

爬虫類をペットにしたい!魅力や注意点を爬虫類好きの獣医師が解説。
ペットを飼いたいけれど、一人暮らしだし、仕事が忙しいし、家を空ける時間も長いから難しいかな……。そう感じている動物好きの人もいるのでは? 犬や猫を飼うのは難しそうでも、爬虫(はちゅう)類ならペットにできるかもしれません。
爬虫類はペットとしても人気で、取り扱うペットショップも増えてきています。ただし、種類ごとの生態を知っておくことも大切。爬虫類の意外な魅力、飼ううえでの注意点などを、ハリネズミやチンチラ、ヘビやカエルなどエキゾチックアニマルも診療できる動物病院の獣医師・安田賢先生が解説します。
目次
- ペットとしての爬虫類の魅力とは?
- 初心者でもペットとして飼いやすい爬虫類は?種類ごとに解説!
- 知っておこう、ペットとして爬虫類を飼うときの心得。
- 【まとめ】ペットと楽しい時間を過ごすために!爬虫類の特徴を理解しておこう。
ペットとしての爬虫類の魅力とは?

写真は安田先生提供。
爬虫類などのエキゾチックアニマルを診療できる獣医師として知られる安田先生。幼少のころからヤモリやカナヘビ、クサガメなどが好きで、現在は自宅で、リクガメ、ボールパイソンを飼っています。
上の写真がそのリクガメで、大学時代から約20年の付き合いです。ペットとしても、また獣医師としてカメの生態を知るうえでも、とても大切な“相棒”だそうです。
犬や猫との違いは、人と過度になれ合わないこと。
犬や猫は人間に構ってもらうことが好きで、遊んだりなでたりするとうれしいという気持ちを表現します。それに対して爬虫類は、1匹で過ごすことを好むため、人間との触れ合いも限定的になります。適度な距離感を持つことが大切です。
「爬虫類は人となれ合うのがあまり得意ではない種が多い傾向にあります。『ほどほどの距離感でコミュニケーションを取れるところがいい』という理由で爬虫類を飼う方も多いですね」(安田先生)
個性的な見た目。
丸くて硬い甲羅があるカメ、環境に応じて体の色が変化するカメレオン、カラフルな色合いや柄が目を引くヒョウモントカゲモドキなど、特徴的な見た目を持つ爬虫類。個体によって柄や色が違うのも、愛好家に好まれているようです。
癒やされるしぐさ。
キョロキョロしたつぶらな瞳がかわいく、ゆっくりとエサを食べるしぐさにほっとするという人も。安田先生もペットのリクガメの丸みのある姿や、ゆったりした動作には、日々癒やされているそうです。
忙しい人でも比較的飼いやすい。
爬虫類はおとなしく、鳴かない種類が多いのでペットとして飼育しやすいのが特徴です。攻撃性も基本的になく、幼少期から人の近くで過ごしていれば、触っても怒ったりかみついたりすることはほぼないとか。
「多くのショップで販売されているようなメジャーな爬虫類は、飼育方法が確立していて、人間になれやすい種類が多いので安心です」(安田先生)
初心者でもペットとして飼いやすい爬虫類は?種類ごとに解説!
日常的に爬虫類に接している安田先生に、「初めて爬虫類をペットにする人でも飼いやすい種類」と、「推しポイント」を教えていただきました。それぞれ、飼い主をとりこにする魅力があるようです(動物の基本データは取材をもとにミラシル編集部で作成)。
ヤモリ(ヒョウモントカゲモドキ)

【安田先生の推しポイント】
つぶらな瞳とおだやかな性格で人気です。しま目模様のものから水玉模様のものなどいろいろいて、珍しい色の個体は価格が高くなります。
目の前を動く虫などの獲物をパクッと食べる「待ちぶせ型」の習性のため行動範囲は狭く、大きくなっても中型の水槽で飼うことができます。エサをパクッと食べるしぐさは、見ているだけで癒やされます。
カメ(ロシアリクガメ)

【安田先生の推しポイント】
リクガメは体が丈夫で、飼育方法が確立されているため、飼い方を事前に調べておけば安心してお迎えできます。大型が多いリクガメのなかでも、ロシアリクガメはそれほど大きくならず、飼いやすい点がポイント。ただし活発に動くので、成長につれて60cm~90cm程度の水槽が必要です。小松菜やチンゲン菜などの野菜をメインで与えましょう。
トカゲ(フトアゴヒゲトカゲ)

【安田先生の推しポイント】
温和で飼いやすく、雑食。驚いたときなどに膨らませたのどが黒く発色する様子から、「フトアゴヒゲトカゲ」と命名されました。価格は個体差が大きく、カラーバリエーションによっては数十万円の個体も。カロリーが高い動物性たんぱく質を与えすぎると太るので、幼少期は昆虫か人工飼料、成長したら小松菜、ニンジンなど野菜中心の食事にするのがおすすめ。
ヘビ(ボールパイソン)

【安田先生の推しポイント】
ヘビのなかでも飼いやすい種類。あまり動かず、行動範囲が狭いという特徴があります。成長すると全長2mにも達しますが、その名の通り普段はボールのように丸まってとぐろを巻いているので、丸まった状態の3倍~4倍程度の床面積のケージがあれば問題ありません。
私も7歳のボールパイソンを飼っています。成長した今、エサは週に1回、直径5cmほどの冷凍マウス1つを温めて与えるだけなので、マウスの取り扱いに抵抗さえなければ初心者でも飼いやすいですよ。
イグアナ(グリーンイグアナ)

