ランニングは痩せる?ダイエット効果を高めるためのポイントを専門家が解説。 ランニングは痩せる?ダイエット効果を高めるためのポイントを専門家が解説。

ランニングは痩せる?ダイエット効果を高めるためのポイントを専門家が解説。

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テレワーク&巣ごもり生活が続いて運動不足気味、体重も増えてきた……。ダイエットも兼ねて、ランニングをはじめてみようかな、と思っている方も多いのでは? そこで、「ランニングで本当に痩せることはできる?」「はじめるならどんなことに気をつけたらいい?」といった素朴な疑問に、横浜市スポーツ医科学センターで減量・脂肪燃焼を目的としたトレーニングの指導に携わる今川泰憲さんがお答えします。

目次

ランニングすると痩せる?を検証。

「太った」「体重が増えた」……その原因は、エネルギーの消費量より摂取量が多いこと。消費するエネルギーより、食べたり飲んだりしたエネルギーが多かったというわけです。余分に摂ったエネルギーは、体脂肪となって体内にたくわえられます。それが「太った」「体重が増えた」という状態です。

増えた体脂肪を減らすには、消費エネルギーが摂取エネルギーを上回ることが必要です。これまでの生活に運動をプラスしてエネルギー消費量を増やし、「摂取量-消費量」のエネルギー収支をマイナスにすれば、体にため込んだ体脂肪を減らし、痩せることができます。

ちなみに、体脂肪1㎏はおよそ7,200kcalのエネルギー量に相当します。摂取量-消費量がマイナス7,200kcalになるごとに、1kgの体脂肪を減らせる計算になります。

エネルギーバランス

参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」

脂肪燃焼には「有酸素運動」が効果的。

私たちは、横になってじっと安静にしているときでも生命を維持するために常にエネルギーを消費しています。これが基礎代謝です。さらに、日常の活動や運動で体を動かすときなど、それらのエネルギーのもとになるのが体内にたくわえられた糖と脂肪です。

運動するときのエネルギー源には糖と脂肪の両方が使われ、運動の強度によってそのバランスが変化します。短距離走や筋力トレーニングなど、運動強度が高く、瞬発的なパワーを発揮する無酸素運動では糖がより多く使われます。ウォーキングやランニング、水泳など、比較的運動強度が低く、長時間続けることができる有酸素運動では、脂肪を使う比率が高まります。

ですから、運動中に体脂肪を燃やすには「有酸素運動」が適しているといえます。

中でもランニングがおすすめの理由。

「有酸素運動」にもいろいろな種目がありますが、運動強度によって時間あたりの消費エネルギーは異なります。

たとえば、時速6.4㎞のゆっくりしたペースで走る「スローランニング」は、時速5.6㎞のウォーキングの約1.4倍のエネルギーを消費します。これは、ウォーキングでは体はほぼ水平に移動するのに対し、ランニングでは上下の動きも加わるため、より多くのエネルギーを使うからです。

安静時を1としたときと比較して何倍のエネルギーを消費するかで活動の強度を示した運動強度の単位メッツ(METs)を用いてエネルギー消費量を計算すると下の計算になります。

エネルギー消費量=1.05kcal(※1)×メッツ数×体重(kg)×運動時間(時間)

体重60kgの人が時速6.4kmのスローランニングを1時間行う場合
1.05kcal×6.0(METs)×60(kg)×1(時間)=378(kcal)

体重60kgの人が時速5.6kmのウォーキングを1時間行う場合
1.05kcal×4.3(METs)×60(kg)×1(時間)=270.9(kcal)

378÷270.9=1.39(スローランニングのほうがウォーキングよりも、1.39倍のエネルギーを消費する)

参考:厚生労働省e-ヘルスネット 「身体活動・運動 > 身体活動 > 活動量の評価法」

※1 1.05kcal=体重1kg当たりにおける1時間当たりのエネルギー消費量

なお、エネルギー消費量を分単位で計算する場合は、下記の計算式になります。
エネルギー消費量=0.0175kcal(※2)×メッツ数×体重(kg)×運動時間(分)

※2 0.0175kcal=体重1kg当たり1分当たりのエネルギー消費量

コード
CODE
メッツ
METS
大項目
MAJOR HEADING
個別活動
SPECIFIC ACTIVITIES
120296.0ランニング (running)ランニング:6.4km/時、107.3m/分 (Running, 4 mph (13 min/mile))
172004.3歩行 (walking)歩行:5.6km/時、速い、平らで固い地面、運動目的で歩く (walking, 3.5 mph, level, brisk, firm surface, walking for exercise)

出典:独立行政法人国立健康・栄養研究所「改訂版『身体活動のメッツ(METs表)』」2012年4月11日改定

ランニングよりも激しい、エネルギーを消費する運動もありますが、運動習慣のない人や、体力・筋力に不安のある場合などは、急激に強度の高い運動を行うと、体に負担がかかり、ケガにつながる恐れもあります。

