奨学金にはどんな種類がある?お金がなくても大学を出してあげられる?
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大学進学には、入学金や学費をはじめ多くの費用がかかります。経済的な理由で子どもの将来の選択肢を狭めないためにも知っておきたいのが、奨学金の知識。1男1女の母親であり、奨学金にも詳しいファイナンシャルプランナーの八木陽子さんが、奨学金の種類や特徴、教育資金の備え方について解説します。
目次
奨学金って何?
奨学金とは、経済的な理由で進学が難しい学生に給付、または貸与されるお金のことです。ここでは、制度の内容や対象者など、奨学金に関する基本的な知識について解説します。
奨学金制度とは?
家庭の事情などで経済的な余裕がなく、進学が難しい学生に、国や自治体・企業・財団法人などの機関が、奨学金を通して学びを支援する制度です。日本学生支援機構(JASSO)や大学・自治体・企業・民間団体など、様々な機関が奨学金事業を行っており、機関ごとに、給付または貸与される奨学金の金額や条件は異なります。
いつ誰がもらえる・借りられる?
各機関が定める基準を満たす学生本人に対して、給付または貸与されます。
文部科学省所管の独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO)の奨学金の場合、進学先が決まっていない高校3年生のうちに高校を通じて申し込む「予約採用」と、進学後に学校の奨学金窓口で申し込む「在学採用」があります。
「予約採用」の場合は、進学後、進学先の学校へ必要書類を提出した月から1か月~2か月後に、本人名義の金融機関の口座に初回の奨学金が振り込まれます。「在学採用」の場合は、原則春と秋に奨学生の募集が行われ、申込締切月の2か月後に初回の奨学金が振り込まれます。
参考:独立行政法人 日本学生支援機構「よくあるご質問 採用決定・返還誓約書」初回の振込はいつですか。
参考:独立行政法人 日本学生支援機構「申込手続きについて(予約採用)」
参考:独立行政法人 日本学生支援機構「申込手続きについて(在学採用)」
奨学金の種類は大まかに2種類。
奨学金は主に「給付」と「貸与」の2種類があります。ここでは、もっとも利用者が多い日本学生支援機構の大学生向け奨学金について解説します。
給付奨学金
給付奨学金とは、優秀であるにもかかわらず経済的な理由で進学が困難な学生に対して支給される、国費が財源となっている返還義務のない奨学金です。奨学生に採用された月から卒業するまで、原則月に1回受け取れます。
給付奨学金は、昨今の教育資金の値上がりを受けて、年々拡充しています。日本学生支援機構では2017年度から「住民税非課税世帯」を対象に、給付奨学金事業を開始しました。
2020年度からは、「住民税非課税世帯に準ずる世帯」を対象に加え、給付奨学金と授業料・入学金の免除または減額をセットで行う新制度を導入。
さらに2024年度からは、世帯年収600万円程度までの「子どもが3人以上いる多子世帯」「私立大学の理工農系学部の学生」にも対象が拡大される予定で、より多くの学生が給付を受けやすくなります。
参考:文部科学省「学びたい気持ちを応援します 高等教育の修学支援新制度>大学生の皆さんへ」
参考:独立行政法人 日本学生支援機構「学びたい気持ちを応援します」
貸与奨学金
貸与奨学金とは、返還が必要な奨学金です。日本学生支援機構では無利子の第一種奨学金と、有利子の第二種奨学金が用意されています。給付奨学金と同様、奨学生に採用された月から卒業まで、原則として毎月振り込まれます。
大学生の場合、第一種奨学金の貸与額は、月額2万円~6万4,000円。国公立・私立・自宅通学・自宅外通学で金額に違いがあります。第二種奨学金の貸与額は月額2万円~12万円ですが、特にお金がかかる私立大学の医・歯学部は月額12万円に加えて4万円、薬・獣医学部の場合は2万円の増額が可能です。
返還は、貸与終了の翌月から数えて7か月目(3月終了なら同年10月)にはじまります。
参考:独立行政法人 日本学生支援機構「第一種奨学金の貸与月額>平成30年度以降入学者の貸与月額」
参考:独立行政法人 日本学生支援機構「第二種奨学金の貸与月額」
参考:独立行政法人 日本学生支援機構「返還を始める皆さんへ」
奨学金の申請基準。
奨学金には、学校の成績表やレポートの提出、所得制限の有無など、さまざまな申請の条件があります。ここでは主に日本学生支援機構の大学生向け奨学金の基準について解説します。
家計基準
日本学生支援機構の給付奨学金は、「住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯」が対象となります。そのほかの奨学金については、以下のように家計基準が定められています。
希望する奨学金 | 家計基準 |
第一種・第二種併用貸与 | 生計維持者の貸与額算定基準額が16万4,600円以下であること |
第一種奨学金 | 生計維持者の貸与額算定基準額が18万9,400円以下であること |
第二種奨学金 | 生計維持者の貸与額算定基準額が38万1,500円以下であること |
参考:独立行政法人 日本学生支援機構「進学前(予約採用)の第一種奨学金の家計基準」
なお、貸与額算定基準額とは、(課税標準額)×6%-(市町村民税調整控除額)-(多子控除)-(ひとり親控除)-(私立自宅外控除)(100円未満は切り捨て)で計算されます。
学力基準
