離乳食の始め方はどうすればいい?開始の目安や進め方を解説。
「離乳食は生後5か月~6か月ごろから始めるとは聞いているけれど、早すぎたり遅すぎたりすると成長に影響があるの?」「SNSで同じ月齢の子がもう離乳食を始めている。うちもそろそろ、と思うけれど、始めるタイミングがよくわからない」「うまくできるか自信がない……」
離乳食をあげ始める前は、わからないことがたくさんあって不安になりますよね。ママ・パパが安心して赤ちゃんの離乳食を始められるように、離乳食教室の講師や離乳食アドバイザーとして講演なども行っている管理栄養士の奥野由さんが、離乳初期の進め方を解説します。
目次
離乳食を始めるタイミングは?
「離乳」とは、赤ちゃんが母乳やミルク以外の食べ物から、成長に必要な栄養を摂れるようになっていく過程です。このときの食事が「離乳食」で、消化能力や食べる機能の発達、食べる意欲など、赤ちゃんの発達にあわせて進めます。
スタートは生後5か月~6か月ごろ。
赤ちゃんに母乳やミルク以外の食べ物を受け入れる準備ができてくるのが生後5か月~6か月ごろ。このころが離乳食を始める時期です。
離乳食の始めどきを知らせる赤ちゃんのサイン。
離乳食に移行する準備ができてくると、赤ちゃんに次のような様子が見られます。
・首がしっかりすわってきた
・寝返りができる
・座ったままの姿勢を5秒くらい保てる
・スプーンを口にあてても、舌で押し出さなくなった
・食事に興味がありそう(親が食べている様子をじーっと見る、よだれを垂らすなど)
見極めが難しいしぐさもありますから、「生後5か月になったら」など、親が決めたタイミングで始めてみるのもいいでしょう。それでもし嫌がるようであれば、少し間をおいてスタートしてみてください。
「スプーンを舌で押し出す」というのは、口に形のあるものを入れようとすると押し出す「哺乳反射」のうちの1つです。これは生まれたときから備わっている動作で、成長とともに自然になくなります。
「始めてみたけれどスプーンを受け付けない」というときは、1週間後くらいに、再びトライしてみましょう。スプーンを口に入れる練習をする必要はありません。
よく、「離乳食の練習として果汁などを与えるのはどうですか」と質問を受けるのですが、離乳食開始前に果汁やイオン飲料などを与える必要はありません。
参考:厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)」
離乳食の開始が早すぎる・遅すぎるとどんな影響がある?
内臓の消化機能が整っていない生後4か月以前に離乳食を始めると、消化不良を起こす心配や小児期肥満のリスクがあります。
一方、生後7か月~8か月ごろになると、体も大きくなり、母乳・ミルクだけでは成長に十分な栄養を摂るのが難しくなってきます。離乳食のスタートが遅すぎると、この時期になっても十分な量を食べられない、体の成長に重要なたんぱく質食材をなかなか食べてくれない、といったことも考えられます。
離乳食は、「5か月になった1日目に必ず始める」というものではありません。5か月~6か月といっても最大60日間の開きがあります。なので、タイミングが少しくらいずれても不安になる必要はありません。赤ちゃんの成長と相談しながら進めていけるとよいですね。
参考:厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)」
どんな準備をしておけばいい?
離乳食の初期(生後5か月~6か月ごろ)は、飲み込みやすいように、食材をなめらかにすりつぶす必要があります。また、調理時や食べさせるときの衛生面にも気をつけましょう。
あると便利な調理器具・備品
すりばち | 食材をすりつぶす |
こし器 | 食材を裏ごしする |
小さい鍋 | 少量を調理できる |
ハンドブレンダー | 食材をペースト状にできる |
離乳食用スプーン | 離乳食用(くぼみが浅く平たい形状のもの)を用意 |
食事エプロン | 食べこぼし対策 |
食事のときには、座る姿勢も重要です。最初のうちは大人が赤ちゃんを座り抱きして支えながら食べさせます。食べることに慣れて1人座りができるようになったら、姿勢をキープしやすいイスを用意してあげましょう。
離乳食はどんなものをあげればいい?