自分に合ったペースで走ることができ、適切なシューズさえ準備すればいつでも行えて、走った分だけエネルギー消費=脂肪燃焼ができるランニングは、初心者にも取り組みやすいおすすめの有酸素運動です。

減量は目標を立てることから。

食事量や運動以外の活動量が一定であれば、プラスした運動のぶんだけエネルギーが消費されて、体脂肪の減量につながります。まずは減量の目標をたてて、何をどのくらいやれば目標達成できるのかをつかんでみましょう。

体脂肪1㎏=約7,200kcalですから、仮に6か月(180日)で10㎏減を目指すなら、

7,200kcal×10kg÷180日=400kcal

「毎日400kcal分のエネルギー消費が必要」という目安がわかります。

参考:厚生労働省e-ヘルスネット 「身体活動・運動 > 身体活動 > 活動量の評価法」
下の計算式により算出
*エネルギー消費量計算式
エネルギー消費量=1.05kcal×メッツ数×体重(kg)×運動時間(時間)

独立行政法人国立健康・栄養研究所「改訂版『身体活動のメッツ(METs表)』」をもとに、運動強度と1時間当たりの体重別推定エネルギー消費量を計算すると下の表になります。

 40㎏50㎏60㎏70㎏80㎏
睡眠(基礎代謝)42 kcal52.5 kcal63 kcal73.5 kcal84 kcal
座って静かにテレビを観る(安静代謝)54.6 kcal68.25 kcal81.9 kcal95.55 kcal109.2 kcal
通常歩行(時速4.5-5.1㎞)147 kcal183.75 kcal220.5 kcal257.25 kcal294 kcal
スローランニング(時速6.4㎞)252 kcal315 kcal378 kcal441 kcal504 kcal
ランニング(時速10.8㎞)441 kcal551.25 kcal661.5 kcal771.75 kcal882 kcal

参考:独立行政法人国立健康・栄養研究所「改訂版『身体活動のメッツ(METs表)』」2012年4月11日改定より、ミラシル編集部が作成

上の表の通り、運動中に消費するエネルギー量は、体重・運動強度・運動時間によります。
あくまで目安の計算ですが、たとえば、体重60㎏の人が時速6.4㎞のスローランニングを1時間行うと約378kcal、体重70㎏の人が同じ運動をすると約441kcalを消費します。目標の約400kcalを消費するためには、体重60㎏の人なら1時間強、70㎏の人なら1時間弱のスローランニングを行えば良いということになります。がんばってこれを毎日続ければ半年間で体脂肪10㎏を減らせる計算に。自分の体重と、無理なく続けられそうな運動強度と時間を照らしあわせて、「〇か月後に〇kg減!」の目標を立てることからはじめましょう。

筋トレを組みあわせて脂肪燃焼効果アップ。

筋トレを組みあわせて脂肪燃焼効果アップ。

目標が決まったら、あとは継続あるのみですが、実はランニング(有酸素運動)だけを同じペースで長期的に続けていくと、「はじめたころに比べて体重が落ちにくくなった」と感じることはよくあります。

これは、ランニングのフォームが安定し、上手に走れるようになることで運動効率がよくなり、同じランニングでもより少ないエネルギーで遂行できるようになるためです。

そこで、おすすめしたいのが毎日5分〜10分間の「自重筋トレ」です。ランニングに筋力トレーニングを組みあわせて行うことがポイントで、脂肪燃焼がより効率よく進み、脂肪をためにくい体になっていきます。

ダイエット効果がアップする、筋トレ&ランニングの実践編をご紹介します。

ランニングの前に筋トレで、より効率よく脂肪燃焼。

筋力トレーニングを行うと、運動後に脂肪分解を促す成長ホルモンが分泌され、体脂肪を分解して燃焼しやすい状態をつくることがわかっています。筋トレ30分後くらいから脂肪分解タイムがはじまり、脂肪燃焼がしやすい状態が長時間(5時間~6時間)続きます。

そこで、筋トレで体脂肪を燃焼させやすい状態をつくってからランニングなど有酸素運動を行うと、より効果的に体脂肪を燃焼させることができるのです。

参考:今川泰憲「トレーニングのプロが本気で考えた 効果絶大自重筋トレ」2021 p26-31 ②筋トレを行うと体脂肪が燃えやすくなる(成長ホルモンの脂肪分解作用)

1日のはじまりに軽い筋トレを。

1日のはじまりに筋トレを日課にすれば、そのあと走ったり、通勤や家事で体を動かしたりする際にも体脂肪が燃えやすい状態になります。

筋トレは、特別なマシンを使わなくても、下で紹介するような自分の体重を負荷として利用するトレーニングで十分です。

起き抜けに布団の上でもできるおすすめの筋トレ。

ランニングと組みあわせて筋トレを行う部位はどこでもOKです。成長ホルモンによる脂肪分解作用が全身におよび、体を動かしたときに脂肪燃焼させやすい状態をつくります。

おすすめは、ヒップリフト(おしりともも裏に効く)とクランチ(腹筋に効く)の組み合わせです。インターバル(セット間の休憩)なしで交互に2セットずつ。約5分〜10分間で1日分の筋トレが完結して、成長ホルモンの分泌が促されます。

