「子ども2人。生涯の教育費はいくら必要?」イラストレーターがFPに相談してみた。
※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」 と記載している部分があります。
※ 本文中に記載の保険に関する保障の条件は、保険会社によって異なります。詳しくはご加入の保険会社にお問い合わせください。
フリーのイラストレーターとして活躍するユユマルさんは、4歳の女の子と2歳の男の子のママ。子育てエピソードやお役立ちアイテムの紹介に加え、ファストファッションのレビューなど、イラストを交えながらSNSで発信しています。
そんなユユマルさんはお子さんが小さいこともあり、具体的な教育方針がまだ決まっておらず、教育費について漠然とした不安を抱いているそうです。
そこで、家計や資産運用など幅広い相談に乗っているファイナンシャルプランナーの張替愛(はりかえ・あい)さんに、子どもの大学卒業までにかかる教育費について、具体的な数字を算出しながらアドバイスしてもらいました。
私立と国公立ではこんなにも差が。小学校から大学までにかかる教育費。
張替:私もユユマルさんと同じ2児の母です。今日はお話を伺えるのを楽しみにしていました。さっそくですが、ユユマルさんは教育費について具体的にどのような心配をしていますか?
ユユマル:まだ子どもが小さいこともあり、「こんな習いごとをさせたい」とか「国公立に進学させたい」とか具体的な教育方針は定まっていないのですが、やりたいことはやらせてあげたいと思っています。でも、大学進学までにかかる教育費についてはあまりわかっていなくて。
張替:金額がわからないと「教育費をいくら貯める必要があるのか」など、具体的にイメージしにくいですよね。まずは、お子さんが大学に進学する場合に必要な教育費の総額をみていきましょう。
子ども1人あたりの教育費の総額。
※総額の昇順
進路 | 小学校 (6 年間) |
中学校 (3 年間) |
高校 (3 年間) |
大学 (入学金含む 4 年間) |
総額 |
すべて公立 | ¥2,112,022 | ¥1,616,317 | ¥1,543,116 | ¥4,812,000 | ¥10,083,455 |
大学から 私立(文系) |
¥2,112,022 | ¥1,616,317 | ¥1,543,116 | ¥6,898,000 | ¥12,169,455 |
大学から 私立(理系) |
¥2,112,022 | ¥1,616,317 | ¥1,543,116 | ¥8,216,000 | ¥13,487,455 |
高校から私立(文系) | ¥2,112,022 | ¥1,616,317 | ¥3,156,401 | ¥6,898,000 | ¥13,782,740 |
高校から 私立(理系) | ¥2,112,022 | ¥1,616,317 | ¥3,156,401 | ¥8,216,000 | ¥15,100,740 |
中学から私立(文系) | ¥2,112,022 | ¥4,303,805 | ¥3,156,401 | ¥6,898,000 | ¥16,470,228 |
中学から私立(理系) | ¥2,112,022 | ¥4,303,805 | ¥3,156,401 | ¥8,216,000 | ¥17,788,228 |
すべて私立 (文系) |
¥9,999,660 | ¥4,303,805 | ¥3,156,401 | ¥6,898,000 | ¥24,357,866 |
すべて私立 (理系) |
¥9,999,660 | ¥4,303,805 | ¥3,156,401 | ¥8,216,000 | ¥25,675,866 |
下記出典資料をもとにミラシル編集部が作成。
出典:
・文部科学省 「令和3年度子供の学習費調査」内「表9 幼稚園3歳から高等学校第3学年までの15年間の学習費総額」・日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」(2021年)P5「入学費用」、P6「在学費用」
張替:まず、小学1年生から高校3年生までの12年間にかかる教育費の内訳ですが、学校の授業料や通学費用、制服代、給食代に加え、習いごとや塾にかかる費用なども含まれた平均金額をもとにした金額です。大学は、授業料や入学金のほか、受験費用や通学費、教科書代なども含まれています。この前提を踏まえてお話ししましょう。
