

車の修理代を安く抑えるには?安全面や注意点を踏まえてベストな依頼先を選ぼう。
車の故障は想定外の事態で、どこに修理を頼めばいいのか、お金がいくらくらいかかるのか、とっさにはわからないものです。そんなときに知りたい依頼先選びのコツを、新車はもちろん中古車に造詣が深く、修理にまつわる経験も豊富なモータージャーナリストの萩原文博さんに伺いました。
修理に出したい、でも出費はできるだけ安く抑えたい、という方のために賢い修理先の選び方を解説します。
目次
- 車を修理に出す先の選択肢と、それぞれのメリット・デメリット。
- ディーラー
- 自動車整備工場
- カー用品店
- 自分で修理する。
- こんな箇所にも注意!故障の種類によって費用や優先度は変わる。
- 修理に出す先を選ぶ基準は?
- 車の修理費用を安く抑えるコツ。
- 【まとめ】大切な車だから、安心して任せられるところで直そう。
車を修理に出す先の選択肢と、それぞれのメリット・デメリット。

車を修理に出す先は、ディーラー、自動車整備工場、カー用品店の3つが主な選択肢となります。それぞれどんな特徴があるか、見てみましょう。
ディーラー

一般的に第一の選択肢に挙がるのが、自動車メーカーの特約店であるカーディーラーです。オイル交換などのメンテナンスから、エンジンのトラブルといった走行性能に関わる修理まで、幅広く対応してくれます。
自動車メーカーの看板を背負っており、そのメーカーの車をよく知っているので、信頼のおける修理が期待できるのがメリット。その反面、修理の判断基準が厳しく、部品などは少し劣化しているだけで新品に交換することも。また、メーカーの純正部品を使うため、どうしても修理費用が高くなってしまうのがデメリットといえます。
ただ、その修理費用は割高なわけではなく、「適正価格」だと考えたほうがいいでしょう。あとで述べますが、ほかの依頼先ならどれだけコストダウンできるかを計算する目安の金額と考えられます。まずはディーラーに相談することをおすすめします。
自動車整備工場

自動車整備工場は、修理にかかる費用をディーラーよりも安く抑えることができます。今すぐに直さなくてすむ箇所ならば手をつけない、といった選択も可能です。交換する部品も、メーカー純正品ではなく、安価なリビルト品(※1) 、中古品(※2)、社外品(※3)などを使ってコストダウンが可能です。
デメリットは、特定のメーカー・車種を扱うわけではなく、不得意な車もあること。すべての部品をストックしていないことも多いので、取り寄せる必要があり修理に時間がかかることもあります。また、自動車整備工場はそれぞれに修理の質が異なりますが、その実力が外からはわかりにくいというのもデメリットといえます。
※1 使われていた車から取り出して分解・修理した部品。リビルト品を扱う会社が設けた検査基準を満たしている。
※2 使われていた車から取り出したそのままの部品。
※3 複数のメーカー・車種で使える汎用の部品(サードパーティ製)。
カー用品店

最近は、整備作業をするピットを併設しているカー用品店も多く見られ、車検を工場内で行える「指定工場」に指定されているお店もあります。料金設定が明確で、気軽に利用できるのがメリットといえるでしょう。
こちらも特定のメーカー・車種のみを扱うわけではないので、すべての車を熟知しているかというと難しいと思われます。したがって、エンジンなどの大きなトラブルで利用するというよりは、キズやへこみの修復、オイル交換やタイヤ交換、車検整備などで利用するのがいいでしょう。
参考:国土交通省 自動車整備工場には認証工場と指定工場があります。その違いは?
自分で修理する。

軽くこすったり、浅い線キズなどは、コンパウンド(キズ消し)やタッチペンなどを使って自分である程度きれいにすることはできます。走行性能に関わる部分の修理は、プロに任せたほうがいいでしょう。
愛車を理解するために、調べたうえで部品を購入して簡単な部品交換を行うのは悪いことではありません。ただ修理できる範囲は限られますし、何かトラブルがあったとしても自己責任となります。
こんな箇所にも注意!故障の種類によって費用や優先度は変わる。

故障といってもさまざま。その内容によって修理に出す先を変えれば、出費を抑えられるかもしれません。
キズやへこみなどの板金塗装が必要な修理。
軽く爪でこすって引っかかりがある深さのキズだったら、素人では完全に直せないといわれます。元どおりに直すならプロに任せたほうがいいでしょう。こうした板金塗装の修理は、ディーラーよりも自動車整備工場やカー用品店のほうが安くすむことがほとんどです。
エンジンや電気系統など走行に関わる修理。
エンジンなど走行性能に関する部分は優先度が高く、ディーラーか自動車整備工場で修理してもらうことになります。ただし、最近の車に搭載されている運転システムなどの電子機器は、専門の機械を使わないと修理できないケースも多いです。ハイブリッド車やEV車は、電気自動車整備に関わる講習を受けた整備士がいる自動車整備工場でなければ修理できません。
カメラやレーダーといったセンサー類は、修理するだけでなく正確に作動するかどうか、「エーミング」という調整作業も必要となります。これは専用の機械がないとできませんので、ディーラーか、専門の設備と有資格者を備えた自動車整備工場に修理に出すことになります。
たとえば、以前は「フロントガラスに飛び石でキズがついた」という場合は、自動車整備工場で修理・交換ができました。ですが、センサーカメラのついた最新の車の場合、修理後に安全システムが正常に作動するかエーミングを行わなければなりません。ディーラーで修理してもらわなければならない可能性が高くなります。
また、バンパーも要注意です。最近の車のバンパーにはセンサーがついています。バンパーを少しぶつけたけど直さなくていいや、という人もいるかもしれませんが、センサーが誤作動を起こす恐れがあるため、修理に出しましょう。
修理に出す先を選ぶ基準は?

