財形貯蓄とは?メリットやデメリット、どんな人に向いているかを解説! 財形貯蓄とは?メリットやデメリット、どんな人に向いているかを解説!

財形貯蓄とは?メリットやデメリット、どんな人に向いているかを解説!

投稿日:
#お金
お気に入り
     

※ 記事中で言及している保険に関して、当社では取り扱いのない商品もあります。
※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。
※ 本文中に記載の保険に関する保障の条件は、保険会社によって異なります。詳しくはご加入の保険会社にお問い合わせください。

財形貯蓄は、企業や団体で働く人の貯蓄をサポートする制度です。将来のためのお金をためる方法として、財形貯蓄はどのように活用できるのでしょうか? 財形貯蓄には、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか? ファイナンシャルプランナーの豊田眞弓さんに伺いました。

目次

財形貯蓄とは?どんな種類がある?

財形貯蓄とは?どんな種類がある?

財形貯蓄は、正式には「勤労者財産形成促進制度」といいます。勤労者財産形成促進法にもとづいて、企業や団体に勤める人の貯蓄や老後資金への備え、持ち家取得の促進などを目的とした制度です。

その目的によって「一般財形貯蓄(勤労者財産形成貯蓄)」「財形年金貯蓄(勤労者財産形成年金貯蓄)」「財形住宅貯蓄(勤労者財産形成住宅貯蓄)」に分かれています。各財形貯蓄を並行して契約することもできます。

財形貯蓄で利用できる金融商品には、定期預金・積立定期預金・定額貯金・投資信託・国債・社債・貯蓄性のある保険・損害保険などがあり、各企業や団体によって利用できる商品が定められています。

利用者(従業員)は、定められた金融商品の中から選んで契約し、毎月の給与または賞与からの引き去りで積み立てられます。保険商品の場合は、保険料として支払われます。

ただし、制度を利用できるのは制度が導入されている企業や団体に勤める従業員に限られるため、制度が導入されていない企業の従業員や自営業の人、一般的な企業代表や役員といった立場の人は対象外となります。

参考:厚生労働省「財形貯蓄制度」

一般財形貯蓄

一般財形貯蓄は使い道を制限されない財形貯蓄で、積立期間は原則3年以上と定められています。契約に年齢制限はありません。一般財形貯蓄内で複数の金融商品が用意されている場合は、複数契約が可能です。たとえば、定期預金と投資信託を、それぞれ一般財形貯蓄の枠で契約するなどです。

3年以上継続すると、一般財形貯蓄で利用できるほかの金融商品への預け替えができます。ただし、社内規定によって払い出しや預け替えの受付期間が定められている場合もあるため注意してください。また、一般財形貯蓄には非課税措置がなく、通常の預貯金同様、利子などに課税されます。

財形年金貯蓄

財形年金貯蓄は、老後への備えを目的とした財形貯蓄です。契約時の年齢が55歳未満で、積立期間は原則5年以上、60歳以降に5年以上20年以内に年金形式で受け取ると定められています。ただし、契約した金融商品が保険商品の場合、終身での受け取りも可能です。財形年金貯蓄内での契約数は1人1契約までです。

財形住宅貯蓄と合わせ、元金と利子(以下、元利)の合計550万円までは利子などが非課税扱いになります。元利合計が550万円を超えると課税されます。

ただし、契約している金融商品が保険商品の場合、財形年金貯蓄のみで保険料385万円まで、財形住宅貯蓄も契約している場合は合わせて550万円までが非課税扱いになります。また、非課税措置は年金の支払いが終わるまで続きますが、年金以外の払い出し(一括払いなど)を行うと要件違反となり、非課税措置はなくなります。

財形住宅貯蓄

財形住宅貯蓄は、住宅の取得を目的とした財形貯蓄です。契約時の年齢が55歳未満で、積立期間は原則5年以上と定められています。財形住宅貯蓄内での契約数は1人1契約までです。

財形年金貯蓄と合わせ、元利合計550万円までは利子などが非課税扱いになります。550万円を超えた場合は、先述した財形年金貯蓄と同じです。ただし、住宅の購入資金以外で払い出される場合は、過去5年分の利子などが課税対象となります。

財形貯蓄を検討する際に知っておきたいこと。

財形貯蓄を検討する際に知っておきたいこと。

財形貯蓄を検討するにあたって知っておきたいことを解説します。

積立定期預貯金とは何が違うの?

財形貯蓄は勤務先を通して給与から引き去りされ、一方、積立定期預貯金は口座から自動振替されます。積立定期預貯金に使う口座が「給与が入る口座」の場合、口座に残る手取り額だけみると財形貯蓄も積立定期預貯金も変わりませんが、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は利子などが非課税扱いになります。

財形貯蓄の契約期間中に転職・退職・育児休業を取得する際は?

