男性更年期障害とは?30代でも油断は禁物。セルフチェックつき。
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やる気が出ない・だるい・疲れが残る……。男性にあらわれる原因不明の不調は、もしかしたら男性更年期障害かもしれません。早い人では30代半ばから症状が出るという男性更年期障害は、それまで積み重ねてきた生活習慣にもかかわりがあるようです。日本泌尿器科学会の泌尿器科専門医として、男性更年期障害の治療や啓発に取り組む田村貴明先生が、男性更年期障害について解説します。
目次
- 男性更年期障害とは?
- 男性更年期障害は、加齢とともに減っていくテストステロンが原因。
- 「更年期障害かも?」と思ったら。
- サインを見逃さず、健康的な生活習慣を意識しよう。
- もしものとき、安心して治療を受けられるように。
男性更年期障害とは?
更年期障害には「女性の病気」というイメージがありますが、男性の更年期障害もあります。男性ホルモンであるテストステロンの減少によってあらわれる身体的・精神的な不調のことで、一般的には加齢とともにあらわれます。
30代~60代で、かつ年齢に不相応なテストステロンの減少があり、さらに心身に不調がある場合は「男性更年期障害」と診断されます。では、どのような症状があらわれるのでしょうか。
男性更年期障害にみられる主な症状。
・イライラする、倦怠感がある、やる気が出ない、不安感がある、集中力や記憶力が低下するなど。
・不眠。入眠しづらい、夜中に何度も目が覚めてしまう、朝起きたときにスッキリとしていない、日中眠気を感じることがある(継続的に)。
・筋力や体力の低下。以前と比べて体に力が入りづらい、倒れた自転車やバイクを起こせなくなった、駅の階段を駆け上がる途中で脚が上がらなくなるなど。
・頻尿。起きている間のトイレ回数が8回以上になった。個人差もあるので、以前と比べて明らかに尿の回数が増えたら要注意。
・肥満。腹筋が落ちて脂肪がつきやすくなる。下腹がぽっこりと出て、垂れ下がるように見えてしまう。
・性欲の減退とともに、勃起力も低下。
男性更年期障害のセルフチェックリスト。
男性は、メンタルの不調を感じて受診すると男性更年期障害と診断されるケースが多いのですが、問診をしていくと「体の症状も出ていた」と気づかれる人が多いようです。次のセルフチェックリストで、体とメンタル、それぞれ2個以上当てはまるようなら、医療機関の受診を考えてみましょう。
【体にあらわれる症状】
□倦怠感がある
□寝つきが悪い、眠りが浅いと感じる、朝の目覚めがスッキリしない
□筋肉が落ちる、筋力の低下を感じる
□排尿の回数が増えた
□下腹がポッコリ出てきた
□早朝勃起の回数が減った
【メンタルにあらわれる症状】
□気持ちが落ち込む、意欲がわかない
□ぼうっとしてしまい、仕事でのミスが目立つ
□イライラして、すぐに怒ってしまう
□心から笑っていないと感じる
□人づきあいが面倒になった
男性更年期障害は、加齢とともに減っていくテストステロンが原因。
男性の更年期障害の主な原因は、加齢とともに、男性ホルモンの1つ「テストステロン」の分泌量が減っていくことです。ただし、閉経前後に女性ホルモンが一気に下がって更年期障害の症状が出る女性に比べ、男性は20代をピークにテストステロンが緩やかに減っていくため、更年期障害の症状が出る時期の個人差は大きくなります。そのため、加齢による「ただの疲れ」と捉えられてしまいがちで、気づきにくいのです。
テストステロンとは?
テストステロンの95%は精巣でつくられます。男性の性機能を保ち、筋肉や骨を増強する働きのほかにも、臓器や血管の正常な働きに寄与します。また、脳内で記憶をつかさどる海馬においても微量が合成され、その機能を活性化することがわかっています。
そのため、テストステロンの減少は、筋力や骨密度の低下から、将来の骨折・転倒のリスクの上昇につながるばかりでなく、肝臓や膵臓(すいぞう)の機能低下による脂質異常症や糖尿病のリスク上昇や、動脈硬化による心筋梗塞や脳卒中などの病気にもつながる可能性があります。また、身体的な不調だけでなく、精神的な不調や不眠症、将来の認知症発症の恐れもあります。
ストレスはテストステロンの大敵。
加齢のほか、過度のストレスもテストステロンの減少を招きます。たとえ20代でも、たとえば二日酔いによるストレスによって、テストステロン値は一時的に下がることがわかっています。常にストレスを抱えている人はテストステロンが低下する一方のため、男性更年期障害になりやすいといえるでしょう。
また、もともとテストステロン値の高い人が、環境の変化などで非常に強いストレスにさらされると、テストステロン値が急にガクンと下がり、そのギャップの大きさから更年期障害の症状が出てしまうこともあります。加齢は誰にでも訪れますが、ストレスには個人差があるため、その意味では、テストステロンの1番の敵はストレスといえるかもしれません。
「更年期障害かも?」と思ったら。
若い人では30代半ばで「男性更年期障害」と診断されるケースもあるそうです。では、「更年期障害かな?」と思ったら、何科を受診すればいいのでしょうか。
テストステロン治療認定医のいる専門外来がおすすめ。
テストステロン治療認定医のいる「メンズヘルス外来」「男性更年期外来」といった泌尿器科系の専門外来では、男性更年期障害の症状に合った適切な治療が期待できます。また、近年、男性更年期障害への関心が高まっていることもあり、一般的な泌尿器科や内科でも男性更年期障害を視野に入れた診療を行うクリニックは増えています。
男性更年期障害と診断されたら、どんな治療を受けるの?