たとえば、小学校から大学まですべて公立に進学した場合の教育費の総額は、ざっくり見積もると合計1,000万円くらいだとわかります。
ユユマル:すべて公立に進学したとしても1,000万円……かなり高額ですね(苦笑)。
張替:なかなか衝撃的な数字ですよね。さらに、お子さんが1人暮らしをする可能性も考えておいていただきたいです。
アパートの敷金礼金や家財道具の購入費用に加え、月々の仕送りなども合わせると、4年間で約420万円必要です(参考:日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果(2021年12月20日発表)」P10「自宅外通学者への仕送り額」、P11「自宅外通学を始めるための費用」)。
ユユマル:大学まで国公立を選択して4年間1人暮らしさせる場合、合計1,420万円以上もかかるんですね! 子ども1人につきそんなに貯められるのか不安になってきました。子どもが成長すると今よりも食費がかさむでしょうし、姉弟なのでお下がりも難しいですし、これからますます出費が増えることを考えると……。
張替:不安にさせてしまいましたよね。まず、この総額はあくまでも平均値であり、「必ず必要になる額」ではないので、安心してください。塾代や習いごと代、進学先の学費など、家庭によってかかる費用は異なります。つまり、教育費が1,000万円以上かかるご家庭もあれば、1,000万円を切るご家庭もあるということです。
教育費を貯めるのは高校2年生まで、高校3年生からは「使う時期」に。
張替:また、1000万円以上の金額を「貯める」必要があるわけではないのでご安心ください。高校までの教育費は、必要となる都度、家計をやりくりして出していきましょう。ただ、この大学進学にかかる教育費は突出して高いので、お子さんが高校2年生になるまでにまとまった金額を貯めて備えておくのがおすすめです。
ユユマル:娘は4歳なのであと13年、息子は2歳なのであと15年でそれぞれ貯金しないと……。ところで、なぜ高校2年生なのでしょうか?
張替:高校3年生になると、塾代や受験費用などの教育費の負担が急に大きくなるからです。また、推薦入試で早く進学先が決まった場合、3年生の秋に入学費用の支払いが発生します。
ユユマル:高校2年生までは「貯める時期」、高校3年生からは「使う時期」だということですね。
教育費500万円、毎月いくら貯めればいい?
張替:高校3年生~大学1年生の時期は教育費が一気にかかるため、貯金で準備しておけると安心です。世帯年収や家族構成によって金額感は異なりますが、ユユマルさんの場合、大学進学に備えて貯める子ども1人あたりの金額は、大学進学前に最低300万円、お子さんが1人暮らしをするなら、500万円を1つの目安として考えてもらうといいでしょう。これだけ貯金があれば、不足分は家計から捻出していくことで、大学進学ができそうです。
ユユマル:周辺に大学がないので、1人暮らし想定だから500万円だとすると……。
張替:500万円なら、0歳から17歳までの17年間で月に2万5,000円ずつ貯金してもらうと達成する金額です。
ユユマル:月に2万5,000円なら無理なく貯金できそうな気がします!
張替:国公立の大学だと大体月に10万円近く教育費がかかり、私立だと14万円~17万円くらいかかります。500万円貯めておけば、高校3年生から大学卒業まで月に8万3,000円くらい使えます。この金額と家計から出すお金をあわせれば、国公立大学に進学して1人暮らしをした場合も学費と生活費の一部を負担することができます。
ユユマル:500万円貯めてもプラスアルファで援助しないといけないとなると、結構ハードですね。
張替:お子さんが小さく教育費の負担が少ない時期に、コツコツ貯めることを意識するといいですね。
教育費を投資信託で貯める際のポイント。
張替:ところでユユマルさんは、教育費を貯めるためにご夫婦2人で管理している口座はありますか?
ユユマル:いえ、ありません。わが家は夫と私でお財布が完全に別になっていて、夫がどのくらい貯蓄しているのかもわかっていません。
張替:なるほど。お子さん名義の口座はありますか?
