小学校受験のメリット・デメリットは?幼児教育の専門家が詳しく解説 小学校受験のメリット・デメリットは?幼児教育の専門家が詳しく解説

小学校受験のメリット・デメリットは?幼児教育の専門家が詳しく解説

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コロナ禍では、公立小学校における授業の遅れが懸念されました。一方で、オンライン授業へスムーズに切り替えるなどして、影響を抑えられた国立や私立の小学校の人気がさらに高まるのではないかとみられています。

国立や私立への進学は、ほかにも学力面でのメリットがあると言われますが、デメリットはないのでしょうか。また、教育資金はどのくらい準備すればいいかも気になるところです。

幼児教育の専門家である奥野孝子さんが、小学校受験の検討にあたってチェックしておきたいポイントを解説。受験させるかどうか迷っているお母さん、お父さん、必読です。

目次

小学校受験の基礎知識。

ひとくちに小学校受験と言っても、国立や私立は学校ごとに教育方針や試験内容が違います。まずは、公立校との違いや小学校受験のよさなど、基礎知識を簡単にご紹介します。

公立小学校と私立・国立小学校はどう違う?

公立・国立・私立小学校の違いを一覧にすると、次のようになります。特に教育方針については、私立は学校ごとにさまざまな特徴を備えています。各校のホームページや学校見学会などを利用し、まずご家庭の教育方針に合う学校を選ぶことから、小学校受験ははじまると言えるでしょう。

公立・国立・私立小学校の違い
公立小学校
  • 教育委員会で決められた居住区の小学校に通学
  • 学習指導要領に則して学習し、定期的に教員が配置転換
  • 学校間の格差がない均質な教育
  • 学習費総額(第一学年)※1:平均32.1万円
国立小学校
  • 国の教育研究機関として、教員が最先端の学習方法を考え、研究理論にもとづいて授業
  • 入試に合格して入学。多くの場合、選考前に抽選を実施
  • 応募資格として居住区域や通学時間に制限あり
  • 初年度費用※2: 約10万円~約70万円(学校外活動費は含まず)
私立小学校
  • 各学校の教育理念や目標に沿った授業
  • 入試に合格して入学
  • 教職員の異動はほとんどない
  • 小中高一貫校も多く、安定した教育が継続して受けられる
  • 学習費総額(第一学年)※1:平均159.9万円

※1 文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」
※2 東京近郊の各国立小学校の教材費・給食費・積立金・PTA会費・入学時諸費用・学校後援会費等を合算

参考:奥野孝子氏監修のもと、ミラシル編集部にて作成

一覧からもわかるように、かかる費用も大きく異なります。国立校の場合は入学金や授業料はかかりませんが、私立校の場合は入学後も金銭的負担は続きます。このため、子どもを私立小学校に通わせている家庭の世帯年収は、約半数が1,200万円を超えています。

私立小学校に通わせている世帯の年収比率

出典:文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」

小学校受験はわが子にとって何がよい?

国立・私立小学校の魅力は、学校ごとに工夫された独自のカリキュラムです。コロナ禍にいち早く対応した学校も多く、学習面で安心です。また、科目ごとに専科生制を取っている学校が多く、学習環境もよいと言われています。

さらに、学友と中学・高校を通じて長い時間を過ごすこともあり、気の置けない関係を築きやすいのは小中高一貫も多い私立校ならではの体験でしょう。社会に出てからのビジネスや、何かあったときに頼れる生涯の友達をつくりやすい環境です。一人っ子の場合、ずっと付き合っていける友達ができるのは、人生の財産となると思います。

小学校受験を実施する有名校。

私立小学校は、大学まで内部進学できる「附属校」と、中学や高校でさらに難関校を目指す「進学校」とに、大きく分けられます。

子どもをのびのび育てたいご両親は、内部進学という選択肢をもち、受験をあまり意識せずに学習できる附属校や小中高一貫校を選ぶことが多いです。その一方で、最近は中学受験のために進学校を選ぶ方がとても多くなっています。

進学校の中には5年間で小学校の全教科の教育課程を終え、6年生では中学受験に備える学校もあります。有名中学の合格率が高い学校や、医歯系・薬学系への強さをアピールする学校もあります。

各学校の特色は、それぞれのホームページやまとめサイトなどで確認できます。最近はオンラインで学校説明会も行われているので、実際に校長の話を聞いてみると学校の理念や雰囲気をさらに感じ取ることができます。

志願倍率の高い小学校の例(東京近郊) 

志願倍率の高い小学校の例(東京近郊)