日本学生支援機構の奨学金には学力基準があり、申請にあたってはいずれかに該当している必要があります。今回は、予約採用の学力基準を紹介します。
希望する奨学金 | 学力基準 |
給付奨学金 | 以下のいずれかに該当 1.高等学校等における全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること 2.将来、社会で自立し、および活躍する目標をもって、進学しようとする大学等における学修意欲を有すること(学修意欲の確認は、高等学校等において、面談の実施またはレポートの提出等により行う) |
第一種奨学金 | 以下のいずれかに該当 1.高等学校等における申込時までの全履修科目の評定平均値が、5段階評価で3.5以上であること ※ 住民税非課税世帯、生活保護受給世帯または社会的養護を必要とする生徒は、将来社会で自立し、および活躍する目標をもって進学しようとする大学等における学修意欲(高等学校等において面談の実施またはレポートの提出等により確認)がある者として学校から推薦されれば、第一種奨学金の学力基準を満たすものとされる 2.高等学校卒業程度認定試験合格者であること |
第二種奨学金 | 以下のいずれかに該当 1.高等学校等における申込時までの全履修科目の学業成績が平均水準以上であること 2.特定の分野において特に優れた資質能力を有すると認められること 3.進学先の学校における学修に意欲があり、学業を確実に修了できる見込みがあると認められること 4.高等学校卒業程度認定試験合格者であること |
以下を参考にミラシル編集部にて作成:
独立行政法人 日本学生支援機構「進学前(予約採用)の給付奨学金の学力基準」
独立行政法人 日本学生支援機構「進学前(予約採用)の第一種奨学金の学力基準」
独立行政法人 日本学生支援機構「進学前(予約採用)の第二種奨学金の学力基準」
第一種奨学金の1に関しては、基準を満たしていない場合でも、経済状況に関する条件に該当し、かつ学校からの推薦があれば、学力基準を満たしたとして申請できます。
申請基準はこまめに確認を。
奨学金の申請基準は変更されることが多いので、定期的に確認しておきましょう。「入学前は対象外だったけれど、受給資格が変更されたので、翌年申請したらとおった」というケースもあります。
奨学金だけで教育資金をまかなうのは大変。
給付奨学金の対象者は拡充しつつあると言っても、審査のハードルはまだまだ高く、誰もがあてにできるわけではありません。また、貸与奨学金は子ども自身の借金になるので、大学卒業後の人生設計や住宅ローンなどに大きく影響します。将来の子どもの負担を減らすためにも、まとまった教育資金を準備しておきたいものです。
早めの準備が大切。
預貯金だけではなかなかお金が増えない今の時代。子どもの大学入学までの間に、できるだけ“お金に働いてもらう”ことも大切です。毎月の児童手当を学資保険や投資信託の資金に充てるなど、計画的に準備しておくことも大切です。
学資保険
学資保険(※)は、子どもが小さいうちから、毎月保険料を支払っておくことで、将来学費が必要な時期にまとまった金額を受け取れる点が大きなメリットです。
さらに、多くの学資保険で、契約者(親など)が死亡した場合などに、その後の保険料の支払いが免除され、当初の予定どおりに学資金や満期保険金を受け取ることができる保障があるので、万が一の場合にも備えておくことができます。
※ 学資金・満期保険金の受取総額が支払った保険料の総額を下回る場合があります。また、解約返還金は多くの場合、支払った保険料の累計額を下回ります。
投資信託
投資信託で長期間運用をすることも1つの方法です。特にNISA制度を利用すれば、一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られた利益が非課税になるのでおすすめです。
2024年からは新NISA制度がはじまり、「非課税保有期間の無期限化」「年間投資枠の拡大」など、さらに使い勝手がよくなります。
ただし元本割れなどのリスクがあるため、教育資金が必要になる大学入学2年前~3年前くらいのタイミングで運用状況を確認し、解約のタイミングを検討しておくとよいでしょう。
参考:金融庁「新しいNISA」
【まとめ】早期の対策で子どもの大学資金に備えよう。
奨学金は、子どもが大学で思う存分学び、将来の選択肢を広げる後押しとなる制度です。利用する場合は正しい知識をもって、それぞれの環境や進路に適した奨学金を選択できるようにしておくことをおすすめします。
ただし、教育資金を奨学金だけに頼ると、結果的に将来の子どもの負担が大きくなってしまいます。早いうちから、学資保険や投資信託などを活用し、コツコツと教育資金を準備していきましょう。
写真/PIXTA イラスト/オオカミタホ
八木 陽子
ファイナンシャルプランナー
東京都在住。1男1女の母。出版社勤務を経て独立。2001年、ファイナンシャルプランナーの資格を取得後、マネー記事の執筆やプロデュース、セミナーなどの仕事を行う。2008年、家計やキャリアに関する相談業務を行う株式会社イー・カンパニーを設立。著書に『マンガでカンタン!お金と経済の基本は7日間でわかります。』(Gakken)など。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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