尿酸値が高い原因は?どんな病気になりやすい?改善点まで医師が解説。
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健康診断の結果にはさまざまな項目が並んでいますが、その中の1つ、「尿酸値」の意味や体への影響を理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。20代後半~30代にかけて数値が上がりはじめることも多く、健康寿命を脅かすさまざまな疾患にも関わりがあります。
今回は肝臓と消化器病が専門の医師・浅部伸一先生に、尿酸値とは何か、基準値を超えるとどうなるのか、超えた状態を放置すると体にどんな影響が出るのか、改善するためには何に気をつけるべきかなどを伺いました。
目次
尿酸値とは?正常値はどのくらい?
そもそも尿酸値は何を測っているのでしょうか?
──尿酸値とは何を測った数値なのですか?
尿酸値とは、文字通り血液中に存在する「尿酸」の濃度のことです。尿酸は、プリン体と呼ばれる物質が肝臓で代謝されて生成される老廃物です。プリン体は細胞の中にあるDNAやRNAを構成する核酸の主成分で、細胞が寿命を迎えると血液中に放出されるため、私たちの体の中には常に存在している物質です。
──尿酸値の正常値はどのくらいですか?
尿酸値の正常値は男女とも7.0mg/dL以下です。これを超えると「高尿酸血症」と診断されます。この段階では自覚症状はありません。
尿酸値が高いと、どんな病気になりやすい?
尿酸値が高いと、健康にどのような影響があり、どんな病気につながるのでしょうか?
──尿酸値の正常値を超えて、高尿酸血症の状態が続くとどうなりますか?
長期間にわたって尿酸値が高い状態が続くと、痛風・腎臓障害・尿路結石症につながる可能性があります。
病気 | 症状 |
痛風 | 結晶化した尿酸が関節などに沈着し、激痛を引き起こす。これを「痛風発作」といい、発作の出た状態が「痛風」と呼ばれる病気。尿酸値が7.0mg/dLを超えるとリスクは上がるが、発症には遺伝や生活習慣が影響し、発症確率には個人差がある。一度発症すると再発しやすい。 |
腎臓障害 | 尿酸を排泄する機能を持つ腎臓にダメージが蓄積し、腎機能が低下する病気。 |
尿路結石症 | 腎臓から尿道までの尿路に結石ができる病気で、激痛を伴う。多くは尿に含まれるカルシウムが原因だが、尿酸が原因になることも。 |
ほかにも、高尿酸血症は食べ物から得た糖分をエネルギーに変えられなくなる「インスリン抵抗性」を悪化させ、糖尿病につながる可能性も指摘されています。
若いうちはまだしも、年齢を重ねて太り気味になったときには、尿酸値だけでなく、コレステロール・中性脂肪・血圧の異常や糖尿病のリスクも一緒に上がることが多いです。さまざまな生活習慣病は、すべて密接に関連していると言えるでしょう。
尿酸値が高くなる原因は?
健康診断で尿酸値が高いという結果が出た場合、どんなことが原因なのでしょうか?
体質や生活習慣が主な原因。
──尿酸値が高くなる原因にはどんなものがありますか?
よくビールを飲んだり、白子・あん肝などをたくさん食べたりすると「痛風になる」と言われますが、そもそも飲食で摂取するプリン体が尿酸値に与える影響は2割~3割程度です。残りの7割~8割の主な原因は、体質や生活習慣です。体内で自然につくられるぶんですので、当然、こちらのほうが大きく影響します。
──食事はそれほど気にしなくてもいいんですか?
2割~3割といえども、食事が尿酸値の上昇に関わることは間違いありません。プリン体を多く含む食品といえばレバーなどがありますが、こうした食品は大量に摂取することはあまり多くありません。
こうした食品より、食べる頻度が高く、大量に摂取する可能性があるもののほうが要注意です。具体的には毎日食べる人が多い肉や魚です。牛ももや鶏ささみ、かつおなどは、あん肝よりもプリン体が豊富に含まれています。焼き肉・焼き鳥・焼き魚などを多く食べる人は注意が必要です。
食品の50gあたりのプリン体含有量
肉類 | 魚介類 |
鶏レバー 156mg | ちりめんじゃこ 373mg |
豚レバー 142mg | いわし干物 153mg |
牛レバー 110mg | あじ干物 123mg |
鶏ささみ 77mg | かつお 106mg |
サラミ 60mg | うに 69mg |
牛もも 55mg | はまぐり 52mg |
豚ヒレ 50mg | あん肝 52mg |
参考:厚生労働省「肉類50gあたりの脂質とプリン体の関係」「魚介類50gあたりの脂質とプリン体の関係」をもとにミラシル編集部にて作成
アルコールはビールに限らず尿酸値を上げる。
──ビールは尿酸値を上げると聞きますが、本当ですか?
