子育て支援制度には何がある?子どものための支援金・助成金を紹介。 子育て支援制度には何がある?子どものための支援金・助成金を紹介。

子育て支援制度には何がある?子どものための支援金・助成金を紹介。

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子どもの成長はうれしくもあり、ちょっぴり寂しくもあり……。子育てをしていると、いつの間にか大きくなった我が子の姿に思わず感慨深くなるときがありますが、一方でこんなふうに思う場面も増えてきます。

「え! 今月、食費にこんなにかかったの……」

「塾代がこんなに高くつくとは……」

そう、お子さんが成長するにつれて、家計からの出費は増えていきます。食費などの養育費は膨らみ、進路次第では、学費なども大きな負担となります。子育てにかかるさまざまなお金について考えると、思わずため息をついてしまいますが、そんなときのためにあるのが、子育て支援金や助成金制度です。

子育てにかかる費用のために、どんな支援金や助成金があり、どのように活用できるのか。大学生と小学生のお子さんをもつファイナンシャルプランナーの八木陽子さんが解説します。

支援金と助成金をうまく使って、無理のない子育てマネープランを立てましょう!

目次

子育てにかかる費用はどれくらい?

子育てにかかる費用はどれくらい?

はたして、子育てにはどれくらい費用がかかるのでしょうか。まず、皆さんが気になるのは、教育費だと思います。

教育費は、お子さんがどんな学校に進学するかによって大きく変わります。「平成30年度 子どもの学習度調査」など、文部科学省のデータをもとに算出してみると、驚くべき数字がはじき出されます。

幼稚園から大学進学までの費用

以下の参考に掲載のデータをもとにミラシル編集部にて作成

※ 金額は学校教育費と学校外教育費の合計(万円)  
※ 幼児教育・保育の無償化のため幼稚園については「学校教育費」は含まれません(通園送迎費、食材料費、行事費などは、これまでどおり保護者の負担になります)。  
※ 幼稚園の利用料はご状況により異なります。詳しくは内閣府のHPにてご確認ください。

参考:文部科学省「平成30年度 子供の学習費調査」「令和2年度 私立高等学校授業料等の調査結果について」「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」「令和元年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額調査結果」日本学生支援機構「平成30年度学生生活調査結果 1-1表、1-3表、1-5表」

データによると、幼稚園から大学卒業まですべて公立に進学した場合でも「約1,000万円」がかかります。仮に幼稚園から大学まですべて私立で、文系の大学に進学した場合は「約2,400万円」、さらに幼稚園から大学まですべて私立で、理系の大学に進学した場合は「約2,600万円」もの教育費がかかると算出されています。

この数字は全国平均なので、住む地域によって実感とは隔たりがあるかもしれません。また、2人目以降の子どもの場合、家庭用教材や図書費などをそのまま下の子が使うことが多いため、一般的に1人目よりは教育費がかからないと言われています。しかし、それでもどこかの段階で、私立の学校に進学する可能性を考えると、「子ども1人あたりの教育費が1,000万円」というのは、ある程度データにもとづいた数値と言えそうです。

そして、子育てにかかる費用は教育費用だけではありません。日常生活を送っていくための食費や医療費などといった「養育費」も、子育て費用には含まれてきます。養育費も含めた子育てにかかる費用の総計は2,000万円〜3,000万円とも……。それだけの費用を工面しなければならないと思うと、途方に暮れてしまうのは、当然のことです。

でも、安心してください。子育てはロングスパンです。急に多額の出費が必要となるわけではありません。少額でも、学資保険などを利用しながら、計画を立ててコツコツ貯めていくことで、意外と大きな貯蓄になります。

また、国や都道府県による教育費への支援制度は、年々充実してきており、徐々にではありますが子育てをする環境はよくなっています。どんな子育て支援金や助成金があるのかを、この記事では解説していきたいと思います。

子育てのための支援金・助成金制度はさまざまある。

子育てのための支援金・助成金制度はさまざまある。

子育て支援の制度は種類が多すぎて、「結局何があるの?」「何を支援してくれるの?」 と思ってしまうこともあるでしょう。

子育て支援金・助成金制度だけでも種類はさまざまあり、国が主体となって運営しているものもあれば、都道府県や市町村が主体となって独自に運営しているものもあります。まずはここで説明する子育て支援金や助成金制度を抑えたうえで、自分の住む地域などの状況にあわせたものも探してみるとよいでしょう。

児童手当とは?

