保育園見学、何をチェックする?決め手にかけるときは?保活のプロが解説。
保育園は、大切なわが子が多くの時間を過ごす場所。そんな保育園の見学は、保活(子どもを保育園に入れるための活動)にかかせないステップですが、限られた見学時間で、何をチェックして、どんな質問をすればいいのでしょう?
本記事では、保育園の見学のあれこれについて、「保育園を考える親の会」アドバイザー顧問の普光院亜紀さんが解説します。チェックポイントや質問例については、基本的なものだけでなく、なかなか思いつかないような意外なものも一緒に教えていただきました。
目次
- 保育園見学は、いつ、どうやって行う?
- 【基礎編】見学時の基本的なチェックポイント。
- 【応用編】見落としがちなチェックポイント。
- 【基礎編】見学時の基本的な質問例。
- 【応用編】意外な質問例。
- いくつかの保育園を見学したけれど、決め手にかけるときは?
- 【まとめ】見学で得た情報を整理して、保育園選びに生かそう。
保育園見学は、いつ、どうやって行う?
保育園の見学は、入園の申し込みをする前に行います。「パンフレットやホームページではよさそうな園に見えても、実際に見学したらそうでもなかった」という場合もありますので、見学は必ず行いましょう。
入園前年の5月~8月ごろに見学を。
認可保育所等(認可保育園・認定こども園・地域型保育事業など)に4月入園を希望する場合は、前年の10月~11月ごろに市区町村に対して入園の申し込みをします(※)。なので、見学は5月~8月くらいを目安にすませておくとよいでしょう。年度途中に入園を希望する場合も、事前に見学することが基本です。
認可外保育園の場合は、各施設に直接入園申し込みをするため、4月入園の場合も、見学は年間を通して受け付けています。
※ 実際の申込期限は市区町村ごとに異なります。
何か所くらい見学したらいい?
何か所見学すべきかは、地域や家庭の事情によって違うため、一概にはいえません。
ただし、保育園激戦区に住んでいる人や、空きが出るまで待つ時間的猶予がない人ほど、「通うかもしれない保育園はすべて見学しておいたほうがよい」といえます。
また、「認可保育所等に入れなかったら認可外保育園も候補にしよう」と考えているなら、後者も見学しておきましょう。認可外保育園は、保育の質の良し悪しが園ごとにバラバラなので、見学は必須です。
見学の予約はどうやって入れる?
見学できる時期や見学の方法、申込方法は園によって違います。事前に電話で問い合わせて申し込むか、ウェブサイトから申し込める場合もあります。いずれも、園から見学日時を指定されることが多いです。
妊娠中や子連れでも見学できる?
園によって多少の違いはありますが、一般的には妊娠中でも、子連れでも見学させてくれます。ただし、子どもの体調が悪いときは、感染症予防の点からも見学に連れて行くのは控えましょう。
また、父親・母親それぞれの視点で見学するのもおすすめです。複数の目で見ると、違うポイントに気づけて判断しやすくなることもあります。
【基礎編】見学時の基本的なチェックポイント。
それでは、保育園見学の際のチェックポイントと質問例について、それぞれ【基礎編】【応用編】の順で解説していきます。
まずは、基礎的なチェックポイントから。以下の表をご覧ください。
先生の 子どもへの接し方 | ・優しく丁寧な言葉で、笑顔で接しているか ・子どもと目をあわせて会話しているか ・大声で子どもを叱っていないか |
先生の働きぶり | ・いきいきと働いているか ・先生同士でコミュニケーションがとれているか ・時間に追われてイライラしているような様子はないか |
保護者への対応 | ・見学者にも温かい視線を向けてくれるか ・働く親たちを応援してくれる雰囲気はあるか |
園内・保育室の 印象 | ・狭い保育室に多数の子どもがいて、過密になっていないか ・換気したり、清潔さが保たれたりしているか ・整理整頓されているか |
安全・防犯対策 | ・積み上がっているものや、固定されていない大きな家具はないか ・地震や災害時の備えがあるか ・セキュリティシステムが導入されているか |
駐輪場・駐車場・ベビーカー置き場の有無 | ・悪天候のときの通園手段とも照らしあわせて、置き場の問題はないか |
ちなみに、園周辺の環境、登園・降園時の様子、園庭の様子、お散歩時の様子などは、見学の時間内でなくても、近所のお散歩がてら個人的にチェックすることもできます。
【応用編】見落としがちなチェックポイント。
次に、初めて保育園を利用する方は見落としがちなチェックポイントについて解説します。これらも大切なことなので、ぜひ確認しておきましょう。
0歳児~1歳児と2歳児以上は別々の部屋?
