眠気を覚ます方法って?睡眠に詳しい医師が教えます。
「仕事中、眠気に襲われて集中できない」なんて経験は誰にでもあるはず。なんとか、日中の眠気を解消して、仕事のパフォーマンスを上げていきたいですよね。
そこで、睡眠総合ケアクリニック代々木の井上雄一先生が、眠気の原因と眠気を覚ます方法、そもそも眠気に襲われないようにするにはどうすればよいかを解説。睡魔に勝つためにはやはり、生活習慣の見直しが欠かせないようです。
目次
眠気が起こる原因は?
日中に眠気が起こるのはどうしてなのか? 生活習慣に起因する場合もあれば、健康問題に起因する場合もあります。
睡眠時間の不足。
日中の眠気に悩んでいる人でもっとも多いのが、そもそも睡眠時間が足りていないという場合です。日本人の平均睡眠時間は7時間54分。それを大きく下回っていて、たとえば睡眠時間が6時間を下回っている人はどうしても日中眠くなりがちです。
睡眠と覚醒のリズムの乱れ。
人間の体は、日中は覚醒して活動し、夜には休息するようにできています。この睡眠と覚醒のリズムが後ろにズレると、夜に目がさえてしまい、眠ってもすっきりと起きられず、日中ぼんやりとしてしまいます。逆に、リズムが前にズレると、早朝に目が覚めて、夕方前から早々に眠くなってしまいます。
また、休みの前日、深夜までゲームをしたり動画を見たり、飲みに行ったりして、翌朝、昼過ぎまでだらだらと寝てしまうなんてことはないでしょうか? このように、平日と休日の睡眠の時間帯にズレが生じることを「社会的時差ボケ」と呼び、これも、日中の眠気の原因となります。
睡眠の質の悪さ。
睡眠時間自体は足りていても、眠りが浅く分断されると体が休まらず、日中に眠くなってしまいます。
眠りが分断される原因はいくつかあり、代表的なのは「睡眠時無呼吸症候群」です。寝ている間に一時的に呼吸が止まってしまい、酸欠状態になって睡眠が分断されるのです。重度のいびきをともなうことが多いのが特徴で、成人男性の約3%~7%がこの睡眠時無呼吸症候群だといわれています。
ほかにも、重度の歯ぎしりや「周期性四肢運動障害」(寝ている間に足がピクピクする病気)も中途覚醒を引き起こし、日中の眠気の原因となることがあります。
脳の病気。
脳の中枢神経系の機能異常が原因で、日中にひどい眠気が現れるのが「過眠症」です。代表的なものが「ナルコレプシー」で、オレキシンという覚醒に関係したたんぱく質をつくる細胞の脱落が原因だといわれています。ただし、ナルコレプシーは人口の1%以下というまれな病気です。
眠気を覚ます方法って?
日中、眠気に襲われて仕方がないというときは、無理をせずに20分程度の短い仮眠をとることをおすすめします。
そのほか、眠気覚ましに効果のある方法として、一般的には次のようなものが紹介されがちかと思います。
・カフェインをとる
・風に当たる
・体を冷やす
・ストレッチをする
いずれも、体に刺激を与えて眠気を覚ます方法です。しかし、効果は一時的なうえに個人差があります。「これをやれば確実に眠気が吹き飛ぶ」というものは、残念ながらありません。
眠気の改善方法。
慢性的な眠気で困っている人は人口の1割くらいにのぼると考えられますが、その原因の多くが、睡眠不足か睡眠のリズムの乱れです。
夜なかなか寝つけず、日中眠気に襲われ「不眠症かも」と不安に思う人もいるようですが、20代~30代に不眠症は少ないです。そもそも、不眠症の場合は夜だけでなく、日中もあまり眠くなりません。日中の眠気に悩んでいる人は、不眠症を疑うよりも、まずは自分の睡眠習慣を見直すことからはじめましょう。
7時間程度の睡眠時間を確保する。
適切な睡眠時間には個人差がありますが、平均的には7時間程度の睡眠時間を確保するといいでしょう。
「仕事が忙しくて十分寝られない」という人もいるかと思いますが、早朝から深夜まで働かないといけない仕事は、そもそも労働環境に大きな問題があります。睡眠時間が足りず、仕事中に居眠りすれば、重大なミスや事故を引き起こしかねません。仕事のパフォーマンスを保つためにも、睡眠時間を確保することが大切です。
早起き習慣からはじめる。
睡眠と覚醒のリズムを整えるためには、まず「早起き」からはじめましょう。「早寝早起き」という言葉がありますが、あれは逆で、早起きしないと早寝は難しいんです。まずは、夜何時に寝ようとも、翌朝はとにかく決めた時間に起きましょう。起きる時間を一定にすることで、早寝もしやすくなり、リズムが整っていきます。
決まった時間に食事をとる。
体内時計を整えるために、朝・昼・晩、食事の時間を一定にしておくことも大切です。特に、朝食には、ズレやすい体内時計をリセットする働きがあります。「少しでも長く寝ていたい」と朝ごはんを抜く人も多いかもしれませんが、よりよい睡眠のためにはしっかり食べることが大切です。
週末の寝だめは2時間以内。
「休日くらいゆっくり寝たい」という人も少なくないかと思います。それでも、前述した社会的時差ボケを防止するため、平日と休日の睡眠時間の差は小さくしたいところ。睡眠の中央時刻帯をずらさないよう、休日の寝る時間は平日より最大1時間早く、休日の起きる時間は平日より最大1時間遅くにおさめましょう。
特に休み明け、月曜日の朝が憂鬱な「ブルーマンデー」を感じるなら、社会的時差ボケの可能性があるので、上記の時間を意識してみましょう。
眠気が続くなら病院へ。
生活習慣を変えても日中の眠気が改善されない場合は、一度病院を受診してみましょう。
睡眠時無呼吸症候群や重度の歯ぎしり、周期性四肢運動障害、夜間の異常行動などの診断には特殊な検査が必要で、睡眠の専門医でないと対応できないことがあります。日本睡眠学会のホームページには全国の専門医療機関が出ているので参考にしてください。
患者数が多い睡眠時無呼吸症候群は、治療法が確立されています。軽症であれば、マウスピースを使っていびきや無呼吸の症状を防ぎ、中等症以上では、鼻マスクを装着して気道へ空気を送る「CPAP(シーパップ)療法」も広く行われています。その人の重症度・年齢・体型・のどの形態に応じて治療法を選択すべきです。
ナルコレプシーについても、眠気を抑える薬がありますし、最近では根本の原因であるオレキシンに働く薬も開発中です。
【まとめ】しっかり寝てこそ上がるパフォーマンス。まずは生活習慣の見直しを。
20代〜30代の若い世代だと、「寝ているのがもったいない!」「寝る間を惜しんででもやりたいことがある!」という人もいるでしょう。しかし、睡眠をしっかりとって脳と体を休ませてこそ、日中元気に活動できるのです。
睡眠をおろそかにすると、いつか支障が出ます。起きる時間・寝る時間・食事の時間──生活のリズムを整えることで、起きている時間を最大限有効活用していきましょう。
写真/PIXTA、Getty Images
井上 雄一
睡眠総合ケアクリニック代々木理事長、東京医科大学睡眠学講座教授、日本睡眠学会副理事長。鳥取大学医学部神経精神医学講師、順天堂大学医学部精神医学講師を経て、2003年、睡眠障害を専門的に診断する代々木睡眠クリニック(現・睡眠総合ケアクリニック代々木)の院長に。著書に『名医が答える! 不眠 睡眠障害 治療大全』(講談社)など。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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