子宮頚がんの検診って、どれくらい痛いの?検診の気になる疑問を婦人科医が解決!
がんのリスクを身近に感じるのは、ある程度の年齢になってからかもしれません。しかし「子宮頚(けい)がん」は若い世代も無関係ではなく、これから子どもを産む、あるいは子育て真っ盛りの女性が多くかかるがんです。子宮頚がんがどういう病気なのか。気になる検診の内容、痛みの有無、費用感まで、日本産科婦人科学会専門医で、女性のための健康管理アプリの顧問医なども務める、成城松村クリニックの院長の松村圭子先生が解説します。
目次
子宮頚がんとは。
子宮にできるがんには、「子宮体がん」と「子宮頚がん」があります。子宮体がんは、子宮の内膜にできるがん。一方、子宮頚がんは、子宮の入り口にある筒状の子宮頚部にできるがんです。
また、子宮にできるがんの約70パーセントが子宮頚がんで、国立がん研究センターがん情報サービス「がん種別統計情報」のデータによると、2018年に新たに子宮頚がんと診断された人の数は1万978例に上ります。
参考 :国立研究開発法人国立がん研究センター「がん情報サービス>子宮頸部」
2.罹患 新たに診断されること
子宮頚がんの発症率。
若い年代でも発生するがんです。たとえば、女性のがん死亡率1位である大腸がんの発症年齢のピークは90代。子宮頚がんは30~40代がもっとも多く、20代の患者も増えています。
参考:国立研究開発法人国立がん研究センター「がん情報サービス>子宮頸部」
2.罹患 新たに診断されること
子宮頚がんの原因。
子宮頚がんの原因となるのがヒトパピローマウイルス(HPV)で、主に性行為によって感染します。そのため、子宮頚がんになった女性に対し、男性経験が多かったからと捉える人がいるようですが、経験数とがんの発症率は、ほぼ関係ありません。
たしかに、経験数が多ければウイルス感染のリスクは上がりますが、HPVはごくありふれたウイルスのため、感染すること自体は珍しくないのです。そのため、一度でも性行為の経験があれば、誰でも感染している可能性があります。
そして、感染してもほとんどの場合、2年以内に90%のウイルスが、体の免疫力によって排除されます。しかし、排除されなかったウイルスに持続感染した場合、ごく一部が「異形成」という前がん状態に進み、そのさらに一部ががんになるのです。感染からがんになるまでは、数年から十数年かかるといわれています。
子宮頚がんの症状。
子宮頚がんは、初期の自覚症状がほとんどありません。茶色っぽいおりものが出る、性交時に出血があるといったことで気づく人が多く、また、下腹部や腰に痛みが生じて来院するという人もいます。ただし、痛みが生じている場合、がんはかなり広がっていると考えられます。自分ではまったく気づかないうちにがんが進行しているのが、この病気の怖さなのです。
子宮頚がんの治療。
子宮頚がんの治療は、ほかのがんと同様、「外科治療(手術)」「放射線治療」「薬物療法」を単体、あるいは組み合わせながら行います。がんの進行度と妊娠の希望など、患者さんの状況に応じて治療方針を決めていきます。
子宮頚がんは発見が早ければ、比較的治療しやすく、治る確率が高いといわれています。また、初期であれば子宮体部と卵巣を残して、妊娠するための機能を温存する手術も可能です。
国立がん研究センターの「最新がん統計」を見ても、がんと診断されてからの5年生存率は76.5パーセント。ほかのがんと比べても高い生存率である一方で、進行すると治療が難しいがんでもあります。(※1)
がん細胞が血液やリンパ液に乗って移動し、子宮から遠い肺や肝臓、脳にまで転移することもあります。子宮頚がんと診断される人は年間1万人程度で、2019年は全国で2,921人の方が亡くなっています。(※2)
参考:
※1国立研究開発法人国立がん研究センター「がん情報サービス>最新がん統計」
4.がんの生存率
※2国立研究開発法人国立がん研究センター「がん情報サービス>子宮頸部」
3.死亡
痛い?痛くない?何をする?子宮頚がんの検査方法 。
子宮頚がんは、HPVに感染してからがん化するまで数年~十数年以上の時間がかかります。そのため、定期的に検診をしていれば、極めて早期に発見することができます。
基本の検査内容。
一次検診として、一般的に、問診・視診・子宮頚部細胞診・内診が行われます。問診では、月経の周期や妊娠・出産歴、出血などの症状があるかどうかを確認。その後、「クスコ」と呼ばれる器具を腟内に入れ、医師が子宮頚部を視診します。そのあと、ヘラのような道具を使って、細胞を擦りとります。
ここで擦りとった細胞に異常があるかどうかを調べるのが細胞診。ただ、細胞診で異常が見つかっても、がんと決まったわけではありません。
二次検診とそれ以降。
細胞診で異常が見つかった場合は、二次検診として、腟拡大鏡検査、組織診、HPV検査といった詳しい検査をします。
「異常なし」「良性」の診断であればひと安心。再び異常が見つかり、子宮頚がんと診断されたら、速やかに治療に入る必要があります。
子宮頚がんの検査は痛い?
