インフルエンザの初期症状を医師が解説!普通の風邪との違いは? インフルエンザの初期症状を医師が解説!普通の風邪との違いは?

インフルエンザの初期症状を医師が解説!普通の風邪との違いは?

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なんだか体がだるいし、熱もあるみたい。もしインフルエンザだったらどうしよう……。

風邪かインフルエンザか? 初期症状から自分である程度見極めることはできるのでしょうか? 病院に行くべきか迷ったら、どう判断すればいいのでしょうか?

インフルエンザなどの感染症を専門とする医師の谷口清州先生に聞きました。

目次

インフルエンザの初期症状は?風邪との違いは?

インフルエンザの初期症状は?風邪との違いは?

インフルエンザも風邪も、急性呼吸器感染症に属する病気です。急性呼吸器感染症とはウイルスや細菌によって発症する感染症のことで、主に、鼻やのど・気管支・肺などに炎症が生じます。

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされます。ウイルスに感染すると、比較的急速に症状が現れ、重症化することもあります。

一方の風邪は、いろいろなウイルスによって引き起こされ、自然治癒する可能性が高い、比較的軽症の急性呼吸器感染症を総称した呼び名です。ゆっくりと症状が出てくることが多く、また、発熱で気がつくこともあります。

インフルエンザと風邪の違い。

ここで、インフルエンザと風邪の特徴を見てみましょう。

インフルエンザと風邪の特徴(典型的な症状)

参考:厚生労働省「令和4年度インフルエンザQ&A」と取材をもとにミラシル編集部で作成。

ただし、この表に記載されているのは典型的な症状です。インフルエンザウイルスに感染しているのに症状がほとんど出ない場合や、軽い咳や鼻水程度の場合もありますし、普通の風邪であっても高熱が出たり、非常に強い症状が出たりする場合もあります。症状だけで診断するのは難しく、インフルエンザではないから重症化しないというわけでもありません。

そのため、インフルエンザかどうかを判断するには、直近で職場や家庭内に感染者がいたかどうかも大きな判断材料になります。特に、インフルエンザは家庭内での感染率が高いため、すでに家庭内に感染者がいる場合は疑いが濃厚です。

インフルエンザウイルスを他人に感染させる可能性がある期間は、発症1日前から発症後5日間程度。加えて、この期間を過ぎたとしても解熱後24時間(小児は48時間)くらいまでは感染の可能性があると考えられています。なお、ウイルスの潜伏期間は1日~3日程度です。

インフルエンザの重症化。

インフルエンザが重症化するかどうかは、一般的に、感染経路や曝露量(ウイルスをどれだけ取り込んだか)、患者自身が持つ抗体の量や免疫状態、基礎疾患の有無によります。

感染経路と曝露量。

インフルエンザの感染経路は、飛沫感染・接触感染・エアロゾル感染が考えられます。

仮に、罹患者が咳やくしゃみをしてウイルスを含んだ飛沫が飛び散ったとします。この飛沫を吸い込んでしまうと飛沫感染、飛沫がついた手すりなどを触った手で鼻や口を触ってしまうと接触感染が起こる可能性があります。ただし、少量のウイルスが鼻などの粘膜についた程度なら、感染しても典型的な症状を示さず、風邪のような軽い症状となることが多いようです。

さらに、換気が悪い・狭いといった空間で罹患者と長時間過ごしていると、飛沫感染や接触感染だけでなく、エアロゾル感染も起こる可能性があります。エアロゾル感染は、罹患者の吐いたウイルス混じりの息を長時間にわたって吸い込むようなイメージです。

このエアロゾルによる感染の場合、もっとも典型的なインフルエンザの症状、すなわち高熱と呼吸器症状、全身症状が出ることが報告されています。さらに、比較的大きな粒子の飛沫よりも、小さな粒子であるエアロゾルのほうがウイルスの量が多いため、重症化するリスクも高くなります。

持っている抗体の量。

インフルエンザウイルスに対する抗体をどの程度持っているのかも重症化に影響します。直近で無症状感染していた場合や、ワクチンを接種していた場合などは抗体の量が増えるため、重症化を防げる可能性が高くなります。

インフルエンザかもと思ったときの対処法は?

