会社員の副業は確定申告が必要?税理士が要点を解説! 会社員の副業は確定申告が必要?税理士が要点を解説!

会社員の副業は確定申告が必要?税理士が要点を解説!

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テレワークの普及により、通勤時間がなくなり、自由な時間が増え、新たに副業をはじめる人も多いのではないでしょうか。また、副業で得た収入は確定申告が必要なのか、気になる人もいるでしょう。

この記事では、20代~30代の若い世代に向け、お金や税金に関わるアドバイスが好評の税理士・渋田貴正さんに、副業している会社員が知っておきたい確定申告についての基礎知識を解説していただきました。

目次

会社員の副業で確定申告が必要になる?

会社員の副業で確定申告が必要になる?

会社員が本業とは別に、仕事をして収入を得ると、確定申告が必要になる場合があります。副業による給与収入や雑所得、そのほかの所得の合計が1年間に20万円を超えた場合は、確定申告をする義務があります。

参考:国税庁「所得の種類・収入・必要経費の範囲等」  
参考:国税庁「確定申告が必要な方」

会社員の副業とは?

副業についての明確な定義はないですが、一般的には本業とは別の仕事で収入を得ることを指します。所得税法上の所得の種類で分けると次の2つに当たる仕事が大半です。

1:本業以外にサブの職場で働いて給与等を得る仕事。

たとえば、飲食店やコンビニのパートやアルバイトなど、企業に所属して働く仕事などが挙げられます。シフト制でも働ける仕事は、副業としても採用されやすい傾向があります。まれにではありますが、社外取締役などの身分で本業以外の会社から役員報酬を受け取る場合もこのケースに該当します。この場合、所得の種類としては「給与所得」となります。

2:個人で請け負う仕事や、物品を販売するなどして収入を得る仕事。

たとえば、クラウドソーシング(※1)や知人からの依頼で、好きなことや得意なことを生かして行う仕事、個人でのフードデリバリーやハンドメイド作品を販売する仕事、自身のWebサイトやブログでアフィリエイト報酬を得る仕事などが挙げられます。所得の種類としては「雑所得」(※2)となる仕事です。

※1 企業や個人がインターネット上に依頼したい仕事内容を開示し、不特定多数の応募者の中から選んで業務を依頼する業務形態。

※2 その収入を得るための活動が、社会通念上の事業としての規模で行っているといえる場合には「事業所得」とすることもできますが、本記事では「雑所得」として解説します。

会社員が副業をして確定申告が必要になるのはどんなとき?

会社員が副業をして確定申告が必要になるのはどんなとき?

会社員が雑所得に該当する副業をしたときに確定申告が必要になるのは、本業以外の所得が年間20万円を超える場合です。本業以外の所得としては、副業のほかにも、たとえば不動産所得や譲渡所得などもあります。ここでは、1年間の所得が本業の給与所得と副業からの所得のみと仮定したときに、確定申告が必要になるのはどんなときかを見ていきましょう。

参考:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」

副業の給与収入が20万円を超えたとき。

本業以外にサブの職場で働いて得る副業収入は、「給与」という形で支払われ、所得税が源泉徴収されます。1年間の副業での給与収入(源泉徴収前の額面。交通費や職務上の旅費などは含まない)が20万円を超えた場合、確定申告が必要になります。

参考:国税庁「No.1400 給与所得」  
参考:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」

雑所得が20万円を超えたとき。

個人で仕事を請け負ったり、物品を販売したりして得た収入は、1年間の雑所得の合計が20万円を超えると、確定申告が必要になります。

雑所得の金額は、次の計算式で計算します。

雑所得=総収入金額-必要経費(その収入を得るために支出した費用)

本記事では、1年間の所得が本業と副業からの所得のみ、と仮定していますから、雑所得の金額は、「副業で得た収入(売上など)」から「その仕事をするのにかかった経費」を引いた金額となります。なお、総収入金額に本業の給与収入は含みません。

参考:国税庁「No.1500 雑所得」  
参考:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」

1年間に、副業による給与収入と雑所得がある場合は、その合計が20万円を超えた場合に確定申告が必要になります。

副業の給与収入、雑所得の合計が20万円以下でも、確定申告が必要なケースも。

副業の給与収入、雑所得の合計が20万円以下でも、以下に当てはまるときは、確定申告が必要になります。

給与収入が2,000万円超の場合。

会社員であれば、通常は勤め先の年末調整で、その年に支払うべき所得税額が精算されます。ただし、給与収入が2,000万円を超えている場合は年末調整できないので、副業の有無にかかわらず自分で確定申告・納税する義務があります。その際には20万円以下の副業所得についても申告が必要です。

医療費控除や住宅ローン控除、ふるさと納税などで還付申告する場合。

医療費控除や住宅ローン控除(初年度)、ふるさと納税などの寄附金控除など、年末調整では処理できない控除がある場合、納めすぎた税金を返してもらうには、確定申告(還付申告)が必須です。その際には20万円以下の副業所得についても申告が必要です。

参考:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」確定申告を要しない場合の意義

副業の確定申告をしないとどうなる?