離乳初期は、口に入った食べ物の舌ざわりや味を覚え、飲み込むことに慣れていく時期です。ですから、食べやすいもの、飲み込みやすいものをあげます。
どんな食材がいい?
最初に赤ちゃんに食べさせるのは、なめらかにつぶしたおかゆがおすすめです。目安になるおかゆは10倍がゆ(米と水を1:10の割合で炊いたおかゆ)です。
でも、おかゆが苦手そうだったら、ジャガイモやニンジンなどの野菜に替えても大丈夫です。いずれも、味付けはしません。野菜はよく加熱してすりつぶし、繊維が多すぎるものや、苦み、えぐみのあるものは避けましょう。
「ハチミツ」は甘くて体にもよさそうですが、乳児ボツリヌス症(※)のリスクがあります。1歳未満の赤ちゃんには絶対に与えてはいけません。
※ ハチミツにはボツリヌス菌が混入していることがあります。腸内環境が整っていない赤ちゃんの体内に入ると、便秘・哺乳力の低下・元気の消失・泣き声の変化・首のすわりが悪くなる、といった症状を引き起こすことがあります。
かたさはどのくらい?
スプーンですくって、傾けるとゆっくり落ちていくくらいのとろみが目安。プレーンヨーグルトのやわらかさとなめらかさを参考にしてみてください。
10倍がゆを、米粒がなくなるまですりつぶし、つぶしがゆにします。つぶしたあとヨーグルトのようにポタっと落ちるくらいが、赤ちゃんの食べやすい形状です。水分が少なくてモチモチするようだったら、お湯でのばします。
量はどのくらい?
初めてあげるときの目安量は小さじ1杯(5ml)くらいから。でも、この量はあくまで目安です。もっと欲しそうにしていれば少し量が増えてもよいですし、途中で泣き出してしまったら無理せず切り上げてしまって大丈夫です。
参考:厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)」
離乳初期の進め方。
離乳食をあげるタイミングや授乳とのバランス、食材の種類の増やし方などは、どう進めればいいのでしょうか。
離乳初期は1日1回を目安に。
離乳初期は1日1回、中期(生後7か月~8か月ごろ)に入ると1日2回を目安とします。
この時期は離乳食に慣れ、食材をいろいろと試していく時期なので、おかゆ・野菜・豆腐……と、食べる食材を増やしていきましょう。また食べる量が少なく気になるようであれば、1回にこだわらず、大人の食事のときに食べられそうなものを少し分けてあげてみてもよいでしょう。
あげる時間はいつ?
食後、赤ちゃんの体調に異変が感じられた場合に、すぐに受診できるよう、病院が開いている日の午前中~昼間の時間が安心です。赤ちゃんも大人と同じで、おなかがすいているとよく食べます。授乳前に離乳食をあげるのが、食べてもらいやすいタイミングです。そして食べたあとの赤ちゃんの様子をしっかり見ておきましょう。
母乳・ミルクとのバランスは?
離乳食と授乳のバランスは、離乳食を始めたばかりのころは1:9くらい。母乳やミルクは赤ちゃんが欲しがるだけあげてかまいません。
離乳中期ごろには、栄養の3割~4割を離乳食から摂ることが目安になります。そこに向けて、赤ちゃんの食欲にあわせて量を増やしていき、離乳初期の後半には豆腐、白身魚、卵黄などのたんぱく質食材を試せるくらいにしたいですね。食事をすることに慣れ、いろいろな味を覚えてもらいながら、食べられる食材の幅を広げていきましょう。
初めての食材はどのように試す?