財形貯蓄は勤務先を通して給与から引き去りされます。それでは、転職・退職の場合や、育児休業を取得して給与の支払いが中断した場合はどうなるのでしょうか。

転職

新たな勤務先にも財形貯蓄制度があれば、前職の退職日から2年以内に所定の手続きを行うことで契約を継続できます。新たな勤務先の財形貯蓄制度に同じ金融機関がない場合は、別の金融機関に預け替えて継続できます。また、2年以内に契約継続をすると、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄の非課税措置も継続して受けられます。

退職

退職や役員になるなどで従業員ではなくなった場合、財形貯蓄を利用できる資格が消失するため、新たな積み立てはできなくなります。財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は、資格消失後、その財形貯蓄契約で定められた一定期間が経過すると課税対象となります(解約等については、その財形貯蓄契約における定めによります)。

参考:厚生労働省「財形貯蓄制度」

育児休業を取得する場合。

一般財形貯蓄は、賃金の支払いがない場合は積み立ての中断となるものの、育児休業中でも積み立ての継続は可能です。

財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は、一般に2年間中断すると非課税措置を受けられなくなりますが、育児休業や産休の場合は、所定の手続きを行うことで、子どもが3歳に達するまでは積み立てを中断でき、休業終了後に再開すれば引き続き非課税措置も受けられます。

参考:厚生労働省「育児休業等を取得される方々へ」

財形貯蓄のメリットは?

財形貯蓄のメリットは?

財形貯蓄には次のようなメリットがあります。

意識せずに目的に合わせた資産形成ができる。

先述の通り、お金をためる目的によって3種類の財形貯蓄があり、自動的に給与から引き去りされます。そのため、住宅資金や老後資金といった目的に合わせた資産形成を、毎月特に意識することなく行えます。

非課税措置が受けられる。

財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は、先述した要件のもと、利子などが非課税扱いになります。

財形住宅融資を受けられる。

3種類の財形貯蓄のいずれか1種類以上を1年以上続け、申込日前2年以内に財形貯蓄への預け入れを行い、かつ、申込日における貯蓄残高の合計額が50万円以上あるなどの要件を満たしている場合、住宅取得のための融資が受けられます。

金額は、以下、低い額のほうが融資限度額となります。金利タイプは5年ごとに金利を見直す5年固定金利。事務手数料や保証料が不要で、ローンを申し込んだ時点で金利が確定します。

・借入申込日における一般財形貯蓄・財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄の合計残高の10倍の額(最高4,000万円)。

・住宅の新築もしくは購入に必要な額の90%、またはリフォームに必要な額の90%。

財形給付金制度がある企業も。

企業によっては、財形貯蓄を行っている社員を対象にした財形給付金制度がある場合も。財形貯蓄を行っている社員1人につき、毎年最高10万円までの拠出を企業が行い、7年経過するごとに拠出金の元利合計が財形給付金として社員に支給されます。この給付金は一時所得扱いになるため税制上の優遇もあります。

参考:厚生労働省「財形給付金制度」

財形貯蓄のデメリットは?

財形貯蓄のデメリットは?

財形貯蓄で考えられるデメリットも紹介します。

利用できる金融商品が限られる。

財形貯蓄で利用できる金融商品は、勤務先が用意した商品の中からしか選べません。なお、利用する金融商品によっては元本割れの可能性があります。

利用できる金融商品の利率が低いことが多い。

超低金利の現状では、利子はあまり期待できません。そのため、利子などに対する非課税措置の恩恵も大きくありません。

財形貯蓄を申し込める期間が限られる。

財形貯蓄を契約できる期間が決まっている企業や団体が多く、「貯蓄をはじめよう!」と思い立ったからといって、すぐに利用できないことがあります。

払い出しや解約手続きに手間がかかる。

払い出しや解約などの手続きは勤務先を通して行います。そのため、手間や時間がかかることが一般的です。

財形貯蓄を検討してみよう。

財形貯蓄を検討してみよう。

これまでの解説を踏まえ、財形貯蓄を検討すべき人とは、どのような人でしょうか。

財形貯蓄を検討すべき人とは?

「財形貯蓄制度のある企業や団体に勤めている従業員」であることが大前提となります。その上で、以下に当てはまる人は、一度検討してみましょう。

・堅実に資産形成をしたい人。
・手元にお金があるとすぐ使ってしまう人。
・将来的に住宅を購入するつもりの人。
・老後資金を堅実にためたいと考えている人。
・多少でも非課税措置を受けたい人。

一方、「リスクがあっても効率的にお金を増やしたい人」にとっては、不向きかもしれません。

財形貯蓄以外で「将来に備える」方法は??

