肩こりがひどいときどうすればいい?対処法や注意点を解説。
老若男女を問わず、多くの人が悩まされている肩こり。中には、ひどい肩こりとともに頭痛や吐き気といった不調を伴うなど、日常生活にまで影響が出てきている人もいるのではないでしょうか? 今回は、整形外科医で、肩こりに関する著書も多い遠藤健司先生に、肩こりの原因やセルフケアについて聞きました。
目次
- 肩こりがひどい。そのメカニズムは?
- 肩こりの原因は?
- 肩こりがひどいときの対処法。
- 肩こりがひどいときにおすすめのストレッチは?
- 肩こりからつながる可能性がある病気。
- セルフケアでつらい肩こりを緩和しよう。
肩こりがひどい。そのメカニズムは?
そもそも肩こりとは、首を支える筋肉が緊張することで、筋肉の中の血流が悪くなり、疲労物質がたまって痛みなどの不快感が出る状態を言います。
痛みが出ると、さらに緊張が強くなり、ますます筋肉が硬くなるという悪循環に陥り、頭痛や眼精疲労、うつ病といった、肩こり以外の不調を引き起こす原因にもなり得ます。頸椎(けいつい)の軟骨がすり減ることで起こる首の痛みなどと混同されることもありますが、肩のまわりの筋肉に起きるトラブルであるというところがポイントです。
肩こりの原因は?
肩こりは、肩や肩甲骨のまわりにある僧帽筋(そうぼうきん)、肩甲挙筋(けんこうきょきん)や菱形筋(りょうけいきん)といった、首を支える筋肉が緊張した状態。長時間悪い姿勢でいたり、精神的な負荷がかかったりすることによって引き起こされます。
原因1:首を支える筋肉の緊張。
首を支える筋肉が緊張してしまう主な原因は、体重の約10%の重さがある頭を無理な姿勢で支え続けること。体重が60kgの人なら頭の重さは約6kgですが、首の傾きによって首への負荷は増大します。たとえば、首が30度傾けば、およそ3倍の重さが首にかかります。手元のスマートフォンを操作するために視線を落とせば、首は簡単に30度、45度と傾き、その負荷によって筋肉が緊張してしまいます。
原因2:長時間悪い姿勢でいること。
長時間、デスクワークやスマートフォンの操作をしていると、その間、頭部を肩の筋肉で支え続けることになります。同様に、猫背など日常的に悪い姿勢が身についている人も、慢性的に首や肩の筋肉に負荷を与え続けていることになります。
そのような状態で長い時間がたつと、首や肩の筋肉の緊張が慢性化し、次第に痛みを伴うようになります。すると、緊張からくる痛みがさらなる緊張を呼ぶという悪循環が起こり、肩の痛みや張りがどんどん悪化します。
原因3:精神的なストレス。
首や肩の筋肉が緊張しているときに精神的なストレスが加わると、脳が筋肉の緊張や痛みをより強く感じるようになります。すると、その痛みや不快感からさらに筋肉の緊張につながり、肩こりが肩こりを呼ぶ悪循環を招きます。
肩こりがひどいときの対処法。
肩こりは日常生活の中でよくなったり悪くなったりを繰り返す不調です。病気ではないため、「これ」と言った治療法はありませんが、セルフケアで改善させることができます。
30分に1回は体を動かす。
長くデスクワークをする場合、軽い運動でもいいので30分に1回は体を動かしましょう。ストレッチも効果的ですが、おすすめは、遠くを見て肩関節を大きく動かしながらゆっくり歩くこと。動物の体は植物とは違い、動かないことを前提にしたつくりになっていません。体は動きたいのに「仕事を終わらせなくては」と机にかじりついて頑張ってしまうと、肩こりにつながります。
肩や首を温める。
お風呂に入ったり、蒸しタオルをあてたりして首や肩を温めると血行がよくなるので、肩こりが楽になります。
入浴する際のお湯の温度は、夏なら38度、冬は40度前後が目安。筋肉がほぐれるように、肩までつかりましょう。ただし、肩こりと同時に精神的なストレスも強く感じている人は、自律神経を整えるために半身浴にするほうが効果を実感できるかもしれません。
ストレッチをする。
硬くなってしまったインナーマッスル(体の深層部にある筋肉)も含めてセルフケアをするには、ストレッチによって、自分自身で動かすことが効果的です。
軽度の肩こりならマッサージでもよくなりますし、精神的な緊張を取り除くという点でもマッサージは有効です。しかし、深いところにあるインナーマッスルに血流障害が起きている場合は、マッサージで筋肉を柔らかくすることはできません。加えて、素人判断で肩を揉んだり叩いたりすれば、かえって筋肉を傷つけ、硬くしてしまうことにもなりかねません。マッサージは専門家に相談しながら行うようにしましょう。
肩こりがひどいときにおすすめのストレッチは?
