ワンストップ特例制度はいつまでに申請するの?ふるさと納税の超基本。
「ふるさと納税」をはじめてみたいけれど、手続きが面倒? 確定申告も必要になる?……など、わからないことがいろいろ出てきてしまった……。「ふるさと納税」の基本から申し込みの期限、「ワンストップ特例制度」の使い方などについて、多くの税務相談に対応している税理士の渋田貴正さんが解説します。
目次
ふるさと納税とは?
「ふるさと納税」とは、自分の故郷や、応援したい自治体など、好きな自治体(都道府県や市区町村)を選んで寄付をする制度です。
ふるさと納税の魅力。
ふるさと納税の魅力は、寄付したお礼としてもらえる多彩な名産品や体験型の返礼品、子育て支援や動物愛護活動など寄付金の使い道を選べること、そして所得控除や税額控除です。寄付先は自分の故郷に限らず、自分が応援したい自治体、返礼品が魅力の自治体など、全国の自治体から選ぶことができます。
ふるさと納税を行い、確定申告などの手続きを行うことで、寄付した金額のうち自己負担額の2,000円を超える部分については所得税と住民税から控除されます。つまり、実質2,000円の自己負担で寄付金額に応じた返礼品がもらえるのです。
ただし、誰もがいくらでも寄付できて控除を受けられるわけではありません。控除額には一定の上限があります。
全額控除される上限はいくら?
「ふるさと納税」の控除額には、収入や家族構成などに応じて上限があります。上限額以上の寄付をした場合、超えたぶんは控除とはならないため、自己負担額が増えます。まず「自分の収入や家族構成だったら、2,000円の自己負担でいくらまで寄付ができるか?」を、大まかにつかんでおくといいでしょう。
総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」には、「全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」の表が掲載されています。ふるさと納税を行う方本人の給与収入と家族構成からおおよその上限額がわかります。下記に一例をあげました。
全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安(抜粋)
ふるさと納税を行う方 本人の給与収入 | ふるさと納税を行う方の家族構成 | |||
---|---|---|---|---|
独身または共働き (※1) | 夫婦 (※2) | 共働き+子1人(大学生) (※3) | 共働き+子2人(大学生+高校生) (※3) | |
300万円 | 2万8,000円 | 1万9,000円 | 1万5,000円 | 7,000円 |
350万円 | 3万4,000円 | 2万6,000円 | 2万2,000円 | 1万3,000円 |
400万円 | 4万2,000円 | 3万3,000円 | 2万9,000円 | 2万1,000円 |
450万円 | 5万2,000円 | 4万1,000円 | 3万7,000円 | 2万8,000円 |
500万円 | 6万1,000円 | 4万9,000円 | 4万4,000円 | 3万6,000円 |
600万円 | 7万7,000円 | 6万9,000円 | 6万6,000円 | 5万7,000円 |
800万円 | 12万9,000円 | 12万円 | 11万6,000円 | 10万7,000円 |
※1 「共働き」は、ふるさと納税を行う方本人が配偶者(特別)控除の適用を受けていないケースを指します。(配偶者の給与収入が201万円超の場合)
※2 「夫婦」は、ふるさと納税を行う方の配偶者に収入がないケースを指します。
※3 「高校生」は「16歳から18歳の扶養親族」を、「大学生」は「19歳から22歳の特定扶養親族」を指します。
※4 中学生以下の子どもは(控除額に影響がないため)、計算に入れる必要はありません。
たとえば、「夫婦+子1人(小学生)」は、「夫婦」と同額になります。また、「夫婦+子2人(高校生と中学生)」は、「夫婦+子1人(高校生)」と同額になります。
※5 掲載している表は、住宅ローン控除や医療費控除等、ほかの控除を受けていない給与所得者のケースです。年金収入のみの方や事業者の方、住宅ローン控除や医療費控除等、ほかの控除を受けている給与所得者の方の控除額上限は表とは異なりますのでご注意ください。
※6 社会保険料控除額について、給与収入の15%と仮定しています。
※7 掲載している表はあくまで目安です。具体的な計算はお住まい(ふるさと納税翌年1月1日時点)の市区町村にお問い合わせください。
ただし、お住まいの自治体によって、控除の対象となるふるさと納税額の上限は回答できない場合があります。控除上限額については、総務省の「ふるさと納税ポータルサイト ふるさと納税のしくみ」に掲載されている「全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」の表を参考にしてください。
12月に受け取る源泉徴収票があれば、記載された給与総支給額や各種控除額をもとに、より詳しく試算できます。詳細な控除額を知りたい場合は、総務省「ふるさと納税ポータルサイト」の「寄附金控除額の計算シミュレーション」なども参考にしてください。
参考:総務省「ふるさと納税ポータルサイト ふるさと納税のしくみ 税金の控除について 全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」をもとにミラシル編集部が作成。
給与収入とは、ボーナスも含めた年収のこと。通勤手当以外の諸手当を含み、税、社会保険料等を差し引く前の給与額面の金額です。たとえば、ふるさと納税を行う方本人の給与収入が450万円の場合、独身または共働きの場合で5万2,000円。夫婦(配偶者に収入がない場合)で4万1,000円が上限となります(※8)。
※8 社会保険料控除を給与収入の15%と仮定した、あくまでも目安の金額です。また、住宅ローン控除やiDeCoの掛金控除、生命保険料控除など、そのほかの控除を受けていない給与所得者の場合で、これらの控除を受けていると上限額は上記の表よりも少なくなります。
ワンストップ特例制度とは?
