

一人暮らしでもペットが飼える?おすすめ動物と注意点を獣医師が解説。
ペットを飼いたい! でも一人暮らしできちんとお世話できるか、いくらかかるのか心配……。そんな不安を抱える人もいるのでは?
一人暮らしでもペットを飼いたいという方のために、爬虫(はちゅう)類から小動物、大型哺乳類まで、さまざまな生き物に詳しい獣医師の田向健一先生に、飼いやすいペットについて伺いました。実は一人暮らしでも飼育しやすいペットは意外といるのです! 日々を豊かにしてくれる“相棒”を見つけるヒントにしてください。
目次
- 一人暮らしでも飼いやすいペットは密接な時間を求めない。
- 一人暮らしにおすすめのペット6選&費用の目安。
- 一人暮らしで犬や猫を飼うのは?
- 一人暮らしでペットを飼う際の心構えと注意点。
- 一人暮らしでもペットを飼うメリット。
- 【まとめ】かかる費用も考慮してライフスタイルに合うペットを選ぼう。
一人暮らしでも飼いやすいペットは密接な時間を求めない。

ペットを飼いたくても、仕事をしているとお世話になかなか時間をかけられない、一緒に過ごす時間がとれないのが一人暮らしの悩みどころです。そんな環境でも飼いやすいペットはいるのでしょうか。
結論からいうと、一人暮らしでも飼いやすいペットはいます。ポイントは、「密接な時間を必要としない動物」と田向先生。「一人暮らしでペットを飼うなら、人間とのコミュニケーションをそれほど必要とせず、朝と晩のお世話で十分な小動物や爬虫類などが向いています」とのこと。逆に、人間とのコミュニケーションに影響されやすく、周辺環境に敏感でストレスを受けやすい犬や猫などの動物は、本当は向いていないのだとか。
「私は自宅で猫のほか、フェネック(砂漠に住むキツネの仲間)やインコ、カメ、ヘビ、熱帯魚を飼っています。それぞれの生態によって育てやすさや付き合い方の距離感はかなり違いますね。飼う前によく調べて、自分のライフスタイルに合うペットを選ぶことが大切です」(田向先生)
一人暮らしにおすすめのペット6選&費用の目安。
田向先生に、一人暮らしでも飼いやすいおすすめのペットを挙げていただきました。先生の経験から、「距離感」の取り方も解説しています。
ウサギ

※ 取材をもとにミラシル編集部で作成。初期費用に個体の購入費は含みません。以下のペットも同様。
【田向先生のアドバイス】
人にあまり懐きませんが、かわいいしぐさに癒やされると大人気です。「ウサギはさみしいと強いストレスを感じてしまう」という印象があるかもしれませんが、そんなことはありません。ただし病気にかかりやすいので、日々の体調の変化に気をつけてあげる必要があります。
ヒョウモントカゲモドキ

【田向先生のアドバイス】
ヤモリの一種で、いろいろな色の個体がいます。性格が1匹ごとに違うので、複数匹を飼って個性の違いを楽しんでいる人も。おとなしいので手にとってなでることもできますが、ヒョウモントカゲモドキにはストレスになるので控えめにしましょう。
リクガメ

【田向先生のアドバイス】
基本的に草食で、エサは小松菜、キャベツなどの野菜です。代謝がいいので、毎日、排せつ物の処理や水換えが必要です。アフリカなど暖かい地域に住んでいるので冬はしっかりとした保温が必要です。カメは寿命が長いので、終生、ともに過ごす覚悟も必要です。
チンチラ

【田向先生のアドバイス】
専門店があるほど流行のペット。見た目がかわいらしく、フワフワした毛がぬいぐるみのようで人気があります。夜行性ですが、体が小さく鳴き声も小さいため飼育しやすいのがポイントです。暑さに弱いので、夏はエアコンが必須です。
ハリネズミ

【田向先生のアドバイス】
小さな口でいそいそとエサを食べる姿がかわいくて癒やされます。触ると丸まってしまうなど、なかなか人に懐きにくいところがあります。触れ合って楽しむというよりは見て楽しむ生き物です。
フクロモモンガ

【田向先生のアドバイス】
シマリスに似た見た目が愛らしく、人気のペット。活発なので大きく高さのあるケージを用意しましょう。個体差があり、人に懐く子と、懐かない子がいます。
上記に挙げたのは一人暮らしでも比較的飼いやすいペットですが、「それでも敷居が高いという人は、熱帯魚もおすすめです」と田向先生。
最近では小さな熱帯魚が流行していて、コンパクトな水槽で場所をとらず、初期費用1万円~3万円で水槽セットを用意できるとか。癒やし効果も得られるうえ、帰宅が遅くなってお世話できないなどの心理的負担も軽減できそうです。
一人暮らしで犬や猫を飼うのは?