「子宮がんの検査は痛いのではないか?」と心配する人が少なくないようです。しかし、子宮頚部に神経はほとんどないため、一次検診での痛みはほとんどありません。もし、子宮頚部が敏感に痛みを感じるのなら、出産はとても耐えられませんよね。
ただ、腟にクスコ(腟鏡)を入れるとき、クスコのサイズと腟のサイズが合っていない場合など、人によっては不快感もあるでしょう。それが、子宮頚がん検診=痛いというイメージにつながっているのかもしれません。
特に初めて検査を受けるときは、緊張もあり、体に力が入ってしまいがち。検査自体はすぐに終わりますので、リラックスして臨むことをおすすめします。ちなみに、性交渉の経験がない人は検査で痛みが伴います。ただ、未経験の人はHPVに感染しているリスクが極めて低いですから、検査を受ける必要性がほぼありません。
痛いと言われるのは子宮体がんの検査。
「子宮がん検診は痛い」というイメージを持たれてしまう、もう1つの原因は、子宮体がん検診との混同にあるのかもしれません。こちらは、子宮の内膜の細胞を採って調べるため、痛みを感じる人が少なくありません。
ただ、子宮体がんの発症のピークは50~60歳代で、症状が出てからでも治療の成果が上がりやすく、ほかの臓器に転移した場合を除いて、早期発見した場合とそうでない場合を比較しても予後や死亡率に大きな差はありません。つまり、若い世代では子宮体がん検診についてはメリットがあまりないのです。そのため、一般的に子宮がん検診といえば「子宮頚がん検診」のことを指します 。
子宮頚がん検診をすべき理由。
子宮頚がんは、早期発見が死亡率を下げるとされています。そのため、厚生労働省は子宮頚がんについて、「20歳以上69歳以下は2年に一度」の検診を推奨しています。
参考:厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針 」
検診を受けるべき人は?
これまでご紹介したように、子宮頚がんは初期の自覚症状がほとんどなく、HPVの感染からがんになるまで、ある程度の期間を要します。
その間に検診をして早期に前がん状態を発見できれば、命はもちろん、子宮を残す治療も可能です。一方、「自分は大丈夫」と過信して検診を受けなければ、すべてが手遅れ……ということにもなりかねないのです。どうか、一度でも性体験のある人は定期的な検診を受けてください。
検診の費用。
自治体が実施しているがん検診の項目に含まれているため、一部の自己負担で検診を受けることができます。費用は自治体によって異なり、無料~2,000円程度のようです。ちなみに、医療機関において自費で受けた場合、子宮や卵巣の状態を調べられる超音波検査などもセットとなって1万円前後のところが多いようです 。
まとめ
日本の子宮頚がんの検診率は多少上がっていますが、それでもまだ諸外国と比べると低い水準にとどまっています。
内診台への拒否感、痛いのではないかという恐れ、自分は大丈夫という過信など……、子宮頚がん検診に二の足を踏んでしまう理由は人それぞれですが、わずか数分の検査で、命に関わる病に最善の対処をすることができる。このことをよく考えていただければと思います。
写真/GettyImages
松村 圭子
成城松村クリニック院長。日本産科婦人科学会専門医。生理や排卵日を管理できるアプリ「ルナルナ」の顧問医も務める。西洋医学だけでなく、漢方薬やサプリメント、各種点滴療法なども積極的に治療に取り入れ、アンチエイジングにも精通。月経トラブルに悩む若い世代から、更年期障害に苦しむ中高年層まで、女性の一生をサポートすべく、診療と情報発信を続けている。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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