STEM教育って?子どもの能力をグッと高める親の関わり方。 STEM教育って?子どもの能力をグッと高める親の関わり方。

STEM教育って?子どもの能力をグッと高める親の関わり方。

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2020年から小学校で必修化されたプログラミング学習。プログラミングを含むSTEM(ステム)教育は、これからの社会を生きるのに必要な能力が養われるといわれる教育分野です。なぜSTEM教育、プログラミングが注目されているのか、学ぶ子どもに親はどう関わればいいのか、3児のママでもある工学博士の五十嵐悠紀先生が解説します。

目次

STEM教育で問題解決能力を育てる。

STEM教育で問題解決能力を育てる。

STEM(ステム)教育の“STEM”とは、科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・数学(Mathematics)の頭文字を取った造語です。現代の複雑な社会問題を解決するための「問題解決能力」や、筋道立ててものごとを考えられる「論理的思考力」などを養うことを目的とした教育分野のことです。

この「STEM」に創造性豊かな発想力を養う「芸術・教養(Art)」を加えて、「STEAM(スチーム)」教育と呼ばれることもあります。

なぜSTEM教育が重要視されているの?

親世代が子どものころの学校教育は、答えのある問題を与えられて、その解き方を先生に教えてもらう一方通行の学びでした。

しかしスマートフォンが普及し、小学校でタブレット端末が配布されるようになった昨今は、従来の教育で身につく記憶力や計算力はコンピューターで補い、人間は必要に応じて検索・入力することが多い世の中になってきています。

だからこそ、これからを生きる子どもたちには、コンピューターではカバーできない「問題解決能力」や「論理的思考力」が身につくSTEM教育を行うべきだと注目が集まっています。

たとえば今の学校では、教師が教えることに加え、自分の意見を積極的に発言したり、友達の多様な意見を知って学んだりする“双方向型の授業”が主流になりつつあります。 これは、まさにSTEM教育の流れをくんだものです。

コンピューターが主流の新たな時代に必要とされる能力を養い、より暮らしやすい方向へ、人々をけん引していくような人材を育てることがSTEM教育の目的です。

日本のSTEM教育はスタートしたばかり。

アメリカでは、過去にオバマ元大統領がSTEM教育の重要性を訴えて、本格的に導入されました。シンガポールやインド、オーストラリアなどでも積極的に、国が子どもにSTEM教育を受けさせる施策を展開してきました。こうした国々では公立の学校にもWi-Fiが整備されるなど、ICT環境が充実しています。

一方で日本では、まさにSTEM教育が本格的にスタートしたばかり。2020年度からようやく、STEM教育の1つであるプログラミングが小学校で必修化され、「GIGA(ギガ)スクール構想」 の一環で、小学生に1人1台のパソコンまたはタブレットが支給されました。

ほかの先進国と比べると日本は後れをとっていますが、STEM教育の分野に興味がある子どもを育てるためのプログラムは近年充実してきています。

高校で先進的な理数教育を実施する「SSH(スーパーサイエンスハイスクール)」の制度や、独創的なアイデアを持つ17歳以下のクリエイター・プログラマーを支援するプログラム「未踏ジュニア」などがあり、今後の発展に期待したいところです。

参考:文部科学省「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」   
参考:文部科学省「GIGAスクール構想の実現へ」

ますます重要になるプログラミング教育。

ますます重要になるプログラミング教育。

プログラミング教育と聞くと、「プログラミングの知識を身につけさせるもの」というイメージを持つ人も多いようですが、実はちょっと違います。文部科学省がプログラミング教育を小学校で必修化した大きな目的は、子どもたちに“プログラミング的思考”を身につけてもらうためです。

プログラミング的思考とは、ものごとのしくみを理解したり、順序立てて考えたり、論理的に考えたり、問題解決能力を身につけたり……といった思考力のこと。

まさにこれからの時代に必要な能力が、ちょうどプログラミングをするときにも欠かせないために、プログラミングを学ぶことが重視されるようになったのです。

そもそもプログラミングってどんなもの?

プログラミングとは、プログラミング言語を用いて、コンピューターで“プログラム”を組んで処理させることです。

たとえばコンピューターに画像を表示させるためには、1ステップずつ「こうしてください」「次はこうしてください」と順番に書き出して、命令していくことが必要です。この命令をプログラムといい、書き出すことをプログラミングといいます。

プログラミングのためには専用の言語を用いることが必要で、たとえば「Python(パイソン)」や「Java(ジャバ)」、「C#(シーシャープ)」など、世界共通のいろいろな言語があります。

こうしたプログラミング言語には移り変わりがあり、今使われている言語が10年後、20年後にも使われているとは限りません。ただし、どのプログラミング言語を学んでも、論理的思考力などのプログラミングに必要な能力はしっかり身につけることができます。

子どもがプログラミングを学ぶ意義。

子どもが早いうちから「どういう順番で物事を考えればいいのか」「どういう組み合わせでプログラムが動くのか」といったプログラミングを学ぶことで、問題解決能力や論理的思考力を養うことができます。

また、失敗を恐れずに、何度も試行錯誤しながら成功体験を積めることも、コンピューター上で完結するプログラミングの大きなメリットです。

最近では、子どもが楽しみながらプログラミングを学ぶツールも充実してきています。その一方で、「うちの子はプログラマーになりたいわけじゃないし、必要ないかも……」と考えるお父さん、お母さんもいるかもしれません。

でも、大事なのは難しいプログラミング言語の構文を覚えることではなく、そのプロセスで重要になるプログラミング的思考を身につけることです。ぜひ楽しみながら学んでいってほしいと思います。

親として、どんなサポートができる?

