SASUKE完全制覇者・森本裕介の「本番で自分の力を発揮する」メンタル論
もはや1つのテレビ番組という枠を超え、スポーツ競技の一種として全世界で親しまれている「SASUKE」(TBSテレビ系)。1997年の番組放送開始から27年を経ながらも、これまで、SASUKEのアスレチック完全制覇をした人物は総勢4,100人の挑戦者のうち、4人だけ。
そんな一大競技の世界で「サスケくん」の愛称で知られている森本裕介さんは、史上最年少となる23歳で完全制覇を成し遂げ、歴代でわずか2人しかいない、2回にわたる完全制覇という偉業を成した人物です。
1年に1回しかない本番、2,900万人の視聴者、巨大なセット……いったい彼はどのようにしてプレッシャーを押しのけ、高いパフォーマンスを発揮し続けているのでしょうか? 「メンタルおばけ」と言われる森本さんのメンタルの鍛え方、初制覇後の苦悩、そして、SASUKEよりも緊張した出来事とは。
目次
- 20代後半まで「失敗を極度に恐れていた」。
- 「緊張しないメンタル」獲得の転機は就職!?
- 次の完全制覇に向けて、今重点を置く“あのエリア”。
- 社会人・サスケくんがSASUKEよりも緊張することって?
- 社会人の経験で磨かれる最強メンタル。
20代後半まで「失敗を極度に恐れていた」。
──SASUKEでは、フィジカルの強靭(きょうじん)さが求められるのと同じくらい、猛烈なプレッシャーを押しのけるメンタルの強さも求められます。森本裕介さんは、どのようにメンタルを保っているのでしょうか?
僕が初めてSASUKEに出場したのは、当時中学3年生だった2007年のことで、そこから17年間、回数にして17回出場し続けています。今でこそ、SASUKEで完全制覇できるようなしっかりしたメンタルを持っているかもしれませんが、中学・高校時代はとてもメンタルが弱かったんです。
そのころは失敗を極度に恐れる性格でした。本番で練習以上の力を発揮しようとして、それが緊張につながって、本来の実力を出せずに失敗に終わってしまうことが多かったです。
──力みすぎて、本来の実力が出せなかった……。
はい。以前の僕はとにかく「完璧主義者」だったんです。SASUKEの対策をするときも、事前にすべてのエリアをクリアするための手順を詳細に決めて、本番では、その手順通りに行動することを目指していました。しっかり準備すること自体は良いことなのですが、本番で少しでも想定外のことが起きると、途端に大きな不安につながるような状態になっていました。
でも、SASUKEは年に1回、一発勝負の競技です。1年間練習してきても、現場に行くと新しいエリアが追加されていることもあるんです。まったく見たことのない新エリアには、これまでの経験と鍛えてきた体を駆使して、その場、その時のベストを尽くして挑まないといけない。
ある意味、失敗する可能性を受け入れて戦う必要があるんですよね。でも、以前の僕は完璧主義でとにかく失敗を恐れていたので、「練習していないエリアがある……」「失敗したらどうしよう……」というプレッシャーに押しつぶされ、実力の半分も出せないことが多々ありました。
初制覇を成し遂げた大学院生(23歳)のころですら、まだまだメンタルは不安定で、失敗することを極度に恐れ、すべてを完璧にしようと必死になっていました。ようやく完璧主義を脱却できたのは、実は、20代後半になってからなんです。
「緊張しないメンタル」獲得の転機は就職!?
──森本さんは、すでにSASUKE歴17年を数えるベテランですが、メンタルが強くなったと実感できたのは、ずいぶん最近のことなんですね。
2020年に2度目の完全制覇(第38回大会)を達成しました。2022年の第40回大会では完全制覇まであと1秒というところまで迫れましたし、今年(2024年)はSASUKE初の世界大会で、団体戦という個人戦とはまた違うプレッシャーの中でも、雰囲気にのまれずに優勝することができ、長年の夢であったSASUKE世界一に輝くことができました。
──メンタルの安定は、結果にも反映されているんですね。いったい、長年の完璧主義をやめるきっかけは、何だったのでしょうか?
きっかけの1つは、就職して会社員になったことだと思います。
――きっかけは、就職ですか!? 具体的には、どのような変化があったのですか?