実は、世間で言われるほど、ビールのプリン体含有量は多くありません。しかし、大量に飲むことで、結果的に多くのプリン体を摂取してしまう点は要注意です。
加えて、ビールには強い利尿作用があることから、排尿の回数が増えて脱水を招きやすくなることも問題です。尿酸は水に溶けにくいので、脱水状態になると血液中の濃度が高まります。
こうしたことから、ビールをたくさん飲んだ翌日には痛風発作が起こりやすくなります。尿酸値が気になる方がビールをたくさん飲んだ場合は、水やお茶などの水分を積極的に取り、尿酸の濃度を下げるようにしましょう。
──プリン体の少ないお酒なら大丈夫ですか?
焼酎やウイスキーなどの蒸留酒のほうがビールよりプリン体含有量は少ないですが、アルコールには利尿作用があるため、ビールと同じく脱水症状になりやすく尿酸値が上昇します。プリン体が少ないからといって問題がないとは言えず、アルコールの量を制限することが重要です。
アルコール100mlあたりのプリン体量の目安
地ビール | 6.66mg~16.65mg |
ビール | 5.12mg~6.86mg |
発泡酒 | 2.96mg~3.83mg |
日本酒 | 1.21mg |
ワイン | 0.39mg |
ウイスキー | 0.12mg |
焼酎(アルコール度数25%) | 0.03mg |
参考:厚生労働省「肉類50gあたりの脂質とプリン体の関係」をもとにミラシル編集部にて作成
高い尿酸値を改善するには?
尿酸値が高い場合、改善させるにはどうしたらいいのでしょうか?
尿酸値を下げるための治療。
──健康診断で尿酸値が高かった場合、どんな治療が必要でしょうか?
20代・30代の方で、尿酸値が7.0mg/dLは超えていても8.0mg/dLまで達していない人は、生活習慣の改善を行います。たとえば、飲酒量を減らすことや体重を落とすことを提案します。食事内容についても確認し、肉やプリン体が多いものに偏っている場合は、改善してもらいます。
基準を大きく超えた場合の治療。
──尿酸値が8.0mg/dLを超えた場合はどんな治療が必要ですか?
尿酸値が8.0mg/dL以上で、たとえばメタボリック症候群や糖尿病・高血圧など、すでに何かほかの病気がある場合は薬で尿酸値を下げるのが基本です。
──尿酸値を下げるためにどんな薬が使われますか?
現在主流の薬は、体内で尿酸をつくる過程を抑制し、尿酸が大量に生成されないようにするものです。また、尿酸を多く排出させる効果のある薬もあります。いずれにしても病状や患者さんの状態によって処方は変わります。
気をつけなければいけないのは、血圧の薬と同じように、飲んですぐに効果が現れるものではないことです。一定期間、継続的に服用する必要があります。
ちなみに痛風発作が出てしまった場合、尿酸値の急激な上昇・下降が痛風発作につながることから、鎮痛消炎剤が処方され、痛みが自然に引くのを待たなければいけません。
──薬で尿酸値を下げられるなら、食生活は気にしなくても大丈夫ですか?
もちろん薬を飲んでいれば、飲んでいない場合よりは厳密に気を使わなくてもいいかもしれません。しかし、腎臓が尿酸を排出していることは変わらないので、腎臓への負担は考えなければなりません。腎臓は一度悪くなると治せない臓器の1つです。悪くすると寿命を縮めることにもつながるので、大切にしましょう。
尿酸値は健康のバロメーター。自分のために体をケアしよう。
尿酸値とは自分の体が健康かどうかを知る1つのバロメーターです。適切な食事と適度な運動、そして十分な睡眠と水分補給を心がけ、尿酸値を管理しましょう。
また、高尿酸血症の状態が続くと、腎不全や心筋梗塞などの病気につながる可能性もあります。
病気になってしまった場合を考え、安心して治療を受けられるように、医療保険で備えておくのも1つの方法です。短期入院でも給付金をまとめて受け取ることができる、一時金タイプの医療保険を検討してみるといいかもしれません。
人生100年時代に向けて、心臓や血管、腎臓をいかに長持ちさせるかが、これからの健康に大きく影響します。今からでも遅くはありません。「自分の臓器を大切にすること」を意識して、健康的な生活を日々積み重ねていきましょう。
写真/PIXTA
浅部 伸一
東京大学医学部卒業。国立がん研究センターで肝炎ウイルス研究に従事後、自治医科大学を経て、アメリカ・サンディエゴに留学。現在はバイオ医薬品企業『アッヴィ合同会社』に在籍。自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科非常勤講師も務める。『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社、2017年)を監修。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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