原田ひ香エッセイ「お金」を知ることで「自分」を知る。

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お金をテーマにした親近感のある作品を生み出す小説家・原田ひ香さんに、日ごろから感じているアラフィフならではの「お金の悩み」「お金との付き合い方」について、ご寄稿いただきました。原田さんと同世代の方は共感できること必至です。

もう隠すこともできないので言ってしまうが、私は1970年、昭和45年生まれ、最近、53歳になったばかりである。

この世代、年齢というものが本当に中途半端だなあ、と最近、しみじみ思うのだ。

上の世代はもちろんバブル。青春を謳歌し、就職も楽だった、と聞く。だけど、我々が大学を卒業する年にはすでに就職はかなり厳しかった。下の世代はロスト・ジェネレーション。これまた、長く厳しい時代だった。

自分はバブルとは言えないし、とはいえ、ロスジェネです、というのはちょっと図々しい気がする。文献などにもよるが、実際、1970年あたりの世代はバブルにもロスジェネにも当たらない、狭間として、どちらにも入っていないことが多い。そして、第一、第二次ベビーブーマーでもないのが私たちなのだ。

白鳥は哀しからずや空の青  海のあをにも染まずただよふ(※)

誰もが知っている歌だけど、この段でいけば「バブルにも、ロスジェネにも染まず漂う」白鳥のようだと言ったら、美化しすぎだろうか。

先日、ある雑誌が企画してくれた配信イベントで、経済評論家の方と対談させてもらった。その方も1969年生まれの五十代前半だった。

配信されたシーンではほとんど流れなかったが、実は、映っていないときの雑談ではこの話題で盛り上がっていた。

「先生、私たちの世代って、本当に中途半端じゃないですか?バブルでもロスジェネでもなくて」と私が言うと、「そうなんですよ。また、五十代のはじめというのがなかなか生きるのがむずかしい」と同意してくださった。

中途半端なのはそれだけではない。

この対談の中で、節約には自炊が必要、自炊は人生を楽しく豊かにする、という内容から男女の家事分担にも触れたのだが、これもまた、狭間の世代だよなあと私は話しながらしみじみと思った。

私たちより上の世代、六十代七十代であれば、夫婦では妻が家事をするのが当然という考え方のほうが多いだろう。そして、下の世代、四十代三十代二十代では、共稼ぎ世帯が多いどころかそれがほとんどで、家族で話し合いながら家事分担を決めているだろうし、そうでなければ、家庭が回っていかないはずだ。

しかし、これまた、五十代の私たちの世代では結婚と同時に仕事をやめる人や子どもができたタイミングで退職する人も多かった。当然のようにそのあとは主婦が家事をすることになっており、そのまま年齢を重ねても、その習慣が続いている。中にはパートを含め、仕事に復帰しているのに、家事は全部妻がするのが当たり前だったり(私も小説の中で書いたことがあるが)、妻が病気になっても夫は家のことには知らんぷり、という家庭も少なくない。

下の世代や子ども夫婦を見て、もう少し、夫に家事を手伝って欲しい、と心の中で思っても口には出せない人、そもそも夫がまったく家事ができないから一から教えるのも面倒、と諦めている人も多い。だからしかたないと思いつつ、上の世代ほどは諦めきれず、どこか納得できない、と不服を抱いているのが私たちの世代だ。

さらに、投資、という意味でも実に中途半端なのだ。最近、NISA・iDeCoと政府までもが先頭に立って謳うほど、投資や資産運用やその界隈がかまびすしいけれど、我々五十代はどうしたらいいのか。

二十代、三十代なら、どんどん……とまではいかなくても、生活に支障のない範囲で、比較的安全な投資をやってみることはいいと思う。多少の失敗も月日が解決してくれるはずだ。そして、逆に六十代以上は、これまで投資をしていなかったら手を出さないほうがいいと思う。万が一、大失敗してしまうとそれを取り戻す時間がない。

では、四十代、五十代は?

これは私もすごく知りたくて、仕事上でお会いした、経済関係の先生たちにたびたびお尋ねしてきた。

皆さんのお答えは概ね、「五年から十年以上、投資を続ける期間があり、その間は大きくお金を使う可能性がないということがわかっているのなら、なくしてもいいくらいの額の範囲でやってみたらどうか」ということだった。

この条件は、なかなかハードルが高い。子どもが就職してもう大きなお金は使わないかなと思っても、自分や親が病気になるかもしれない……などと考えたらほとんどの人が投資には手を出せないのではないだろうか。

投資はできない、でも、老後が心配なのは変わらない、いったいどうしたらいいんだよと文句の一つも言いたくなる。

私は、ファイナンシャルプランナーでも、経済評論家でもない、ただの小説家だが、その範囲の中でお答えするなら、今の生活を整えたらどうかな、と思う。

家計を見直して無駄な出費を抑える、できたら自炊して食費とからだの健康を整える、そして残ったお金を貯金する。自分が一ヶ月にいくらあったら生活できるのか、という金額を把握する。

これは、男女も世代も関係ない。自分が将来1人になる可能性も考えて、今、自炊できない人もぜひ料理を学んで欲しい。自分が毎日口の中に入れるもののことを知るのは、健康のためにも必要なことだ。

そういう生活ができていれば、お金の問題や心配もおのずから解決するのではないか、と思う。

そう、お金を知ることは自分を知ることなのだ。

(※)若山牧水の短歌。歌集『海の声』に収録

イラスト/豊島宙


原田 ひ香 
小説家、脚本家。神奈川県生まれ。大妻女子大学文学部日本文学科卒業。2005年『リトルプリンセス2号』で第34回NHK創作ラジオドラマ大賞受賞。2007年『はじまらないティータイム』(集英社文芸単行本)で第31回すばる文学賞を受賞。『彼女の家計簿』(光文社文庫)『三千円の使いかた』(中央公論新社)『財布は踊る』(新潮社)などお金をテーマにした作品を手掛け、『三千円の使いかた』は2023年1月期にドラマ化された。そのほか、『そのマンション、終の住処でいいですか?』(新潮社)『古本食堂』(角川春樹事務所)『一橋桐子(76)の犯罪日記』(徳間書店)『ランチ酒』(祥伝社)『事故物件、いかがですか? 東京ロンダリング』(集英社)『人生オークション』(講談社)『母親ウエスタン』(光文社)『ミチルさん、今日も上機嫌』(集英社)『三人屋』(実業之日本社)『ラジオ・ガガガ』(双葉社)『図書館のお夜食』(ポプラ社)など多数の著書がある。最新刊は、2023年10月12日に刊行される『喫茶おじさん』(小学館)。


 

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