子離れできない親にならないために!子育て後も幸せに暮らすコツ。 子離れできない親にならないために!子育て後も幸せに暮らすコツ。

子離れできない親の特徴って?子どもが巣立った後も幸せに暮らすコツ

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子どもが自立して巣立っていけば、時間もお金も夫婦だけのために使えるはず。そう思っていたのに、いざそのときを迎えたら、心にぽっかり穴が開いたようで、何もやる気が起きず、空虚感が続いてしまう。それは子離れができていないからかも。

子どもが巣立つときを楽しみに待ち、その後の自分たちの人生を楽しく充実して過ごすためには、どうしたらいいでしょうか? 上手な子離れの心構えや、子どもが巣立つ前にしておきたい準備について、4人の息子さんの父親であり、医師・カウンセラーとしてさまざまな家族に寄り添っている田中茂樹先生にお話を伺いました。

目次

そもそも「子離れ」とは?

そもそも「子離れ」とは?

そもそも「子離れ」とは、親子の関係がどのような状態であることなのでしょうか?

「この子は大丈夫」と思えることが子離れ。

子離れとは、親の気持ちとして「この子は大丈夫」と実感できている状態のことです。子どもが成人しても、「仕事は? 結婚は?」と常に心配しているようなら、うまく子離れできていないのかもしれません。

子離れできない親の特徴は?

診療所でさまざまな年代、立場の親子と接していると、子離れに苦労している親には、子どもに対して次のような傾向を感じます。

・ありのままの成長や変化を受け入れられない
・過保護、過干渉
・期待が大きい
・話を聞かない

このような傾向のある親は、子どものありのままの想いや、成長・変化を受けとめられずに、自分の理想どおりに育ってほしいと期待します。それゆえに、子どもが失敗しないように、ことあるごとに口を出してコントロールしようとします。

子どもの話を聞かないということはつまり、自分の興味のない話を聞かないということ。たとえば、親が重視している勉強や塾についての話は真剣に聞くけれど、学校での出来事などを話し出すと、なんだか退屈に感じてしまったり、早々に話を切り上げたくなったりする、という人もいます。

子離れしていないことで起こる親と子の問題とは?

子離れしていないことで起こる親と子の問題とは?

では、子離れできていないと親や子どもにとってどんな不都合が起きるのでしょうか。

子どもの自立を妨げてしまう。

親自身が自分の傾向を意識できていればまだよいのですが、無自覚にすぐに口を出したり話を聞かなかったり、というコミュニケーションを繰り返していくと、子どもは、親に言ってもわかってもらえないと感じて、そのうち何も話さなくなります。

「話を聞いてくれない」と感じても、心の中で自分の意見をしっかり持って反発できる子どもなら、成長とともに自分のほうから親離れするものです。しかし、中には反発できず親の指示がないと行動できなくなってしまうケースもあります。親の言うことをなんでもよく聞く「親にとってのいい子」は、受け身で自立ができない大人になってしまう可能性もあります。

子どもとの距離が遠くなる。

一方、親のほうも、子離れができずにいると「子どもには子どもの考えがあり生活がある」ことを理解できないままです。子どもとのほどよい距離感がわからなくなり、何かあればすぐに子どもに甘えて依存したり、相手の気持ちも考えずに「結婚は? 子どもは?」とズケズケと踏み込んだりすることもあります。すると、子どもは親と顔を合わせるのがストレスになり、だんだんと疎遠になっていきます。

また、たとえばLGBTQ+(※)の当事者であることのカミングアウトなど、子どもが自分の人生において重大かつ大切な問題で悩んでいるときでさえ、親は自分の価値観でしか判断できないかもしれません。子どもの悩みや苦しみに寄り添って味方になるどころか、敵となってしまう場合もあるでしょう。

上手に子離れするために。

上手に子離れするために。

日ごろのカウンセリングの現場では、問題を抱えている「クライアント(相談者)」に対して、ストレートに「こうしたほうがいいですよ」とアドバイスをすることはありません。ひたすら話を聞くことで、本人が自分で気づき、自分で答えを見つけることが大事だからです。子離れについても同じだと思います。気づきのための手がかりとして、次のようなことを意識してみるとよいかもしれません。

指示するばかりになっていないか意識する。

たとえば、朝の出がけに「今日は雨が降りそうだから傘を忘れないで」というのは、ごく日常的なコミュニケーションの1つです。しかし過剰に「~しなさい」「~してはダメ」という声かけをしていないか、意識してみることは大切です。

子どもを信頼して見守る。

見守るとは、「こうなったらいいのに」と願いながら過ごすことではありません。「失敗したけれど大丈夫だった、勉強になった」という経験の機会を子どもから奪わないように、黙って寄り添うことです。

