老後の生活費はいくら必要?個人年金保険を上手に使って資金を準備しよう。
※記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。
人生100年時代へ向けて 「老後も働きたい」と考える人が増える一方で、現役時代と同じように働いて、同程度の収入を維持することは難しくなるケースが多いようです。そこで、老後資金の一助となるのが個人年金保険です。老後のライフプランにあわせた個人年金保険の活用法を、ファイナンシャルプランナーの豊田眞弓さんが解説します。
目次
- 公的年金と私的年金を組みあわせて老後資金を考える。
- 日本の年金制度。
- 老後に必要なお金はどのくらい?
- 老後資金のために個人年金保険を活用する。
- 老後のライフプランにあわせて個人年金保険を検討する。
- 公的年金に加え、個人年金保険で老後に余裕を。
公的年金と私的年金を組みあわせて老後資金を考える。
一般的に、会社などに勤めている人の定年は60歳~65歳。高年齢者雇用安定法の改正により、65歳までの再雇用に加えて、希望に応じて70歳まで働けるようにすることが企業の努力義務となっています。
一方で、平均寿命は延びており、2020年では男性が81.64歳、女性が87.74歳。厚生労働省によると、「現役と同じように働きたい」と考える人は5.1%、「現役時代より日数や時間を減らして働きたい」は51.8%となっています。なお、「働かずに過ごしたい」は28.0%です。
参考:厚生労働省「簡易生命表の概況 1 主な年齢の平均余命 表2 平均寿命の年次推移」(2020年)
参考:厚生労働省「平成30年 高齢期における社会保障に関する意識調査報告書」(2018年)P8
豊田さんは、「原則65歳から受給できる公的年金はもちろん、勤め先の再雇用制度や退職金、老後に希望する働き方なども考慮して、準備する老後資金を検討する必要がある」と言います。個人年金保険などの私的年金をうまく組みあわせて資産形成をしておくと、定年後の暮らしにもゆとりが生まれやすくなるでしょう。
日本の年金制度。
日本の年金制度は、3階建ての構造にたとえられます。1階は国民年金、2階は厚生年金(会社員や公務員が対象)とされ、この1階と2階が公的年金です。3階は私的年金で、個人や企業が自発的に準備し、公的年金に上乗せして支給されます。民間の個人年金保険なども、この3階部分に該当します。
公的年金の3つの特徴。
公的年金には、次の3つの特徴があります。また、受給額の目安は、ねんきん定期便などで確認することができます。
国民皆年金
20歳以上60歳未満の全国民(日本に住む外国人含む)が国民年金に加入する。
社会保険方式
保険料を納めなければ年金は受け取れない。納めた期間が長ければ受け取れる年金額も多くなる(国民年金は40年で満額)。
世代間扶養
現役世代が保険料を納め、それが原資となって年金受給世代に給付される「世代間の支え合い」を基本とした財政方式で運営されている。
私的年金とは。
年金制度の3階部分に当たる私的年金には、「企業年金」や「個人年金」があります。企業年金は、企業が独自に支給する年金で、確定給付企業年金(DB)、企業型確定拠出年金(DC)、厚生年金基金があります。加入の有無や上記のいずれに加入しているかは、企業によって異なります。
個人年金は、個人の自助努力で公的年金を補うものとして、国民年金基金や個人型確定拠出年金(iDeCo)、民間の個人年金保険などがあります。
老後に必要なお金はどのくらい?
