妊娠初期も運動していい?メリットや注意点を医師が解説。 妊娠初期も運動していい?メリットや注意点を医師が解説。

妊娠初期も運動していい?メリットや注意点を医師が解説。

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妊娠初期は大事な時期でもあることから、運動してもいいかどうか迷う妊婦さんが多いのではないでしょうか。体を動かしたくても、「もし赤ちゃんに何かあったら……」と思うと、心配ですよね。

「妊娠初期は運動してもいいの?」「するなら、どの程度までOK?」「おすすめの運動や注意点は?」そんな疑問を、日本産科婦人科学会専門医や日本産科婦人科学会認定ヘルスケアアドバイザーとしてさまざまな相談を受け、『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』『自分でできる!女性ホルモン高めかた講座』などの著書がある、産婦人科医の八田真理子先生にお聞きしました。

目次

習慣化している運動ならOK。

妊娠初期は大事な時期だから、安静にしなければならないと思っている妊婦さんが多いのではないでしょうか。しかし、妊娠に気づかず、運動を続けてしまうのはよくあること。

「妊娠初期であっても、運動はしてもいいんです。特に運動することが習慣になっている人がそのまま運動を続けることは、基本的に問題ありません」(八田先生)

また、妊娠初期に運動をするにあたってまず頭をよぎるのは、流産の心配。

「妊娠12週未満の妊娠初期の運動が流産の原因になることは少なく、赤ちゃん側の染色体異常などが原因であることがほとんど。母体側への運動による影響はまずないので、わざわざ運動をやめる必要はありません。

むしろ妊娠中の健康や、出産に向けた体力づくり、産後の授乳や育児に好影響をもたらすので推奨しています。ストレス発散になり、精神衛生上のメリットも大きいので、安全な形で続けたほうがいいでしょう」(八田先生)

慣れた運動でも、妊娠中は感じる負荷を60%~70%くらいに抑えて。

ただし、「つらいな」「しんどいな」と感じるハードな運動はやめたほうがいいそう。おなかに圧がかかったり、転倒しやすくなったりして、流産につながってしまう可能性が考えられるからです。

「妊娠前の運動による負荷が100%だとすると、妊娠中は60%~70%くらいに抑えるのがよいでしょう。心拍数でいうと、120bpm~130bpmくらい。息が上がらず、お喋りしながらできるくらいの運動がいいですね」(八田先生)

妊娠初期におすすめの運動。

妊娠初期におすすめの運動。

「家でじっとしていると、体力は落ちていくばかり。出産は体力勝負なので、運動してみようという気持ちをもつのはとてもすばらしいことです。運動に慣れていないなら、まずはウォーキングやストレッチからはじめてみてはいかがでしょうか。マタニティヨガもおすすめです」(八田先生)

これまで運動をしていなかった人が、妊娠中の運動不足を解消するために運動をはじめる場合はどうしたらいいのか、先生に伺いました。

ウォーキング

歩くだけなので、特別な準備は必要ありません。まずは20分~30分くらいからはじめ、体が慣れてきたら徐々に歩く時間を増やしてみましょう。出かけるときに、駅などの目的地まで少し遠まわりしてみることで、歩数を増やしやすくなります。

赤ちゃんが生まれてからの生活をイメージしながら、家の近所を歩いてみたり、公園をチェックしてみたりすると、産後に役立つ情報も収集できて一石二鳥です。

ストレッチ

筋肉や関節の柔軟性を高めるための運動です。気持ちいいなあと感じる部位を伸ばしましょう。なかでも股関節の柔軟性を高めておくことは、安産につながるのでおすすめです。産婦人科でも、妊婦さん向けのストレッチを紹介していますので、参考にしてみるといいでしょう。

妊娠中に運動をするメリットは?

