

時短勤務はいつまで?延長できる?気になる育休明けの働き方
育児や介護を理由に、通常の労働時間よりも短い時間で働くことのできる時短勤務の制度(短時間勤務制度)。将来子どもを欲しいと思っていたり、育児休業中で復帰後は時短勤務を考えていたりしているけれど、働き方や収入に不安を感じている人は多いのではないでしょうか。
そこで、一般・企業担当者向けの産休・育休に関する著書の執筆歴があり、子どもを持つ人の働き方に詳しい特定社会保険労務士の宮武貴美さんが、時短勤務の制度内容や利用上の注意点について、詳しく解説します。
目次
- 育児による時短勤務は法律上子どもが3歳になるまで。
- 時短勤務ってどんな働き方になる?
- 時短勤務で後悔しないために、制度を上手に使うコツ。
- 【番外編】時短勤務、いつまで取る?先輩ファミリー体験談。
- 【まとめ】時短勤務の制度を正しく理解したうえで、育児中の働き方を考えよう。
育児による時短勤務は法律上子どもが3歳になるまで。

育児による時短勤務は法律で定められた制度で、制度を利用できる人や短縮できる時間にはルールがあり、以下の表の通りとなります。
利用できる人 | 正社員・契約社員・パートタイマー(週3日以上・1日6時間以上) ※ 会社に労使協定があるときは、1年以上働いている従業員 |
短縮後の労働時間 | 原則として1日6時間 |
残業の扱い | 残業免除の申請をすれば、残業なしで働くことが可能 |
利用できる期間 | 子どもが3歳になるまで |
ご自身が時短勤務を利用できるのか、労働時間や利用できる期間はどうなるのか、まずは確認しておきましょう。
以下に、育児による時短勤務の内容について、詳しく解説していきます。
時短勤務とは。
時短勤務制度は男女ともに育児や介護をしながら、働き続けられる社会を目指すための法律である「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、育児・介護休業法)」で定められた制度の1つで、正式には「所定労働時間の短縮措置(短時間勤務制度)」と言います。
2010年に企業に対して導入が義務化され、2012年からは常時100人以下の労働者を雇用する企業についても義務化されています。
時短勤務をすることで、育児をする時間が増え、ゆとりを持ってわが子と向き合うことができるようになります。習い事に通わせるなど、子どもの将来の可能性を広げる時間に充てることもできるでしょう。
また、子どもが小さいうちは特に手がかかるということもあり、いきなりフルタイムで復帰するよりも、時短勤務を挟んで段階的に働く時間を戻すことにより、生活リズムをつくることができ、仕事と育児の両立をしやすいというメリットもあります。
育児による時短勤務の法律上の定め。
短時間勤務制度は、3歳未満の子どもを養育する従業員が、所定労働時間よりも短い時間(原則として1日6時間)で働くことのできる制度です。
時短勤務制度は、基本的に男女を問わず申し出れば利用できますが、日雇いの従業員や、1日の所定労働時間が6時間以下の従業員は利用することができません。また、労使協定を結ぶことにより、企業は時短勤務ができない従業員を定めることができます。
たとえば、入社して1年未満の従業員や、1週間の所定労働日数が2日以下の従業員などがその対象です。そのため、育休中に転職を考えている人は、3歳未満の子どもを養育していても、転職先で時短勤務ができない可能性があります。
参考:e-Govポータル「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」
参考:e-Govポータル「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」
会社によっては小学校入学まで可能な場合も。
時短勤務制度の対象者は、「3歳未満の子どもを養育する従業員」と条件が定められているので、子どもが3歳になったら原則としてフルタイムに戻ります。時短勤務ができる期間を延長したくても、従業員から企業に延長を強制することはできません。
しかし、3歳以降も保育園・幼稚園の送迎や、習い事に通わせたいといった理由から、時短勤務で働きたいと考える人は少なくありません。そうした要望を受けて、対象者を3歳以降に拡大している企業もあります。
厚生労働省の調査結果を見てみると、時短勤務制度を設けている事業所のうち、約半数の48.8%が最長利用可能期間を法令通りの「3歳未満」に設定しています。
そのほか最長利用可能時間は以下の通りでした。

参考:厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」をもとにミラシル編集部にて作成。
さらに、2025年10月1日からは、子どもが3歳以降~小学校入学前までの期間について、時短勤務や始業時刻の変更などの措置、時間単位で取得できるテレワークや養育両立支援休暇の付与などを利用できる制度が設けられます。すべての制度が利用できるわけではなく、会社が利用できる制度を2つ以上選択した上で、利用できる制度を選ぶことになります。制度の内容については会社ごとに異なるため、今後の会社の対応を確認してください。
時短勤務ってどんな働き方になる?

