20代会社員、「ねんきん定期便」をお金の専門家と真剣に読んでみた。
※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。
※ 本文中に記載の保険に関する保障の条件は、保険会社によって異なります。詳しくはご加入の保険会社にお問い合わせください。
年に一度届く「ねんきん定期便」。送られてきても、中身を見ずに処分したり、部屋の片隅に放置したりしていませんか?
今回は、社会人歴7年目で過去2回転職経験のある20代・会社員の鈴木さん(仮名)と一緒に、ねんきん定期便の見方をお金の専門家の横川楓さんに教えていただきます。20代~30代からできる、老後に向けたお金の備え方も考えていきましょう。
目次
- そもそも「ねんきん定期便」って、どんなもの?
- お金の専門家と一緒に、ねんきん定期便を読み解く。
- 転職や副業が年金に与える影響は?
- 将来、年金はいくら受け取れる?見込額をシミュレーション。
- 老後資金の準備のため、今からできることは?
- 将来受け取れる年金見込額を知り、今のうちから老後に備えよう。
そもそも「ねんきん定期便」って、どんなもの?
ねんきん定期便を広げ、頭を悩ます鈴木さん。まずは、横川さんにねんきん定期便の基本的な部分を教えていただきましょう。
鈴木さん(以下敬称略):今日はよろしくお願いします。ねんきん定期便、今日は部屋中を探して、ようやく引っ張り出してきました。
横川さん(以下敬称略):よろしくお願いします! 見つかってよかったです(笑)。ねんきん定期便の中身は見たことはありますか?
鈴木:あります! でも、あまり自分のことという実感は正直なくて。年金がきちんと受け取れるのか、という不安はあるんですが……。そもそも見方がわからない、というのもあります。
横川:会社員の場合は、厚生年金保険料は給料から天引きされますし、納付している実感が持ちづらいというのもあると思います。ねんきん定期便には、将来もらえる年金の見込額など個人の直近の年金記録がまとめられています。さっそく見ていきましょう。
お金の専門家と一緒に、ねんきん定期便を読み解く。
ねんきん定期便を広げると、項目がいくつも記載されています。ここから何をどのように読み解いていけばいいのでしょうか?
まずは「これまでの加入実績に応じた年金額」をチェック。
横川:パッと見て、最初に気になった項目はどこかありますか?
鈴木:そうですね、表面にある「これまでの加入実績に応じた年金額」の今年のグラフですかね。
横川:将来受け取れる年金額は一番気になりますよね。実は、裏面の「これまでの加入実績に応じた年金額」には内訳も書かれています。こちらのほうが見やすいので、まずはここをチェックしましょう。
参考:日本年金機構「令和5年度『ねんきん定期便』50歳未満の方(裏)令和5年5月~」をミラシル編集部にて加工
会社員であれば、国民年金に加入していた期間などに応じて支給される「老齢基礎年金」と、厚生年金保険の加入者に支給される「老齢厚生年金」を足した額を将来年金として受け取れます。
国民年金は、日本国内に住む20歳~60歳までのすべての人が加入する年金のことで、厚生年金保険は、会社員・公務員の方が加入する公的年金を指します。
鈴木:裏側にも内訳が記載されていたのは知らなかったです!
横川:裏側は見落としてしまいがちですよね。加入実績に応じての金額が記載されているので、加入期間が長く、つまり年齢を重ねれば金額は増えます。ただこの金額をきっかけに、今のうちから将来に向けてどう備えるかを検討してみてもよいと思います。
次に「最近の月別状況」で納付状況をチェック。
鈴木:次に見るとしたらどんなところがありますか? 正直そのほかの項目はなかなか頭に入ってこなくて。
横川:次は表面に戻って、「最近の月別状況」を見てください。
参考:日本年金機構「令和5年度『ねんきん定期便』50歳未満の方(表)令和5年5月~」をミラシル編集部にて加工
鈴木:さっきの棒グラフの隣ですね。13か月間の日付と金額が記載されています。
横川:ここを見ると、直近13か月の間漏れなく納められているかどうかがわかります。鈴木さんの場合は問題なさそうですね!
