幼保無償化って何?所得制限があるの?ママさんFPが解説。
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小学生未満のお子さんを育児中、またはこれから出産を予定しているご家庭にとって、「幼児教育・保育の無償化(以下、幼保無償化)」はとてもうれしい制度です。しかし、無償といってもすべての費用がただになるわけではなく、施設や事業によってそれぞれ条件が異なっています。幼保無償化を上手に利用して、養育費の負担をなるべく少なくするためにはどうしたらいいのでしょうか。
現在2歳から13歳まで6人のお子さんをもち、「保育料をなんとか安くしたくて、幼保無償化についてはいろいろ調べました!」というファイナンシャルプランナーの橋本絵美さんにお話を聞きました。
目次
- そもそも「幼保無償化」って?
- 補助金に上限月額が設けられている施設。
- 幼保無償化の手続きって何が必要なの?
- 幼保無償化、気になる所得制限は?
- この先の教育資金、今からできることはある?
- 【まとめ】無償化になる対象や条件などは、施設や自治体に必ず確認!
そもそも「幼保無償化」って?
未就学児がいる家庭の負担軽減を図るために、2019年10月から「幼児教育・保育の無償化(幼保無償化)」がスタートしました。「無償化の対象となる子どもは?」「申請は必要なの?」「自己負担になるものはある?」など、それぞれ見ていきましょう。
対象年齢や条件。
幼保無償化の対象となるのは、幼稚園・保育所・認定こども園・地域型保育などを利用する3歳児〜5歳児クラスまでの子ども。住民税非課税世帯であれば、0歳児〜2歳児クラスの子ども(※1)にも適用されます。国立・公立・私立にかかわらず、すべて対象になります。
※1 保育所等を利用する最年長の子どもを第1子とカウントし、第2子は半額、第3子以降は無料。ただし、年収360万円未満相当世帯では、第1子の年齢は問われません。
対象年齢で注意していただきたいのが、「3歳から」ではなく「3歳児クラスから」という点です。2歳児クラスにいる間に3歳になる子どもも多くいますが、3歳児クラスからでないと無償化の対象にはなりません。
また、就学前の障害児の発達支援(児童発達支援など)についても、無償化の対象になります。対象年齢は、満3歳になって初めての4月1日から、小学校入学までの3年間です。幼稚園・保育所・認定こども園などと併用する場合は両方とも無料になります。
自己負担になるもの。
無償化の対象となる費用は「利用料」に限られている点にも注意が必要です。それ以外の食事代(給食費やおやつなど)や、通園送迎費・教材費・行事費・制服代・保護者会にかかるお金など、利用料以外のものは保護者の負担となります。ただし、年収360万円未満相当世帯の子どもと、全世帯の第3子以降の子どもについては、おかずやおやつなどの副食の費用が免除されます。
利用したい幼稚園や保育園などがあれば、直接連絡をして、「幼保無償化になると思いますが、自己負担になるものはありますか?」など、無償化の対象以外のものは何にいくらかかるのか、確認しておきましょう。
補助金に上限月額が設けられている施設。
次の施設は完全無償ではなく、上限月額があるので注意が必要です。
子ども・子育て支援新制度の対象以外の幼稚園。
幼児期の学校教育や保育、地域の子育て支援の量の拡充や質の向上を目的とした「子ども・子育て支援新制度」という制度があり、その対象以外の幼稚園は月額2万5,700円まで補助される形になります。
幼稚園の預かり保育。
月額1万1,300円まで補助されます。幼稚園の利用に加え、月内の預かり保育利用日数に450円を乗じた額と、預かり保育の利用料を比較して少ないほうが月額1万1,300円まで無償となります。なお、対象となるためには「保育の必要性の認定」を受けなくてはならず、その際、就労等の要件を満たす必要があります。
認可外保育施設
一般的な認可外保育施設、地方自治体独自の認証保育施設、ベビーシッター、認可外の事業所内保育などのほか、一時預かり事業、病児保育事業、ファミリー・サポート・センター事業が対象です。3歳児〜5歳児クラスまでは、あわせて月額3万7,000円まで補助されます。0歳児〜2歳児クラスまでは、住民税非課税世帯の子どもに限り月額4万2,000円まで補助されます。
なお、保育所、認定こども園などを利用できていない家庭が対象となり、幼稚園の預かり保育同様に「保育の必要性の認定」を受ける必要があります。
参考:
幼保無償化の手続きって何が必要なの?