ユユマル:昨年から、児童手当を「ジュニアNISA(※1)」に投資しています。児童手当が振り込まれたら子ども名義の口座に移し、10万円~20万円くらいを口座に残した状態で、残りの金額をジュニアNISAに回しています。
※1 ジュニアNISA:「金融庁」ジュニアNISAの概要
張替:児童手当をお子さんの教育資金として貯めてきたのですね。すばらしいです!
張替:一定以上の収入の世帯は所得制限によって減額、もしくは支給対象外になりますが、所得制限がなければ、支給対象となる0歳から15歳の年度末までに受け取れる児童手当の総額は、だいたい200万円(※2)。つまり、児童手当をしっかり貯めておけば、先ほどお話しした大学生で1人暮らし想定の場合に貯めておきたい教育費500万円のうち、約200万円は貯蓄できます。すると、自分達の収入の中から貯める金額は、残りの約300万円でいい計算になります。
※2 :内閣府「児童手当制度のご案内」
張替:ところで、ジュニアNISAではどのような金融商品を購入しましたか。
ユユマル:なんだったかな。すみません、あまりよくわかっていなくて。
張替:なぜ伺ったかというと、もし株式投資信託を選択されていた場合、価格変動のリスクがあるからです。経済状況がよければ大きく増やすことができますが、状況が悪ければ価格が下がる可能性もあります。高校2年生のタイミングで負担がかかることが決まっている教育費を、全額株式の投資信託に投資するのは、あまりおすすめできません。
ユユマル:そうなのですね、確認しておきます。ジュニアNISAは2023年末に廃止が決まっているので、廃止後はどうすればいいでしょうか。
張替:NISA(※3)で貯めるのも方法の1つですが、教育費用の貯蓄と老後資金用などが目的の貯蓄が混ざってしまうとわかりにくくなるので、そこだけ注意したほうがいいですね。いずれにせよ、教育費を株式投資信託で貯めるのは3分の1程度にとどめ、残りの3分の2は価格変動リスクが大きくない方法で貯めるのがおすすめです。
学資保険は無理なく支払える金額を設定することが重要。
張替:そこで、安心して教育費を貯められる方法の1つに、学資保険があります。ユユマルさんは、学資保険について聞いたことがありますか?
ユユマル:名前自体は聞いたことがありますが、よくわからなくて。学資保険とは具体的にどういう保険なのでしょうか?
張替:商品によって詳細は異なりますが、基本的に学資保険は子どもの教育資金を準備するための貯蓄性保険の一種。親御さんが毎月保険料を支払うことで、大学進学資金が必要になる高校2年生あたりで「学資金」「満期保険金」という形でお金を受け取れるしくみです。
ユユマル:学資保険に入っておくといいことについて知りたいです。
張替:学資保険のメリットは、保障機能が付加できること。設計プランにより内容は異なりますが、契約者保障があるものを選択した場合、保険料を支払っている時期に契約者である親御さんが亡くなってしまったら保険料の支払いはなくなりますが、お子さんは時期が来たら予定どおりの学資金を受け取れます。
ユユマル:いざというときに心強いですね。学資保険のデメリットはありますか?
張替:学資保険を途中で解約した場合に生じます。保険を解約すると、「解約返還金」として払い込んだ保険料のうちいくらか戻ってきますが、多くの場合それまで支払った保険料の累計額を下回ります。
ユユマル:なるほど……。デメリットを回避する方法はありますか?
張替:毎月無理なく払える金額を保険料に設定するなどして、途中で解約をしないで済むようにすることですね。
ユユマル:わかりました。教育費の目標額である500万円のうち、学資保険ではいくら賄えばいいのでしょうか?
張替:ユユマルさんは投資信託の購入も続けていきたいとのことなので、目標額の500万円のうち150万円くらいはNISAなどの投資信託を活用していただき、残りの350万円くらいは学資保険や貯金などで着実に備える方法がおすすめです。
ユユマル:学資保険を活用する場合、月々いくら保険料を支払えばいいのでしょうか?