時短勤務をした場合、働く時間や残業時間は変わるのでしょうか? ここでは、時短勤務の働き方について解説します。
時短勤務は原則6時間勤務。
時短勤務制度は、所定労働時間を短縮する制度です。所定労働時間とは、就業規則などで定められた勤務時間で、法律では原則として1日8時間以内、1週間に40時間以内と定められています。時短勤務をする場合、原則として1日の労働時間は6時間に短縮されます。
ただし、最近では、原則の6時間に限らず、5時間勤務や7時間勤務など、短縮できる時間を選択できる制度を設けている企業もあります。また、勤務する時間帯については企業が決めることになっていますが、始業・終業の時刻を選べるようにしている企業もあります。
休憩時間については、労働基準法によって、働く時間が6時間を超えて8時間以下の場合、少なくとも45分の休憩を与えることが企業に義務付けられています。そのため、多くの企業では、時短勤務であっても45分から1時間の休憩を取ることにしています。
参考:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」(2022年)
時短勤務は残業ができない?
時短勤務をしていても、会社から残業の指示があったときには、残業をする必要があります。ただし、3歳未満の子どもを養育する従業員が残業の免除(所定外労働の制限の制度)を申請した場合には、企業は原則として残業を指示することができません。これは、時短勤務制度と同時に申請することができます。残業ができない場合には申請をしておきましょう。
なお、2025年4月から、この残業免除の期限は小学校入学前までに延長されます。
時短勤務で後悔しないために、制度を上手に使うコツ。

時短勤務制度を利用したあとで「収入が減った」「キャリアが停滞した」などと後悔しないように、収入の変化、社会保険制度を確認し、自分のライフスタイルやキャリアプランと照らし合わせて活用法を考えていきましょう。
収入の変化を把握する。
時短勤務の給与の取り扱いは、企業によって異なります。労働時間が8時間から6時間に短縮される場合、一般的に基本給や各種手当を8分の6としていることが多いようです。ただし、基本給のみを8分の6としていたりすることもあります。また、6時間以外の時短勤務を選択できるようにしており、8時間から7時間に短縮すると、給与も8分の7となることもあります。
各種手当が減る場合でも、通勤手当や食事手当のように、時間に連動しない手当は満額支給されることが多いようです。
各種手当の扱いについても就業規則で確認し、ご自身の時短勤務期間中の収入をシミュレーションしてみるとよいでしょう。そのとき、月収だけでなく、賞与も時短勤務に合わせた金額となることもあります。育児にはお金が多く必要になることもあるため、時短勤務のメリットと希望する年収とのバランスも考えておくとよいでしょう。
たとえば、0歳~2歳の保育料(※)、延長・土曜保育の利用料や通常の保育時間では対応できない際のベビーシッター代がかかることも。時短家電の購入や、家事を時短するための支出などが必要になることもあります。
※ 世帯の所得額に比例します。
時短勤務を終わりにする、続けるタイミングは?