インフルエンザかもと思ったときの対処法は?

インフルエンザが疑われるときは、どう対処したらよいのでしょうか?

病院へ行くタイミング。

急性呼吸器感染症は、鼻粘膜の液を採取するなどの迅速検査によって10分~15分でウイルスを特定できます。医療機関によっては、一度の検査でインフルエンザと新型コロナウイルスの両方を調べることもできます。

ただし、インフルエンザウイルスに感染していても、症状が出はじめてから12時間以内の検査では陽性反応が出ないこともあります。そのため、病院での検査は発症後12時間以降が望ましいです。

また、症状は急に悪化する場合もありますが、逆に1日~2日で解熱して軽く済む場合もあります。熱が出たらすぐに受診するのではなく、しばらく経過を見てもよいでしょう。

特に基礎疾患のある人、高齢者、あるいは5歳未満の幼児や妊婦など合併症のリスクが高い人は、「連休前だから、念のため病院へ行っておこう」など、カレンダーも考慮に入れてタイミングを判断しましょう。

熱を下げる。

インフルエンザを発症すると高熱が2日~3日程度続き、その後、熱はだんだん下がっていき、発症から5日~7日程度で治るのが一般的です。

熱の上がりぎわはたくさんのエネルギーを使うために、より体力を消耗します。解熱剤である程度熱を下げたほうが体は楽になるでしょう。また、汗をかくと気化熱で体温が下がるため、水分をたっぷりとって汗をかきやすくすることも大事です。

谷口先生は、「重症化のリスク因子のない健康な人であれば、多少熱があっても水分や食事がとれて、普通に眠れるようなら、市販の解熱剤などを使って安静に過ごし、1日~2日くらい家で様子を見てもよい」と言います。

抗インフルエンザ薬を使う。

病院で処方される「タミフル」などの抗インフルエンザウイルス薬も有効です。通常であれば高熱が2日~3日程度続くところを1日ほど短くする効果があります。

薬の服用は、発熱してから48時間以内がよいといわれています。発熱から24時間~36時間でウイルスの増殖はピークに達し、48時間を経過すると薬を使わなくても熱が下がっていくことが多いためです。

もちろん、48時間を過ぎると薬の効きめがなくなるわけではありません。「家で様子を見ていたけれど高熱が続いてつらい」といったときは、病院で抗インフルエンザウイルス薬の処方を相談してみてください。

また、合併症や重症化のリスクの高い高齢者や慢性疾患のある人、妊婦、5歳未満の幼児などの場合も、リスクを減らすために、早めに病院に行って薬を処方してもらうなどの対処をおすすめします。

しっかり休養をとる。

インフルエンザにかかったら、できるだけ安静にして十分な睡眠をとります。さらに、おかゆや野菜スープなどの食べやすいものや、のどの痛みがきついときは、ゼリーなど喉ごしのよいもので栄養をとりましょう。

抗インフルエンザウイルス薬を使って、熱が下がったらすぐに仕事などに復帰と考える人もいるかもしれません。とはいえ、ご自身の健康とともにパブリックヘルス、つまり周囲の人を感染症から守ることも大切です。

インフルエンザウイルスは、先述の通り、発症前1日から発症後5日間程度と、その期間を過ぎたとしても解熱後24時間(小児の場合は48時間)くらいまでは、ほかの人に感染する可能性があります。

出席停止期間が定められている児童・生徒などとは異なり、社会人には外出自粛などは求められませんが、この期間は通院以外の外出をできる限り控え、体力を回復させるためにも休養するのがよいでしょう。

インフルエンザ以外の病気である可能性は?

