口唇ヘルペスを早く治すには?原因や予防法を解説【医師監修】 口唇ヘルペスを早く治すには?原因や予防法を解説【医師監修】

口唇ヘルペスを早く治すには?原因や予防法を解説【医師監修】

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「口唇ヘルペス」とは、疲れがたまっているときや体調の悪いときに、かゆみや痛みを伴う水ぶくれなどの症状が唇の周囲に現れる感染症です。実は、初めての感染ではなく、すでに体内に潜んでいるウイルスが原因で発症していることも少なくありません。「口唇ヘルペス」の主な症状や早く治す方法、予防のポイントについて、皮膚科医の伊佐見真実子先生に解説していただきました。

目次

口唇ヘルペスとはどんな病気?

 口唇ヘルペスとはどんな病気?

体調の悪いときや、疲れがたまっているときに、口唇ヘルペスの症状で口元にかゆみや痛みを感じたことがある人もいるのではないでしょうか。何がきっかけで症状が出るのか、どんな症状が出たら口唇ヘルペスの疑いがあるのか、解説します。

口唇ヘルペスはウイルス性の感染症。

口唇ヘルペスとは、その名前の通り、主に唇やその周囲に、ピリピリしたかゆみや痛みを伴う水ぶくれや、びらん(皮膚がめくれたりただれたりする状態)などの症状を引き起こす皮膚疾患です。風邪をひいて体調が悪いときなどに症状が現れることも多いため、「風邪の華」や「熱の華」といった名前で呼ばれることもあります。

口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)というウイルスが原因で起きる、ウイルス性感染症の一種です。単純ヘルペスウイルスは主に1型と2型に分類されるのですが、口唇ヘルペスの原因となるのは1型です。1型は、口内や目元、顔をはじめ上半身に症状が現れますが、2型は、性器などを中心に下半身に症状が出る(性器ヘルペス)という違いがあります。

気づかないうちに感染していることも。

口唇ヘルペスは、初感染(初めて感染した場合)と再発(初感染後に体内に潜んでいたウイルスが再活性化した場合)で症状が異なる場合があります。一般的に口唇ヘルペスの症状として知られている、唇周辺の水ぶくれなどの症状は、再発時の症状であることがほとんどです。

単純ヘルペスウイルスは、非常に感染しやすいウイルスであるため、子どものころに家族と接触して感染しているというケースも多くあります。初感染時には症状が出ない場合もあるため、感染したことに気づかないまま成人する人もめずらしくありません。

一方、初感染時に重い症状が出る場合もあります。唇や口の周辺だけでなく、目元や顔全体が腫れ、かゆみや痛みといった症状が出たり、リンパ節腫脹が現れたりする場合があります。また、熱やだるさなどの全身症状を伴うこともあります。

やっかいなことに、単純ヘルペスウイルスは一度感染すると体外に排出されることはなく、体内から完全に消滅することもないと考えられています。初感染後、単純ヘルペスウイルスは、神経節の細胞内に遺伝子のようなかたちで潜伏。そして、疲労や体調不良などで免疫力が下がると増殖し、口元に発症するのです。

口唇ヘルペスを早く治すために。

口唇ヘルペスを早く治すために。

口唇ヘルペスは、かゆみや痛みが気になるだけでなく、唇や口元という目につきやすい場所に症状が出ることを悩む人が多い感染症でもあります。医療機関を受診することで、抗ウイルス薬で症状を引き起こすウイルスの活動を抑えられるほか、再発を繰り返す人は、発症に事前に備えるための治療法を相談できる場合もあります。

口唇ヘルペスの主な治療法。

口唇ヘルペスが発症した場合、一般的には皮膚科で診療を受け、抗ウイルス薬を処方してもらいます。抗ウイルス薬には、内服薬と外用薬(塗り薬)の2種類があり、軽症の場合は外用薬だけで症状が落ち着きますが、初感染時など症状が強く出た場合は、内服薬と外用薬を併用します。薬の種類はいくつかあり、普段服用している薬との兼ね合いなどを考えて、その人に合ったものが処方されます。

口唇ヘルペスは、免疫力が低下した結果、ウイルスの活動が活発になって発症するため、免疫力が十分に戻れば自然に治ります。ただ、症状が出ている間は、感染力の強い単純ヘルペスウイルスを周囲に広げてしまう可能性があるため、医療機関の受診をおすすめします。

口唇ヘルペスの症状が出ているとき、早く治すための注意点は?