時短勤務を続ければ、子育てと仕事のバランスを取ることができる反面、自分のキャリアに支障をきたすことがないのか、収入はどのくらい減るのか、心配になるかもしれません。どのタイミングでフルタイムに戻るのが自分にとってベストなのかを考えてみましょう。
時短勤務をやめるタイミングの例 子どもの年齢が上がる、会社の制度を利用できる年齢が終わった(3歳になった)といったタイミングのほか、大きな仕事を任されるチャンスがある、夫が育休を取る、会社の評価が気になるなどの理由で時短勤務をやめる人も。 時短勤務を延長するタイミングの例 子どもの入院や子どもが病気がち、ママ自身が体調を崩しがちなどの健康上の理由。もう少しワークライフバランスを大事にしたいなど理由はさまざま。たとえば元々時短勤務期間を2歳までと申請していたものの、3歳までに延長したいと思った場合、改めて期間をのばして申請することは可能です。 |
社会保険制度を確認しておく。
時短勤務で収入が下がると、社会保険料もそれに応じた額となります。社会保険料の支払いが減ると、将来の年金額も少なくなる可能性があります。
それを防ぐための制度として、厚生年金保険に「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」があります。この制度は、3歳未満の子どもを養育しているすべての人が対象で、育児休業の取得や時短勤務をしているかは関係ありません。
制度の内容は、3歳未満の子どもを養育している期間中に、養育前より月収が減少したとしても、子どもを養育する前の月収にもとづいて計算した年金額を将来受け取れるというものです。対象になる子どもを養育していれば自動的に適用されるわけではなく、企業を通じた年金事務所への申請が必要となります。
また、少子化対策の一環として、2歳未満の子を療育していて時短勤務中に給与が下がった場合に雇用保険から給付金を支給することも決定しています。仕事と育児に関連する法律の動向は、こまめにチェックしておくとよいでしょう。
参考:日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」
退職金は?
退職金は一般的に、勤続年数に応じた金額が支給されますが、時短勤務後の短縮した時間に応じた金額に減額されることも考えられます。時短勤務の影響を理解したうえで、どのような働き方にするか考えたいものです。
【番外編】時短勤務、いつまで取る?先輩ファミリー体験談。
ここからは、実際に時短勤務をしているママ、フルタイム勤務をしているママに、ミラシル編集部でヒアリングを実施した、それぞれの生活や感じていることについての体験談を紹介します。まずは、ある1日のタイムテーブルを見てみましょう。
時短勤務ママの1日
7:00 | ママ起床 |
7:30 | 子ども起床 |
7:45 | 朝ごはん、着替え、保育園連絡帳記入 |
8:45 | ママ、子どもと家を出る→保育園へ |
9:55 | 会社到着 |
10:00~17:00 | 仕事 |
18:00 | ママ、保育園お迎え |
18:30 | 晩ごはん |
19:30 | テレビを見ながら家族団らん |
20:00 | 親子一緒にお風呂 |
21:00 | 寝かしつけ |
22:00 | 家事、保育園の準備などを済ませ、終わり次第自由時間 |
0:00 | ママ就寝 |
「時短勤務だと睡眠時間を削らず、帰宅後も少しですが子どもと遊ぶ時間を取ることができています。とはいえ、6時間で仕事を終わらせてそのあとすぐお迎えなので毎日バタバタ。カレンダーアプリで夫婦の仕事の状況を共有して協力し合ったり、平日は手の込んだ料理はしない、シワがよりづらい衣類は畳まないなど家事はできるだけ楽をして工夫しています」(6時間勤務・IT企業勤務、2歳の子どもが1人)
フルタイムママの1日
6:40 | ママ、子ども起床 |
6:45 | 朝ごはん、着替え、保育園連絡帳記入 |
7:40 | パパ、子どもと家を出る→保育園へ |
7:55 | ママ、家を出る |
8:25 | 会社到着 |
8:30~17:30 | 仕事 |
17:50 | ママ、保育園お迎え |
18:00 | スーパーで買い物 |
18:30 | 帰宅 残業がなければパパも帰宅 |