老後資金は、一般的にはリタイアした時点から亡くなるまでに必要になるお金です。仮に100歳まで生きるとして試算してみます。
豊田さんは、「老後の生活費は現在の生活費の7割程度が目安」と言います。1か月当たりの生活費から年金などによる毎月の収入を引いた額が、毎月必要になる金額です。この金額に、リタイア後から亡くなるまでの月数を乗じると、老後に必要な生活費が試算できます。
必要になる老後資金=(月の生活費-年金などによる月の収入額)×(100歳−リタイアする年齢)×12か月
この金額に加え、介護や医療、住宅のリフォーム、旅行・趣味、冠婚葬祭などにかかる費用として、プラスの老後資金も準備しておくとよいでしょう。
老後資金のために個人年金保険を活用する。
前述した私的年金として、老後資金を準備する手段の1つが個人年金保険です。個人年金保険には、老後の資金づくりだけでなく、個人年金保険料控除によって税制上の優遇措置が受けられるメリットもあります。また、豊田さんによると、医師の診査を必要とせず告知だけで加入できる場合が多いのも特徴です。
保険料を支払うことで老後資金をつくることができる。
個人年金保険に加入すると、保険料は口座振替やクレジットカード払いなどで支払われます。実質的に引き去りとなることから支払い漏れを防ぎやすく 、解約すると多くの場合は受取金額が保険料の累計額を下回ることから、「解約や引き出しを気軽に行いやすい定期預金などに比べると、強制的な貯蓄効果があると考えられます」と豊田さんは言います。
個人年金保険料控除を受けられる。
一定の条件を満たす個人年金保険の保険料は、個人年金保険料控除の対象になります。2012年1月1日以降に契約した個人年金保険の場合、控除額は、1年間に支払った保険料に応じて所得税は4万円まで、住民税は2万8,000円までになります。そのため、保険料の支払い期間を長くするほど、所得控除のメリットを受けられる期間も長くなります。
多少の利回りが期待できる。
今は予定利率が大変低いため以前ほどではありませんが、一定の利回りが確保できます。また、保険料の払込終了後に年金を受け取らず、すえ置き期間をとる場合は、運用期間が長くなるため多少の利率アップが期待できます。
※解約すると多くの場合、受取金額が保険料の累計額を下回ります。
老後のライフプランにあわせて個人年金保険を検討する。
個人年金保険の加入にあたっては、公的年金による収入や再雇用期間など、老後の資金計画にあわせて、保険料の払込期間や受取開始年齢などを検討しましょう。
収入が下がる再雇用期間の生活費を個人年金保険で補う。
一般的に、定年後の再雇用では収入は下がります。そのため、たとえば5年間一定の金額が支給される「確定年金」タイプの個人年金保険に加入し、60歳から受け取りを開始します。個人年金保険によって、60歳〜65歳の再雇用期間の収入を補うのです。
退職金のかわりに。
勤務先に退職金の制度がない場合は、退職金のつもりで個人年金保険を検討してもよいでしょう。
手元にある資金の一部を将来に先送りする。
退職金などでまとまった金額が入ると、つい散財してしまいがち。そこで、「今手元にある資金を手堅く将来に先送りする方法として、個人年金保険が使える」と豊田さんは言います。加入時に保険料の全額を支払い、5年~10年など所定の期間をすえ置いた後に受け取りを開始する「一時払個人年金保険」を検討してみてはいかがでしょうか。
将来の医療・介護費用として。
一般的には、高齢になるほど病気のリスクは高まり、医療や介護にかかる費用も上がる可能性があります。それに対する備えとして、個人年金保険の受取開始を70歳以降にします。受取時期が来ても変わらず元気であれば、その後の医療・介護資金としてストックしておくこともできます。
公的年金に加え、個人年金保険で老後に余裕を。
個人年金保険は、前述のとおり、所得控除の恩恵を受けながら長期間保険料を支払い、決めた時期に一定の金額を受け取ることができます。そのため、個人年金保険の受取時期をタイミングよく設定することで、老後の生活や定年後の働き方にも余裕が生まれます。公的年金に加えて、老後のライフプランにあわせた個人年金保険の利用も検討してみてはいかがでしょうか。
写真/Getty Images イラスト/こつじゆい
豊田 眞弓
FPラウンジ代表。経営誌やマネー誌のライターを経て、1994年より独立系ファイナンシャルプランナーとして活動。個人相談や講演のほか、ウェブサイト・雑誌などに多数のマネーコラムを寄稿。「子どもマネー総合研究会」理事のほか、「親の介護・相続と自分の老後に備える.com」を主宰。亜細亜大学などで非常勤講師も務める。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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※ 個人年金保険は解約すると多くの場合、受取金額が保険料の累計額を下回ります。
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