参考:奥野孝子氏監修のもと、ミラシル編集部にて作成

小学校受験の種類と試験科目。

小学校受験の試験科目は、「ペーパー」「体操」「行動観察」「面接」などが一般的です。

特に最近は、初対面の受験生同士をグループで遊ばせて、その様子をチェックする「行動観察」が、多くの学校で取り入れられています。

「行動観察」では、協調性やリーダーシップ、コミュニケーション力、巧緻性(指先の器用さ)、ものごとに積極的に取り組む意欲や集中力、根気強さ、生活習慣などが評価され、ペーパーよりも重視する名門校もあります。

主な試験科目
ペーパー(プリント) 常識、数量、図形、言語などについての筆記試験
個別(口頭試問) 対話式の口頭試問(原則1対1)
運動 基本的な運動能力を見る実技試験。先生の指示をきちんと聞けているかなども見られる
行動観察 ほかの受験生とゲームやグループ遊びをすることでその子の特性を見る試験。あいさつや言葉遣い、態度など基本的生活習慣に関する面も見られる
指示行動 先生から言われたとおりに運動などを行う。運動の試験に取り入れられることが多い
巧緻性 手先の器用さとともに、人に迷惑をかけず、自分のことは自分でできるかチェックされることも。行動観察に含む学校も多い
お話の記憶(記憶) お話を聞き、内容を覚えているか試す試験。しっかりと人の話を聞けることが重要。ペーパーに含める学校も
絵の記憶 1つまたは複数の絵を一定時間見せ、相違点や描いてあった場所を問う試験。ペーパーに含める学校も

参考:奥野孝子氏監修のもと、ミラシル編集部にて作成

ペーパーは市販の学習ドリルで自習もできますが、それ以外の科目はご家庭での対策が難しく、多くの方が集団授業や個別指導の塾、お稽古ごとの教室などを利用しています。

小学校受験に向く家庭・向かない家庭。

結論から言うと、小学校受験に向いている家庭は、限られます。

というのも、小学校受験は「親の受験」とも言われており、いわゆる「試験対策」だけではなく、家庭の教育方針がしっかりしていることや、子どもの躾がきちんとできていることがもっとも重要だからです。

向いているのは、どんな家庭?

小学校受験に向いている家庭は、保護者がお子さんのわずかな好奇心を見逃さず、サポートや適切な声かけができ、見守ることができる家庭です。

できないからと子どもを叱りつけるのはNG。たとえば集中力がないことを怒っても、集中力は身につきません。本来はお子さんが精神的に成長し、「今は集中しなくちゃいけないんだ」とわかる時期にならないと、集中力をつけるのは難しいことなのです。ですから、根気よく練習し、少しずつ自覚できるようにしていきます。

そうすることで、少し抽象的な言い方になりますが、集団の中でもちょっとしたことで目立つ「すべてがキラキラしている子ども」になるのです。学習することが苦痛でなく、さまざまな試験科目をすべて自然体で上手にこなせるような子どもに育てることが大切です。

向いていない家庭は、中学受験をするのも、選択肢の1つ。本来受験に適した時期は1人ひとり違います。小学校受験には間に合わなくても、中学受験で成功する子どももいます。

お母さん・お父さんの協力で生活スタイルの改善を。

もう1つ大事なのが、生活スタイルの改善です。

現代はどうしても夜型になりがち。両親が働いていれば、夕食も遅くなりがちです。でも本番の試験は遅くとも午後3時には終わります。勉強も朝型のほうが効率はいいと言われています。となれば夜型には、よいことがほとんどありません。

相談に来る保護者には、受験に向けて生活のスタイルを変えていってくださいとお話ししています。それぞれに事情があるので簡単ではありませんが、小学校受験をさせると決めたのであれば、たとえば夜はせめて9時までには寝かせるなど、難しくても家庭で協力して取り組む必要があると思います。

小学校受験の準備期間や対策。

小学校受験の準備は、幼稚園の年少(3歳児クラス)の11月からはじめ、2年間かけるのが理想的です。目指したい学校の試験科目やお子さんの得意不得意に応じて、集団塾や個別指導塾に通ったり、さまざまなお稽古ごとを習ったりするのが一般的です。

なぜ年少の11月からが理想的?

