そろそろ運動不足を解消しなきゃ!手軽にはじめられるトレーニングをご紹介。
比較的体を動かす機会のあった男性でも、昨今のリモートワークの推進や外出機会の減少などで、運動不足気味になっていませんか? そんな運動不足をそろそろ解消したいときは、何からはじめればいいのでしょう。理学療法士でアスレティックトレーナーの伊藤彰浩さんが、初心者でも手軽に取り組めるトレーニングを紹介します。
目次
今の自分は運動不足?
厚生労働省の調査(2019年)によると、運動習慣のある男性の割合は、20代が28.4%、30代が25.9%、40代が18.5%で、20代〜40代は徐々に下がっていくことがうかがえます。さらに、2020年からはリモートワークの推進などにより通勤や外出の時間が減ったことで、日常生活における活動量はさらに減っているでしょう。まずは、簡単なチェックリストでご自身の状況を確認してみましょう。
参考:厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」25頁
運動不足のチェックリスト。
<当てはまる項目にチェック>
□最近、お腹まわりが太くなってきた。
□体重または体脂肪率が増えてきた。
□少しの距離の移動にも、バスや車・タクシーを使いたくなる。
□姿勢が悪くなり、猫背気味になってきた。
□体が重く、肩や腰に違和感がある。動かしづらさを感じる。
運動不足には明確な定義がないため、これだけで断言することはできませんが、1つでも当てはまる項目があったら注意が必要です。運動不足解消のためのアクションを起こしましょう。
運動不足になると心身にどんな影響があるの?
「リモートワークが増えたら体重も増えた」と実感されている男性も多いはず。運動不足は、体重の増加や体力の低下、メンタルヘルスの悪化など心身の健康に影響します。
体重が増える。
体内で代謝量がもっとも多いのは筋肉です。体の中でも特に大きい筋肉のある下肢(下半身)の筋肉量は、一般的な男性の場合、18歳~24歳ごろをピークに減っていきます。また、基礎代謝基準値(生命活動を行うために必要なエネルギー量/体重1キロあたり)は年齢を重ねるにつれ減っていくため、30代や40代になっても10代~20代前半のころと同じように食べ、さらに運動不足や日常生活における活動量低下が重なると、太りやすい体になってしまいます。
参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「加齢とエネルギー代謝」表1
体力が低下する。
運動不足は体力を低下させ、たとえば、わずかな距離でも歩くのが面倒になったり、歩いたとしてもすぐ疲れたりします。また、持久力や体の柔軟性、心肺機能なども低下しやすくなるでしょう。
姿勢が悪くなる。
「よい姿勢」とは、横から見たときに、頭・背骨・骨盤がゆるやかなS字カーブをバランスよく描いて整っていること。デスクワークが続き下を向いて座ってばかりいると、胸椎(胸から腹部のあたりの背骨)が丸まり、背中が全体的に丸まってしまいます。猫背といわれる姿勢です。
肩こりや腰痛が悪化する。
デスクワークなどで同じ姿勢を長時間続けていると、血流が悪くなり、血管内に凝りや痛みを起こす疲労物質がたまります。体を動かして血流をよくしましょう。
メンタルヘルスへの悪影響。
適度な運動には心身のリフレッシュ効果や睡眠リズムを整える作用のあることがわかっています。そのため、運動不足になるとメンタルヘルスにも悪影響をおよぼす可能性があります。
運動不足を解消するためにまずは何をする?
運動不足を解消し健康な体を維持するためには、日常生活における活動量を上げる、有酸素運動で体脂肪を燃焼させる、筋力トレーニングで筋肉量を増やすといったことが効果的です。しばらく体を動かしていなかった人は、以下の手順で取り組むとよいでしょう。
1:有酸素運動を習慣化するために歩く。
2:姿勢を整える(使っていない筋肉や関節を意識して動かし可動域を広げる)。
3:筋力トレーニングをする。
ウォーキングを習慣にする。
20分~30分程度のウォーキング(有酸素運動)からはじめてみてください。無理のない時間を目標にはじめ、徐々に習慣化していきます。さらに、慣れてきたら歩くスピードを上げます。仮に誰かと会話していても、息切れせずに会話ができる限界くらいを目安にするとよいでしょう。
胸椎(きょうつい)の可動域を広げて、姿勢を整えよう。
座ったままの姿勢で長時間仕事をしていると、胸椎の可動域が狭まり、背中が丸まったり(姿勢が悪くなったり)肩こりや腰痛の原因にもなります。2つのストレッチで胸椎や肩甲骨まわりを整えていきましょう。ストレッチは正しいフォームで行うことが重要です。
スレッドザニードル
1:(スタートポジション)両手・両膝をついた姿勢に。頭から腰まで背骨はまっすぐに。
2:息を吸いながら胸を開くように右ひじを斜め上に伸ばし、ひじから先も伸ばす。このとき、腰から下はスタートポジションのまま動かさず、目線は中指の先を追う。腕を伸ばしきったところで3秒キープ。
