尿漏れは若い女性にも!原因と対処法、受診の目安を解説【医師監修】 尿漏れは若い女性にも!原因と対処法、受診の目安を解説【医師監修】

尿漏れは若い女性にも!原因と対処法、受診の目安を解説【医師監修】

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「あ、またくしゃみで尿漏れ。偶然だよね」「最近、尿漏れが。ちょっと気になるけど誰かに相談するのも恥ずかしい……」「20代で尿漏れなんて、私っておかしいの?」

こうした尿漏れの悩みをひそかに抱えている20代・30代女性、実は少なくありません。尿漏れはどうして起こるのか? セルフケアで症状を改善できるのか? 年間約2,000人の診療を行う、よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニックの奥井伸雄先生が解説します。

目次

尿漏れとは?

尿漏れとは?

尿漏れ(尿失禁)とは「自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうこと」です。40歳以上の女性の4割以上が経験しているというデータがあり、「ある程度の年齢になるとよくあること」だといわれます。しかし、実は20代・30代の若い世代にも無関係ではありません。

尿漏れの種類。

尿漏れは大きく「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」「混合性尿失禁」に分類されます。

腹圧性尿失禁

くしゃみやせきをしたとき、重い荷物を持ったとき、笑ったときなど、おなかに力が入ったときに漏れてしまうものです。

切迫性尿失禁

突然尿がしたくなり、我慢できずに漏れてしまうものです。水音を聞いたり水に触ったりしただけで、尿意をもよおすこともあります。

混合性尿失禁

腹圧性と切迫性の両方の症状がある状態が「混合性尿失禁」です。

尿漏れの原因。

「腹圧性尿失禁」と「切迫性尿失禁」では、原因が異なります。

腹圧性の尿漏れは「骨盤底」という、尿道や肛門のまわりの筋肉や靭帯(じんたい)が集まっている部分のゆるみや、尿道をしめる筋肉の不具合によって起こります。骨盤底のゆるみは、女性ホルモンの低下が原因になることもあります。

出産後に尿漏れを経験する人は少なくありませんが、それもこの腹圧性尿失禁です。分娩時に赤ちゃんの頭で、膀胱のまわりの筋肉が傷ついてゆるんでしまうからです。

一方、切迫性は、膀胱に尿がたまってきたという信号に対して、「そろそろトイレに行こう」「もう少し、我慢できる」といった脳からの指令がうまく伝わらなくなることが主な原因です。

脳梗塞や脊椎の病気が原因となることがあります。また加齢による背骨の変形や、神経が通る脊柱管が狭くなる脊柱管狭窄(きょうさく)など、長年の環境的な影響で脊椎の反射に不具合が生じることもあります。

20代・30代の尿漏れは、ほとんどが「腹圧性尿失禁」。

若い世代の尿漏れは、ほとんどが腹圧性尿失禁です。「でも、私は妊娠も出産もしていない」という人もいるでしょう。妊娠や出産はたしかに尿漏れの大きなきっかけとなりますが、原因はそれだけではないのです。

「腹圧性尿失禁」のメカニズム。

腹圧性の尿漏れは、「骨盤底のゆるみや尿道の筋肉の不具合が原因」ですが、もう少し、詳しくみていきましょう。

女性の骨盤内には膀胱と尿道、膣と子宮、肛門があり、それを骨盤底筋群(骨盤底筋や靭帯など)がハンモックのように支えています。骨盤底筋群が十分に働いているとき、尿道に対して前と後ろ、両方向から強いサポートがかかるので、急に腹圧がかかっても尿道が開くことはありません。

骨盤底筋群の力の働き

しかし、骨盤底筋群のこの“力学”がなんらかの理由で破綻すると尿漏れが起きます。前と後ろ、2方向からかかる力のバランスが崩れる、あるいは尿道の周囲の筋肉組織がゆるむ、または筋肉組織がゆるんだために尿道そのものがぐらぐらと動いてしまうことで尿漏れを起こすのです。