0歳児~1歳児がゆっくりと眠れる環境があるかどうかは、とても重要なチェックポイントです。認可保育園ではたいてい分かれていますが、認可外保育園では分かれていないところもあるので、確認しましょう。
幼児クラスの遊びの環境もチェック。
0歳児~1歳児クラスに入園する場合は、低年齢児の保育環境に目が行きがちですが、3歳児以上の幼児クラスの遊びの環境もぜひ見ておきましょう。
保育室内で、「遊びのコーナーごとにゆるく区切られていて遊びに集中しやすい」「絵本やおもちゃなど子どもが自分で自由に選んで取り出しやすくなっている」などは重要な評価ポイントです。子どもの自発性・自主性を伸ばす、よい保育を行っているといえるでしょう。
【基礎編】見学時の基本的な質問例。
ここからは、見学時の質問例について解説します。見学前に自治体や保育園のウェブサイト、「入園のしおり」などに目を通して、クラス定員、保育時間、延長保育時間や料金、年間行事予定などの基本的な情報はチェックしておくとよいでしょう。見学時には、疑問点やさらに知りたいことを質問していきます。
下記に、質問の例をまとめました。
延長保育 | 「延長保育に定員はありますか?」 「必要なときだけのスポット利用もできますか?」 「何日前までに申し込めばよいですか?」 |
散歩や外遊び (※ 園庭がない施設の場合は特に) | 「晴れた日は毎日お散歩や外遊びをしていますか?」 「お散歩は何時ごろ? どこに行って、どのくらいの時間、外遊びしていますか?」 |
発病・ケガのときの対応 | 「急な発熱、嘔吐や下痢、軽いケガなど、それぞれどのような対応を基本としていますか?」 (※ 発熱・嘔吐・下痢の場合は、ほかの子どもへの感染防止のため保護者にお迎えを要請するのが普通。ケガは程度に応じて、園で様子を見たり保育士が医療機関に連れて行ったりする) |
保護者と園との連絡方法 | 「毎日の保育の様子は、どのような形で知らせてもらえますか? アプリまたは連絡ノート?」 |
食物アレルギー対応 | 「食物アレルギー対応はどのようにされていますか?」 (※ ガイドラインでは、保護者の要望ではなく、医師の診断書にもとづいて、給食・おやつを提供することになっている) |
子どもの発達にあわせた対応 | 「離乳食はどんな目安で進めていますか?」 「おむつトレーニングはどう進めるのですか?」 (※ 正しい答えはないものの、「それぞれのお子さんの発達にあわせて」といった回答だと安心) |
【応用編】意外な質問例。
チェックポイントの【応用編】と同じく、次のような質問も忘れずにしておきましょう。
保育士の配置基準などの職員体制。
園児の年齢・人数によって、保育士の配置数が法律で決められています。0歳児クラスは「保育士1人につき子ども3人」、1歳児クラスや2歳児クラスは「保育士1人につき子ども6人」が国の基準です。
2024年4月からの新基準で、3歳児クラスは「保育士1人につき子ども15人」、4歳児・5歳児クラスは「保育士1人につき子ども25人」に改定されています。新基準に沿った人員配置が望ましいですが、昨今の保育士不足のため、旧基準(3歳児クラス、4歳児・5歳児クラスの子どもがそれぞれ新基準より5人多い)も認められています。
自治体によっては、国よりも手厚い配置基準にしているところもあります。
また、担任の先生がパートタイマーの保育士という園もあります。子ども1人ひとりとの信頼関係構築や、クラス全体の把握という観点で考えると、常勤のほうが望ましいもの。ぜひ、担任の先生が常勤か聞いてみてください。
そして、認可外保育園の場合、保育士資格のない先生も働くことができるため、担任が有資格者かどうかも確認してみましょう。