3:息を吐きながら右手を左脇の下を通して、できるだけ遠くへ伸ばす。目前は手先を追って、手のひらは自然な状態で上向きにし、床には触れません。伸ばし切ったら、ゆっくりとスタートポジションに戻す。
4:2〜3を5回繰り返したら、左側(逆側)も同じように5回行う。このセットを2回行う。
ブックオープン
1:(スタートポジション)横向きに寝て、両手を前方に伸ばす。膝は直角に曲げ、上の手は下の手より少し先に出るように。
2:上側の手をさらに前方に滑らせてから、息を吐きながら胸を開くように腕を上げ、頭上を通って逆側まで動かす。このとき、腰から下はスタートポジションのまま動かさず、目線は逆側へ動かす手の中指の先を追う。
3:開ききったら息を吸いながら腕をゆっくりスタートポジションに戻す。
4:2〜3を10回繰り返したら、左側(逆側)も10回行う。このセットを2回行う。
筋力トレーニングは大きな筋肉を鍛えよう。
さらに、代謝のよい体づくりのために筋力トレーニングも行いましょう。人体にはさまざまな筋肉がありますが、代謝を上げるためのトレーニングでは、大きい筋肉を鍛えるのが効果的です。
ただし、気をつけてほしいのは姿勢です。たとえば、猫背の人が猫背のままトレーニングするのではなく、整えて(姿勢を改善して)から行うと効果は上がります。「整えてから鍛える」この順番は必ず守ってください。
大きい筋肉を鍛えるには「スクワット」が効果的。
初心者の方には、大きい筋肉が集中する下半身の筋力トレーニングがおすすめです。なかでも「スクワット」はベーシックなトレーニングで、自宅でも手軽に行うことができます。おしりと太ももの前と後ろの筋肉をバランスよく使いましょう。
スクワットにはいくつか種類がありますが、太ももが床と平行になるまでしゃがむ「パラレルスクワット」は膝関節への負担も少なめで、初心者にもおすすめです。
1:(スタートポジション)両足を腰の幅に開き、手は腰に当て、足裏8点支持で立ちます。スクワットでは、両足の足裏8点に均等に体重を乗せる「足裏8点支持」を意識しましょう。よい姿勢にも効果があるので、トレーニング以外でもこの立ち方を意識してみてください。
2:息を吸いながらおしりを後ろに引いて、太ももが床と並行になるまでゆっくりとしゃがみます。注意点は、猫背にならないこと、しゃがんだときに膝がつま先よりも極力前に出ないようにすること、しゃがんだときに内股になったりガニ股になったりしないこと。息を吸いながら行ってください。
3:息を吐きながら足裏8点で床を押してスタートポジションに戻ります。
4:1〜3を「20回×2~3セット」を目安に行いましょう。
セットとセットの間の休息は2〜3分くらいが目安ですが、最初は無理せず、できる範囲で構いません。また、慣れてきて物足りなさを感じるようなら、ダンベルやケトルベルなどで負荷をプラスしてみてください。ダンベルを使った「ダンベルスクワット」は、ダンベルを持った両手を肩から下に自然に下げて先述のスクワットを行います。フォームが悪かったり、重みがかかったりして猫背になってしまうと、腰に負担がかかってしまうため、注意しましょう。
どのくらいの頻度でやればいいの?
「歩く・姿勢を整える・鍛える」のセットを、週2~3回を目安に行うとよいでしょう。また、姿勢を整えるストレッチは、日々のセルフケアとして毎日行うとさらに効果的です。
今回紹介したトレーニングは入門編です。鍛えたい部位の筋力トレーニングも取り入れたりして、自分に合ったメニューに工夫してみてください。
大切なのはとにかく「はじめる」こと。
皆さんは、仕事においては「なぜ必要なのか」を常に精査し、効率よく、より高いパフォーマンスを目指して業務に取り組んでいるはずです。体のマネジメントも同じです。自分に合ったトレーニングを習慣にして、健康でしなやかに動ける体をぜひ手に入れてください。
テンションを上げるために、トレーニングウェアにこだわるのもよし、スマートウォッチといったウェアラブルデバイスで運動管理用アプリなどを使うのもよいかもしれません。SNSにトレーニングの様子をアップすることで、自分を追い込む方もいるようです。
健康で動ける体を維持することは、人生の楽しみを広げるだけでなく、ケガや病気のリスクを軽減することにもつながります。大切なのは、まずは運動をはじめること。そして、楽しく長く続けていきましょう。
伊藤 彰浩
株式会社MEDI-TRAIN代表取締役。理学療法士・日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。スポーツ整形外科でトップアスリートや子どもから高齢者まで幅広い層に向けたリハビリテーションを経験。現在は、首都圏を中心にアスリートや産前産後の女性のリハビリテーション&コンディショニング、企業の健康経営サポートや医療・介護福祉施設でのリハビリコンサルティングに取り組む。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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