円安・円高、正しく理解できてる? 公認会計士・税理士YouTuberの山田真哉さんに聞く「生活にまつわるお金の基本」
“検索したことはある”けど、”結局よくわからなかった”を「なんとなくわかる!」に変えるお金の知識を学べるマネーバラエティ、『もっと!マネバラっ!』。ゲストと視聴者さんがお金について一緒に学べる、生配信のオンラインイベントです。
今回はにじさんじの8名と、公認会計士・税理士YouTuberの山田真哉さんをゲストに迎え、全4回にわたってお金にまつわるお話をお届け。第2回は渡会雲雀さんとセラフ・ダズルガーデンさんと一緒に「生活にまつわるお金の基本」について学びました。
※配信の様子はこちらからご覧いただけます
本記事では、第2回のイベントを終えた公認会計士・税理士YouTuberの山田真哉さんに、よく耳にするけれどいまいち理解できていない「円安・円高」や「インフレ・デフレ」の仕組みについて伺いました。初心者の方にも理解してもらえるよう、詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください!
1. 円安・円高とは?
──山田さん、今回のテーマは「生活にまつわるお金の基本」でした。お金の基本というと、どんな言葉を連想されますか?
お金の基本というと、貯蓄や節約、投資など生活に紐づいた言葉を連想しますね。私たちの生活とお金は切っても切り離せない関係にあります。そのため、お金に関連する言葉は多く、みなさんも日常的に使用することが多いのではないでしょうか?
今回のイベントでは、「よく耳にするけど、意味をぼんやりとしか知らない」というコンセプトを意識して、円安・円高、インフレ・デフレという言葉を取り上げました。意味を知っておくことで、経済ニュースや記事などの理解度もグッと高まりますよ。
──それでは早速、イベントでも話題にあがった円安・円高について、もう少し詳しく教えていただけますか?
円安とは、円の他通貨に対する相対的価値(円1単位で交換できる他通貨の単位数)が少ない状態のことです。円で交換できる他通貨が少なくなればなるほど、円安と言えますね。また逆に円高とは、円の他通貨に対する相対的価値が相対的に多い状態のことです。この状態は、円の価値が高いと言え、海外旅行に行く時は円高のタイミングを狙うといいと言われています。
──なるほど。イベントで解説に使用した図は、円安・円高についてパッとイメージしやすかったですね。
言葉で説明すると少し分かりづらい部分も出てくるので、こういった図を頭に入れておくと、日常で円安や円高の話題があがった時に便利ですよ。左は円の価値が下がっている状態、右は円の価値が上がっている状態です。2011年には1ドル=75円という時期がありました。現在は、円安が進み1ドル=150円近くまで推移している状態が続いています。
──この円安・円高ですが、それぞれのメリット、デメリットを教えていただけますか?
はい、それぞれに以下のようなメリットとデメリットがあります。
<円安のメリット>
- 個人で投資をしている場合、海外資産(海外株式や海外債券)の価値が相対的に上がる
- 海外で日本製品が売れやすくなる。そのため輸出産業の業績が伸びやすい
- 観光客の増加が見込める
このように円安では個人のメリットというより、企業、特に輸出関連企業のメリットが大きくなる傾向にあります。
<円安のデメリット>
- 輸入品が高くなり、輸入に頼っているエネルギー資源や石油関連商品が値上がりしてしまう
- 輸入コストの上昇に伴い、輸入産業の業績が落ち込みやすい
輸入品に頼っている日本では、この円安による生活必需品の値上げが最も深刻と言えます。生活コストの上昇は、個人に対するデメリットが大きく近年でもたびたび円安問題として取り上げられることが多くなっていますよね。
<円高のメリット>
- 輸入品(原油、大豆、小麦などの関連商品)が安く買える
- 海外旅行の費用が安くなる
- 輸入産業の業績が伸びる
当然、円安とは真逆の結果になります。特に輸入品の購入や海外旅行へ行きやすくなるなど、個人のメリットが大きくなるのが円高の特徴です。
<円高のデメリット>
- 海外資産(海外株式や海外債券)に投資している場合、資産価値が下がってしまう
- 輸出コストの上昇に伴い、輸出産業の業績が落ち込む
円高は個人に恩恵があるかわりに、企業や日本経済そのものへのデメリットが大きくなります。自動車や電子部品など日本経済を支える輸出産業の業績が悪くなる、インバウンド(外国人が日本へ訪れてくる旅行)の減少を招くなど、その影響は少なくありません。
今回、イベントのゲストとしてお迎えしたにじさんじの渡会雲雀さんは、海外製の音楽機材を購入されることも多いそうですが、円高の時を狙うとお得に買えると思いますよ。
2. インフレ・デフレとは?
