妊娠・出産時が分岐点!?山田ルイ53世と考える男性の心構え〈出産編〉。
初めての妊娠・出産時は、夫婦がこれから新しい家族を迎えるという幸せいっぱいのとき。とはいえ、男性側が対応を誤ると、その後の夫婦関係に影響を与えるとも言われています。
そこで、小学5年生と4歳の2児の父であり、パートナーの妊娠・出産を経験した髭男爵・山田ルイ53世さんと、産婦人科医として多くの妊産婦さんの悩みに応えてきた笠井靖代先生のおふたりに、妊娠・出産時の基礎知識や男性側がサポートすべきこと、すれ違いが起きないコツについて語り合っていただきました。後半は「出産編」です!
〈その四〉パートナーの産後の痛みを知るべし!
笠井:妊娠中は出産がゴールと考えられる方が多いのですが、出産のお祝いムードから一転して、産後は夜泣きに授乳にと大変な時期が続きます。
山田:妻は帝王切開で出産したので、定期的に「こんなに大変だったよ」と傷口を見せられるという儀式がありました。なかなか傷が治らなくて痛そうでしたね。あとは妊娠中からの腰まわりの痛みが続いていて、しんどいって言っていました。
笠井:そうでしたか。産後の女性は体がめまぐるしく変化して、さまざまな不調が出てきます。
妊娠中は胎盤や赤ちゃんからたくさんのホルモンが出ているのですが、出産で赤ちゃんも胎盤も体の外に出てしまうと、出産後はエストロゲンという女性ホルモンが急激に低下して、一時的に閉経の状態=更年期と似たような状態になります。
このエストロゲンは血圧の安定、心の安定や記憶力の保持、関節や靱帯(じんたい)の保護、さらには髪の毛や皮膚の潤いを保つなど、いろんなところに作用するホルモン。低下することでさまざまな不調が現れます。
山田:そんなしんどさがあったとは!
笠井:一方で増えるのは、母乳を分泌させるプロラクチンと、愛情ホルモンとも言われるオキシトシン。このオキシトシンは、子どもをかわいいと思う、子どものまわりの人をいとしいと思う一方で、子どもに敵対するような人には攻撃的に働くと言われています。つまり、旦那さんが育児に協力的でないと、敵対することもあるということです。
山田:怖っ! そう考えても、「育児はやって当然」というところに軸足を置かないと。「僕がやってあげてる」的な雰囲気を漂わせて、妻にイラッとされたことがあるのでそこは要注意ですね。
あとはどれだけ男性側が妊娠・出産について勉強しても、肌感覚を伴っていないわけですから。妻の、「こっちのほうがいい」「あっちは駄目」みたいな意見を尊重すべきですよね。
笠井:すばらしい対応です。
山田:ちょっと聞きかじった知識で、「いや、こうしたほうがいい」なんて口を出すと、「テリトリーに侵入してこられた」と言わんばかりに怒られたことがあって。
なので、何から何まで妻を師と仰いで、「これでよろしいでしょうか」という態度で臨むようにしていました。
〈その五〉リフレッシュの時間をプレゼントすべし!
山田:正直言って、長女が生まれたあと、夜泣きは本当につらかった。
笠井:親としてはつらいですね。睡眠時間も削られますし。
赤ちゃんは呼吸状態が不安定で体温調節機能も不十分ですので、浅い眠りで休みなく繰り返し泣いて、親の注意を引いて、おっぱいを求めて、ちょっと飲んだらすぐ寝てまた起きる。
これは赤ちゃんが1歳までの生理的に不安定な時期を生き延びるための戦略でもあるんです。