妊娠初期に限らず、妊娠中期の運動は、妊娠中・出産・産後を通してさまざまなメリットをもたらすようです。どのようなメリットがあるのか、八田先生に伺いました。

体力維持

妊娠中に適度な運動を続けることは、体力維持につながります。出産は長丁場になることが多く、体力が必要。また、出産のあとのダメージからの回復や、産後の育児にも体力が必要なので、体力の維持はとても大切なことです。

過剰な体重増加の予防。

妊娠中は体重が増えないのも問題ですが、増えすぎると、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などのリスクが高まるため、よくありません。運動をすることで、体重が増えすぎないようコントロールしましょう。

血流アップ

運動をすることで、全身の血流がアップ。肩こりや腰痛、むくみ、冷えといった、妊娠中に起こりがちなマイナートラブルの解消に役立ちます。また、母乳は血液からつくられるので、血流がいいと、産後、母乳の出もよくなります。

ストレス解消・リラックス効果

ホルモンバランスの影響や、体や環境の変化によって、ストレスを感じやすくなる妊娠中。運動することで、そのストレスを発散でき、頭の中がすっきりクリアに。終わったあとは、深いリラックス効果が得られます。

妊娠中の運動で避けたほうがいいものは?

妊娠中の運動で避けたほうがいいものは?

自分で「体に負担がかかりそうな激しい運動だな」「おなかに圧がかかるな」「危険だな」と感じる運動は、妊娠初期はもちろん、妊娠中を通して避けたほうがいいと八田先生は言います。

負荷の高い筋力トレーニング。

運動に慣れているなら、自重でスクワットをしたり、1kg~2kgの軽いダンベルで腕を鍛えたりする程度の筋トレならしても大丈夫でしょう。しかし、重いバーベルを使うなど、短時間に強い力を発揮する無酸素運動や、腹筋のようにおなかに圧をかけるようなものは避けましょう。

競技性の高いスポーツやコンタクトスポーツ。

競技に熱中すると、意識がおなかの赤ちゃんから離れてしまい、無理をして体に過重な負荷がかかってしまう可能性があります。特に、バスケットボールやサッカーなど、人とぶつかる可能性のあるコンタクトスポーツは、おなかを強打してしまう危険があるので、避けましょう。

運動を控えたい状況は?

メリットの多い妊娠初期の運動ですが、状況によっては、おなかの赤ちゃんや妊娠経過にリスクをもたらすことがあります。八田先生は、以下に該当するときは、運動するのをやめたほうがよいと言います。

性器出血があるとき。

性器の出血は危険のサインかもしれません。運動はやめて、かかりつけの医師の指示に従いましょう。

おなかが張っているとき。

何らかの理由で子宮が収縮している状態を「おなかが張る」といいます。「生理痛のような痛みを感じる」「下腹部が締めつけられるように痛い」「触るとかたい」など、感じ方は人それぞれです。運動の途中でおなかの張りを感じたら、無理はしないようにしましょう。痛みが長時間続く、強い痛みがあるときは、早めにかかりつけの医師に相談しましょう。

切迫流産と診断されている。

「切迫流産」とは、流産が差し迫っている状態を指します。いちばんの治療法は、なるべく横になって、安静に過ごすことです。体に何かしら負荷がかかると、子宮が収縮し、流産につながることがあるので、運動はしないでください。

前置胎盤と診断されている。

胎盤が子宮口(子宮の出口)を覆っている状態を「前置胎盤」といいます。子宮が収縮し、胎盤の一部がはがれて大出血すると、母子ともに危険な状態に陥ってしまいます。運動による刺激が原因となることもあるので、運動はしないでください。

医師から運動を止められている。

つわりがある、持病がある、医師から運動を止められている場合は、運動をしないでください。

運動するときの注意点。

運動するときの注意点。

そのほか、妊娠初期を含め妊娠中に運動するときは、以下に気をつけたいと八田先生は言います。

こまめに水分補給。

妊娠中は循環する血液量が増えるので、いつも以上に水分をとらなければなりません。特に運動中は汗をかきやすいので、積極的な水分補給を心がけましょう。一度にたくさん飲むと苦しくなってしまうこともあるので、こまめに少しずつ飲むことが大切です。

汗をかいたら、シャワーを浴びて清潔に。

妊娠中は汗をかきやすく、腟内環境も変化するため、運動が終わったら、シャワーを浴びるなどして、すぐに体を清潔にしましょう。さっぱりして、気分も爽快になります。

写真/Getty Images イラスト/こつじゆい


八田 真理子 
聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田理事長・院長。日本産科婦人科学会専門医・母体保護法指定医・日本産科婦人科学会認定ヘルスケアアドバイザー。複数の産婦人科勤務を経て、千葉県松戸市で実父が開院した「八田産婦人科」を継承し、1998年「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開院。地域密着型クリニックとして思春期から老年期まで幅広い世代の女性の診療・カウンセリングに従事。


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