ふるさと納税を利用して、税の控除を受けるためには2つの方法があります。1つは確定申告での寄附金控除の申告(翌年3月15日まで)、もう1つがワンストップ特例制度の利用です。
毎年の確定申告が必要な自営業等の人とは異なり、確定申告の必要がない会社員などで、ふるさと納税のためだけに確定申告はしたくない、という人もいるかもしれません。
そうした人に利用しやすいのが「ワンストップ特例制度」です。寄付をした自治体にワンストップ特例申請書を送付することで税控除のための手続きが完了します。
参考:総務省「ふるさと納税ポータルサイト ふるさと納税のしくみ 税金の控除について」
ワンストップ特例制度と確定申告との違い。
ワンストップ特例の申請を行った場合、所得税からの控除は行われず、住民税からの控除のみになります。つまり、確定申告した場合の、所得税控除ぶんも含めて控除額の全額が翌年度の住民税から控除されます。下に、ワンストップ特例制度と確定申告をする場合の違いをまとめました。
ワンストップ特例制度と確定申告の比較
ワンストップ特例制度 | 確定申告の寄附金控除申告 | |
利用できる人 | 【以下のすべてに当てはまる人】 ・もともと確定申告や住民税申告をする必要のない給与所得者など ・年間(1月1日~12月31日)の寄付先が5自治体以内。ただし、同じ自治体に複数回寄付しても1か所とカウント ・ふるさと納税以外に医療費控除などの確定申告または住民税の申告を行う必要がない | 【以下のいずれかに当てはまる人】 ・ふるさと納税以外の確定申告が必要な自営業者、年収2,000万円を超える所得者など ・1年間(1月1日~12月31日)の寄付先が6自治体以上。ただし、同じ自治体に複数回寄付しても1か所とカウント |
控除の対象 | 所得税控除ぶんも含め、控除額全額が翌年度ぶんの住民税 | ・寄付した年の所得税(源泉徴収の場合は還付される場合もある) ・翌年度ぶんの住民税 |
参考:総務省「ふるさと納税ポータルサイト ふるさと納税のしくみ ふるさと納税の流れ」
ワンストップ特例制度はいつまでに申請すればよい?
ワンストップ特例制度の申請期限は寄付をした翌年の1月10日です。この期日必着で寄付先の自治体あてに申請書を郵送します。期限までに確実に届くよう、早めに投函しましょう。
ちなみに、確定申告をする場合は、還付申告(※)であれば翌年1月1日以降いつでも行えます(時効は5年間です)。
※ 還付申告は、確定申告書を提出する必要のない人であっても、納めすぎた所得税ぶんを還付できる申告制度です。給与等から源泉徴収された所得税額などが、年間で計算した所得税額よりも多いときに利用できます。
ワンストップ特例制度利用の流れは?