──なるほど、円安・円高それぞれにメリット、デメリットがあり、一概にどちらが良いのか判断しづらいですね。それでは次に、インフレ・デフレについても詳しく教えていただけますか?
簡単に言うと、インフレーション(インフレ)とは物価が上がり続けて、お金の価値が下がり続けることを指します。対してデフレーション(デフレ)とは、物価が下がり続けて、お金の価値が上がり続けること。いずれもメリット・デメリットを持ち合わせており、経済に影響を与える状態ということです。
──インフレ・デフレの根幹となるのは物価の変動かと思います。その物価変動の仕組みとはどのようなものなのでしょうか?
商品やサービスの値段は、それを買う動きである「需要」と、売る動きである「供給」のバランスで決まります。一般に、需要が供給を上回れば物価は上がります(インフレ)。逆に、供給より需要が小さくなれば物価は下がります(デフレ)。
上の図が分かりやすいかと思いますが、消費者と企業の需要と供給のバランスが崩れるとインフレやデフレの状態になる、ということです。
──このインフレ・デフレですが、円安・円高と同じくそれぞれのメリット、デメリットを教えていただけますか?
インフレとデフレには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
<インフレのメリット>
- 商品やサービスの積極購入に伴い企業利益が増加し、従業員の賃金が上昇する
- 賃金上昇、消費増加に伴う、景気拡大の循環が起こる
<インフレのデメリット>
- 物価が上がる
- 現金価値が下がる
インフレのデメリットは単純です。お金の価値が下がり、物の価値が上がるということです。例えば今まで1万円で買えていたものが1万5千円出さないと買えなくなり、その分家計を圧迫するのです。
──インフレ=好景気のようなイメージですが、最近よく「悪いインフレ」という言葉を耳にします。これはどのような状態なのでしょうか?
このインフレのデメリットだけが突出した状態ですね。「スタグフレーション」とも呼ばれます。スタグフレーションとは「Stagnation(スタグネーション・景気停滞)」と「Inflation(インフレーション)」を組み合わせた言葉です。いわゆる悪いインフレでの価格上昇は、良いインフレのような需要の拡大によるものではありません。世界情勢の変化などによる原材料価格の上昇などが原因となり、賃金上昇などは伴わないため、生活は苦しくなります。この状態は、次の章でも詳しくお話しさせていただきますね。
<デフレのメリット>
- 物が安く買える
デフレのメリットはあまりないと言えます。物価が下がっても賃金が上がっているわけではないので、消費行動が活性化することはありませんよね。いわゆる「不況」という状況がこのデフレです。
<デフレのデメリット>
- 給料が下がる
- 企業業績が悪化する
- 失業者が増える
デフレでは企業の売上が減少する一方ですので、それに伴う給与の下落、失業者の増加など悪循環(デフレスパイラル)が巻き起こります。各国の経済は、このデフレを避ける、もしくは脱却するための施策や対策を常に考慮しなければなりません。
3. 日本で物価上昇が続くのはなぜ? 「悪いインフレ」から脱却するために必要なこと
──先ほどもお話にあがった「悪いインフレ=スタグフレーション」ですが、日本は今この状態に近いのではと思います。こういった物価上昇の背景には、どのような理由があるのでしょうか?
新型コロナウイルスの感染拡大や国際情勢の悪化など、社会情勢の変化がまずあげられます。そこに追い討ちをかけるように円安に伴う輸入コストの増大などが重なり、いわゆるスタグフレーションに陥りかねない状態になったと言えます。
そのような物価上昇の渦中にあるにも関わらず、賃金はこの20年間でほとんど上昇していません。生きるために欠かせない食費や燃料費が家計を圧迫する、という状況が日本経済の難しい局面を引き起こしている、と言えます。
渡会さんも、イベント直前のインタビュー記事の中で「スーパーの卵がめっちゃ高くなった」とおっしゃっていましたが、卵は悪いインフレの打撃を受けている代表ですね。社会情勢の変化に加えて、鳥インフルエンザや飼料の高騰などの影響もあり、価格の上昇が続いています。
──このような物価上昇はいつまで続くのでしょうか? 山田さんの見解を教えてください。
こればかりははっきりと言えませんが、2023年までの物価上昇ペースは異常なスピードでした。さすがに2024年は緩やかになっていくとは思います。賃金についても数十年ぶりに賃上げ水準の実現はしています。
ただし、物価の上昇が賃金の上昇より速いため、いわゆる苦しい状況からの脱出はまだ見通しがたっていない、と言わざるを得ません。イベント中、セラフさんがおっしゃったように「ちょっと苦しいけれど頑張らなきゃいけない状況」なんですね。
──現在の状況の中、私たち個人としてできる生活の工夫やアイデアにはどのようなものがありますか?
