爪が割れる原因は?予防やセルフケア方法、割れたときの対処法を解説。
手足の指先を保護する爪は加齢とともに薄く、割れやすくなります。ところが若い世代でも、特に傷つけた覚えがなくても爪が割れてしまうことがあります。爪が割れる原因と対処法、爪を丈夫に保つためのケアについて、皮膚を通じて女性1人ひとりの健康生活や美のデザインに取り組む、皮膚科医の平田雅子先生に聞きました。
目次
爪が割れる原因は栄養不足と刺激。病気の可能性は?
50代~60代になると、老化の影響で爪が割れることがありますが、若い世代の場合、自然に割れることは多くありません。それでも割れてしまうとき、たいていは物理的な負荷によるものか栄養不足が原因ですが、なかには病気が隠れていることもあります。
爪が割れる主な原因。
指先をどこかにぶつけるなど、物理的な負荷がかかった場合以外に考えられるのは、タンパク質やビタミンなどの栄養不足。普段の食生活でこうした栄養が足りていないと、爪が薄くなり、割れやすくなります。
また、皮膚が生まれつき弱い人がいるように、もともと爪が弱い人もいます。そうした人が、頻繁にマニキュアや除光液を使うなどして爪に刺激を与えると、もろくなって割れやすくなります。特に髪の毛の色が薄くて細い、重度のアトピーなどで皮膚が弱い、爪の根もとにある白みが強い部分「爪半月」の面積が小さい人は、爪があまり丈夫ではない可能性があるため注意が必要です。
爪が割れるなど、爪にトラブルが起こる病気。
病気が原因で爪が割れたり、変形・変色したりする場合もあります。気になることがあるときは医療機関に行きましょう。
爪甲縦裂症
爪が縦に割れる状態を総称して爪甲縦裂症(そうこうじゅうれつしょう)と呼んでいます。爪甲縦裂症につながる病気の1つに、「グロームス腫瘍」というものがあります。若い世代にもみられ、爪の下に腫瘍ができることで爪が持ち上がり、症状が悪化すると爪が割れてしまうこともあります。
爪甲縦裂症には原因がわからないケースもありますが、多くは外的な刺激によるものと考えられています。
爪甲剝離症
爪甲剝離症(そうこうはくりしょう)は下の皮膚と爪が離れてしまう状態のことで、女性の割合が高いとされています。原因はさまざまありますが、栄養不足によるものが多く、症状としては爪が白くなり、重症の場合は浮き上がって割れてしまうこともあります。爪を保護して栄養に気をつけることで治るケースがほとんどですが、水虫などと勘違いして放置すると、手を洗うたび爪と皮膚の隙間に水やゴミが入り、治りにくくなるため要注意です。
そのほかの症状。
足に合わない靴を履くことで起きる外反母趾や、鉄分不足による貧血も爪が変形する原因になります。また、尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)という皮膚の病気では、爪に針で刺したような穴があきます。ほかにも、ぶつけた衝撃で爪の甲の間に空気が入って白い斑点が現れたり、爪のほくろや出血によって黒い筋ができたりと、20代や30代でも爪のトラブルは起こりえます。
爪には全身の健康状態が現れるので、日ごろから観察するように習慣づけましょう。なにか異変を感じたら、すぐに医療機関を受診することをおすすめします。
爪が割れたときの対処法は?
爪が割れてしまったときは、固定して動かさないことが何よりも大切です。割れた爪をはがしたり、切り取ったりするのは避けましょう。
医療用テープで応急処置をする。
割れた部分を覆うように医療用テープを貼って固定します。固定されていないうちにテープをはがすと、爪が一緒にはがれたり、位置がずれたりすることがあるため、テープはできるだけ貼りっぱなしにして、爪が自然にくっつくのを待ちましょう。
マニキュアやジェルネイルをしている場合も、自己判断でネイルを落とすとさらに爪を傷める可能性があるため、ネイルの上からそのままテープを貼ります。テープが手もとにないときは、ばんそうこうでも代用できますが、手を洗う際にガーゼ部分がぬれて菌が繁殖する場合もあるため、ガーゼ部分は使用せずテープ部分のみを使用しましょう。
ネイルサロンへ相談をする。
割れが小さく、腫れや痛みがなければ、ネイルサロンで透明のマニキュアを塗ってもらって爪を固定するのもいいでしょう。ただし、傷口が大きい場合は感染を起こす可能性があるため、不安なときはまず医療機関を受診しましょう。
大きく割れている、痛みがあるときは迷わずに医療機関へ。
割れが大きいときや痛みや腫れ、爪の変色があるときには冷やすなどして、できるだけ早く皮膚科や形成外科などの医療機関を受診しましょう。特に爪の根もとを大きく傷つけたまま放置すると、その後爪が生えにくくなることもあります。爪がなくなってしまうと指に力が入らず、日常生活に支障が出る場合も。残っている爪は自己判断ではがしたり切り取ったりせず、医師に処置してもらってください。
爪が割れる前にできる対策は?