修理に出す先として複数の候補があった場合、何を基準に判断すればいいでしょうか。
自分の車のメーカー・車種の修理に強いか。
ディーラーならば問題ありませんが、自動車整備工場を選ぶ際は非常に重要なポイントとなります。ネットの口コミ情報を見たり、直接問い合わせるなどして、自分の車に詳しいかどうかを確認するのは大事です。
特に、年式の進んだ車や輸入車など、趣味性の高い車に乗っている人は、特定の車に強い自動車整備工場を決めておくといいでしょう。
修理の口コミ。
自動車整備工場は外から見て実力がわかりにくいため、口コミは頼りになります。ネットの地図サイトや車情報サイトなどで自動車整備工場を検索して、スポット情報からユーザーの口コミを見ることができます。自分と同じ車種に乗っていたり車に詳しい人が発信している情報であれば、一つの目安になるでしょう。
修理にかかる期間。
工場の規模やスタッフの人数、そのときの入庫台数によって、修理期間は変わります。特定の車種を得意としている自動車整備工場は、その車の部品をストックしていることも多く、部品を取り寄せる日数がかからないため、診断・修理は早くすむことも多いでしょう。
整備士の質。
電気系統の故障では、「テスター」という診断器を使いこなせる経験や実績がある整備士がいるかどうかも、自動車整備工場を選ぶ目安となります。テスターから読み取ったコードとよばれるデータからトラブルを的確に診断できれば、質の高い修理が行えます。
整備工場の内部を見て、道具が汚れていたり雑然と管理されていないかなど、大切に扱われているかを確認してみるのもいい方法です。道具は整備士にとって非常に大事なもの。これを大切に扱っていないようであれば、お客さんの車への愛情も薄いといえるからです。
車の修理費用を安く抑えるコツ。

車の安全性を損なわない範囲で、修理にかかるお金を安く抑える方法を挙げてみました。
見積もりをディーラーと販売店で複数とる。
修理費用を安く抑えようと思ったら、ディーラーと自動車整備工場の両方から見積もりをとることをおすすめします。ディーラーの見積もりを基準にすれば、何が安いのか、何の項目があるか・ないのかなど、どこで価格差が生じるのかがわかります。自動車整備工場が安い理由がわかれば、あとあと納得のいく修理ができることでしょう。
リビルト品や社外品を使ってもらう。
ディーラーは部品交換の際、基本的に新品のメーカー純正品を使います。自動車整備工場なら、価格が安いリビルト品や社外品を使ってもらうよう相談をして、コストを抑えることができます。
ほかのキズや気になる不具合もまとめて直して割引してもらう。
たとえば、ボディの複数のキズやへこみを修復する際、1か所いくらなのか、範囲でまとめていくらなのか、によって価格が違う場合があります。板金塗装については、複数の工場や店舗で相見積もりをとり、複数箇所をまとめて直したら割引してもらえるのか確認するといいでしょう。修理する箇所によっては、1か所でも数か所でもあまり工数が変わらないことがあるのです。
エンジンルーム内で修理を行う際は、気になる部分の予防的な修理も一緒に行ったほうが、1か所あたりの工賃は安くなります。これは割引ではなく、不具合が生じるのを未然に防いで、トータル的にコストを抑えるという考え方になります。
予防整備をする。
予防整備とは、故障や不具合が発生する前にメンテナンスをすること。今はたいていのディーラーではメンテナンスパックなどを用意して、定期的な点検が受けられるようになっています。故障が発生してから修理を依頼すると高くついてしまうので、長い目で見るとこうしたメンテナンスパックに入っておくことで、結果的に安くすむかもしれません。
【まとめ】大切な車だから、安心して任せられるところで直そう。

車の修理費用は、ディーラーは高い、自動車整備工場は安いといわれがちですが、ディーラーが提示する見積もり費用には、ちゃんとした理由があります。それをわかったうえで、安く修理してもらえるところを探してほしいと思います。
修理が必要な事態になったら、まずディーラーに行って見積もりをとる。そのあと自分の車の故障に詳しそうな自動車整備工場などを探して、もう一度見積もりをとる。複数の見積もりを比較して、ここなら安心して任せられると思ったら、自動車整備工場に依頼して修理費用を抑えるのもいいのではないでしょうか。
写真/PIXTA イラスト/こつじゆい
【監修者】萩原 文博
モータージャーナリスト。日本自動車ジャーナリスト協会会員。中古車情報誌編集部を経てフリーランスとして活動。中古車市場や販売店に精通するだけでなく、新車も日本で最も多くの広報車両を借り出して取材を行い、ユーザー視点のバイヤーズガイドには定評がある。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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