生理痛だけじゃない!ピルで改善・予防できる病気を医師が解説。 生理痛だけじゃない!ピルで改善・予防できる病気を医師が解説。

生理痛だけじゃない!ピルで改善・予防できる病気を医師が解説。

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#健康
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※ 記事中に出てくる子宮頸がんの解説は、国立がん研究センターの情報に基づいて制作しています。
※ 本文中に記載の保険に関する保障の条件は、保険会社によって異なります。詳しくはご加入の保険会社にお問い合わせください。

「低用量ピル」と聞くと、生理痛が重い人や避妊目的の人が飲むイメージを持つかもしれません。しかし、低用量ピルの効果はそれだけでなく、子宮内膜症や子宮体がんなど、女性特有の病気を予防したり悪化を防いだりするメリットもあるのです。産婦人科医の三輪綾子先生に、低用量ピルの効果や女性特有の病気について詳しく聞きました。

目次

低用量ピルのしくみって?

低用量ピルのしくみって?

低用量ピルは、生理痛や月経過多など生理に関する悩みのある人や、自分が決めたタイミングまでなるべく妊娠を防ぎたい人が服用する薬です。どのようなしくみで効果をもたらすのでしょうか。

女性ホルモンをコントロールする。

生理が起きる前後で、体の中では「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という2つのホルモンが分泌されます。これらのホルモンの分泌量の急激な変動が、生理前後のむくみや頭痛、腰痛などの不調を引き起こすことがあります。

低用量ピルには、この2つのホルモンが少量ずつ含まれています。服用して外部からホルモンを摂取することで、本来体内で分泌されるはずだったこれらのホルモンを抑えられ、安定したホルモンバランスにすることができるのです。

「妊娠中は排卵が抑えられ、生理も止まりますよね。低用量ピルを飲むと、妊娠中のホルモンバランスに近い形になるので、体が勘違いして排卵や生理を止めてしまう。その原理を利用して、生理痛や月経過多の治療や、避妊を行うことができるというわけです」(三輪先生)

ピルの種類や服用方法。

「低用量ピル」と一口に言っても、さまざまな種類が存在します。服用タイプで分けると、主に以下の2種類に分けられます。

●21錠タイプ

1日1錠を毎日ほぼ一定の時間に服用する。21日分を服用し終わったら、7日間休薬。休薬期間中に、生理よりも出血期間が短く出血量の少ない「消退出血」が起こる。

●28錠タイプ

休薬期間をはさまず、1日1錠を毎日ほぼ一定の時間に服用する。休薬期間に当たる最後の7日分の薬は、ホルモン成分の入っていない偽薬となっており、休薬期間後の飲み忘れを防ぐことができる。

「最近では、生理を120日間止め、4日間の休薬期間で消退出血を起こすという、新しいタイプの低用量ピルも開発されています。既存の低用量ピルを服用しても生理痛がなかなか改善しない人や、月経前症候群(PMS)の症状に悩む人が、生理の回数を減らすことで、不快な期間を減らす目的で使うことが多いです」(三輪先生)

低用量ピルで改善が期待できるもの。

低用量ピルで改善が期待できるもの。

低用量ピルを服用することで、生理に関する悩みの改善が期待できます。具体的に、低用量ピルがどのような症状に、どのようなメカニズムで作用するのか、みていきましょう。

生理痛・月経困難症

生理期間中、生理に伴って起こる病的症状を月経困難症といいます。生理痛といわれる腹痛・腰痛をはじめ、頭痛・下痢・吐き気・食欲不振・胃もたれなどが起き、人によっては日常生活に支障をきたすことがあります。

そもそも生理とは、1か月かけて厚くなった子宮内膜がはがれ落ちて、経血として体外に排出されることです。子宮内膜が厚くなると、プロスタグランジンという痛みの成分が分泌されるのですが、これが生理痛や月経困難症を引き起こす原因となることがあります。

「低用量ピルを飲むと、子宮内膜があまり厚くなりません。子宮内膜が薄い状態を維持できると、痛みの成分の分泌が減るので、生理痛や月経困難症の改善につながり、はがれ落ちて排出される経血の量も減らすことができます」(三輪先生)

月経前症候群(PMS)

月経前症候群(PMS)は、排卵から生理までの期間に現れる精神的・身体的な症状です。具体的な症状を挙げると、眠気やだるさ・食欲不振や食欲増加・肌荒れ・むくみ・胸の張り・腰痛など多岐にわたります。

