プロゲーマーの世界で第一線を維持し続ける“ときど流”セルフケアの秘策。
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eスポーツの存在が広く知られる以前から、『ストリートファイター』シリーズをはじめ対戦格闘ゲームで腕を鳴らしてきたときどさん。日本におけるプロゲーマーの先駆者の1人です。
2017年には世界最高峰の対戦格闘ゲーム大会で、機械のように正確といわれた優勝最有力のPunk選手(アメリカ人選手)に勝利。敗者復活戦を勝ち抜いた末の優勝劇は、あまりにドラマチックな展開や伝説的なグランド・ファイナルと相まって、現在もファンの語り草となっています。
日々進化を続ける対戦格闘ゲーム界にあって、現在も第一線で闘い続けているときどさんに、ハイパフォーマンスを維持するための秘策を聞きました。キーワードは「予兆」です。
“ゲームが仕事”だからこそ直面する自己管理の難しさ。
──「eスポーツ」という呼び名もかなり浸透してきました。それとともに、プロゲーマーの世界はアスリートさながらに精神力などが要求されるという話もよく聞きます。そんな世界でトッププレーヤーであり続けるための大変さってどんなことでしょうか。
どこまででも練習できてしまうところです。
eスポーツでは肉体的な疲れがそこまで出ないんですよ。フィジカルを使うスポーツ選手だったら、今日はこれ以上体が動かないとか、次の日に響いてしまうとか、わかりやすいブレーキが働くと思います。でも僕らはいくらでも練習できてしまう。特に大会前は、調子が狂ってしまうぐらいやりすぎる。
eスポーツは、ゲームという遊びの延長線上にありますよね。ゲーム好きなら明日の仕事に差し支えると思っても、つい夜遅くまで遊んでしまった経験があると思います。
僕らプロゲーマーはそれを仕事にしているので、どこまでやるかをシビアに見極めないといけません。その管理がとても大変だなと感じます。どれくらい練習するのが一番いい状態なのかを探すことは、けっこう難しいんです。
──仕事にしているからこその苦労ですね。ちなみに、練習時間は1日どれくらいなのでしょうか。
大会シーズン中は長めで、6時間くらい練習をしています。それより短い日もあるので平均すると3時間?4時間程度でしょうか。ただ、それ以外に対戦相手の研究をする時間も大切です。僕はプレーしているほうが楽な性格で、研究はあまり好きじゃない(笑)。でもほかのプレーヤーが独自に編み出した闘い方があるので、それに勝つためには研究が不可欠なんです。
メンタル・フィジカルの状態を日々振り返ることが大切。
──第一線で活躍し続けるのは簡単なことではありません。30代後半のときどさんが、ハイパフォーマンスを維持する秘策を教えてもらいたいと思います。日ごろから取り組んでいるセルフケアはありますか?
しばらく続けていたことで言えば、コンディションのメモをつけることです。
参考にしたのは、スポーツ選手のメンタルトレーニングなどで有名なジム・レーヤーさんの『メンタル・タフネス』(KKベストセラーズ)という書籍です。セルフケアの古典のようなものだと思います。
具体的には、睡眠時間や食事の回数、幸せ度などのチェック項目について毎日ノートにつけ続けるという内容なんですが、続けていくうちに、「これは自分にとって重要」あるいは「これはあまり影響がない」などがわかってきました。
あとは最近だと、フィジカルなトレーニングを重視しています。いわゆる筋トレですね。筋トレは日々持ち上げられる重さが変わるものなので、いずれ何か見えてくるものがあるのではないかと思ってデータをとり続けています。
──eスポーツと筋トレって直接的に関係あるのでしょうか。動きが速くなるとか?
僕らの競技はフィジカルよりメンタルを酷使します。以前、プロレスラーの方のお話を聞いて、とても腹落ちしたことを覚えています。それは、レスラーは負けると体が打ちのめされた感覚があるけれど、eスポーツは心にだけダメージがくるだろうから、余計につらそうだというような内容でした。
たしかにそういう側面はある気がします。なので、負けてものすごく嫌な思いをしたら、フィジカルも痛めつける。そのために筋トレをする。すると体と心の調子が一致して、スッキリした感覚になります。次もがんばろうという前向きな気持ちになるんですよ。
──なるほど、メンタルを守るためにフィジカルも痛めつけると……。ちなみに、セルフチェック用のノートは今もつけ続けているのですか?
実はノートは一時お休み中です。最初は25項目について毎日ノートに評価を記録していたのですが、だんだん自分にとって重要なものとそうでないものがわかってきて、18項目くらいまで減っていきました。
さらに続けていたらノートがなくてもなんとなくコンディションが変化する「予兆」みたいなものが把握できるようになってきたので、わざわざ毎日つけなくてもいいかなと考えるようになったんです。
不調の「前ぶれ」を見逃さないことで、ケガにも対処する。
──経験を重ねて、自分の中での基準がはっきりしたのですね。ケガの予兆などもあるのでしょうか。