発症した口唇ヘルペスを早く治すためには、市販薬に頼らず症状が出はじめたらすぐに受診することが一番。なぜなら、単純ヘルペスウイルスは発症後1日~2日で一気に増殖するのですが、抗ウイルス薬はウイルスの活動を抑え、症状の悪化を防ぐ働きをするため、投薬が早ければ早いほど効果を発揮するからです。抗ウイルス薬を使えば、おおむね1週間以内には症状が落ち着くでしょう。

何度か再発した経験がある患者さんの中には、発症する1日くらい前に、「ピリピリ、チクチクする」「ムズムズする」といった唇周辺の違和感で発症を察知し、発症前に受診する方もいます。発症前に抗ウイルス剤を使用することで、症状が出る前に食い止めたり、軽い状態に抑えられたりする場合があります。

再発を繰り返すときは医師に相談を。

早期治療が有効とはいえ、発症してすぐにタイミングよく皮膚科を受診できるとは限りません。特に、口唇ヘルペスは仕事などが多忙で疲労やストレスがたまると発症しやすいため、受診の時間がとりづらい場合も多いでしょう。

そうした患者さんのうち、年に3回以上口唇ヘルペスが再発する場合は、対策としてPITという新しい治療法を提案することがあります。

PITとは、Patient(患者)・Initiated(判断)・Therapy(治療)の頭文字で、患者さんが自分の判断で決められた薬の服用を開始できるというもの。口唇ヘルペスでは、医療機関に相談の上、あらかじめPIT用の薬を処方してもらっておくことで、発症前の違和感を察知したら薬を飲み、症状の発症を防ぐことができるのです。

PITを利用するには、発症頻度のほかにも、「再発の初期症状を患者自身で察知できる」「適切な用法・用量を守って服用できる」など、いくつか条件があります。利用を希望する方は、医療機関で医師に相談してみてください。

口唇ヘルペスの対策法は?

口唇ヘルペスの対策法は?

口唇ヘルペスの予防には、初感染を防ぐための予防法と、再発を防ぐための予防法があります。成人の場合、すでに感染している可能性が高いため、口唇ヘルペスを発症している人からの感染に対して過剰に神経質になる必要はありませんが、小さな子どもや乳幼児はヘルペスウィルスに接触しないよう十分に注意してあげてください。

発症している人のタオルや食器は使わない。

単純ヘルペスウイルスは感染力の強いウイルスです。発症時には多くのウイルスを放出しているため、発症している人の患部に直接触れたり、患部に触れた手に触れたりすることで感染する可能性があります。

感染している人が使ったタオル・食器などを介して、感染が広がってしまうことも。家庭内に発症している人がいる場合、お手洗いや洗面所などのタオルや食器の共有は避け、すぐに洗浄するようにしましょう。

特に、小さな子どもや乳幼児は、単純ヘルペスウイルスに感染したことがない可能性が高い上に、手指を口に入れてしまうことも多いため、接触感染を防ぐよう対策が必要です。

しっかりと休養と栄養をとり、免疫力を上げる。

口唇ヘルペスの再発は、免疫力の低下によって引き起こされます。免疫力を下げないため、しっかりと休養や栄養をとるように心がけましょう。

ストレスをため込まない。

ストレスも免疫力を低下させる要因です。ストレスの感じ方には個人差があるため、ストレスの軽減に有効な方法も人それぞれ。自分なりのストレス解消法があるとよいですね。

私の経験上、口唇ヘルペスの患者さんは、年度初めなどで仕事が忙しく、環境が変化する時期に増えるように感じます。なるべく疲れとストレスを同時にため込まず、定期的に発散できるのが理想的と言えるでしょう。

紫外線を避ける。

体調管理やストレスの軽減を心がけるほかに、口唇ヘルペスの予防には紫外線を浴びすぎないよう気をつけることも大切です。過剰な紫外線は、皮膚にダメージをあたえ、免疫力を低下させます。特に海水浴やスキーなどは、強い紫外線を受けるため要注意。屋外でのレジャーの際には、服装を工夫したり、帽子・日焼け止めクリームなどを活用したりして、できるだけ紫外線を浴びすぎないようにしましょう。

免疫力の低下を避け、発症時は早めの治療を。

口唇ヘルペスは気づかずに感染している例も多いため、仕事の疲れやストレスをためがちな20代~30代の方は、唇や口元に水ぶくれなどの症状が出た場合には、口唇ヘルペスの再発を疑ってください。そして、小さな子どものいる家庭では接触感染の予防に努め、可能であれば早めに受診し、症状を最小限に抑えましょう。

口唇ヘルペス再発のきっかけとなる免疫力の低下は、風邪やインフルエンザといったほかの病気や感染症を引き起こす原因にもなります。働き盛りの年代はつい無理をしがちですが、健康を維持することも、よい仕事をするために大切です。忙しいときほど、心身の健康を意識してみてください。

写真/PIXTA


伊佐見 真実子 
あつた皮ふ科クリニック医師。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。藤田医科大学保健衛生学部医学科卒業後、藤田医科大学病院・社会医療法人宏潤会大同病院を経て、2023年より現職。


※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。 
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