児童手当とは、中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している人を対象にしたもの。原則的には、児童が日本国内に住んでいることが前提となります。

3歳未満は一律1万5,000円、3歳以上は小学校修了前まで1万円(第3子以降は1万5,000円)、中学生は一律1万円が毎月給付されます。支払い時期は原則として年3回。毎年6月、10月、2月に、それぞれの前月分までの手当が支給されます。かなりありがたい制度ですよね。

ただし、所得制限を超えるご家庭は、子どもの年齢に関係なく月額5,000円の給付です。また、今後も制度が改正される可能性があります。最新の情報を確認しましょう。

児童手当は、そのままに普通口座に貯めたままにしてしまったり、習い事の支払いにあてたりしがちですが、お子さんが進学するにつれて、教育費はどんどん膨らんでいきます。子どもが小さいときほど教育資金の貯めどきでもありますので、児童手当をうまく運用して、大学進学など、しかるべき時期に備えるようにしましょう。

幼児教育・保育の無償化とは?

2019年(令和元年)10月から、幼稚園、保育所(保育園)、認定こども園などを利用する3歳~5歳の利用料が無償化されました。無償化の期間は、満3歳になった後の4月1日から小学校入学前までの3年間です。子ども・子育て支援新制度の対象とならない幼稚園については月額上限2万5,700円となっています。0歳から2歳までの子どもについても、住民税非課税世帯を対象として、利用料が無償化されています。

これに加えて、幼稚園の預かり保育については月額1万1,300円まで、認可外保育施設は月額3万7,000円まで無償化されています。特に共働きの世帯にとっては、かなり大きな支援と言えますよね。

ただし、費用がまったくかからないわけではありません。保育料以外の通園送迎費、給食費等実費、行事費などは、これまでどおり保護者の負担となるので注意が必要です。それでも、年収360万円未満相当世帯の子どもや、すべての世帯の第3子以降の子どもについては、給食費の副食の費用分(おかず・おやつなど)が免除されることになります。

あわせて「子ども・子育て支援新制度」の対象とならない幼稚園については、無償化となるための認定や、市町村によっては、一度費用を立て替えた後に払い戻される手続きが必要な場合があります。自分が住んでいる市町村に確認するようにしましょう。

繰り返しになりますが、未就学児の時期が、もっとも教育資金が貯められる時期です。この幼児教育の無償化についても児童手当と同じ考えで、本来支払うはずだった金額を習い事などにかけすぎてしまわずに、コツコツ貯めておくことが大事です。そうして備えておくことで、いざ教育費がかかるようになったときに、大きなプラスになるのです。

私立高等学校等授業料軽減助成金事業とは?

東京都私学財団が行っている事業で、年収目安約590万円~約910万円の世帯に年間35万200円、年収目安約590万円未満の家庭には、年間7万3,000円を給付する制度になっています。国の助成とあわせると、両者とも年間最大46万9,000円という金額になり、手厚い制度になっています。自治体によって異なりますが、似たような助成制度が設けられている自治体もありますのでチェックしましょう。

参考:公益財団法人 東京都私学財団「私立高等学校等授業料軽減助成金事業」

高等学校等就学支援金とは?

高等学校等就学支援金は、公私立を問わず、高等学校や高等専門学校、専修学校(高等課程)などに通う生徒を対象にしたもの。生徒や保護者が直接受け取るものではなく、学校設置者が生徒本人に代わって受給し、授業料に充当する形となっています。

ただし、世帯年収が約910万円を下回る家庭の生徒に限られています。支給期間・支給限度額については、通学する高校により異なるので、以下を参考にしてください。

参考:文部科学省「高等学校等就学支援金制度」

高等学校等就学支援金の制度は、新入生だけではなく、在校生にも適用されます。通学している学校へ自分で申請を行うことになるので、学校からの案内にしたがい手続きを行うようにしましょう。ただし、就学支援金制度の対象は授業料のみです。学業に関わる諸費用は対象になっていないので、注意してください。

児童扶養手当とは?

父母の離婚などで「ひとり親」の場合は、児童扶養手当が支給されます。支給額は請求者の所得額によって「全部支給」と「一部支給」に分かれていて、児童が1人の場合は、全額支給で月額4万3,070円、 一部支給で月額1万160円~4万3,060円が支給されます。

奇数月に年6回、各2か月分が指定の銀行口座に振り込まれます。当てはまる場合はお住まいの市区町村に申請を行いましょう。

参考:厚生労働省「児童扶養手当について

高等教育の修学支援新制度とは?

