30代でも痛風に?原因や症状、飲んだら注意したいことを医師が解説。
※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。
※ 本文中に記載の保険に関する保障の条件は、保険会社によって異なります。詳しくはご加入の保険会社にお問い合わせください。
毎晩晩酌していませんか? 痛風は気になるけれど、年齢的に大丈夫って思っていませんか?
お酒好きの病気というイメージがある痛風。ぜいたく病といわれることもあり、中高年の病気とも思われがちですが、実は若くして発症することも。
今回は、「大のお酒好きで毎晩のハイボールは欠かせない」という30代の相談者が、痛風とお酒の関係や予防法について、同じくお酒好きの浅部伸一医師に相談しました。痛風リスクを高めない、お酒との健康的な付き合い方を紹介します。
目次
完治しにくく、再発しやすい痛風。
──先日、会社の2つ上の先輩が痛風になり「すごい激痛だった」とこぼしていました。年齢が近いので自分も心配になって……。そもそも、痛風ってどんな病気なんですか?
身近に痛風を経験された方がいるんですね。血液の中に溶けている「尿酸」という物質の濃度が一定以上に高まると、結晶となります。それが足の親指の関節などにたまり激痛を引き起こします。これを「痛風発作」といいます。
発作の出た状態が「痛風」です。完治することは難しく、一度発症すると再発しやすい病気です。
──なるほど……。健康診断の項目にある尿酸値、あれが血液中の尿酸の濃度ですか?
そうですね。尿酸は「プリン体」という物質が肝臓で代謝される際に出る老廃物で、尿酸値とは、血液中の尿酸の濃度を示す数値です。
正常値は男女とも7.0mg/dL以下で、それを超えると「高尿酸血症」と診断されます。ただ、高尿酸血症だからといって、痛みや違和感といった痛風の自覚症状が出るとは限りません。
反対に、痛風の発症には個人差があるため、尿酸値が低いのに痛風を発症してしまう人もいます。
痛風は20代~30代でも発症する。
──痛風になった先輩はお酒が好きなんです。痛風はお酒とも関係があるんですよね?
はい。研究によって「アルコールが尿酸値を上げる」ことがわかっています。毎日晩酌をする習慣があったり、飲み会で多量のアルコールを飲んだりする機会が多い人は要注意です。
──痛風には「40代~50代の病気」というイメージがあったんですが、先輩のように20代~30代など、比較的若くても痛風になるんでしょうか?
その年代でも痛風になる人はいますよ。痛風はメタボリック症候群の症例の1つで、メタボリック症候群の人は、体重増加や運動不足など尿酸値が上がりやすい要因を抱えていますから。必然的に、若くても痛風リスクは高くなってしまいます。
痛風にならないために、気をつけたい3つのこと。
──僕、お酒が大好きで、尿酸値が8.3mg/dLと判定されたこともあるんです。痛風リスクを上げないためにはどうしたらいいのでしょうか?
飲酒量や食事内容などの食生活を見直して、尿酸値が上がらないようにします。また、脱水が尿酸値の急上昇を招いて痛風のトリガーになることもあります。脱水につながる行動は避けるようにしましょう。
アルコールが尿酸値を上げる。
──アルコールというと、よく「痛風にはビールがよくない」と聞くのですが、お酒の種類で痛風リスクに違いはあるのでしょうか?
たしかに、ビールは、ワインや日本酒といったほかの醸造酒に比べてプリン体の含有量が多いです。逆に、ウイスキーや焼酎などの蒸留酒にはプリン体がほとんど入っていません。
とはいえ、食事全体から見れば、ビールに含まれるプリン体は多くありません。「痛風にはビールがよくない」イメージがあるのは、ほかのお酒に比べて飲む量が多くなりやすいからでしょう。飲む量が多くなれば摂取するプリン体も増えますよね。
──なるほど。それなら、プリン体の少ないウイスキーはリスクが低そうですね。
飲む量を基準に比較するとそうかもしれません。ただし、どんなお酒でも、飲む量が増えればリスクも上がりますよ。「アルコールが尿酸値を上げる」のですから、ウイスキーだって痛風リスクはあります。
飲酒の量を減らす。
──アルコールを飲めば飲むほど痛風リスクが高まることはわかりました。となると、リスクを下げるには、お酒の量を減らす必要がありますね……?