ずっと同じ会社に勤めている場合は、会社が厚生年金保険料を支払っているので問題ありません。しかし離職期間がある場合などは、厚生年金保険から外れ、国民年金のみの加入になるため、国民年金保険料を自分で手続きをして納める必要があります。場合によってはその期間、納め忘れていたということも。
納め忘れがねんきん定期便が届いた直近13か月以内であれば、「最近の月別状況」で空欄になっているはず。注意しておきたいポイントです。
転職や副業が年金に与える影響は?
ここまで、ねんきん定期便で押さえておきたい基本のポイントを学んできました。しかし鈴木さんには、このほかにも転職・副業に関連した年金への不安がある様子。一緒に話を聞いてみましょう。
転職時に離職期間がある場合は未納に要注意!
鈴木:以前転職した際に2か月間ほど離職したことがあって。もし手続きをし忘れて未納だった場合はどうなりますか? 納めているとは思うんですが……。
横川:未納の場合は、未納期間のぶんだけ受給額は減ってしまいます。
納付書の納付期限から2年以内なら納付できますが、期限を過ぎてしまうと納付できません。ですが、保険料の免除や納付猶予、学生納付特例(学生の期間、国民年金保険料の支払いが猶予される制度)が承認されていれば、追納が承認された月の前10年以内の追納が可能です。
鈴木:なるほど。3年ほど前に転職しているので、少し不安になってしまって。
横川:このあとに、13か月よりも過去の年金記録が見られる「ねんきんネット」を紹介するので、そこで一緒に見てみましょう。
副業をすると年金額に影響はある?
鈴木:実は前職とのつながりで副業もできれば、と思っていて。副業は将来受け取れる年金の額に影響しますか?
横川:副業ですね。個人事業主・フリーランスとして副業をする場合、影響はありません(※)。会社と雇用契約を結ぶなど給与収入で行う場合は、働く時間や日数によって副業先の会社でも社会保険への加入が必要なケースがあります。
※ 個人事業主でも法人代表となった場合は、厚生年金保険への加入が必要になります。
この場合、社会保険料の算出基準である標準報酬月額は、本業と副業との報酬月額を合算し決定するため、将来受け取れる年金額は増えます。ただし、二重に社会保険料を支払うため、手取り額自体は減ってしまうことに注意しましょう。
参考:日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」
鈴木:個人事業主として音楽制作やライター活動ができればいいな、と思っていたので、お話が聞けてよかったです。
将来、年金はいくら受け取れる?見込額をシミュレーション。
20代~30代のうちから、老後に必要な金額をイメージすることは大切。「ねんきんネット」では、ねんきん定期便よりも詳細な情報が確認でき、将来受け取れる年金見込額もシミュレーションできます。
横川:ねんきんネットは、マイナンバーカードを利用すれば、マイナポータル経由で簡単にログインできます。「年金記録・見込額を見る」から、「年金記録の一覧表示」を見てみましょう。
参考:日本年金機構「『ねんきんネット』によるご自身の年金記録の確認」
鈴木:月別の年金記録だけでなく、過去所属していた会社やその年数もわかるんですね。さっき心配になった、3年前の転職後の離職期間も記載があります! きちんと納めていました!
横川:それはよかったです! 今の条件で65歳まで働くとして入力すると、将来受け取れる年金見込額が試算できます。ちなみに、令和3年度での年金受給者の厚生年金月額平均は14万5,665円ですね。
参考:厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
ちなみに、もっと手軽に将来の年金見込額を試算するなら、厚生労働省の「公的年金シミュレーター」も便利です。登録などは不要で、働く期間と年収などを入力するだけで年金の見込額のおおよそがわかりますよ。
老後資金の準備のため、今からできることは?