20代・30代で尿漏れを経験する人の特徴。

20代・30代で尿漏れを経験する人の特徴。

出産や閉経、老化などが原因となって骨盤底筋がゆるむことは多く、40代以降に尿漏れを訴える人が増えるのはそのためです。

一方、20代・30代の尿漏れの場合は、尿道や骨盤底筋がうまく生育しておらず、サポートする力がない場合がほとんどです。その原因は主に2つあります。1つは幼いころからハードな運動を続けてきたケースと、もう1つは運動不足で筋肉が十分育たなかったケースです。

ハードな運動をしてきた人。

競技に打ち込むトップレベルのアスリートは、股関節を中心に体を動かします。股関節を使ったほうが、体の推進力を引き出しやすいからです。股関節を発達させるには筋肉が必要で、筋肉を育てるにはテストステロンという男性ホルモンが働きます。

幼いころからハードな運動をして股関節を鍛えると、おしりの筋肉や股関節は男性のように発達します。しかし、テストステロンがそちらに使われてしまうため、尿道まわりの筋肉や骨盤底筋群が十分に発達しないままになることがあります。

アスリートでなくても、尿漏れのある若い女性に運動経験を尋ねると、子どものころにハードな運動をしていたという人は少なくありません。

成長期に運動しなかった人。

ハードなトレーニングをしてきた人とは対極の、あまり体を動かすことをせずに育ち、加えて肥満傾向にある人も尿漏れしやすくなります。

子宮や膣などは女性ホルモンで作られるので、運動をせずとも成長します。しかし、ハンモックの役割をしている骨盤底筋群は、動かさなければ鍛えられません。鍛えられていない骨盤底筋群では尿道をしめる力が十分に働かなくなります。さらに脂肪が増えると腹圧が強くかかるため、尿漏れしやすくなるのです。

骨盤底筋がもともと弱い人の場合、出産でさらに筋肉が傷つき、重度の尿漏れになることがあります。

泌尿器科受診の目安と治療方法。

泌尿器科受診の目安と治療方法。

健康な女性でも、大きなくしゃみをしたり、笑ったりしたとき、尿が漏れてしまうことはあるものです。たまのことであれば、何も気にする必要はありません。しかし、尿漏れが心配で、水分補給や外出を控えるようになるなど、生活に影響があるようであれば受診をおすすめします。

受診の目安は1時間あたり30mlの尿漏れ。

1時間あたりに漏れる量が平均15mlくらいであれば、さほど心配することはありません。尿とりパッドなどを使いながら、あとで紹介するセルフケアを続けることで改善できるでしょう。受診の目安は、1時間あたり30mlくらい漏れるかどうかだと考えています。

性別や体重による個人差はありますが、健康な大人の場合、1日の尿量はおおよそ1200ml~1600mlです。私が診てきた経験では、1日の尿量の約半分、600ml~800mlが意図せず漏れていれば、なんらかの医療的措置が必要です。単純計算すると、1時間あたり25ml~33ml。約30mlが1つの判断目安になるのではないでしょうか。

検査方法

病院では問診と内診に加え、いくつかの検査を行って病状を診断します。下に、検査方法の一例をあげました。内診に対する抵抗感はあるかと思います。しかし、これらの検査をしてはじめて、尿道や周囲の筋肉の状況が正確に把握でき、適切な治療方法を導くことができます。

尿漏れ検査の方法

取材内容と奥井先生提供の資料をもとにミラシル編集部にて作成

治療方法

骨盤底筋群を強化する体操で症状が改善する人はたくさんいますが、体操で改善が見込めない場合は手術を行います。手術には主に「人工メッシュ手術」と、「レーザー治療」があります。

 人工メッシュ手術レーザー治療
方法ポリプロピレンテープを挿入して尿道を固定。おなかに人工メッシュを入れて、尿道をおなかへつり上げる方法(TVT手術)と、足の付け根にメッシュを入れて尿道を引き上げる方法(TOT手術)があるレーザーをかけ、血流・筋肉を活性化することで尿道を強くする
日帰り・入院・健康保険適用など・日帰り手術可能
・健康保険適用診療
・日帰り手術可能
・健康保険適用外診療