いかに節約するか、という話になりますが、例えば食品保存の工夫をし、無駄な食糧廃棄物を減らすことや、車での移動を減らし燃料費を節約する、家計の見える化を図るなど、さまざまなアイデアがあります。
とはいえ、現在のような状況だと、生活の工夫だけでは対応しきれないというのが正直なところです。生活を工夫するよりも、働き方や投資の見直しをして、物価上昇に対応できる体制をとっていくことが肝心ですね。会社員の方は、副業を始めるなど、収入源を増やしておくのもおすすめです。少なくとも、貯金で何とかしのごうという考えはやめた方がいいと思います。
4. 渡会雲雀さん&セラフ・ダズルガーデンさんとのイベントはいかがでしたか?
──第2回のイベントを終えましたが、雲雀さんとセラフさんにはどのような印象を持ちましたか?
第2回目ということもあり、とてもリラックスして臨めました。今回は「お金の基本」ということもあり、少し難しいかな、と思っていたのですが、セラフさんは理解したことを咀嚼(そしゃく)して視聴者の皆さんに向けて説明してくださいましたね。また、渡会さんはわからない部分を純粋無垢に聞いて、理解できたら素直なリアクションをとってくれたので、イベントがいっそう盛り上がったと思います。そのあたり、人気VTuberとしての実力を垣間見ました。
──クイズに2問続けて敗れていた渡会さんが、最後の問題で見事正解された時は、コメント欄も大盛り上がりでした。イベント中、特に印象に残っているシーンはありますか?
「ここからが円安、ここからは円高、という基準はあるんですか?」という渡会さんの質問は鋭かったですね。それから、「ゲームの課金はインフレ・デフレに左右されますか?」という視聴者の方からの質問に対する、セラフさんのフォローもさすがでした。
私は、ゲームの課金にインフレ・デフレが影響しない理由を簡単に解説したのですが、「食品や日用品などマス向けの商品を買うのと、ゲームの課金ではユーザーの取り組みがちょっと違いますよね」というセラフさんの一言で、なるほどと納得できた方も多かったと思います。
──次回は2/17(土)に、「将来のお金」について学んでいきます。「老後の貯蓄どれくらい必要なの?」「よく耳にするiDeCoやNISAってどんな準備ができるの?」といった疑問を山田先生に解説いただきます。ゲストは叶さんと魔界ノりりむさんですが、イベント当日はどのような一日になりそうですか?
次回は、誰もが知りたい「将来のお金」がテーマです。「貯蓄」ってどんな人でも大切なキーワードですよね。私のYouTubeチャンネルにも、iDeCoやNISAに関する質問はたくさん届きますし、それらが将来の準備にどう役立つかいまいち分かっていないという方も少なくありません。そんな貯蓄にまつわるお話を、にじさんじのお二人はじめ視聴者のみなさんに分かりやすく伝えられるよう頑張りますので、楽しみにしていてください!
第2回イベントのアーカイブ配信や記事はこちらからご覧いただけます。
もっと!マネバラっ!第2回のテーマである「お金の基本」いかがだったでしょうか?
よく耳にするキーワード、実は私たちの生活に密接に関係することが山田さんのお話から分かりました。ぜひイベントで学んだことを日々の生活に役立ててみてください。
「もっと!マネバラっ!」では第1回「ふるさと納税」、第3回「将来のお金」、第4回「身近なお金」についても学びました。
各回アーカイブもございますので、ぜひご視聴ください!
山田 真哉
大阪大学文学部卒業後、東進ハイスクール勤務を経て、公認会計士に転身。著書『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』は160万部突破のベストセラー、YouTube「オタク会計士ch」は登録者数70万人超に。講演では、貯蓄、投資、税務全般について分かりやすく解説し好評を得ている。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。