将来の年金額を実際に試算してみると、老齢年金だけで定年退職後の生活費をまかなうのは難しいと感じる人は多いかもしれません。今のうちから堅実に資産形成をするための方法を教えてもらいました。
家計簿をつけて、お金の管理をはじめよう。
鈴木:毎月貯金はしているとはいえ、いざ1か月あたりの年金額を目の当たりにすると少し不安になりました。将来、結婚して家族ができたときに子どもを育てられるだけの経済力は確保しておきたくて……。
横川:貯金をされているのはいいことです。将来に向けて、今からできることを一緒に考えましょう。普段家計簿はつけていますか?
鈴木:つけていないです。1週間くらいは続けられるんですが、途中からレシートをなくしたりして続かなくて……。
横川:家計簿はぜひつけましょう! 日々のお金の使い方を把握するためにはもちろん、自分が将来の備えとして貯金や資産形成に月々いくら回せるのかを試算するためにもおすすめです。
レシートをなくしやすければ、キャッシュレスと連携できる家計簿アプリを選ぶと支払履歴が残って簡単に管理できますよ。
鈴木:生活費のうち食費が一番使っていると思うので、支出を見直すためにもさっそくやってみます!
つみたてNISA・iDeCoを活用して準備する。
鈴木:そういえば5年ほど前に、当時勤めていた会社にすすめられるがままつみたてNISAをはじめたんですが、続けていていいものでしょうか?
横川:そうなんですね! つみたてNISAは、年間40万円まで購入でき、最大20年間にわたって非課税で保有できます。また、2024年からは非課税保有期間が無期限になる「新NISA」もはじまります。
毎月少額から投資ができるので、鈴木さんは今のまま続けていくといいと思います!
参考:
金融庁「2023年までのNISA」
金融庁「NISAを知る」
鈴木:そう言っていただけて安心しました。つみたてNISA以外にも資産形成の方法はありますか?
横川:そうですね、それでしたら老後資金のためであればiDeCo(個人型確定拠出年金)がありますよ。月に最低5,000円の掛け金を積み立てて、原則60歳になると受け取れます。途中でやめられない点は注意が必要です。運用商品は自分で選べるので、リスクを分散し資金づくりをするのがよいと思いますよ。
個人年金保険なら税制優遇を受けながら備えられる。
横川:あとおすすめなのが保険商品の1つである、個人年金保険です。老後に備えて保険料を支払い、決まった年次に達したら、あらかじめ定められたお金を年金形式または一括で受け取れます。定額でリスクを抑えつつ資金を準備できるだけでなく、会社の年末調整や確定申告で所得税・住民税の所得控除が受けられます(※)。
※ 個人年金保険は解約すると多くの場合、解約返還金額が払い込んだ保険料の総額を下回ります。
鈴木:なるほど! まずは、家計簿からはじめて、iDeCoや個人年金保険など今のうちからできることは検討します!
横川:20代の方は、老後に対して漠然と不安を抱えていることが多いんです。そんなとき、ねんきん定期便やねんきんネットで将来受け取れる年金見込額を把握すれば、具体的にいくら必要か考える指標ができますよね。そうやって前向きに解決策を見いだすためにも、まずは現状を知っておきましょう。
将来受け取れる年金見込額を知り、今のうちから老後に備えよう。
ねんきん定期便は、年金制度に対する理解を深めるとともに、老後の資金について実感を持って考える第一歩になります。ねんきんネットのシミュレーションも活用しながら、20代~30代のうちに考えはじめられると安心です。
プラスアルファの備えに先立って、家計簿をつけつつ将来に必要な金額を把握するのも大切。自分にとって無理のない方法を考えてみましょう。
横川 楓
経営学修士(MBA)、ファイナンシャルプランナー(AFP)などを取得し、「やさしいお金の専門家/金融教育活動家」として活動。「誰よりも等身大の目線でわかりやすく」をモットーにお金の知識を啓蒙、金融教育の普及に取り組んでいる。一般社団法人日本金融教育推進協会代表理事。著書に『ミレニアル世代のお金のリアル』(フォレスト出版)。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。
※ 税務の取り扱いについては、2023年11月時点の法令等にもとづいたものであり、将来的に変更されることもあります。変更された場合には、変更後の取り扱いが適用されますのでご注意ください。詳細については、税理士や所轄の税務署等にご確認ください。