男性更年期障害と診断された場合、一般に、臨床ではAMSスコア(※)をはじめとする質問票や問診、血液検査におけるテストステロン濃度などのデータから総合的に重症度を判定し、個々人に合った治療法を検討します。
※ 男性更年期症状の臨床で用いられる代表的な質問票。全17項目あり、各項目で5段階の点数がつけられ、その合計点数によって、「17点~26点:なし」「27点~36点:軽度」「37点~49点:中等度」「50点以上:重度」に区分けされます。ただし、このスコアリングは、テストステロンの値を必ずしも反映せず、体内の炎症の程度を反映しているという意見もあり、あくまで重症度を検討する際の目安の1つとして使われています。
軽度の場合は?
軽度の場合は、睡眠をしっかりとって適度な運動を行うといった「生活改善」で様子を見ます。バランスのよい食生活を心がけるとともに、必要に応じてサプリメントで補給しましょう。
テストステロンをつくりだすためには、コレステロールとたんぱく質が必要になるため、たまごや赤身肉を最低でも1日100g程度はとるとよいでしょう。また、テストステロン低下につながる亜鉛やビタミンDなどの欠乏にも気をつけます。亜鉛を豊富に含む食材は、カキやうなぎ、しらす、豚レバー、チーズ、海藻など。ビタミンDは、魚やキノコに多く含まれるほか、日光を浴びることで体内でも合成されます。
中等度から重度の場合は?
中等度から重度の場合は、生活習慣を改善しようと思ってもやる気が起こらず、できないことでさらにストレスがたまる、という状態も考えられます。そのため、ストレスがストレスを生み、テストステロンをさらに減少させるという負のスパイラルに陥ってしまう恐れがあります。
その場合は、まず注射などでテストステロンを補給し、体の状態を正常に戻すことが重要です。テストステロンを補給しながら活力を取り戻し、健康的な生活習慣が身についてきたら少しずつテストステロンの注射を減らしていく、という治療を行います。注射のほかにも漢方薬や、高濃度のクリームやジェルなどの塗布剤を使って皮膚からテストステロンを補給するといった方法も選択できます。
サインを見逃さず、健康的な生活習慣を意識しよう。
ストレスにさらされがちな現代人の生活は、ボールが坂道を転げ落ちるようにテストステロンが低下する負のスパイラルに陥る恐れがあり、人によってはつらい症状が出ることも。男性更年期障害のサイン(先述のセルフチェックリスト参照)を見逃さず、「もしかして?」と思ったら、迷わず医療機関を受診して早期に適切な治療を受けることをおすすめします。
また、20代~30代のうちから、「生活リズムを整えて質の良い睡眠を心がける」「適度な運動を習慣にする」「暴飲暴食を避けてバランスのとれた食生活を心がける」など、どれも当たり前の健康法ですが、テストステロンを低下させない生活習慣を意識・実践していきましょう。
もしものとき、安心して治療を受けられるように。
以上、泌尿器科専門医の田村先生に、男性更年期障害についてお聞きしました。
早い人は30代であらわれるという男性更年期障害。骨折や転倒のほか、あらゆる生活習慣病のリスク上昇を招き、ひいては将来の心筋梗塞や認知症発症などにつながる恐れがあります。先述した健康法を実践するだけでなく、もし病気になってしまったときのことを考え、安心して治療を受けられるように、医療保険で備えておくのも1つの方法です。短期入院でも給付金がまとめて受け取れる一時金タイプの医療保険を検討してみるといいかもしれません。
写真/PIXTA、イラスト/こつじゆい
田村 貴明
日本泌尿器科学会の泌尿器科専門医、ロボット(da Vinci)手術認定医、テストステロン治療認定医。千葉大学大学院医学研究院泌尿器科、みらいメディカルクリニック「元気ホルモンみらい塾外来」。所属学会は日本泌尿器科学会、日本癌学会、日本抗加齢医学会(日本アンチエイジング学会)、日本メンズヘルス医学会など多数。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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