近年人気のインターナショナルスクール。学費はどれくらい?必要な準備は?
「国内にいながら高い英語力を身につけられる」「日本とは異なる文化や価値観に小さいころから触れられる」などの理由から、近年注目を集めているインターナショナルスクール。「学費が高い」というイメージがありますが、実際のところはどうなのでしょう。インターナショナルスクール事情に詳しいファイナンシャルプランナーの脇若浩子さんが、必要となるお金の目安、入学のためにしておきたい準備や親子の心構えなどについて解説します。
目次
- インターナショナルスクールとは?
- インターナショナルスクールに通うメリット。
- インターナショナルスクールの学費の相場。
- プリスクールとは?
- 【まとめ】インターナショナルスクールは学費を確認して検討を。
インターナショナルスクールとは?
日本国内にあるインターナショナルスクールは、基本的には「日本在住の外国人や駐在員の子どもたちが通う学校」です。
英語で学ぶための学校。
日本に赴任している諸外国の外交官やビジネスパーソンの子どもたちは、日本語を話せないことがほとんどです。主にそのような子どもたちが、英語で授業を受けられる教育施設がインターナショナルスクールです。なお、日本の義務教育の対象外になることが多いため、日本人がインターナショナルスクールを卒業しても原則として日本の中学校や高校・大学の入学資格は得られません。
参考:文部科学省「11.学齢児童生徒をいわゆるインターナショナルスクールに通わせた場合の就学義務について」
日本人がインターナショナルスクールを志望する理由。
日本人が、日本の学校教育法第1条で規定する学校ではないインターナショナルスクールにあえて子どもを通わせるのは、一昔前は「自分は英語を話せないけれど、わが子には英語を話せるようになってほしい」という保護者の思いが大きな理由の1つでした。
しかし最近では、近年のグローバル化や日本の国際競争力の低下を背景に、「幼いうちからグローバル教育を受けて国際的に活躍してほしい」と考える保護者が入学させたがるケースが増えているようです。
インターナショナルスクールの入学資格。
昔からあるインターナショナルスクールの中には、日本国籍の保護者の子どもを入学不可とする学校も少なくありません。ただ、最近新設された学校では日本人枠を設けていたり、積極的に日本人を受け入れていたりするところも多いようです。
それでもやはり日本人の場合、両親のどちらかが外国籍または海外駐在歴がある家庭の子どもが優先的に受け入れられる傾向があります。
日本人スタッフが常駐している一部のスクールをのぞいて、入学後の学校からのお知らせや配布物などはすべて英語なので、保護者のうち1人は高い英語力が求められます。
入学試験は、学科試験と面接が行われます。インターナショナルスクールは英語力をつけるための学校ではなく、あくまでも「英語で学ぶ学校」。試験では親子ともに英語力を試されるため、英語でコミュニケーションを図れるように訓練しておく必要があります。
また、保護者が学校の教育理念を理解し共感していることも重視されるので、面接を通じて学校側に「自分がいかにその学校の理念に共感しているか」を英語でアピールすることが大切です。
インターナショナルスクールに通うメリット。
インターナショナルスクールは日本の小学校とは異なる学習環境とカリキュラムなので、国際的にみるとさまざまなメリットが得られます。
英語力が身につき、海外の大学に進学しやすくなる。
一番のメリットは、やはり英語力がつくことです。学校ではオールイングリッシュになるので、リスニング力やスピーキング力などの英語力が高まります。なお、入学後は小学校・中学校・高校とインターナショナルスクールで学び、海外の大学に進学するケースがほとんどです。
特に世界共通の教育プログラム「国際バカロレア(IB)」の認定校なら、学校で所定のカリキュラムを履修し、試験に合格することで国際的に認められる大学入学資格を得られるため、海外の大学への入学もしやすくなります。
グローバルな視点が身につく。
さまざまな(国の)子どもたちが集まっているので、人種や宗教、国籍など、バックグラウンドも多彩です。いろいろな価値観に触れられ、「自分の今いる環境が世界のすべてではない」と視野が広がります。
少人数制教育で個性を尊重してくれる。
規模が小さく、1クラス20人以下の学校がほとんどです。日本の多くの学校のような一斉授業ではなく、個々を尊重した教育がなされます。
授業の理解度によっては飛び級も可能で、逆に理解が追いついていない子どもの場合は1学年下げたり、同じ学年を繰り返したりして無理なく学ぶこともできます。
インターナショナルスクールの学費の相場。