どうしても犬や猫を飼いたい! という人はどうすればいいのでしょうか。
「朝から夜遅くまで家を空ける人が犬や猫を飼うのは、動物福祉(動物が心身ともに健康で幸福であること)の観点では難しいと思います。特に犬は近くに人がいることを好みますし、散歩に出たり、ほかの犬と触れ合ったりすることを楽しむ動物なので、それができない環境にある人には飼育は向いていません」と田向先生は説明します。
「どうしても飼いたい場合はストレスを与えないように気をつけること。また室内でのケガや誤飲に気をつけつつ、可能な限りのびのびと過ごせるように配慮することが大切です」(田向先生)
また、犬や猫は飼い主のライフスタイルが変わると不安定になりがちです。引っ越しや結婚などの予定がある、転勤などで生活環境が変化しやすい人は、生活が落ち着いてから飼うほうが、犬や猫にとっても飼い主にとっても幸せでしょう。
一人暮らしでペットを飼う際の心構えと注意点。

一人暮らしでお世話にかける時間が限られるからこそ、責任感とペットへの愛情が大事になります。心構えや注意点をまとめました。
命を預かるという責任を持つ。
ペットを迎えたからには、寿命が来るまで飼うのは大前提。爬虫類には数十年生きる個体も多くいます。その間ずっとかかるペットのエサ代や維持費と、自分のこれからの人生を考え、付き合っていけるペットを迎えることが大切です。
個体によっては懐かないことも。
ウサギやハリネズミ、フクロモモンガなどの小動物は、個体によっては人に懐かず、なでたり抱っこしたりするのが難しいこともあります。
「ウサギなどはフレンドリーなイメージを持つかもしれませんね。でも、『なでてほしいと寄ってくるでもなく、飼う前のイメージと違った』という飼い主さんもいます。事前に十分理解しておきましょう」(田向先生)
脱走に注意。
爬虫類や小動物には脱走しやすい種類もいて、いつの間にか外に逃げ出した……ということも。ペットをケージやケースから出してスキンシップを楽しむ人もいますが、窓を閉める、部屋のすき間をふさぐなど、脱走防止策をとりましょう。
具合が悪そうだと感じたらすぐに受診を。
小動物や爬虫類は、犬や猫に接するような濃密なコミュニケーションがとれないからこそ、病気を見過ごしてしまって命に関わることも。異変を感じてからの病気の進行はあっという間です。
「毎日様子を確認して、おかしいなと思ったらすぐに動物病院に行く、という気構えでいてください」(田向先生)
一人暮らしでもペットを飼うメリット。

日々のお世話など大変なこともありますが、ペットを飼うことにはそれ以上のメリットがあります。
癒やし効果。
疲れて帰ってきたときでも、いつもと変わらずエサを食べて過ごしているペットを見るだけでホッとするのではないでしょうか。
「生き物を育てている充足感や成長する姿が心の支えになり、孤独やストレスが解消されるという人もいます」(田向先生)
生活習慣が整う。
ペットを飼うと毎日決まった時間にエサと飲み水の用意をし、トイレの掃除をする必要があります。日々、飼い主とペットを見ている田向先生は、「自分1人では生活リズムが乱れがちで、自堕落に暮らしてしまっていても、ペットのお世話でメリハリのある暮らしが送れるため、生活習慣が改善できたという飼い主さんも大勢います」と話します。
【まとめ】かかる費用も考慮してライフスタイルに合うペットを選ぼう。
当たり前のことですが、ペットを飼うのは責任感を伴います。ペットがストレスなく自然体で過ごせる環境を整えるとともに、終生大事にするという覚悟も必要です。
まずは生態や飼い方をよく調べて、本当に迎えたいのか、お金がかかってもだいじょうぶなのか、お世話ができるのかをよく考えましょう。ライフスタイルや居住空間にあわせてペットを選ぶことで、一人暮らしでもかけがえのない“相棒”を見つけることができます。最高のペットと楽しい暮らしを始めてください。
写真/Getty Images、PIXTA イラスト/こつじゆい
田向 健一
獣医師。田園調布動物病院院長。麻布大学獣医学部獣医学科卒業。4歳のときに金魚とカブトムシを飼って以来、動物好きが高じて獣医師となる。現在も野良猫出身の猫や小鳥、熱帯魚など多数の動物たちと同居中。ペットと飼い主、そして獣医師がより良い関係を築けるよう活動中。著書に『珍獣ドクターのドタバタ診察日記』などがある。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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