確定申告をして納税する義務があるのに確定申告をしなかった場合でも、金額によっては副業先からは税務署あてに「誰にいくらを支払った」という情報が支払調書という形で送付されています。

これをもとに税務署や各自治体はその人に所得があったことを把握して、確定申告が行われていなければいずれかのタイミングで追徴課税をします。さらに、延滞税や無申告加算税などのペナルティーを課される場合もありますから、確定申告は期限内(申告をする年ぶんの翌年2月16日~3月15日)に、しっかりやっておきましょう。

参考:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」

還付申告の場合は、義務ではなく、納めすぎた税金を返してもらう権利なので、申告をする年ぶんの翌年1月1日から5年間行えます。還付申告をしないと、納めすぎた税金があっても返してもらうことはできません。

参考:国税庁「No.2030 還付申告」

住民税の申告は収入金額に関係なく必要。

住民税の申告は収入金額に関係なく必要。

副業の給与収入や雑所得の合計が20万円以下であれば確定申告は必要ありませんが、住民税は、収入金額にかかわらず申告が必要です。

確定申告しない場合でも住民税の申告を。

副業収入が20万円以下で確定申告の必要がなくても住民税の申告は必要です。住民税には所得税のように副業収入20万円以下は確定申告不要といった規定がないためです。

住民税(所得割)額は総所得金額の一律10%ですから、副業収入を確定申告していれば、申告内容が税務署から各市区町村に通知され住民税は確定します。しかし、申告していない場合、副業収入が含まれない所得のまま住民税が確定してしまうため、別途自治体に住民税の確定申告が必要です。

本業の給与以外の所得合計額が20万円以下のため、確定申告をしなかった場合は、お住まいの自治体で副業ぶんの住民税の申告を、3月15日までに行う必要があります。

住民税申告の詳しい手続きについては、お住まいの市区町村の課税担当窓口に問い合わせてください。

住民税の申告をしないとどうなる?

副業の収入が給与収入の場合は、副業先から「給与支払報告書」がお住まいの自治体に送付されます。本人が住民税の申告をしなくても、自治体で本業と副業の所得を合算して住民税額を計算し、本業の給与から控除されます。

副業の収入が「雑所得」に当たる場合で、源泉徴収がされていると、副業先から「法定調書」が税務署経由で自治体に送付され、これをもとに自治体は住民税額を決定します。

住民税額は5月ごろにその年度ぶんが確定します。それよりあとになって自治体が確定申告されていない所得を発見した場合、年度の途中で住民税額が変わり、本業の給与計算に影響することも考えられます。勤め先にそうした手間をかけないためにも、期限内に自分で申告をしたほうがよいでしょう。

会社員の副業について、知っておきたいこと。

会社員の副業について、知っておきたいこと。

副業をする際の基本としては、次のことを心得ておきましょう。

勤務先の副業に関するルールを確認しよう。

本業の会社の社会的信用や名誉を侵害する副業、会社独自のノウハウが流出するなど、業務内容が会社の利益に相反する副業はNGです。

まずは、本業の勤務先の就業規則や自身の労働契約などで副業に関するルールを確認しましょう。副業を行うことが可能かどうか、副業をはじめるためにどのような手続きが必要になるかを確認して、ルールにのっとって行うのが基本です。

また、副業をすることで、結果的に長時間労働となって自身の健康を害することがないように、働く時間、自身の健康をしっかり管理していきましょう。

参考:厚生労働省「『副業・兼業の促進に関するガイドライン』リーフレット(労働者の方向け)」

副業をしていると雇用保険が受け取れない場合もある。

雇用保険は、雇用保険に加入している会社員が退職(離職)した際に、失業状態であり、積極的な求職活動を行っていると認められた場合に、基本手当が支給される制度です。

本業離職後に、副業で週20時間以上働いている場合などは、その期間は失業状態とは認められず、雇用保険の基本手当などが受け取れない可能性があります。

参考:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~ Q24」

副業の給与収入、雑所得が20万円を超えたら期限内に確定申告を!

会社員が取り組みやすい副業としては、雇用されて給与収入を得るパートやアルバイト、「雑所得」に当たる収入を得る、個人で行うさまざまな仕事が考えられます。副業から得られる給与収入、雑所得の合計が20万円を超えた場合などは、確定申告が必要になります。

副業をする際には、勤務先のルールをしっかり確認し、1年間に副業で得た収入をチェックして、申告が必要な場合は期限内に正しく申告をしましょう。

写真/PIXTA


渋田 貴正   
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士   
2012年の開業以来、相続登記をはじめ相続関係手続きや、会社の設立など法人関係の登記に特化している司法書士事務所V-Spiritsの代表。また、V-Spiritsグループの税理士として各種税務相談にも対応している。


※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。   
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。   
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。

※ 税務の取り扱いについては、2023年12月時点の法令等にもとづいたものであり、将来的に変更されることもあります。変更された場合には、変更後の取り扱いが適用されますのでご注意ください。詳細については、税理士や所轄の税務署等にご確認ください。

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