ワンストップ特例制度を利用する場合の、ふるさと納税の具体的な手順を見ていきましょう。寄付から控除までのスケジュールは、下の図のようになります。
参考:総務省「ふるさと納税ポータルサイト ふるさと納税トピックス 制度改正について(2015年4月1日)」
ワンストップ特例制度を利用する場合の手順。
ワンストップ特例制度を利用するには、次のような手順が必要です。
寄付する自治体を選ぶ。
自分の全額控除上限額を目安に、民間事業者のふるさと納税ポータルサイトなどを利用して寄付先を検討します。
「ワンストップ特例制度」の利用を申し込む。
寄付する際に、「ワンストップ特例制度」の利用を申し込みます。寄付の申し込みはその年の12月31日までできますが、ワンストップ特例制度を利用するには自治体への書類送付が必要です。特例申請の期限に間に合うよう、余裕をもって行いましょう。
寄付した自治体から「ワンストップ特例制度申請書」が届く。
自治体で入金を確認後に「市町村民税・道府県民税・寄附金税額控除に係る申告特例申請書(ワンストップ特例申請書)」が本人あてに送付されます。書類が届くまでの日数は自治体により異なり、早くても1週間程度かかります。一緒に送られてくる「寄附金受領証明書」は、あとで確定申告が必要になった場合に備えて保管しておきましょう。
「ワンストップ特例制度申請書」を寄付先の自治体に郵送。
「ワンストップ特例制度申請書」に必要事項を記入し、本人確認書類等必要書類を同封して1月10日までに必着で寄付先の自治体に郵送します。同じ自治体に複数回の寄付をした場合も、1件ごとに申請書の提出が必要です。
自治体によっては、スマホだけでワンストップ特例申請ができるアプリや、オンラインで申請ができるサービスもあります。これらを利用すれば書類の提出は不要です。
住民税からの控除。
ワンストップ特例制度を利用した場合、所得税からの控除は行われず、そのぶんも含めた控除額の全額が、ふるさと納税を行った翌年度の住民税の減額という形で控除されます。
参考:総務省「ふるさと納税ポータルサイト ふるさと納税のしくみ」
ワンストップ特例制度利用の注意点。
ワンストップ特例制度を利用する際に注意したいことについてまとめました。まず、ふるさと納税をして寄附金控除を受ける場合、確定申告をするか、ワンストップ特例制度を利用するか、どちらか1つしか選択できないということを覚えておきましょう。
複数の自治体に寄付するとき。
先述した通り、ワンストップ特例制度は、年間の寄付先が5自治体以内の場合に利用できます。6自治体以上に寄付した場合、「5自治体はワンストップ、1自治体だけ確定申告」という選択はできません。確定申告で6自治体ぶんの控除の申告をする必要があります。
申請期限を過ぎてしまったら?
申請期限に間に合わなかった場合は確定申告をする必要があります。たとえば、5つの自治体に寄付をして、そのうちの1つだけ申請期限に間に合わなかった場合、5自治体すべての寄付について、あらためて確定申告をする必要があります。
ワンストップ特例制度申請後に確定申告をしたとき。
確定申告を行った場合は、それまでに提出した「ワンストップ特例申請書」はすべて無効になります。「確定申告したけれど、ワンストップ特例申請もしている」というのは通用しません。
もし5自治体のうち1自治体のワンストップ特例申請が間に合わずに確定申告をする場合、1自治体だけの申告をすると、ワンストップ特例で申請した4つの自治体は控除の対象になりません。必ず、寄付した全自治体の確定申告を行いましょう。勘違いしやすい点なので、注意してください。万が一、一部の自治体を除いて確定申告をしてしまうと、後日税務署に対して「更正の請求」という手続きが必要となります。
医療費控除などで確定申告が必要になった場合も同様です。ワンストップ特例制度申請済みの場合でも、あらためて確定申告でふるさと納税の寄附金控除の申告をする必要があります。この場合、確定申告を行ったことを、ワンストップ特例申請書を送付した自治体に連絡する必要はありません。
ふるさと納税をしたあとに転居したとき。
返礼品や各書類を受け取る前なら、寄付をした自治体へ住所変更の連絡が必要です。また、税控除を受けるためには、ふるさと納税を行った年の翌年1月1日時点での住民票の所在地を記入して申請する必要があります。
ワンストップ特例制度を申請したあとに引っ越した場合は、「寄附金税額控除に係る申告特例申請事項変更届出書」を寄付した翌年の1月10日(必着)までに、寄付先の各自治体あてに提出します。
参考:総務省「ふるさと納税ポータルサイト ふるさと納税トピックス 制度改正について(2015年4月1日)」
参考:総務省「<ワンストップ特例を申請する皆様へ>」
住んでいる自治体に寄付するとき。
ふるさと納税を行う自治体に制限はなく、住んでいる県や市区町村に寄付することもできます。確定申告かワンストップ特例申請の手続きをすれば控除の対象になります。
ただし、返礼品を受け取ることはできません。たとえば、埼玉県さいたま市に住民登録がある場合、埼玉県(県庁)・さいたま市への寄付には返礼品を受け取れません。川口市へ寄付した場合は返礼品を受け取れます。
参考:総務省「ふるさと納税に係る返礼品の送付等について」(2017年4月1日付 総務大臣通知)
【まとめ】ワンストップ特例制度を上手に利用して、ふるさと納税をやってみよう!
納税で税控除を受ける場合のポイントは2つ。まず自分の年収や家族構成などから税金の控除が受けられる上限額を確認しておくこと。寄付後は、税控除のための手続きを忘れず、漏らさずに行うことです。
ワンストップ特例制度を利用すると、確定申告の必要もなく手続きが簡単。翌年の住民税から控除されます。制度を利用してふるさと納税をしてみてはいかがでしょうか。
写真/PIXTA
渋田 貴正
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、相続登記をはじめ相続関係手続きや、会社の設立など法人関係の登記に特化している司法書士事務所V-Spiritsの代表。また、V-Spiritsグループの税理士として各種税務相談にも対応している。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
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