発熱、全身の倦怠感などインフルエンザに似た初期症状の病気はたくさんあります。高熱が持続する・咳がひどい・呼吸が苦しい・胸痛・めまい・意識の低下・水分をとれない・吐き気が止まらないなどの症状があるときは、自己判断せずにすぐに病院へ行きましょう。

インフルエンザを予防するポイント。

インフルエンザを予防するポイント。

インフルエンザを予防するためにはどうしたらよいのでしょうか? 谷口先生は、「コロナ禍で実践してきた感染対策が有効」と言います。

ワクチンを接種する。

インフルエンザが流行する前にインフルエンザワクチンを接種します。接種してもインフルエンザにかからないわけではありませんが、感染しても発症をある程度抑えたり、発症しても重症化を防いだりする効果が期待できます。ワクチンの効果は、接種した2週間後くらいから約半年間続くとされています。

手洗いと咳エチケットを習慣にし、必要に応じてマスクを着用。

せっけんを使った手洗いは、感染症対策の基本です。外出後・食事前・鼻をかんだあとなどにこまめに手洗いをしましょう。手をすぐに洗えないときは、アルコール消毒剤で手指を消毒してください。

マスクの着用や咳エチケット(咳・くしゃみをする際に、ハンカチや洋服の袖などを使って口や鼻をおさえること)は、自分の感染予防だけでなく、周囲に感染を広げないためにも有効です。

室内の十分な換気を確保する。

季節を問わず、インフルエンザの予防には十分な換気が有効です。換気扇を常時運転する、定期的に窓を開けるなどで部屋の空気を入れ替えます。窓を開ける場合は、対角線上にある窓を両サイドとも開放します。窓が1つしかない場合は、扇風機などを窓の外に向けて設置しましょう。

なお、寒い時期は、短時間だけ窓やドアを全開にするよりも、少しだけ開けて常時換気を確保するほうが室温変化を抑えられます。この場合でも、暖房によって室内・室外の温度差が維持できれば、空気の流れによって十分な常時換気ができます。

人混みへの外出や「3密」を避ける。

インフルエンザの流行が見られるときは、人混みへの外出を控え、特に「密閉・密集・密接」する場所を避けます。どうしても人混みに行く必要がある場合や、通勤列車、職場などでは不織布製マスクを着用しましょう。飛沫感染などの防止が期待できます。

規則正しい生活とバランスのとれた食生活を。

日ごろから、規則正しい生活とバランスのとれた食生活を心がけましょう。各栄養素を偏りなくとりやすい「主食・主菜・副菜」の食事をおすすめします。

主食となる米などの穀物からは炭水化物、主菜となる魚・肉・卵・大豆製品などからはタンパク質、副菜は野菜をメインにしてビタミン・ミネラル・食物繊維がとれます。

症状が出たら、無理せず休み、感染を広げない配慮を。

ウイルスが原因の急性呼吸器感染症のなかでも、インフルエンザは感染力が強く、大きな流行が起こることがあります。日本では、従来12月~3月が流行シーズンでしたが、新型コロナウイルス感染症の流行により、感染対策の徹底、人との接触機会が減ったことなどでインフルエンザにかかる人が一時期激減しました。

谷口先生によると、その結果、インフルエンザへの抗体を保有している人が減少し、年間を通してインフルエンザの流行が続くなど、例年と比べて感染状況が変化していると言います。

「インフルエンザかな?」と思われる症状が出たときは、無理せず休養をとり、症状によっては適切なタイミングで病院を受診し、ほかの人にうつさない配慮をすることが大切です。

写真/Getty Images、PIXTA イラスト/こつじゆい


谷口 清州  
独立行政法人国立病院機構三重病院 院長。東京財団政策研究所 研究主幹。三重大学医学部卒業。専門は小児科学、感染症(特にインフルエンザ)。世界保健機関(WHO)本部勤務を経て、2002年〜2021年、国立感染症研究所 感染症情報センターにてSARS、鳥インフルエンザ、パンデミックなど、国内の感染症危機の技術面を主導。


※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。  
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