財形貯蓄以外で「将来に備える」方法は?

財形貯蓄以外で将来に備える方法についても豊田さんに伺いました。

定期預貯金や普通預貯金。

まず、いざというときの予備費として、生活費3か月分程度は、すぐに引き出せる定期預貯金や普通預貯金で備えます。その上で、ライフイベントの目的や時期などを考慮して、手段や金額を検討します。貯蓄と投資を上手に組み合わせていくとよいでしょう。

個人年金保険

将来に備える方法として個人年金保険もあります。個人年金保険は、将来に向けた資金を着実に積み上げていける貯蓄性のある保険商品で、契約時に保険料と払込期間を決め、60歳以降に年金として受け取るのが一般的です。商品によっては、年金の受取開始年齢や受取期間などを柔軟に設定できるものもあります。

老後のためだけでなく、住宅の購入や子どもの進学など、まとまったお金が必要になる時期に向けて、時間をかけて無理なく資金を準備していけます。また、受け取る年金総額が契約時に確定しているタイプの個人年金保険は、リスクを取りたくないという人に向いています。一定の要件を満たすことで、個人年金保険料控除が利用できます。

なお、個人年金保険は、解約をすると解約返還金額がそれまでに支払った保険料総額を下回る可能性があるため、注意が必要です。

NISAやiDeCoなど。

積立投資などを利用する場合は、「3年超使わない資金の3割以内」を目安にするとよいでしょう。「NISA」「iDeCo」などを検討してみてください。

ただし、iDeCoは原則60歳以降の受け取りになるため、結婚・子育て・住宅購入などの備えには向きません。また、「マッチング拠出(企業型確定拠出年金に自分で掛け金を上乗せする)」を利用するのも一つの案です。

財形貯蓄・預貯金・投資・貯蓄性のある保険などを目的に合わせて組み合わせよう。

財形貯蓄は、あまり意識せずに資金を着実に積み上げていけます。将来、何のための資金をいつごろまでに、どのくらい準備しておきたいかを考え、目的に応じて預貯金・投資・貯蓄性のある保険などと上手に組み合わせて利用するとよいでしょう。

写真/PIXTA


豊田 眞弓
FPラウンジ代表。経営誌やマネー誌のライターを経て、1994年より独立系ファイナンシャルプランナーとして活動。個人相談や講演のほか、ウェブサイト・雑誌などに多数のマネーコラムを寄稿。「子どもマネー総合研究会」理事のほか、「親の介護・相続と自分の老後に備える.com」を主宰。亜細亜大学などで非常勤講師も務める。


※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。
※ 税務の取り扱いについては、2023年7月時点の法令等にもとづいたものであり、将来的に変更されることもあります。変更された場合には、変更後の取り扱いが適用されますのでご注意ください。詳細については、税理士や所轄の税務署等にご確認ください。

(登)C23N0106(2023.8.29)
お気に入り
     
キーワード
#お金 #資産形成 #年金 #税金 #貯金
最近の記事
【マンガ】落ちこぼれエルフが召喚したのは保険外交員でした。最終話「未知に挑む武器」。メインビジュアル。 【マンガ】落ちこぼれエルフが召喚したのは保険外交員でした。最終話「未知に挑む武器」。メインビジュアル。
【マンガ】落ちこぼれエルフが召喚したのは保険外交員でした。最終話「未知に挑む武器」。
投稿日:
#保険
雑木林を背景に遠くを見つめ微笑む阿諏訪さん。 雑木林を背景に遠くを見つめ微笑む阿諏訪さん。
阿諏訪泰義がブッシュクラフトで至った「悩みとの上手な付き合い方」。
投稿日:
#人と暮らし
ベビーシッターをお願いするには?料金や助成制度などをFPが解説。 ベビーシッターをお願いするには?料金や助成制度などをFPが解説。
ベビーシッターをお願いするには?料金や助成制度などをFPが解説。
投稿日:
#お金
街と緑を背景に笑顔の阿部真央さん。 街と緑を背景に笑顔の阿部真央さん。
阿部真央「歌い続けるために見つけた、不安や焦りとの向き合い方」。
投稿日:
#健康
おすすめキャンペーン
ミラシル春のプレゼントキャンペーン
ミラシル春のプレゼントキャンペーン
エントリー期間 :
-
ミラシル 大人の心得クイズキャンペーン~お酒編~
ミラシル 大人の心得クイズキャンペーン~お酒編~
エントリー期間 :
-
mirashiru_kaiinntouroku.jpg
ミラシルの会員特典ご紹介!
投稿日:
#人と暮らし