【安田先生の推しポイント】
イグアナの種類で、飼いやすいのはグリーンイグアナです。ただし個体によっては2m超まで巨大化し、かつ、木の上に生息する生態なので飼育環境の確保が必要です。大型のケージか、放し飼いで飼育しますが、温度管理にも気をつけてください。木に登るための鋭い爪があるので、ケガをしないように注意も必要。草食なのでエサは野菜メイン。
警戒心は強いですが、うまく接すれば爬虫類のなかでも飼い主との距離感が近くなる種類だと思います。一緒に寝たり、お出掛けしたりする飼い主もいます。
カメレオン(エボシカメレオン)

【安田先生の推しポイント】
飼育しやすく、体も丈夫なのでペットとして人気のカメレオン。エサが動いていないと存在を認識できないので、与えるときにはエサを動かします。肉食なので、エサは基本的にミルワーム、デュビア(ゴキブリの一種)、コオロギなどの生きた昆虫を毎日与えます。
水もエサと同様に、置いてあるだけでは飲みません。水滴が垂れる「ドリッパー」などの器具を使って水を動かして飲ませます。
知っておこう、ペットとして爬虫類を飼うときの心得。

爬虫類は、犬や猫などの哺乳類とはまったく異なる生態を持つので、いくつか注意しなければいけないことがあります。飼う前に確認しておきましょう。
本来の生育環境を飼育で再現する。
特に注意したいのが温度・湿度・光の管理と食事管理です。本来生息している自然環境を調べて、できるだけその環境を再現してあげましょう。
「爬虫類は『外温動物』といって、年間を通じて温度管理が必要な生き物なので、温度と湿度は常に一定にすることが大切です。また、ヘビ以外の爬虫類は太陽光を再現する『紫外線ライト』が必要になります」(安田先生)
エサを与えすぎない。
爬虫類は本来、満足するほどエサが取れない環境にいる動物です。食べるしぐさがかわいくてついついあげてしまいがちですが、安田先生によると、太りすぎて亡くなるペットもいるとか。エサの量に注意するとともに、生きた昆虫は新鮮で健康なものを与えるなど、品質にも気を配りたいところです。
生態をよく理解する。
「意外と活発」「思った以上になれてくれない」など、飼ってみて初めてわかることも。「私もリクガメを飼ってみて、意外と運動量が多いと知りました」と安田先生。ケージから出すとあちこち動き回るそうです。
また、犬や猫と同じように個体ごとに性格が異なります。種類の生態をよく知ったうえで、個体ごとの特徴を楽しみましょう。
爬虫類を診てくれる病院を探しておく。
最近あまり動かない、食欲が低下してきたなど、いつもと違う様子があれば、早めに病院に連れていきましょう。しかし爬虫類を見てくれる動物病院は少ないので、飼う前にいちばん近い病院はどこなのか調べておくことが大切です。
「爬虫類は犬や猫と違って、飼い主との触れ合いが少ないことから、病気の発見が遅れてしまうことも。当院は最低でも半年に1回の定期健診をおすすめしています」(安田先生)
脱走に注意する。
「ケージのふたを閉め忘れて、飼っているボールパイソンが脱走したことがあり、次の日に見つかりました」と安田先生。飼育している部屋の中で行方不明になったそうです。
特にヘビは「脱走の名手」とも言われており、ふたの閉め忘れには十分に注意をしてください。ふたの開閉には毎回気をつけて、万が一ケージから出ても野外に出られないように対策を。飼育部屋にすき間を作らないなどの方法で、室外への脱走を阻止しましょう。
ほかのペットとの距離感に注意する。
犬や猫と、カメ・イグアナなどが一緒に暮らす光景は魅力的ではありますが……。安田先生は飼育場所を分けたほうがいいと話します。
「私は犬と猫を飼っており、爬虫類とは部屋を別にしています。いわば『狩る側』と『狩られる側』ですし、交流はそもそも難しく、悲しい事故が起こることも。飼育環境は一緒にしないことをおすすめします」(安田先生)
【まとめ】ペットと楽しい時間を過ごすために!爬虫類の特徴を理解しておこう。
安田先生に、いろいろな爬虫類の特徴や飼ううえでの注意点を伺いました。「飼ってみたい!」と思う爬虫類はいましたか?
爬虫類の生態は調べてみないとわからないもの。自宅に迎える際には、その子が快適に過ごせる環境をできるだけ整えて、正しい知識を得てお世話することが大事です。数十年の長い付き合いになる個体も多いので、大切に育て、家族の一員としてかわいがってください。
写真/Getty Images イラスト/こつじゆい 写真提供/安田 賢
【監修者】安田 賢
日本獣医生命科学大学卒業。2012年11月に石川県金沢市で「まさの森・動物病院」を開業。犬猫のほか、ほかの動物病院では診療が難しいエキゾチックアニマルの診療も積極的に行う。獣医がん学会、日本エキゾチックペット学会、鳥類臨床研究会、爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会に所属。鳥類臨床研究会認定医。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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