野菜の中でも、離乳初期にペーストにしやすい食材としておすすめなのは、ニンジン・ジャガイモ・タマネギ・ダイコン・カブ・ホウレンソウなど。野菜はアレルギーリスクが少ないので、何種類かをまとめて調理し、一緒に食べさせてもよいでしょう。
おかゆと野菜に慣れてきたら、たんぱく質食材も加えていきます。まず、豆腐から試してみましょう。さらに、白身魚・固ゆでした卵黄などを試します。
「卵黄を食べさせるのが怖い」という声はよく聞きます。食物アレルギーのリスクがある食材を初めてあげるときは、小さじ1くらいの量にとどめ、食後の様子をよく見ておきましょう。
心配な場合は、耳かき1さじ程度から始めてもよいですが、大丈夫であれば、倍量で増やしていく感覚で食べさせてください。何かあったら自己判断せずにすぐに小児科を受診しましょう。十分に注意しながら、でもあまり怖がりすぎないことも大切です。試したたんぱく質食材が食べられるようであれば、少しずつ量を増やしていきましょう。
参考:厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)」
加工食品を使っても。
赤ちゃんが1回の離乳食で食べるのはごく少量。毎回、10倍がゆを作り、野菜のやわらかい部分だけを選んでゆでてすりつぶして……というのも大変です。市販のベビーフード・フリーズドライ離乳食などを上手に利用してください。
また、離乳食用ではない加工食品も離乳食に使うことができます。
冷凍野菜
冷凍することで繊維が壊れ、すりつぶしやすくなります。耐熱容器に入れてラップし、電子レンジで加熱したものをすりつぶすことでお湯を沸かす手間も省けます。味付けをしていない、野菜だけを原材料としているものを選びましょう。
クリームコーン缶
コーンの粒が入っておらず、塩や砂糖などを加えていないものを選びます。豆腐・白身魚・卵黄などの味に慣れないときや、食材がパサつくときなどに、クリームあえにすると食べやすくなります。
トマトペースト
トマトそのものを濃縮した、味付けなしのペースト。生のトマトを離乳食にする場合、皮や種を取り除くのが大変ですが、その手間を短縮することができます。そのままでは味が濃いので、表示されている濃縮倍率を目安にお湯でのばします。白身魚と合わせたり、おかゆなどにごく少量を混ぜたりしてもよいです。
おいしそうに食べる様子を見せる。
赤ちゃんに離乳食をあげるときは、親がおいしそうに食べる様子を見せてあげるのも大切。親もおにぎりやバナナなどを食べながら「おいしいね」と話しかけてください。楽しそうな雰囲気は、離乳食を進めるのにとても効果的です。
【まとめ】赤ちゃんの様子をよく見て、成長や食欲にあわせて進めましょう。
離乳食は、赤ちゃん側の準備ができてくる生後5か月~6か月ごろを目安にスタートしますが、赤ちゃんの成長や発達にあわせて臨機応変に進めましょう。
離乳食を始めたばかりのママから、「レシピ本の分量を食べない」と心配する声を聞きますが、レシピ本に載っている量はあくまで目安です。毎回コンスタントにその量を食べきるのが標準と思わなくて大丈夫。一時的に嫌いで食べなかったものでも後日食べることもあります。
野菜とおかゆを混ぜて食べさせてもいいですし、バナナが好きそうならバナナをちょっとずつほかの食材に混ぜてみるのもよいでしょう。“白いおかゆの上にホウレンソウのペースト”なんて、きれいなビジュアルにする必要もありません。
赤ちゃんの食欲は日々の活動量にもよりますから、食べた・食べないで一喜一憂しすぎないで。親が「ちゃんと食べさせなきゃ」と身構えるより、楽しい雰囲気が赤ちゃんの食べる意欲を育みます。赤ちゃんと一緒に、楽しみながら離乳食に取り組んでみてください。
写真/Getty Images、PIXTA イラスト/こつじゆい
奥野 由
管理栄養士・母子栄養指導士・離乳食アドバイザー。「FooMiLab」代表。
大学・大学院にて食品加工やおいしさ評価を学び、大手食品メーカーにて研究開発に従事。出産を機に離乳食アドバイザーの資格を取得し、「FooMiLab」を設立。子育てしやすい社会を食事面から支援すべく、離乳食講習会の講師・執筆・ベビーフード監修などに取り組んでいる。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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