肩こりの症状を緩和するには、首を支える筋肉がたくさんついている肩甲骨を動かすことが大切です。肩こりの人は、つい首を左右に動かしたり、回したりしてしまいがちですが、首の関節を痛める恐れがあるので注意が必要です。動かすのは首ではなく「肩甲骨」であることを意識しましょう。
ハンモックポジション
両手を組んで後頭部にあて、イスの背もたれに寄りかかります。肩甲骨とそのまわりの筋肉を同時にゆるめられます。
肩甲骨はがし
体の前で左右の前腕をぴったりくっつけ、そのまま肘を肩より上に上げます。前腕がぴったりくっつかない場合も、無理のない範囲で腕を上げましょう。それから両腕をそれぞれ左右に開き、5秒かけて体の両側から下ろします。この動作をすることで、肩甲骨に張りついたかのようにガチガチに固まってしまった筋肉をほぐすことができます。
肩こりからつながる可能性がある病気。
肩こりを放置すると、さらに深刻な状態になってしまうケースもあります。ここでは、肩こりからつながる可能性や肩こりの症状が出る主な病気を紹介します。
病気 | 症状 |
緊張型頭痛 | 頭の周囲が締めつけられるように痛くなる頭痛。頭だけでなく肩や背中にかけて痛みが出ることも。 |
胸郭出口症候群 | つり革につかまるときのように腕を上げる動作をすると、上肢のしびれや肩や腕、肩甲骨の周囲に痛みが生じる。肩こりによって神経や血管が圧迫されることで発症する。 |
首下がり症候群 | 肩こりが続くと、次第に頭が重く感じてうつむきがちになり、最終的に上を向けなくなってしまう。高齢者にも増えている。 |
自律神経失調症 | 肩のこりや痛みを感じ続ける脳に影響がおよび、交感神経の過緊張を引き起こし、副交感神経とのバランスが崩れて発症する。イライラ・不眠・高血圧・過食のほか、だるい・やる気が出ないといったことにつながり、重症化するとうつ病になってしまうこともある。 |
取材内容をもとにミラシル編集部にて作成
セルフケアでつらい肩こりを緩和しよう。
現代病とも言える肩こりは、眼精疲労や頭痛、手足の冷えといった不調につながることもあります。特に、複数の症状が同時に出てくる場合は肩こりが原因である可能性が高いと言えるでしょう。そうすると日常生活にも支障をきたす可能性があるので、たかが肩こりと放置せず、日々のセルフケアに加えて、手足のしびれや発熱があった場合は整形外科を受診したり、専門家に相談したりすることが大切です。
写真/PIXTA イラスト/オオカミタホ
遠藤 健司
東京医科大学整形外科准教授。日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医。東京医科大学整形外科大学院修了後、米国ロックフェラー大学、東京医科大学整形外科医長などを経て2018年より現職。自身が肩こりに苦しんだ経験から、「肩甲骨はがし」ストレッチを開発。『完全版 自律神経が整う 肩甲骨はがし』(幻冬舎)、『肩・首・腰・頭 デスクワーカーの痛み全部とれる 医師が教える最強メソッド』(かんき出版)などの著書のほか、日本テレビ「世界一受けたい授業」、TBS「この差って何ですか?」などメディア出演多数。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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