ヒップリフト

【1】スタートポジション

ヒップリフト・スタートポジション

 

【2】フィニッシュポジション

ヒップリフト・フィニッシュポジション

1.仰向けに寝て、両足は腰幅程度に開き、膝を立てます(【1】スタートポジション)。息を吐きながら3秒~4秒かけてゆっくりおしりを浮かせ、肩・股関節・膝が一直線になるようにします(【2】フィニッシュポジション)。
2.【1】の姿勢を5秒~10秒キープ。息を吸いながら3秒~4秒かけておしりを戻します。
3.筋肉の緊張を緩めずに以上の動作を5回(筋力の弱い人)~10回(筋力の強い人)程度、反復します。以上を1セットとして、合計2セット~3セット行います。

クランチ

【1】スタートポジション

クランチ・スタートポジション

【2】フィニッシュポジション

クランチ・フィニッシュポジション

1.仰向けに寝て、膝を90度より深く曲げて立てます(【1】スタートポジション)。腹筋に力を入れて、息を吐きながら頭のほうから順に背中を丸めるようにして、ゆっくりと上体を起こしていきます。
2.肩甲骨の下部が床から少し浮き上がる位置まで起こしたら(【2】フィニッシュポジション)、息を吸いながら3秒~4秒かけてゆっくりともとの位置に戻していきます。
3.筋肉の緊張を緩めずに以上の動作を5回(筋力の弱い人)~10回(筋力の強い人)程度、反復します。以上を1セットとして、合計2セット~3セット行います。

最後の数回が「かなりきついな、効いたな」と感じるくらいに筋肉を疲労させれば、成長ホルモンが出て体脂肪の分解が進み、体を動かしたときの脂肪燃焼効果が高まります。

走るときに気をつけたいこと。

脂肪燃焼を目的としたランニングでおすすめの時間帯は朝。なぜなら、通常はまだ体温が低くてエネルギー消費が少ない朝に運動を行うことで、交感神経の活動が活発になって体温が上がり、エネルギー消費の多い状態が日中を通して持続するからです。ただし、起きてすぐに走ると低血糖や脱水症状が起こりやすく、ケガのリスクも高まります。朝に走る場合は、ストレッチなどでしっかり体をほぐし、キャンディー1個やチョコレートをひとかけ程度の糖質と、コップ1杯~2杯(200ml~400ml)の十分な水分補給をしてから走りましょう。

初心者におすすめなのはスローランニング。

体脂肪の燃焼効率がもっとも高い強度は、運動しながら会話ができるくらいの「比較的楽」~「ややきつい」と感じるくらいです。運動時の目標心拍数(※)でいうと、25歳では133~145拍/分、35歳では128~139拍/分くらいのペースです。

※目標心拍数の計算式:(220-年齢-安静時心拍数)×0.5~0.6+安静時心拍数

ですが、体力のない人や初心者の人は、時速5~6㎞くらい(早歩き程度の速度)のスローランニングがおすすめ。歩く(3分)→スローランニング(1分)→歩く(3分)→スローランニング(1分)を繰り返して、歩きとスローランニングを交互に行うと良いでしょう。

参考:今川泰憲「トレーニングのプロが本気で考えた 効果絶大自重筋トレ」2021 p124 有酸素運動の強度について

最初の1か月間は特に慎重に。

これまで運動習慣のなかった人がランニングをはじめる場合は、最初の1か月間は特に慎重に、様子を見ながら少しずつ走るペースや距離をあげていきましょう。ケガを予防するために、走る前に脚を中心にしたストレッチも忘れずに。

走っているときに筋肉や関節、腱に痛みや違和感が出たときや、気分が悪くなったときは、そこでいったん中止して様子を見てください。

ランニングで心身の健康を手に入れよう。

・ランニングは脂肪燃焼に効果的な有酸素運動。
・ランニングの前の5分間筋トレで、脂肪燃焼効果が一段とアップ。
・ケガを防ぐため、最初の1か月間は特に慎重に。速度や時間は様子を見ながら少しずつ上げていこう。

ランニングには、減量だけでなくストレス解消や心肺機能の向上、動脈硬化の予防、学習・認知機能の向上、うつ病の予防など、いろいろな良い効果が期待できます。ぜひ筋トレ&ランニングを習慣にして、引き締まったスタイルと心身の健康を手に入れてください。

参考:厚生労働省「18歳から64歳の人を対象にした身体活動指針(アクティブガイド)」

写真/Getty Images イラスト/こつじゆい


今川 泰憲 
横浜市スポーツ医科学センタースポーツ科学部健康科学課医科学員。学術専門領域は運動生理学、トレーニング科学。同施設では、市民を対象とした体力測定とアドバイス、「減量・脂肪燃焼教室」における運動プログラム作成とアドバイスを担当。「無理なく安全で健康的に」減量効果が得られるトレーニングをサポートしている。著書に『トレーニングのプロが本気で考えた 効果絶大自重筋トレ』(コスミック出版)。


※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
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