幼保無償化に際して手続きが必要かどうかは、通っている(通う予定の)施設によって異なります。申請の窓口も、自治体なのか事業者なのか施設により異なるため、確認していきましょう。
幼稚園や保育所・認定こども園・地域型保育。
子ども・子育て支援新制度の対象である幼稚園や保育所・認定こども園・地域型保育を利用する場合は、新たに無償化の手続きをする必要はありません。
子ども・子育て支援新制度に移行していない幼稚園を利用している場合は、補助を受けるための申請が必要になります。幼稚園から配布される書類に記入して、幼稚園経由で自治体に申請します。
幼稚園の預かり保育。
先述した「保育の必要性の認定」をお住まいの自治体から受けるための申請が必要です。基本的に、幼稚園から申請書類が配布され、幼稚園経由で自治体に申請します。
認可外保育施設
「保育の必要性の認定」をお住まいの自治体から受けるための申請が必要です。幼稚園の預かり保育と異なり、申請書類は基本的に自治体から配布され、直接自治体に申請することになります。
企業主導型保育事業
施設から配布される「企業主導型保育事業利用報告書」を、利用している施設、またはお住まいの自治体に提出する必要があります。従業員枠(従業員の子ども)は企業主導型保育事業利用報告書を提出するのみですが、地域枠(従業員の子ども以外)は自治体からの「保育の必要性の認定」を受けることも必要です。
障害児の発達支援施設。
申請は必要ありませんが、施設に対象者であることは伝えておきましょう。
参考:内閣府「幼児教育・保育の無償化制度でよくあるご質問はこちら(1)」
参考:内閣府「幼児教育・保育の無償化制度でよくあるご質問はこちら(2)」
幼保無償化、気になる所得制限は?
児童手当に所得制限が設けられているため、「幼保無償化制度も同じなのでは?」と思っている人もいるかもしれませんが、幼保無償化制度に所得制限はありません。所得に関係なく、どの家庭でも利用できる制度になっています。
また、「今は幼保無償化制度に所得制限はないけど、そのうち導入されるのでは?」と、SNS上などで話題になったこともあり、その点を心配している人もいるかと思います。2022年11月時点では、まだ導入が決定したといった公表はされていません。公的制度全般にいえることですが、今後どうなるかは不明なので、適宜情報を確認しましょう。
この先の教育資金、今からできることはある?
幼保無償化制度ができる前は、義務教育で授業料が無料になる(公立の場合)小中学生のころが「教育資金の貯めどき」といわれていました。しかし、幼保無償化制度ができたことで「貯めどき」が繰り上がり、もっと早い段階から教育資金の準備をはじめられるようになりました。
必要なときのために教育費をしっかり備えよう。
未就学児のうちにかかるはずだった出費が減ると、そのぶんを子どもの習い事などに使うというのはよくある話です。子どもの将来のためと思って、あれもこれもと通わせていると、次第に大きな金銭的負担になってしまいます。
子どもの教育費は、高校、大学と年齢が上がるほど高くなっていきます。目の前のことにお金を使いすぎると、後々「教育費が足りない!」と慌てることになる可能性も。子どもの長い将来を見すえ、教育プラン(私立に通わせるのか、どのくらい学費が必要そうかなど)をできるだけ早く検討し、教育資金の準備をはじめることをおすすめします。
貯金のほか、学資保険で備える手も。
将来必要な教育資金を無理なく貯めるためには、早いうちから準備をはじめることが大事です。短期的に必要になるお金はすぐに引き出せるよう貯金で備えておくほか、長期的に教育資金の準備が可能な学資保険という手段もあります。親(契約者)に何かあったときの保障がついている商品が多く、私のまわりでも利用している方は少なくありません。
学資保険は早く加入したほうが月々(または年間)の保険料や支払う保険料の総額が少なくなり、一般的に返還率が高くなります(※2)。被保険者である子どもの年齢制限を「7歳まで」などと設けている商品もあるため、加入は早めに検討することをおすすめします。子どもが生まれる前から加入できるものもあるので、育児で慌ただしくなる出産前に検討するのもよいでしょう。
※2 返還率が100%を超えず、払い込んだ保険料総額より受取総額が少ない商品もあります。
【まとめ】無償化になる対象や条件などは、施設や自治体に必ず確認!
幼保無償化は、小さい子どもがいる家庭にとって、大変うれしい制度です。ただし、2歳までは住民税非課税世帯のみが対象だったり、3歳以上でも施設によってはさまざまな条件が設けられていたり、利用料以外は自己負担だったりと、注意が必要です。あとで焦らないよう、必ず施設や自治体に問い合わせてしっかり確認しておきましょう。
また、幼保無償化によって金銭的に負担が減ったぶん、子どもの将来の教育資金にお金をまわすなど、上手に制度を活用してください。
写真/Getty Images、PIXTA イラスト/オオカミタホ
橋本 絵美
はしもとFPコンサルティングオフィス代表。ファイナンシャル・プランナー、お片づけプランナー。
慶應義塾大学商学部卒。2男4女を育てるママFP。子どもは宝であり、安心してもう1人子どもを産めるようにサポートしたいという思いからFPとなる。実践にもとづく「貯まる家計のしくみづくり」が好評。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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