参考:こども家庭庁「こども未来戦略方針の具体化に向けた検討について 参考資料1」(2023)」(参照:2024年7月10日)
乳幼児突然死症候群(SIDS)対策
うつぶせ寝は、乳幼児突然死症候群(SIDS)や窒息事故のリスクを高めるといわれています。このリスクが周知されてきたにもかかわらず、「よく眠るから」とうつぶせ寝をさせているような園は避けてください。
知らないフリをして「うつぶせ寝をさせることもありますか?」と聞いてみてもいいかもしれません。うつぶせ寝のリスクを認識していない園であれば、「はい」と答える可能性もあるので、保育の質を知るヒントになるかと思います。
参考:こども家庭庁「乳幼児突然死症候群(SIDS)について」(参照:2024年7月10日)
保護者の利便性に関わること。
保護者の利便性に関わることで気になる点も、聞いてみるとよいでしょう。
1点お伝えしたいのが、「保護者の利便性」に気をとられすぎないでほしいということ。のちに入園申し込みをするとき、「利便性」と「子どもにとっての環境の快適さ」で迷うようなら、後者を優先していただきたいです。
目に見えやすい便利さ(おむつの持ち帰りがないなど)に惹かれて、保育園を決める保護者の方は少なくありませんが、保育の質がいまいちな園を選んでしまっては本末転倒です。親も子も安心できるような、保育の質の高い園を選びましょう。
いくつかの保育園を見学したけれど、決め手にかけるときは?
通いやすさ(通園距離)も重要ですが、繰り返しお伝えしてきたように、「親も子も安心できる保育園を選ぶこと」がなによりも大切です。通園距離などの条件面で大きな差がない場合は、親の直感を信じて選んでもいいと思います。
園全体の雰囲気のほかに、見学時に案内してくれた人(施設長や保育主任などの場合が多い)の子どもに対するまなざし、話しぶり、見学を申し込んだときの対応などからも、信頼できる園なのかを感じ取れるかと思います。
【まとめ】見学で得た情報を整理して、保育園選びに生かそう。
保育園の見学は、わが子によりよい保育園を選んであげるためには必要不可欠なステップです。限られた見学時間の中で、ポイントを押さえて、知りたいこと、チェックしておきたいことをしっかりと把握できるようにしましょう。
事前の情報収集の段階からノートやスマホに園ごとの情報を記録し、見学で感じたことなども書き足していくと、比較がしやすくなります。
希望した園に入園できなかったときのことも考えて、複数の園を見学することも場合によっては必要になります。ぜひしっかり見学して、後悔しない保育園選びに役立ててください。
写真/PIXTA
【監修者】普光院 亜紀
保育園に子どもを預けて働く親のネットワーク「保育園を考える親の会」代表を経て、現在はアドバイザー(顧問)として活動。保育ジャーナリストとして執筆・講演も行っている。著書に『後悔しない保育園・こども園の選び方』(ひとなる書房)、『不適切保育はなぜ起こるのか』(岩波新書)など。
※ この記事は、ミラシル編集部が取材をもとに、制作したものです。
※ 掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。
※ 記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。
※ 税務の取り扱いについては、2024年6月時点の法令等にもとづいたものであり、将来的に変更されることもあります。変更された場合には、変更後の取り扱いが適用されますのでご注意ください。詳細については、税理士や所轄の税務署等にご確認ください。