そうですね。それが痛風リスクを下げるための一番いい方法です。
──僕の場合、毎日、ある程度のアルコール度数のハイボールを2杯くらい飲んでいますが……。
ハイボールがお好きなんですね。うーん、お酒に何を求めるかは人それぞれですが、「とにかく酔いたい!」という方はどうしようもないかもしれません。
ただ、食事と一緒においしくお酒を飲みたいなら、1杯目は今のままで、2杯目をウーロン茶などのソフトドリンクにするのはどうでしょう? 量を飲みたければ、1杯あたりのアルコール度数を下げるという工夫もできます。
もし、お茶などでは味気ないなら、ノンアルコール・低アルコールのビールやワインといった飲み物も試してみてください。最近は、お酒好きでも満足できるものも増えているんですよ。
バランスのいい食事を心がける。
──アルコールの摂取量は少し減らしてみようと思います。食事は好きなものを食べても問題ないのでしょうか? 白子やあん肝が大好物で……。
白子やあん肝、おいしいですよね。この2つは神経質にならなくてもいいでしょう。一般的にたくさんの量を食べるものではありませんから、1回の食事で摂取するプリン体はそう多くなりません。
むしろ危険なのは、プリン体がそれなりに含まれていて、かつ大量に食べられる食材です。たとえば、一見ヘルシーで健康的なイメージがある鶏ささみ。100gに含まれるプリン体の量を比較すると、あん肝の約104mgに対し鶏ささみは約154mgと、それなりの含有量なんです。
さらに、鶏ささみは、唐揚げにすればけっこう食べられますよね。私もお酒を飲むので、唐揚げとビールの組み合わせが最高なのは知っていますよ(笑)。
──ビールに唐揚げは鉄板ですよね! うーん、それではどんな食事を心がければいいんでしょうか?
痛風は生活習慣病の1つですから、特定の食材だけ我慢すればいいというものではありません。鶏ささみだってたんぱく質を摂るには有効ですから、食事に取り入れるのはいいと思います。
どんな病気にもいえることですが、結局のところ、バランスのいい食事が大切なんです。和食の一汁三菜のような健康的な食生活を心がけましょう。
脱水が痛風発作のトリガーに。飲んだ夜に激痛で目が覚める?
──飲酒量を抑えて健康的な食事ですか。あのー、日々の食事でそこまで気をつければ、たまの飲み会くらいは自由に食べたり飲んだりしても大丈夫ですよね?
残念ながらそうともいい切れません。意外と知られていないのですが、痛風発作のトリガーは「脱水」です。尿酸値は一定量の血液に含まれる尿酸の量なので、尿酸の量が同じでも、それを含む血液の量が少なければ尿酸値は一時的に上昇します。
──脱水と食事が関係しているのは知らなかったです!
脱水の原因といえば、過度な運動や熱中症をイメージすると思いますが、実は食事も原因になります。たとえば、ラーメンなど塩分の高いものを食べると、塩分を尿で排出するために体内の水分が失われます。また、アルコールには利尿作用がありますし、その分解にも水分が使われます。
飲んだあとのラーメンが楽しみという人もいると思いますが、多量のアルコールを飲んでラーメンを食べると、塩分の排出とアルコールの影響の両方で体内の水分が使われることになり、脱水症状を引き起こしやすくなります。
しかも、そのまま寝てしまうと目が覚めるまで水分を摂りません。寝ている間に脱水になり、痛風発作が起きて目が覚めるというケースは珍しくありません。
──激痛で目が覚めるなんて恐ろしいです。もしお酒をたくさん飲んでしまったら、どうしたらいいですか?