「ピルは排卵に伴うホルモンの変化を和らげてくれるので、ホルモンの変動によって出現するPMSの症状をいくらか緩和できる場合があります。ただ、気分の落ち込みが激しい、イライラする、うつ症状が現れるなど、精神症状が強い場合は低用量ピルでは不十分な場合もあるので、医師に相談してください」(三輪先生)

低用量ピルで予防したり悪化を防いだりできるもの。

低用量ピルで予防や悪化を防げるもの。

低用量ピルには、生理によって起きる症状の改善だけでなく、以下のような女性特有の病気を予防したり、悪化を防いだりする効果もあります。

子宮内膜症

子宮内膜症とは、本来であれば子宮の内側にできるべき子宮内膜が、子宮の外にできてしまう病気です。

「生理を火山にたとえて説明すると、わかりやすいかもしれません。マグマがたまって噴火しているのが、生理が起きている状態ですね。子宮内膜症は、小さい火山がおなかの中にたくさんできてしまうイメージです。

たとえば、噴火が卵巣で起きると、チョコレートのう胞と呼ばれる卵巣のう腫ができてしまい、卵巣の機能低下につながります。また、子宮の表面や直腸など、さまざまなところに火山ができて噴火すると、マグマが飛び散って子宮や直腸が癒着してしまい、排便痛や性交痛を引き起こします」(三輪先生)

低用量ピルは、子宮内膜症を悪化させない働きがあります。放っておくとどんどん悪化してしまうので、低用量ピルで症状を抑えておくのは大切なことです。火山がなくなるわけではありませんが、休火山の状態にしておくことで、症状の進行を防ぐことができます。

三輪先生によると、「火山」がとても小さい場合は、超音波検査をしても見つからないことがあるそう。そのため、検査で問題がなかったとしても、生理痛が重い、排便痛があるなど、子宮内膜症の可能性がある人は、低用量ピルを飲んでおくのがおすすめとのことです。

子宮体がん・卵巣がん

低用量ピルは、子宮体がん(子宮の内膜にできるがん)や卵巣がんなどの、がんの予防効果も期待できます。

「子宮体がんの場合、無月経を放置することでリスクが上がるといわれています。低用量ピルを飲んでホルモンバランスを整え、生理を正しい周期で起こすことのできる低用量ピルの服用は、子宮体がんの予防につながるでしょう」(三輪先生)

子宮内膜症により、卵巣にのう腫ができている人は、将来的に卵巣がんを発症するおそれがあります。

「10cm以上の卵巣のう腫がある人は、卵巣がんの発症リスクが高まります。低用量ピルを飲んで、卵巣のう腫の悪化を防ぎ、卵巣になるべくダメージを負わないようにすることで、卵巣がんの予防になるといわれています」(三輪先生)

低用量ピルの副作用。

低用量ピルの副作用。

低用量ピルを服用すると、不正出血・気持ちの悪さ・血栓症(血管内に血の塊が詰まって血流を止めてしまう病気)などの副作用が出る場合があります。

「内服をはじめて数か月間は不快感や胸の張りを訴える人もいますが、次第に落ち着くので、症状が軽い場合は継続して飲んだほうがよいでしょう。ただ、初日から吐いてしまうなど重い症状が出る場合は、低用量ピルの種類を変えることで副作用が出なくなる場合もあるので、医師に相談してみてください。血栓症に関しては、低用量ピルを服用していない人に比べて若干リスクが高まるといわれているので、注意しながら服用しましょう。

低用量ピルは副作用が起こる可能性もありますが、メリットの多い薬。リスクをおそれすぎず、自分の体と相談しながら内服を検討してください」(三輪先生)

女性特有の病気の発症リスクは20代でも。

女性特有の病気の発症リスクは20代でも。

20代であれば、「自分はまだ若いし、重い病気とは無縁だ」と考えがちかもしれません。しかし、女性特有の病気の中には、20代~30代でも発症するリスクのある病気も少なくありません。

20代女性が特に気をつけるべき病気。

女性はホルモン依存性の病気が多いため、若くして病気になるリスクは男性よりも高くなる傾向にあります。

たとえば、先に低用量ピルで悪化を防げる病気として挙げた、子宮内膜症。20代でも罹患する人が少なくないことがわかってきています。

「子宮内膜症は、生理が起きることで進行する病気です。昔に比べて、出産をしない選択をする人が増えたことや、出産回数が減ったことで、1人あたりが生涯経験する生理の回数は増加。それに伴って、子宮内膜症に罹患する人も増えていると考えられます」(三輪先生)

また、がんと聞くと若い世代にはやや縁遠いイメージがありますが、子宮頸がん(子宮入り口の子宮頸部にできるがん)は20代でも注意が必要な病気とのこと。

年齢階級別罹患率【子宮頸部2019年】

「子宮頸がんは20代後半から罹患率が急増します。20代女性が罹患するがんとしては特に多いなと、日々の診察を通しても感じますね。私のクリニックの患者さんで、子宮頸がん手前の異形成の状態の方も含めると、検診にひっかかる方は本当に多いです。定期的な検査やHPVワクチンの接種をするなど、決して他人事だと思わず、早いうちから自分の体と向き合うことが大切です」(三輪先生)

参考:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)

参考:国立がん研究センターがん情報サービス「用語集」

治療費の負担はどれくらい?

