういう状態?
胃には、食べたものを胃酸でドロドロの状態に消化し、「ぜん動運動」と呼ばれる筋肉の動きによって、少しずつ腸に送り出す機能があります。その際、何らかの原因で消化がうまく進まず、食べたものが胃の中で滞っている状態が続くと、胃やその周辺に不快感が生じるようになります。これが一般的にいう「胃もたれ」です。
一口に胃もたれといっても、人によって感じる症状はさまざま。「胃が重く感じる」「胃が張っている」「食べ物が残っている感じがする」「吐き気がある」など、違った形で現れます。
胃もたれの原因って?
胃もたれは、主に「食べすぎ・早食い」「飲みすぎ」「ストレス」が原因で起こりやすくなります。それぞれの原因について、詳しくみていきましょう。
食べすぎ・早食い
食べたものが胃で消化されるまでには、一般的に約3時間~4時間かかるとされています。胃の消化能力を超えた量を食べてしまうと、消化にさらに時間がかかり食べ物が胃に長く残るため、胃に気持ち悪さを感じるようになります。
また、食べ物をしっかりかまずに飲み込む早食いも、胃で消化する時間が長く必要になることから、胃もたれを引き起こす原因になります。
ほかにも、食べ物に含まれている成分の影響もあります。やはり揚げ物などの脂っこい料理は、消化に時間がかかるため、胃もたれの一因になりがちです。加えて、空腹の状態でいきなり脂っこい料理を食べると、脂肪分が胃酸を含む胃液の分泌を過度に刺激し、胃の粘膜を傷つけてしまうことも。食べすぎや食べ方には注意しましょう。
飲みすぎ
ビールやコーラなど炭酸飲料の過剰摂取も、胃もたれの原因になります。
胃酸は非常に酸度が高いため、胃に食べ物を送るとき以外は、食道と胃の境目にある「下部食道括約筋」と呼ばれる筋肉を閉じて食道への逆流を防いでいます。それが、炭酸飲料を一気に流し込むと発泡で胃の圧力が上がり、下部食道括約筋が緩み、胃液が食道に逆流しやすくなります。
食道は胃酸の強さに耐えることができません。そのため、酸にさらされて炎症が起こりやすくなり、「胸やけ」や「ムカムカ」といった症状の原因になります。
そもそも、炭酸飲料に限らず、冷たい飲み物の飲みすぎは体に悪いもの。内臓を冷やすので血流が悪くなり、胃の働きが低下し、胃もたれにつながることがあります。
アルコールという観点からお話しすると、飲みすぎによって睡眠が浅くなり、胃の働きが低下して胃もたれに……というリスクも考えられます。
ストレス
先述したぜん動運動は筋肉の収縮と弛緩を繰り返す動きなのですが、この動きには自律神経(交感神経と副交感神経)が影響しています。
交感神経は日中活動しているときに、副交感神経は睡眠時などのリラックスモードのときに優位に働きます。ところが過度な緊張やストレスにさらされると、自律神経のバランスが崩れ、ぜん動運動が弱まる原因に。
また、自律神経の乱れは胃酸の増加にもつながります。胃は、自身を胃酸から守るために胃粘液を分泌していますが、その防御力を上回る攻撃を胃酸によって受けることで、むかつきを伴う胃もたれを感じるケースもあります。
胃もたれは予防できる?