ほんの少しの心がけで、爪を割れにくく丈夫に保てます。
必要な栄養分をしっかり摂る。
爪の主成分でもある、タンパク質を積極的に摂りましょう。タンパク質は、卵や脂肪の少ない部位の肉類、納豆などの豆類に多く含まれています。また爪は皮膚の一部なので、皮膚を丈夫にするビタミンB群の一種「ビオチン」のサプリメントもおすすめです。そのほか、爪が変形する原因となる貧血にならないよう、レバーやまぐろなどの赤身の魚に含まれる鉄分も積極的に摂るといいでしょう。
過度な爪への負荷を避ける。
爪を引っかけて缶の蓋を開けるような、爪を使う作業はなるべく控えましょう。爪はあまり伸ばさずに指先と同じくらいにすると、どこかに当ててしまったときのダメージを軽減できます。手を使う作業をするときは軍手やビニール手袋をつけましょう。
また、ネイルを頻繁に塗り替える、または爪の根もとまで覆うように塗るのも爪への負担になります。ネイルの塗り方に気をつけると同時に、ネイルをしないで爪を休ませる日をつくるように心がけましょう。
爪の保湿ケアで乾燥予防。
顔や手と同様に爪も乾燥します。朝晩、顔に乳液をつけるときや、日中、ハンドクリームを塗るときは、毎回爪の甘皮付近にも塗るようにしましょう。爪の根もとにある甘皮付近は、新しい爪がつくられる部分でもあるため念入りに塗ることをおすすめします。爪用のクリームでなくとも手に残った乳液やクリームで十分なので、なるべく頻繁に保湿してください。足の爪も、入浴後などに1日一度は保湿しましょう。
またネイルを塗るときは、根もとにほんの少しでもスペースを残し、その部分にクリームを塗るようにすれば、それだけでも効果的です。
爪の切り方や爪をかむ癖に注意する。
爪切りで切ると、爪全体に強い圧がかかるだけでなく根もとにも負担がかかるため、爪やすりで削る方がおすすめです。削り方はまず、爪の根もとの部分を上下から別の2本の指で押さえるようにします。人さし指を削る場合は、中指と親指ではさんで固定します。そして、爪と指の長さが同じになるように、爪のカーブが滑らかになるまでやすりを一方向にだけ動かします。爪の先の白い部分をすべて削ってしまうと、指先を痛めて爪が割れやすくなる原因になります。週1回くらいのペースで、爪が長くなる前にやすりをかけるといいでしょう。
また、爪をかむ癖がある人は、爪がうまく生えなくなる可能性があるため注意が必要です。
爪の変化で健康状態がわかる。
爪は健康のバロメーターともいわれるほど、その人の体調や栄養状態を映し出します。普段、爪の大切さを意識する機会はあまりないかもしれませんが、私たちが手足を使っていろいろなことができるのも、爪があるおかげ。今のうちからコツコツとケアを続けて、割れにくい丈夫な爪を保ちましょう。
写真/PIXTA
平田 雅子
医療法人社団育生会私のクリニック目白理事長兼院長。医学博士。日本皮膚科学会皮膚科専門医、日本医師会産業医。大学病院の皮膚科勤務を経て、皮膚科クリニック副院長として、毎日300人以上の患者の診療にあたった経験を生かし、2003年に「私のクリニック目白」を開設。皮膚科の枠を超えた女性医療と美容医療に取り組んでいる。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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