18:40 | 晩ごはん、食べ終わり次第お風呂まで遊ぶ |
20:00 | お風呂 |
21:00 | 寝かしつけ |
22:00 | 家事、保育園の準備などを済ませ、終わり次第自由時間 |
0:00 | ママ就寝 |
「原則残業免除の制度を利用し、保育園のお迎えにも間に合うため、育休後すぐフルタイムで復帰しました。給料を減らしたくないという思いもあります。平日は夫が5時に起きて、朝ごはんと夜ごはんをまとめてつくってくれたり、役割分担しながら乗り切っています。日頃から義実家と密にやり取りをして、子どもが熱を出したときなどの協力体制も築いています」(8時間勤務・金融系企業勤務、2歳の子どもが1人)
ほかにも編集部のもとに集まった、時短勤務を選択した人、フルタイム勤務を選択した人、それぞれの声を紹介します。時短勤務を選択するのか、いつまで続けるのかの参考になるかもしれません。
時短勤務を続けている人の声。
「時短勤務でも仕事の量は変わらないので、大変であることに変わりはないですし、けっこう残業もしています。帰りの車中など、職場外で仕事について考えることも。仕事を自分で抱え込まず、後輩にどんどん任せられるよう日々育成する努力をしています。環境が整ったら時短勤務期間中に第2子を産むことも考えています」(週5出社・保育士、1歳の子どもが1人)
「時短勤務で仕事を切り上げたあと、子どものお迎えから寝かしつけまでは基本スマホを見ることもできないので、会社の同じチームの人に急ぎのメールを返信してもらったり、急なアポが入ったときは代打をお願いしたりしています。3歳まで時短勤務を続ける予定ですが、フルタイムに戻ったあとのシミュレーションが必要だと思っています」(週4テレワーク、週1出社・IT企業勤務、2歳の子どもが1人)
「給料が減るのは心配でしたが、心に余裕ができるし、子どもを早く寝かせて生活リズムを整えられるのでお金より時間のほうが大事だと思いました。時短勤務でも1日中息をつく暇もないですし、子どもが体調不良のときは病院に連れて行ったりとさらに大変。もうすぐフルタイム勤務になりますが、プラス2時間をどう捻出するのか、早く起きるしかないのか。時短勤務を無制限で続けられるなら続けたいのが本音です(笑)」(週4テレワーク、週1出社・IT企業勤務、2歳の子どもが1人)
フルタイム勤務を続けている人の声。
「17時の退勤から休むことなく怒涛の時間が流れ、気がつくと20時半になっています。現在の生活に慣れてしまったのでフルタイムでも問題ないですが、あと1時間退勤が早かったらもう少し落ちついて子どもと向き合えるのかなあ、と思うこともあります」(週4テレワーク、週1出社・IT企業勤務、6歳の子どもが1人)
「平日は朝晩の食後20分~30分くらいしか子どもとしっかり向き合う時間がないので、時短ならもう少し平日も遊べるかも、と思うことも。子どもが感染症にかかり、登園禁止になったときは仕事が手につかず、たまってしまい大変でした」(フルリモート・IT企業、1歳の子どもが1人)
なかには「子どもが大きくなったらわからないが、一度も時短勤務をしたいと思ったことはない」という声も。思いは人それぞれのようです。
【まとめ】時短勤務の制度を正しく理解したうえで、育児中の働き方を考えよう。
時短勤務制度は法律で定められている内容に加え、企業ごとに、より活用しやすい制度が設けられていることがあります。自社の制度を正しく理解したうえで、子どもが生まれたあとの生活や家族として大切にしたいこと、自分自身が描くキャリアプランなどを踏まえて、育児中の働き方を夫婦で考えてみてください。
写真/PIXTA イラスト/オオカミタホ
【監修者】宮武 貴美
特定社会保険労務士、産業カウンセラー。中小企業から東証プライム上場企業まで幅広い顧客を担当。インターネット上の情報サイト「労務ドットコム」の管理者であり、人事労務分野での最新情報の収集・発信力は日本屈指。『新版 総務担当者のための産休・育休の実務がわかる本』(日本実業出版社)、『図解ポケット 産休・育休制度の基本と仕組み』(秀和システム)など、著書多数。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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