一生オタ活・推し活を続けたい!「推し貯金」のススメ
「人生が豊かになった」「仕事のモチベになる」──そんな効果もあって、「オタ活」「推し活」と呼ばれる活動を楽しむ人が増えているようです。とはいえ、その活動にはお金がかかるもの。上手なやりくりが必要です。
そこで、自身もオタ活・推し活実践中のお金の専門家・横川楓さんに、オタ活・推し活をめぐるお金の話を伺いました。「推しは推せるときに推せ!」を貫き続けるための金言が満載です。
目次
「オタ活」と「推し活」。
「推し活」は、ある対象を応援したり、愛でたりする活動のことを指します。「推し」という具体的な対象がいるのが「推し活」です。
一方で趣味や大好きなものに対し、深い造詣をもって活動するのが「オタ活(オタク活動)」で、「推し活」は「オタ活」の一環とも言えます。しかし、推し活の対象や具体的な行動が多様になった今、「オタ活」も「推し活」もほぼ同義と考えていいでしょう。
オタ活・推し活ってどんなことをするの?
オタ活・推し活の内容はさまざまです。
ライブや舞台の鑑賞やイベントの参加、聖地巡礼など外に出ていく活動があれば、グッズを買ってコレクションしたり、推しと同じものを持ったり、推しにまつわるモノやコトを自分の生活の中に取り込む活動もオタ活・推し活です。
また「推しの魅力を人に布教する」「推しの存在に感謝して生きる」こうした生き方もまたオタ活・推し活です。活動の一環として、推しの出身地や作品の舞台となった町にふるさと納税をする人もいます。
私自身は『呪術廻戦』の乙骨憂太や『ディズニー ツイステッドワンダーランド』のアズール・アーシェングロットなどを推しつつ、推しが企画・プロデュースするブランドの洋服を買い、日々身につけて生きるというオタ活・推し活をしています。
オタ活・推し活にかかるお金。
何を推すか、具体的にどういう活動をするかによって、具体的なお金の使い道は変わります。しかし、いずれにせよ、オタ活や推し活にはそれなりにお金がかかります。
コンサートやライブにかかるお金。
アイドルなど実在する人物へのオタ活・推し活で大きいのが、コンサートやライブ、イベント時の出費でしょう。チケット代やグッズ代がかかりますし、遠征となれば交通費と宿泊費も必要になります。
最近では、アニメやマンガのキャラクター推しであっても、コラボカフェや展覧会など期間限定のイベントが盛んに行われていますし、聖地巡礼といった楽しみ方もあります。2次元とはいえ、移動や宿泊などの遠征費用がかかります。
グッズにかかるお金。
書籍やCDなどの購入費とは別に、オタ活・推し活費用の少なくない部分を占めるのがグッズ代です。ものにもよりますが、アクリルスタンドは1個1,600円くらいしますし、開けてみるまでは中身がわからないランダム品をボックスで買うとなればそれなりの値段になります。
さまざまな新グッズがコンスタントに発売されるので、欲しいとなると、数万円から場合によっては十数万円の出費になります。
ただ、グッズにどのくらいお金をかけるかは人それぞれです。1個だけでいい人がいれば、私のように予備の予備を含め3個ずつ買うという人もいます。祭壇(※1)をつくるような人は同じデザインのグッズを10個以上買うこともあります。
また、缶バッジがたくさんついた「痛バ(※2)」をつくるとなれば、缶バッジは100個以上必要になることもあります。1個500円程度と単価は高くなくても、100個買えば5万円に。大量買いすればかなりの額になります。
※1 神さまなどに供物をささげる「祭壇」になぞらえ、推しに関連するグッズや写真を1か所に集めてディスプレーする場所や飾りつけなどを表すオタク用語
※2 「痛々しいバッグ」の略称。推しの缶バッジやキーホルダーなどのグッズをたくさんつけて推しへの愛を表現するバッグを表すオタク用語
オタ活・推し活をするための「推し貯金」。
オタ活・推し活を続けるなら、「自分の将来の生活に備えるお金」と「推しに備えるお金」の2軸でマネープランを考える必要があります。大変ではありますが、オタ活・推し活には急な出費は少なく、計画しやすいという一面があります。
コンサートやイベントの日程は数か月前に発表されますし、グッズの発売もほとんど事前に告知されます。いつ、どのタイミングでどのくらいのお金が必要なのか、事前に把握できます。
私のまわりには手帳にグッズの発売日をメモして資金繰りを考えたり、次のコンサートやイベントに向けて自炊をして節約したり、副業をしたりして、「推しに備えるお金」を工面している人はたくさんいます。
「推し貯金」って何?