張替:たとえば返還率が100%の学資保険があるとします。4歳の娘さんの教育費を今から高校2年生にあたる17歳までに350万円貯めるとすると、「350万円÷(17歳−4歳)」となり、月々2万3,000円くらいの保険料が発生します。2歳の息子さんの場合は「350万円÷(17歳−2歳)」で、月々の保険料は約2万円。合計すると、毎月4万3,000円の保険料になりますが、無理せず支払えそうですか?
ユユマル:自分の洋服代や外食費などで毎月4万円くらいはなんとなく使ってしまっているので、そのぶんを学資保険に回せば無理せず支払える金額だと思います。
張替:「銀行口座にお金があると使ってしまうので、学資保険として先に口座振替してしまえば貯めやすい」とおっしゃる方も多いですよ。
ユユマル:学資保険、聞けば聞くほどやったほうがいいなと感じました。実は「学資保険に入らず、自分で積み立てたほうがいい」という情報をSNSで目にする機会が多く、加入するかどうか決められないまま今に至っていました。
張替:かつてはお金を貯めようとする場合、メインの方法は定期預金でした。今は金利が下がっているので、ただ貯蓄するだけではお金は増えません。さらに、金融庁がNISAを充実させたこともあり、リスクをとっても資産形成で増える可能性に期待を寄せる人が増えたのかもしれませんね。
ユユマル:たしかに、SNSで見かけた情報は、資産形成に対して意識が高い人の発信だったかもしれません。
張替:投資信託はおすすめの資産形成方法の1つではあるものの、もっとも教育費がかかる高校2年生ごろのタイミングで、受け取れる金額が価格変動により下がってしまうリスクがあります。必要な額を確保するためには、適切なタイミングで現金化するよう気をつけておくことが重要です。
ユユマル:そう考えると、学資保険は安心ですね。固定費や生活費の多くを夫が出しているので、子ども2人の学資保険は私が加入しようかな……。
張替:ちょっと待ってください! ユユマルさんのように共働きのご夫婦でお子さんが複数人いる場合、ご夫婦それぞれが学資保険に入ることで、保険料の負担をより軽減できるんですよ。
ユユマル:えっ!
張替:学資保険は通常「生命保険料控除」の対象となるので、所得税と住民税を軽減できます。ただし控除額には上限があるため、ユユマルさんは娘さんの、夫さんは息子さんの学資保険に加入するなど、ご夫婦がそれぞれ保険料を支払うことで、生命保険料控除をフル活用できるのです。
ユユマル:そうなのですね! 危うく損するところでした。ちなみに、わが家のように教育方針が決まっていない場合、学資保険を選ぶ際のポイントを教えてください。
張替:現在、学資保険以外で何も保険に入っていないのなら、保障が手厚いタイプの学資保険を選ぶのもいいかもしれませんね。また、学資金を受け取るタイミングは商品によって異なるので、それも判断基準の1つになるでしょう。
ユユマル:ありがとうございます。危うくネットの情報を鵜呑みにして学資保険を検討しないところでした。「NISAなどの投資信託を活用して150万円、残りの350万円を月々4万円ちょっとの学資保険で準備する」と考えたら、私でも500万円貯められそうな気がしてきました!
文/畑菜穂子 編集/藤田佳奈美
ユユマル
フリーランスの在宅イラストレーター。Instagramのフォロワー数は2.6万人(2023年3月現在)。「バブいぞ赤ちゃん」シリーズや「ぴよぴよ夫婦」シリーズなどのLINEスタンプ販売中。
張替 愛
FP事務所マネセラ代表。大学で心理学を学んだ後、国内損害保険会社に勤務。夫の海外赴任を機に退職し、日本帰国後の2017年に独立開業。専門分野は、海外赴任準備や資産運用・教育費・保険・老後資金・ライフプラン・女性のキャリアなど。多くの人に賢いお金の使い方や考え方を知ってもらうため、コラム執筆や監修・オンライン相談・マネー講座などに力を入れて活動中。2児の母でもある。著書『~共働き800万円以下の夫婦でもハッピーライフ~プチ贅沢を楽しみながらムリなく資産を増やす 暮らしとおかね Vol.12』(ビジネス教育出版社)
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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