取材内容と奥井先生提供の資料をもとにミラシル編集部にて作成

手術が必要になった場合、現在の日本では、人工メッシュ手術が腹圧性尿失禁の標準治療とされています。しかし、人工メッシュ手術後の分娩では、テープが切れてしまうという不具合もあります。

この先、妊娠・出産の可能性がある20代・30代であれば、骨盤底筋体操でサポート力を上げるのが第一だと考えます。その補助的治療としてレーザー治療を行うのもいいですし、将来的に人工メッシュ手術を検討するのもいいでしょう。

自分のライフプランと照らし合わせながら、治療方針を決めていくことが大切です。

自宅でできるセルフケア。

自宅でできるセルフケア。

尿漏れを改善するための方法をいくつか紹介します。

簡単な体操や運動でケアする方法。

体操やストレッチ、体を動かすことで、骨盤底筋群をバランスのよい状態に修復し、鍛えることができます。未成長の筋肉であっても、鍛えることで尿漏れを改善できます。

骨盤底筋体操

尿道・膣・肛門を意識的にしめる運動です。イスに座っても、立ったままでもできます。

1.背筋を伸ばし、肛門を意識する
2.尿道・膣・肛門のどれか1つ、あるいは全部を5秒間「ぎゅーっ」としめる
3.息を吐きながらゆっくりとゆるめる
4.「しめる」+「ゆるめる」のサイクルを1日100回行う

スクワット

スクワットをすることで骨盤底筋群が強化され、尿漏れ防止につながります。腰を落とした状態で肛門に力を入れるのがポイント。力を入れながら、ゆっくりと腰を元の位置に戻しましょう。

全身を動かす運動

幼いころからハードな運動を続けている人は、そのスポーツをいったん休憩して、全身の筋肉を使う運動をおすすめします。

たとえば、スポーツクラブで習う初心者向けのベリーダンスやフラダンス、ズンバなど。ポイントは一部の筋肉だけを使わないことと、楽しみながら動くことです。楽しいことは長続きしますし、全身の筋肉のバランスが整うことで、骨盤底筋群も鍛えられます。

生活習慣でケアする方法。

当たり前のことですが、規則正しい生活とバランスのとれた食事は大切です。特に、腸内環境を整えるのに適しているといわれる食べ物を積極的に摂りましょう。具体的には、ヨーグルトや納豆などの発酵食品、善玉菌を増やすオリゴ糖や食物繊維を含む食品などです。

「どうして尿漏れに腸活?」と思うかもしれませんが、腸・膣・膀胱・尿道は密接につながっていて同じ免疫システムで守られています。腸の中に善玉菌が多ければ、ほかの臓器にも多くなり、臓器内の環境が整うのです。

また、尿失禁や頻尿といった悩みを抱える人の子宮や膣を調べると、炎症がみられることがあります。それが原因で尿道の筋肉の動きが悪くなり、骨盤底筋群のバランスも崩れて尿漏れになった、という患者さんもいます。

参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「腸内細菌と健康」

尿漏れ防止グッズ

「尿漏れサポーター」「骨盤底筋サポーター」といった尿失禁対策グッズもあります。しかし、しめる位置を間違えると骨盤底筋にダメージを与えることもあるので、使う場合は正しい装着方法を確認しましょう。

【まとめ】20代・30代でも起こる尿漏れ。気になる場合は受診を。

「高齢女性の悩み」という印象がある尿漏れ。そのため、「まさか、私が!」と友人にも相談できず1人で悩んでいる若い人もいるのではないでしょうか。しかし、20代・30代の尿漏れもめずらしくはありません。尿漏れは自分で改善することも、治療して治すこともできます。気になる人は受診し、医師と相談しながら快適な生活を取り戻しましょう。

写真/PIXTA イラスト/こつじゆい


奥井 伸雄
よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック院長。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医、医学博士。東京大学大学院修了後、ハーバード大学ブリガム&ウイメンズ病院を経て、2009年、よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニックを開院。著書に『尿もれがピタッと止まる骨盤体操&スクワット』(飛鳥新社)など。


※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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