上記のような病気に罹患してしまった場合、治療にはどの程度の負担がかかるのか、みていきましょう。

三輪先生によると、子宮内膜症に関しては、病変が小さければ低用量ピルの服用や、1年~1年半に一度の経過観察となるのだそう。しかし、病変が6cm程度に大きくなってしまっている場合は、手術を検討することになります。手術の場合は、腹腔鏡手術で3泊4日~1週間程度の入院が必要です。

子宮頸がんの場合、発見が早期であれば、1泊2日程度の入院で済む手術となります。しかし、進行していた場合は、20代でも子宮全摘出など、半月程度の入院を必要とする手術になることも。さらに、抗がん剤の治療をすることになった場合は、半年程度の治療期間となり、その間におよそ月1回の短期入院が必要となる場合もあると、三輪先生は語ります。

公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、入院1日あたりの自己負担費用の平均は2万3,300円。つまり1週間の入院となれば、20万円近い出費が想定されることになります(※1、※2、※3)。

※1 集計ベースは、過去5年間に入院し、自己負担費用を支払った人(高額療養費制度を利用した人+利用しなかった人(適用外含む))。

※2 治療費・食事代・差額ベッド代・本人や家族等の交通費や衣類・日用品などを含む金額。また、高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額。

※3 公的医療保険には、医療費の自己負担に限度額を定める高額療養費制度があり、実際の負担額はケースにより異なります。

参考:公益財団法人 生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」

「患者さんの中には、治療費の工面に苦労されて、民間の医療保険に入っておけばよかったと後悔される方も少なくありません。入院期間や治療が長引くほど、仕事も思うようにできなくなり、金銭的な負担は重くなっていきます。定期的な検査や、低用量ピルなどで対策を打つことはもちろん、罹患してしまったときのために、早いうちから保険についても一度考えてみてもよいと思います」(三輪先生)

もしものときに備える女性向け医療保険。

もしものときに備える女性向け医療保険。

ここまで解説してきたように、20代でも女性特有の病気によって、入院や長期の治療が必要になる可能性があります。

病気になった人は、誰もが「まさか自分が病気になるなんて」と思うもの。その「まさか」に直面したとき、金銭面での負担を少しでも減らすために、女性向け医療保険を検討するのも選択肢の1つです。

女性向け医療保険は、女性が罹患しやすい病気や、女性特有の病気への保障が手厚くなっている医療保険。性別問わず罹患する病気に対する入院や手術への保障はもちろん、女性が罹患しやすい病気については、特に手厚い保障を受けることができる場合が多いです。

保障内容には、対象となっている女性疾病で入院したときに受け取れる「女性疾病入院給付金」や、同じく対象の女性疾病で手術を受けたときに受け取れる「女性特定手術給付金」など、女性疾病特約がついている場合もあるので、チェックしてみてください。

【まとめ】まずは自分の体と向き合おう。

若いうちは多少気になることがあっても、なかなか病院に行こうとは思えないかもしれません。しかし、毎月の生理痛の影に、重い病気が隠れていることもあり得ます。

低用量ピルは服用するだけで、生理の負担が軽くなり、多くの病気のリスクを減らすことができます。まずは自分の体と向き合って、少しでも気になるところがあれば、ピルを飲むかどうかも含めて医師に相談してみましょう。同時に、もし病気になったときのための金銭的な備えについても、今から考えてみてはいかがでしょうか。

写真/PIXTA


三輪 綾子
THIRD CLINIC GINZA院長、一般社団法人 予防医療普及協会理事。日本産科婦人科学会産婦人科専門医・日本医師会認定産業医・母体保護法指定医。2012年に順天堂大学産科婦人科学講座に入局以来、産婦人科医として10年以上のキャリアを持つ。さらに、メディアに多数出演し、女性特有の健康問題や疾患について情報発信を行っている。2022年に「THIRD CLINIC GINZA」を開院。


※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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(登)C22N0281(2023.3.7)
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