「推しに備えるお金」をためていくのが「推し貯金」です。「ここで使うぞ!」というときのために、オタ活・推し活のマネースケジュールを立て、日ごろから家計を管理し、調節していくのです。「推しのため」の貯金ですからモチベーションが維持しやすいと思います。ここでは、私が実践しているいくつかの方法をご紹介します。
行ったつもり貯金。
「行こうと思っていたコンサート・イベントに行けなくなった」というとき、そのチケット代を貯金するのが「行ったつもり貯金」です。同じように「欲しいなと思っていたけれど、まぁ、いいか」と買わなかったグッズの金額を貯金する「買ったつもり貯金」もしています。
残念な気持ちを次の楽しみに変える効果もあります。
戒め貯金。
何が出るかわからないランダム品はあまり買わない、というルールを決めているのですが、「つい、買ってしまった……」というときもあります。そんなとき、自分に負けた戒めとして500円を貯金しています。
このようなかたちで、何かルールを決めて貯金をするのはおすすめです。「推しをテレビで見かけたら500円」といった貯金ルールづくりもできるでしょう。ただ、露出の多い推しだと大変になってしまいますので、「歌番組で見かけたら」「雑誌の表紙になったら」など、ルール設定を細かくしてもよさそうです。
オタ活・推し活専用口座をつくる。
オタ活・推し活の専用口座をつくるのもおすすめです。専用口座をつくってそこにお金をためて、オタ活・推し活はその範囲で使うと決めてしまうのです。専用口座として便利なのが貯金アプリです。私自身、便利に使っていますし、すでに活用している人も多いのではないかと思います。
たとえば、「推しを見たら500円貯金」というルールを決めても、手元に500円玉など現金がなければできません。しかし、アプリを活用するとネットバンク上で500円貯金ができるのです。
また、私が使っている貯金アプリは買い物をしたときの端数を貯金する「おつり機能」があり、これはフル活用しています。たとえば、「1,000円」を事前に設定しておくと、600円のグッズを買ったときに400円を貯金できるのです。支払いと貯金が同時にできるので、お金を使ってしまった罪悪感を軽減できます。
「推し貯金」を長続きさせるには?
応援したい、愛でたいという気持ちが続く限り、オタ活・推し活は続きます。そのためにはやはり、お金に対して意識的であるべきだと思います。
家計簿で自分の収支を把握する。
日々のお金の動きを把握しておくことは大前提です。
オタ活・推し活者には推しのランダム品を確実に手に入れるため、ランダム品を交換するカルチャーがありますが、SNSのグッズ交換アカウントなどを見ていると、ほかの方と取引をしている最中に、急にいなくなってしまった人を見かけることがあります。お金の都合がつかなくなったのかもしれません。
家計簿アプリなどを使って、日々の収支を記録し、1週間に一度でもいいので振り返りましょう。そうすると、オタ活・推し活にどれくらい使えるか、自分の余力がわかります。
優先順位をつけて節約する。
家計簿をつけて振り返ると、無駄にお金を使ったことにも気づきます。何にお金を使いたいか、そのプライオリティは人それぞれです。しかし、せっかく「推し」という尊いお金の使い道があるのですから、無駄に使っている場合ではありません。
「興味のない洋服にはお金をかけない」「がんばって自炊をする」「ペットボトル飲料はコンビニではなくネットショッピングでまとめ買い」など、ささいなことから見直していきましょう。
「これを少しがまんしたら、推しのグッズが◯個買える」と、具体的に考えると節約も苦ではなくなるのではないでしょうか。
オタ活・推し活にマイルールを。
また、オタ活・推し活自体にも優先順位が必要かと思います。私は「ランダム品はなるべく買わない」と決めていますし、大好きなキャラのグッズでも「好きな絵柄じゃないな」と思ったものは買いません。「とりあえず」で買っていたらキリがありませんし、見栄をはってグッズを集め出すと危険です。
どこまで何を買うのか、マイルールを決めておくことも必要です。
楽しみながら続ける。
貯金アプリの中には画像を設定できるアプリがあります。推しの写真を設定するとモチベーションが高まります。もちろん、リアル貯金箱に推しの写真をはるのもいいでしょう。
推しのための貯金もオタ活・推し活の一環として楽しみながら取り組むと、長く続けられるのではないでしょうか。
上手なマネープランで「推しのためにいつでもお金を出せる自分」になろう!
オタ活・推し活を「自分の人生」と捉えれば、それにかかるお金は生活費の一部、必要経費です。しかし、家賃や食費などリアルな必要経費と違って「予算内に収める」といった考え方はオタ活・推し活には向きません。
「推しは推せるときに推せ」というのがオタクの鉄則です。「行きたい!」と思っていたコンサートを「予算オーバーだから」という理由で諦めたら、おそらく一生後悔するでしょう。
これまで、趣味に使うお金は真っ先に節約する部分だとされていました。でも、誰か(何か)を推し、オタ活・推し活にお金を使うのが心の支えになっている人はたくさんいます。
自分が満たされるお金の使い方はそれぞれです。「借金をしない」は大前提ですが、マネープランを上手に考えていけば、オタ活や推し活は精神衛生上とてもいいものと言えると思います。
しっかりとお金の管理をしていると、欲しいときに欲しいものが買えるようになります。
「推しのためにいつでもお金を出せる自分になる」
そんなモチベーションが、オタ活・推し活のマネー管理につながるのです。
写真/PIXTA イラスト/こつじゆい
横川 楓
経営学修士(MBA)、ファイナンシャルプランナー(AFP)などを取得し、「やさしいお金の専門家/金融教育活動家」として活動。「誰よりも等身大の目線でわかりやすく」をモットーにお金の知識を啓蒙、金融教育の普及に取り組んでいる。一般社団法人日本金融教育推進協会代表理事。著書に『ミレニアル世代のお金のリアル』(フォレスト出版)。
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