胃もたれの予防法のポイントは、シンプルにいえば先ほどと真逆のこと、「食べすぎない」「飲みすぎない」「ストレスをためない」です。具体的な方法を以下で解説していきます。
食べ方や飲み方を工夫する。
胃に食べ物を長時間とどめないために、日ごろから腹八分目程度に食事をおさえ、早食いしないようにしましょう。胃もたれがひどい人には、「腹四分目」など一度の食事量をさらに減らし、かわりに食べる回数を増やしてゆっくり食事をしてはとアドバイスすることもありますよ。
また、先述したように食後約3時間~4時間で胃の中は空っぽになるといわれています。睡眠中に胃に負担をかけないためにも、寝る約3時間~4時間前には夕飯を済ませてください。
飲み物に関しては、炭酸飲料や冷たいものの飲みすぎや一気飲みは控えましょう。
自律神経を整える。
ストレスを感じやすい人は、適度な運動を心がけましょう。たとえばウォーキングなどの軽い運動でも、ストレス発散になります。おまけに、胃に適度な刺激を与えられるので、胃の調子が整うことも期待できます。
また、睡眠不足もストレス増大に関係するため、なるべく十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活を送ることも大切です。
今すぐできる胃もたれの対処法。
「この胃もたれをすぐ和らげたい!」というときに役立つ可能性があるので、薬の服用や食べるといいものなど、対処法を知っておきましょう。
市販薬を服用する。
すぐできる胃もたれへの対処法としては、市販の胃薬を使用するのも1つの手段です。胃薬にはさまざまな種類があり、中には薬局やドラッグストアの薬剤師に相談しないと購入できない薬もあるので、どのような症状があるかを説明して、自分に合った薬を選んでもらうといいでしょう。
胃薬ごとに決められたタイミングで服用するのが理想的ではありますが、食前・食後にこだわりすぎず、可能なタイミングで服用いただいても問題ないかと思います。胃薬であれば、市販薬でも成分が強すぎるといったことはあまりないので、空腹時の服用でも構いません。
辛いものを少量摂取する。
「辛いものは胃もたれに悪いから避けたほうがいい」と考える人が多いかと思います。ですが、少量や程よい辛さのものを摂取するのであれば、むしろ胃もたれへの対処法としておすすめです。
唐辛子に含まれるカプサイシンは、胃の動きを促進する効果があります。メジャーな調味料である七味唐辛子には、唐辛子だけでなく、同じく胃の動きを促進してくれる陳皮も含まれているので、うどんにかけて食べるなどして適量摂るとよいでしょう。
体勢を工夫する。
横になるときは右側を下にしても左側を下にしても、自分が不快でない体勢であれば、対処として問題ありません。
右側を下にして横になると、食べ物が腸に流れやすくなり、消化不良が起こりにくくなりますが、胃酸が食道に逆流しやすくなります。左側を下にして寝るとその逆の状態に。仰向け含めどんな姿勢がよいかは、ケース・バイ・ケースなので一概にはいえないのですが、いずれの場合も枕を使用して、上体が少し起き上がっている体勢をとれればよいかと思います。
胃もたれで病院に行くべき?
胃もたれは、病気ではなく、日々のセルフメンテナンスや薬の服用で改善が見込める症状です。そこまで危険な症状ではありませんが、胃もたれ以外に不安に感じる症状がある人や、慢性的な胃もたれを緩和・解消させるための対処法が知りたいという人は、医師に相談してみてはどうでしょうか。
受診の際には、「どんなときに、どのように不快さを感じるか」など具体的な症状を伝えると、より正確に診断ができます。体の痛みや体重の減少、胃痛など、胃もたれ以外の症状が慢性的に続いている場合は、何かの病気が潜んでいる可能性があるので医師に申告し、検査を受けましょう。
また、病院で処方された薬を服用して改善がみられない場合でも、よほどのことがない限り、同じ病院で治療を続けることをおすすめします。
医師は、患者さんの症状の変化をみながら処方薬を変えるなどして、より適切な処置ができるように調整しています。途中で別の病院に行ってしまうと、カルテの情報が引き継がれず、スタートラインからやり直しのような状態に。特に、胃もたれはすぐに治らないことも多々あるので、長期的な視野をもって治療にのぞむようにしてください。
【まとめ】対処法など正しい知識をもって、食事を楽しもう。
胃もたれは誰にでも起こる可能性があります。ただ、自分で原因や対処法を把握できていて、生活習慣病になりそうなほど過剰に食べたり飲んだりしなければ、大きな問題にはならないと思います。たまには多少の不調は覚悟のうえで、たくさん飲み食いしたくなる日も、きっとありますよね。
必要に応じて医師に相談しながら、自分の胃を気にかけつつ、健康で楽しい食生活を過ごしましょう。
写真/Getty Images、PIXTA イラスト/オオカミタホ
吉良 文孝
東長崎駅前内科クリニック院長。日本消化器病学会認定消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医などの資格を保有。東京慈恵会医科大学卒業後、東京警察病院にて初期臨床研修。JCHO東京新宿メディカルセンター(旧東京厚生年金病院)や都内内科クリニック・健診専門クリニック・医師会などでの勤務を経て、2018年より現職。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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