最大の理由は、小学校受験の日程が集中する11月から起算して、 2年間あると両親が気持ちに余裕をもって取り組めるためです。特に母親のメンタルは、子どもに大きく影響します。受験期が近づくと、親のほうが平常心を保ちにくくなりがち。親がどっしり構えて我が子の受験を見守るためにも、早めの準備がおすすめです。

最初はペーパーより基礎的な知識の蓄積を。

最初のころは、実体験を通じて知識を積んでもらう時期だと思います。ペーパー対策もしますが、たとえばモノの名前など、基礎的な知識を身につけることを優先します。

準備としては、週に1、2回程度集団塾や個別指導塾に通ったり、体操やお絵かきなどのお稽古を行ったりすることが一般的です。

年長になってからは、月に1、2回程度行動観察への準備をはじめます。体操教室でも指示を聞いて行動する訓練はありますが、塾などではより幅広い対策が行われます。

また、年長の後半になると、面接対策も必要になります。本番の面接では、保護者の服装も普段とは違い正装です。 いつもと雰囲気が違うので、子どもはやはり緊張します。場に慣れるための模擬面接を1回でもいいのでやっておくと、面接当日のパフォーマンスも大きく変わってきます。

小学校受験の費用はいくら必要?

結論から言うと、受験準備にかける費用はご家庭によって千差万別です。お金をかけたから合格するというわけでもなく、「いくらあれば十分」と一概に言うこともできません。

小学校受験にかかると思われる平均的な費用を表にまとめました。費用はあくまでも目安ですが、だいたいの予算感はつかめると思います。

小学校受験にかかる費用(単位:万円)
塾、教室 月謝(1か月) 2~7
季節講習費用(春・夏・秋) 30~40
模試費用(月) 1~2
ドリル代(1冊) 0.1~0.2
その他対策費(塾オプション等・1年間) 30~40
お稽古ごと 体操(1年間) 20
お絵かき(1年間) 30
受験料 私立(1校) 2~3
国立(1校) 0.33
その他 願書用写真代(1枚) 1~2
洋服代(両親) 20
洋服代(子ども) 10
雑費(交通費、駐車場代等・1年間) 10

参考:奥野孝子氏監修のもと、ミラシル編集部にて作成

どんな対策を講じるか、何をどんな頻度で利用するかによって、合計額は大きく変わります。

たとえば、集団塾と個別塾の両方に通い、季節講習はすべて参加。月1回模試を受け、1年間で30冊のドリルをこなし、行動観察への対策などのオプションを利用すると、塾代だけで1年間に100万円から200万円かかることになります。お稽古ごとも増やせば増やすだけ費用はかさんでいきます。

受験準備にどれだけお金をかけているか、多くの塾や習い事をかけもちしているケースもあるので、はっきりした数字はなかなかわかりません。ただ、試験が迫ると金銭感覚も麻痺しがちで、「いくら使っているかわからない」という親もいます。

中には総額で1,000万円以上というケースもあるようです。最近は、たとえば「教育費は年間300万円」というように、あらかじめ計画的に予算を立てる家庭が増えています。

費用については「いくらかければよい」ということはありません。それぞれの家庭の状況に応じてベストな方法を選んでいくしかなく、そのための金銭的な備えが必要となります。

小学校受験のメリット・デメリット。

最後に小学校受験のメリットとデメリットをまとめておきましょう。ここまでご紹介したことを参考に、お子さんや家庭のことをよく考慮し、小学校受験にチャレンジするかどうか判断しましょう。

メリット

  • 受験準備を通して、自分で考える力など、さまざまな能力が身につく。
  • 一般的に学習面・情緒面での教育環境が公立校よりも整っている。
  • 教育方針が多様で、家庭の教育方針に合った教育、将来を見据えた教育を選べる。
  • 校風が多様で、家庭の教育方針に合った環境を選べる。
  • 気の置けない友達、生涯の友達ができやすい。

 

デメリット

  • 受験準備に高額の費用がかかる。
  • 入学後も高額の学費がかかる。
  • 子どもを追い詰めてしまうこともある。
  • 両親、特に母親の精神的負担が高まることがある。

奥野さんからのアドバイス。

小学校受験のチャンスは1回しかありません。昔と比べて私立の受験も一般的になっています。よい学校が多く、学費の安い学校もあります。少しでも興味があればチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

また、小学校受験はあくまでも両親の希望です。受験すると決めたあとも、そのことは忘れないでください。子どものためを思っての受験ですが、お子さんが選んだわけではありません。両親が協力し、上手にお子さんと気持ちをすり合わせられれば、きっとうまくいくと思います。

写真/Getty Images


奥野 孝子
いいだばし幼児教室 室長。日本女子大学児童学科卒業後、40年以上にわたり、幼児教室にて小学校受験に向けた指導を行う。お子さん1人ひとりに丁寧に向き合い、それぞれの個性に応じた個別指導を行うとともに、ご両親の気持ちにも寄り添いながら三位一体で志望校合格を目指す。慶應義塾幼稚舎・早稲田実業学校付属小学校・青山学院初等部・雙葉小学校をはじめ、難関校への合格実績多数。


※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
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