親として、どんなサポートができる?

親世代は、プログラミングを必修で学んでこなかった世代です。プログラミングのことは全然わからないというお父さんやお母さんこそ、ぜひ子どもと一緒に取り組んでみてください。親が好奇心を持って学ぶ姿を見せることで、子どもも楽しみながら学ぶ姿勢を身につけられます。

親子で楽しみながらプログラミングを学ぼう。

「Viscuit(ビスケット)」や「ScratchJr(スクラッチジュニア)」は、5歳~7歳くらいから学べる簡単なプログラミング言語です。まだタイピングができない子や、アルファベットが読めない子でも、直感的な操作で絵を描いたり動かしたりすることができます。

ひと昔前は「読み・書き・そろばん」が教育の基本といわれましたが、最近では「読み・書き・プログラミング」という人もいるほどです。そろばんに代わる新たな子どもの習いごととしてプログラミングが定着しつつあるのです。

教室に通ってパソコンやタブレットを操作する「プログラミング教室」のほか、プログラムを組んでロボットを動かす「ロボット教室」も増えてきました。親子で一緒に学べるプログラミング教室もあります。

未就学児でもはじめられる!おすすめの子ども向けプログラミング言語3選。

私がおすすめしたい、主な子ども向けプログラミング言語は3つ。いずれも無料ではじめられますし、ホームページに丁寧な解説動画があり、解説書も発売されています。

●Viscuit(ビスケット)

5歳くらいから親しめる、とても簡単なプログラミング言語です。タブレット・スマートフォン、パソコンで利用可能。自分の描いた絵を動かして、アニメやゲーム、絵本などをつくることができます。

参考:Viscuit(ビスケット)

●ScratchJr(スクラッチジュニア)

5歳~7歳を対象にした、入門用のプログラミング言語です。iPadやAndroidのタブレットで利用可能。プログラミング用の図形ブロックを組みあわせてキャラクターを動かし、物語やゲームを作成できます。

参考:ScratchJr(スクラッチジュニア)

●Scratch(スクラッチ)

ある程度タイピングができる8歳〜16歳くらいの子どもが対象です。パソコンで利用可能。スクラッチジュニアよりもさらに高度なプログラムで、いろいろな作品をつくることができます。

参考:Scratch(スクラッチ)

プログラミング教室でメンターや友達から刺激を受けるのも◎。

プログラミング教室は、メンター(指導者)から教わることができるだけでなく、自分がつくった作品をまわりの友達に見せられることが大きな特徴です。友達の作品を見て意欲や発想力が刺激され、自分の作品をさらにブラッシュアップできるという相乗効果も期待できます。

子ども本人が楽しんで取り組めるか、教室の雰囲気が合うかどうかを見きわめるために、まずは無料体験授業に参加してみましょう。近くに教室がない場合、遠方からオンラインで参加できる教室もあります。

「プログラミングを学ばせたいんだけど、自宅の近くにはロボット教室しかなくて……」というケースもよく耳にします。ロボット教室でも、実際の内容はプログラミングがメインだということも多いので、気になるところがあったらぜひ体験授業に参加してみてください。

子どもとの関わり方、力の伸ばし方。

子どもがプログラミングを学ぶとき、親が寄り添うことで、プログラミング的思考をさらに伸ばすことができます。

わが家でもやっていることですが、子どもがつくった作品には「すごいね、どうやって遊ぶの?」と興味を持ち、お父さんやお母さんも一緒に遊んでみましょう。「おもしろいね!」と感想を言うだけでなく、「ここでキャラクターがジャンプしたら、もっとおもしろそうじゃない?」などと小さなアイデアを出してあげると、子どもがもっと張り切って次々とアイデアを考えて取り組むきっかけになります。

大事なのは、子どもが進んで取り組みたくなる環境をつくってあげること。学ばせっぱなしにせず、親も一緒に取り組んでみたり、作品を見せてもらって「どんな作品か」「どこを工夫したのか」などをプレゼンしてもらったりする時間をつくるのもいいでしょう。さらに子どもの学びたい意欲が引き出されますし、思考力も高まります。

STEM教育は大きなアドバンテージに。

子どもがSTEM教育を受け、プログラミング的思考を身につけることは、将来、どのような分野の道に進むにせよ、人生の大きなアドバンテージになります。ぜひ親子で学びを深めて、子どもたちには将来、貴重な人材として世の中に羽ばたいていってほしいと思います。

写真/Getty Images イラスト/こつじゆい


五十嵐 悠紀    
明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科専任准教授、工学博士。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。著書に『AI世代のデジタル教育 6歳までにきたえておきたい能力55』(河出書房新社)、『スマホに振り回される子 スマホを使いこなす子』(ジアース教育新社)など。3児のママ。


※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。   
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