お酒を飲んだら水分も十分摂ることが大切です。水分を多く摂れば尿酸値の上昇をゆるやかにできますし、二日酔いを防ぐ効果もあります。尿酸値が気になる方以外にもおすすめですね。
痛風の治療法と合併症の可能性は?
──今、僕の尿酸値は7mg/dL~8mg/dLの間でいったりきたりしている状態です。治療はしなくて大丈夫でしょうか?
痛風の場合、尿酸値を下げる投薬治療が考えられますが、ガイドラインが設定されていて、尿酸値が7mg/dL~8mg/dLだと経過観察でいいと思います。持病がない場合、9mg/dL以上が治療開始の目安です。
──もし治療することになったら、どのような治療が行われるのでしょうか?
基本的には、薬で尿酸値を下げます。ただし、痛風発作が出た場合、発作の最中は鎮痛剤で対処します。発作が治まってから、再度発作が出ないように尿酸値を下げるというわけです。
痛風になったら血管の病気にも気をつけて。
──ところで、もし痛風になってしまったら気をつけたい合併症などはありますか?
尿路結石症と腎障害が考えられますが、尿酸が原因でできる結石は多くはありません。腎障害もひどくなる前に治療することがほとんどなので、あまり心配する必要はないと思います。むしろ、尿酸値と関連する病気で20代~30代が気にすべきは血管の病気です。
──血管の病気とはどのようなものでしょうか?
先に述べた通り、尿酸値とメタボリック症候群には密接な関係があります。尿酸値が高い方はメタボリック症候群になりやすいため、メタボリック症候群が引き起こす心筋梗塞や脳梗塞などが、痛風になったら気をつけたい血管の病気ですね。
実際の患者さんの検査結果を見ると、尿酸値が高かったり肥満があったりと、複数のリスク要因を抱えていることが多いです。そうなる前に、食生活の改善や適度な運動をして、生活習慣を改善しておくことがとても大切です。
急な入院に備えて医療保険に入っておくと安心。
ここまで、痛風とお酒の関係や予防法について浅部医師にお話をうかがいました。痛風は、「自分は若いから無関係」とはいい切れないようです。
また、予防法などで自助努力をしても、痛風になってしまったらその先には脳梗塞など血管系の病気の可能性もあるとのこと。もし、そのような病気になれば入院も考えられるでしょう。
公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、入院1日あたりの自己負担費用の平均は20,700円です(※1、※2)。
病状によってはさらなる治療が必要になるかもしれず、医療費がかさむ可能性もあります。預貯金にかかわらず安心して治療を受けるためには、医療保険で備えるのも1つの方法かもしれません。
参考:公益財団法人 生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」
※1 治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品などを含む。高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額。
※2 公的医療保険には、医療費の自己負担額に限度額を定める高額療養費制度等があり、実際に負担する金額はケースにより異なります。
生活習慣を改善して、お酒と上手に付き合おう。
まだまだ自分は大丈夫。20代~30代ではそう思いがちですが、痛風リスクはゼロではありません。
痛風リスクを抑えながらお酒と付き合うには、低アルコール飲料やノンアルコール飲料などを活用してアルコール量を減らし、適切に水分を摂り、偏りのない食生活や適度な運動を心がけることに尽きるようです。
また、痛風を引き起こす高い尿酸値はメタボリック症候群と深い関係があり、メタボリック症候群の先には血管系の病気のリスクが待ち受けています。将来を見据えた生活を心がけるとともに、医療保険でいざというときに備えておくと安心ですね。
イラスト/オオカミタホ
浅部 伸一
東京大学医学部卒業。国立がん研究センターで肝炎ウイルス研究に従事後、自治医科大学を経て、アメリカ・サンディエゴに留学。現在は医薬品開発企業「メドペイス・ジャパン」に在籍。自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科非常勤講師も務める。『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社、2017年)を監修。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。