自分自身が親にどう扱われていたかを振り返ってみる。

ご自身の親が、子どもである自分を信頼してくれて、いい距離感で接していてくれたのかは、ご自身と子どもとの関係に反映されます。これは「世代間伝達」といって、同じパターンが繰り返されることが往々にしてあります。親から過干渉されて育ってきたと感じる人は、自分の言動を振り返り「今のは、もしかしたら干渉しすぎかも」と意識してみることも大切。子どもとの距離感を少しずつ探っていくとよいでしょう。

時代の変化を意識する。

たとえば、スマホが登場しはじめたころと今とでは、スマホとの付き合い方が随分と変わってきているように、「家族」に対する世間の常識や考え方も現代は大きく変わりつつあります。自分の価値観を押しつける前に、時代の変化を意識してみると、子どもの持つ新しい価値観にも共感できる部分が見つかるかもしれません。

「空の巣症候群」になる前に子離れ準備を。

「空の巣症候群」になる前に子離れ準備を。

子離れがそこそこうまくいっても、子どもが巣立っていったら、さびしくて何もやる気が起きなくなることがあります。いわゆる「空の巣症候群」というものですね。そうなってから、対策を考えはじめたのではちょっと遅い。ゆくゆくは子どもが家を出ていくことを予想して、親自身も少しずつ準備をしておく必要があります。

子離れが上手にできている親でも、子どもの巣立ちはさびしいもの。

かくいう私も、上の2人の息子はすでに独立し、つい最近、三男が社会人となって遠方に引っ越していきました。この先、おそらくもう一緒に暮らすことはないだろうと思うと、なんともいえないさびしさを実感しています。さびしさと息子の1人暮らしを案ずる気持ちから、日常の些細なことで、いらぬお節介を焼いている自分に気づきました。

彼にしてみれば、そんな親の気持ちよりも新しい生活や仕事が楽しみで、ワクワクしていることでしょう。子どもに直接声をかけるのではなく、「あの子は今どんな気持ちかな。親からどんな言葉をかけてもらったらうれしいだろう」と、そんなふうに思い至れることが子離れの第一歩なのかもしれないと、あらためて思っています。

子離れの準備方法は?

子育て後の人生を楽しむために、次のようなことを、子離れを意識しながらやってみてはどうでしょうか。

・興味のある活動や趣味に少しずつ取り組んでみる

・マネープランを考える

・家族以外の交友関係を築く

子どもが巣立ってからの人生を楽しむためにはお金も必要です。その後の働き方も含めて、生活費や趣味に使うお金などのマネープランを話し合っていきたいものです。

田中先生の子離れ準備1:趣味を楽しむ計画を立てる。

私が今、はまっているのは自転車1人旅。中学生・高校生のころは自転車でキャンプに出かけていたのですが、長らく中断していた趣味を再開しました。

組み立て式自転車を持って目的地まで飛行機で行き、たとえば福岡空港から長崎空港まで、200㎞ほどの道のりを、寄り道をしながら3日くらいかけてのんびり走ります。途中は温泉などに宿をとり、若いころの貧乏旅行に比べれば少しばかりお金をかけて楽しんでいます。こうした楽しみがあると、子どもが巣立ったあとのさびしさは随分と解消されます。

自転車は、分解や組み立て、チューニングのやり方など身につけるべき技術もいろいろあります。子どもたちが自宅にいるときから、子どもたちの手が離れたら旅に出ようと、少しずつノウハウを研究し、プランを立てていきました。

田中先生の子離れ準備2:マネープランを考える。

人生後半の働き方やマネープランについても、40歳くらいから妻とよく話し合ってきました。「アーリーリタイアメント」を意識して、40代半ばからは働く時間を段階的に減らしていきたいと考えていたので、そのためには資金はどのくらい必要で、貯蓄や運用をどうするか、夫婦で検討しました。

田中先生の子離れ準備3:家族以外の交友関係を築く。

57歳の現在は、診療所の嘱託医として週に4日働き、あいた時間で自転車旅行や中国語の勉強に励んでいます。また地域の子どもの遊びサークルを支援するボランティア、各地での講演や執筆などにも取り組んでいます。

【まとめ】子育て後の、自分たちの人生を楽しもう!

子育ては、振り返ってみればあっという間。そのあとも、親の人生は長く続きます。子育て真っ最中の方は、いつか来る子離れを意識しつつ、自分たちの先々のことも考えていきましょう。子どもが巣立ったらどんなことをしたいかリストアップして、そのための資金計画をご夫婦で話し合ってみるなど、自分たちの人生を充実させる準備を進めていくとよいかと思います。

写真/PIXTA


田中 茂樹
医師、臨床心理士。京都大学医学部卒業、同大学院文学研究科博士後期課程(心理学専攻)修了。仁愛大学人間学部心理学科教授等を経て、現在は、佐保川診療所(奈良県)にて地域医療、カウンセリングに従事する傍ら、執筆、講演を行う。近著に『去られるためにそこにいる…子育てに悩む親との心理臨床』(日本評論社)。


※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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