「高等教育の修学支援新制度」は2020年(令和2年)4月からスタートした、低所得者世帯に向けた支援制度です。支援対象は、住民税非課税の世帯、もしくはそれに準ずる世帯の学生で、国が低所得者世帯に対して「授業料・入学金の減額または免除」と「給付型奨学金」をセットでサポートするのが特徴です。

参考:文部科学省「高等教育の修学支援新制度について」

授業料などの減免については、専門学校、高等専門学校、短期大学、大学かによって異なり、私立か国立かでも上限額に違いがあります。例を挙げると、私立大学ならば入学金約26万円と授業料約70万円、国立大学ならば入学金約28万円と授業料約54万円が減免の上限となっています。

もうひとつの給付型奨学金については、自宅生か自宅外生かによっても支給額が異なります。自宅から私立大学に通う場合は年額約46万円、自宅外からの私立大学に通う場合は年額約91万円が支給されます。

支援対象となる学校は、文部科学省や自治体などの確認を受けた大学・短大・高専・専門学校に限定されています。下記の検索ページで調べられるので、志望する段階であらかじめチェックしておくとよいでしょう。

参考:文部科学省「学びたい気持ちを応援します 高等教育の修学支援新制度 支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧」

子育て支援金・助成金はいくらもらえる?

子育て支援金・助成金はいくらもらえる?

主な子育て支援金・助成金を解説しましたが、実際にシミュレーションしてみると、よりわかりやすいかと思います。例として以下のケースを想定して、どんな手当や補助金を受けられるのか、シミュレーションしてみました。

  • 東京在住
  • 世帯年収 650万円
  • 夫婦、子ども1人(3月生まれ)
  • 公立小学校から私立の中高一貫校に進学

0歳~中学生でもらえる児童手当の額は?

まずは0歳~中学生についてもらえる額について解説します。この時期にもらえるのは、児童手当です。児童手当は、前述のとおり日本国内に住んでいる児童を対象に、申請月の翌月から支給されます。

0~3歳未満は、月額1万5,000円が支給されるので、合計52万5,000円となります。次に、3歳~小学校までは月額1万円なので109万円、中学生になっても月額1万円が支給されるので、合計36万円です。

これらすべてをあわせると197万5,000円(※)です。児童手当をコツコツ貯めるとすると、大きな教育費となるということが、おわかりいただけたかと思います。

※ 子どもが4月生まれの場合、上記より11か月分多く児童手当を受け取ることができます。

3歳~5歳で無償化になったお金はいくら?(※)

あわせて、3~5歳は幼稚園、保育所(保育園)、認定こども園などの利用料が無償化されます。幼稚園に通った場合は上限2万5,700円が3年間支給されるので、合計92万5,200円が支給されます。児童手当と同じ考え方で、この金額を貯蓄・運用することで、高等教育でかかる教育費に備えることができます。

高校生のときにもらえる額は?(※)

高校生になり、高等学校等就学支援金制度を用いると、このケースの夫婦の場合(世帯年収650万円)は1年で11万8,800円の支給になりますから、高校3年間の合計で35万6,400円が支給されます。また、東京都の私立学校で、私立高等学校等授業料軽減助成金事業を使った場合は、1年で35万200円なので、3年で105万600円が助成されます。この両方をあわせると、140万7,000円という助成額になります。

参考:東京都私学財団「私立高等学校等授業料軽減助成金事業」

※ 東京在住で、世帯年収が650万円の夫婦の場合のシミュレーションです(2022年10月現在)。

以上がシミュレーションです。もちろん年収や居住地、家族構成などの状況により変わりますし、数字はすべて現行制度にもとづいたものです。実際は異なってくるかと思いますが、ひとつの参考にはなるかと思います。

子育ての支援金や助成金は意外と多い。

主な子育て支援金・助成金の特徴とシミュレーションを行いました。

意外と子育てへの支援金や助成金が多いことにあらためて気づかされますよね。中学まで支給されたお金は、高校以降の教育費の備えとして貯蓄するか、運用することも視野に入れておくとよいでしょう。

今回のシミュレーションは高校までとしましたが、大学進学以降は、奨学金や特待生制度も充実してきます。また、大学生以降になるとお子さん自身がアルバイトをすることも多く、必ずしも親がすべてをカバーしなければならないわけではありません。

ともあれ、教育費で困った場合は、まず学校や行政機関に相談してみるとよいでしょう。

写真/Getty Images イラスト/岡田丈


八木 陽子  
ファイナンシャルプランナー  
東京都在住。1男1女の母。出版社勤務を経て独立。2001年、ファイナンシャルプランナーの資格を取得後、マネー記事の執筆やプロデュース、セミナーなどの仕事を行う。2008年、家計やキャリアに関する相談業務を行う株式会社イー・カンパニーを設立。著書に『マンガでカンタン!お金と経済の基本は7日間でわかります。』(Gakken)など。


※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。  
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