前述のとおり、インターナショナルスクールの多くは、日本の学校教育法第1条で規定する学校ではありません。そのため、国からの補助金が出ないこと、また少人数制であることなどの理由から、日本の学校よりも各家庭が負担する費用が大きくなります。
受験時・入学時
受験料はおよそ2万円~5万円、入学金が20万円~50万円程度かかります。また、入学時には寄付金も求められます。
在学時
学費はスクールによって大きな差がありますが、授業料は教材費・施設使用料を含め年間100万円~200万円前後かかります。それ以外にもスクールバスの利用料やランチ代、保護者会の費用、さらに年度初めや施設改修時の寄付金があり、トータルで年間200万円~300万円程度を想定しておきましょう。
英語力が乏しい日本人の子どもの場合、チューター(家庭教師)に週2回程度、月数万円かけて英語の予習・復習や宿題をみてもらっているケースも少なくありません。また、サマースクールや模擬国連(学生が各国の大使になりきり、実際の国連の会議を模擬する活動)、音楽会などの各種イベントも行われるので、海外に行く場合は渡航費用もあわせて1回数十万円かかります。
海外から来た外交官や駐在員の家庭は国や会社からの補助金でインターナショナルスクールの学費をカバーできますが、日本人は全額自己負担なので、日本の私立校よりも金銭的な負担は大きくなります。それでも「子どもを真のグローバルリーダーに育てたい」といった確固たる意志がある家庭が、子どもをインターナショナルスクールに通わせているといえます。
プリスクールとは?
プリスクールは日本の保育園または幼稚園に当たる施設です。インターナショナルスクールに付属するプリスクールと、単独のプリスクールの2種類があります。0歳から入れるところもあれば、日本の幼稚園のように3歳~5歳で入れるところもあり、預けられるのは午前中のみか終日かなど、施設ごとに特徴があります。「インターナショナルスクールは金銭面で難しいけれど、小学校入学前だけはプリスクールに通わせたい」という家庭も増えています。
プリスクールに通うメリット。
プリスクールに通うことで、幼いうちから耳が英語に慣れ、英語の発音やリスニング力が向上します。プリスクールを出たあとに日本の小学校に入ると、残念ながら英語力は低下していきますが、英語教室に通わせるなど英語に触れさせ続けることである程度は維持できます。また、小学校入学時にインターナショナルスクールを受験するよりも、付属のプリスクールからエスカレーター式で進級するほうが小学校にスムーズに入れるというメリットもあります。
「幼児教育・保育の無償化」の対象。
プリスクールの学費はインターナショナルスクールと比べると安価ですが、年間100万円~250万円程度かかります。ただし、認可外保育施設として日本の幼児教育・保育の無償化制度の対象になるため、お住まいの市区町村から「保育の必要性の認定」を受けた場合は、所定の金額分の補助が受けられます。学費のすべてを補うことはできませんが、若干の負担減になるので「頑張れば2年くらいは通わせられる」というご家庭も多いかもしれません。
【まとめ】インターナショナルスクールは学費を確認して検討を。
インターナショナルスクールは学費の高さが一番のデメリット。日本の学校を卒業したとはみなされないため、多くの場合、入学後はずっとインターナショナルスクールに通い続けます。つまり、小中高の12年にわたり年間約200万円~約300万円の学費を、そして海外の大学に進学後は年間約500万円~約1,000万円の留学費用を払い続けることに。インターナショナルスクールへの進学を検討する場合は、途中から日本の学校に通うなどの方向転換が難しいので、大学までの長期的スパンでよく考えたうえで、教育費をシミュレーションしておく必要があります。
お金の問題を解決できれば、インターナショナルスクールは、日本にいながら子どもを国際人に育てられる魅力的な環境の教育機関です。あらかじめ予算をしっかり把握して、入学を検討してみましょう。
写真/Getty Images イラスト/こつじゆい
脇若 浩子
ファイナンシャルプランナー(CFP(R))。東京都出身。1999年にFP資格取得。その後、家族の海外転勤により、2002年からオーストラリア・パース→日本→オーストラリア・ブリスベン→日本→カタール・ドーハと、日本と海外を数年おきに移動する生活をしながら、FPおよびロングステイアドバイザーとして執筆・セミナー講師の仕事に従事、2019年に本帰国。女性のためのライフプランニングを得意とする。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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