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「ずりばい」はいつはじまる?動きのバリエーションも医師が解説。
赤ちゃんは月齢4か月~6か月くらいになると、うつぶせにしたときにしっかり頭を持ち上げるようになってきます。なかには、うつぶせ姿勢でおなかを床につけたまま前進をする、いわゆる「ずりばい」をはじめる子もいます。
同じくらいの月齢の赤ちゃんと比べて、「うちの子、なかなか『ずりばい』をしない!」「この動き方も『ずりばい』といえるの?」など、ママやパパの心配の種になることも少なくありません。赤ちゃんの「ずりばい」について、子どもの心身の発達を研究している小児科医の榊原洋一先生が解説します。
目次
- 「ずりばい」はいつはじまる?
- 「ずりばい」に正解はない。また、しない赤ちゃんもいる。
- 「ずりばい」を促す遊びはしたほうがいい?
- 「ずりばい」をしないのは運動や知的な発達状態に何か問題がある?
- 【まとめ】「ずりばい」をしないことに過度な心配は必要ありません。
「ずりばい」はいつはじまる?
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赤ちゃんは、いつごろから「ずりばい」をしはじめるものなのでしょう。
「ずりばい」は「ハイハイ」の1つ。
赤ちゃんがうつぶせの姿勢でおなかを床につけたまま移動することを、一般的には「ずりばい」と呼んでいます。うつぶせでの移動はほかにも、手のひらと膝を床についた「よつばい」や、膝をつかずにおしりを高くもちあげて移動する「高ばい」などがあります。これらはすべて「ハイハイ」の1つのバリエーションといえます。
しかし、「ずりばい」をしたからといって必ず「よつばい」などへ移行するわけではありません。首すわりやおすわりのように、赤ちゃんの発達過程でどの子にも必ず見られる行動ではないのです。ですから、どの動きが正しいということはなく、「動きたい!」という欲求が生まれた赤ちゃんそれぞれに「ずりばい」(ハイハイ)の動きや形があるのです。
「ずりばい」をはじめる時期の目安。
赤ちゃんの中には「ずりばい」や「ハイハイ」をしないで歩きはじめる子もいます。また、「ずりばい」をはじめた子でも、時期や期間、スタイルなどのバリエーションはとても幅広くて、明確な時期の目安はありません。
小児科医は、子どもが順調に発達しているかどうかを判断するときに「日本版デンバー式発達スクリーニング検査」の表を参照しますが、「ハイハイ」は発達の指標にはならないという理由から、この表にも載っていません。
赤ちゃんが自分の意思で体を動かす「随意運動」の発達は必ず、首すわり→寝返り→おすわり→つかまり立ち→歩行の順番で進んでいきます。この過程で、赤ちゃんが「ずりばい」をはじめる時期は、「寝返り」と「つかまり立ち」の間が多いようです(月齢の目安として5か月~9か月くらい)。でも赤ちゃんの成長は一進一退で、1人歩きをはじめたのに「ハイハイ」に戻る子もいます。歩くよりも「ハイハイ」のほうが「動きたい」という気持ちを具現化しやすいからです。
「ずりばい」に正解はない。また、しない赤ちゃんもいる。
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おなかを床につけて、主に腕の力で前進するのがよく見られる「ずりばい」ですが、移動手段として、その子ならではのオリジナルな動き方をする赤ちゃんもたくさんいます。どれがいいとか、どれが正しいということはありません。
どれも赤ちゃんの「動きたい!」という欲求から自然に出てきた動きです。ただし、運動欲求には個人差もあり、活発に動く子もいれば、動かないでじっとまわりを観察するのが好きな子もいます。その子なりの欲求への表出方法があるものです。
「ずりばい」前後に見られる動きのバリエーション。
「ずりばい」という言葉自体は、この時期の赤ちゃんによく見られる動きに大人がつけたネーミングにすぎないのですが、その前後にはこのほかにも赤ちゃんによっていろいろな動き方が見られます。
・体を軸にしてその場で回転する(ピボットターン)
・腹ばいで両腕を横に広げて体を反らす(飛行機ブーン)
・腹ばいで手足をバタバタする
・あおむけのまま、足で床を蹴って移動する(背ばい)
・腹ばいで後退する
・腕の力だけで進む
・両手でバタフライのように進む
・おすわり姿勢のまま、おしりを使って動く(シャフル)
・おすわりの姿勢のまま、片足でこぐようにして移動する(変則シャフル)
常にその子独自のお気に入りスタイルで動く子もいますし、「ハイハイ」のやり方がだんだんと変わっていく場合もあります。その子にとって、その場面でのいちばん合理的な方法で、動きたい欲求をかなえているのです。「ずりばい」をしないからといって心配する必要もありません。
「ずりばい」を促す遊びはしたほうがいい?
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赤ちゃんはやがて移動するために歩きはじめ、階段を上るなどの行動も自然に行うようになります。「ずりばい」をしてもしなくても、その後の運動発達には影響を及ぼさないことがわかっています。「ずりばい」は、必ずしないといけないものではないので、それを促す必要はありません。
親のおなかの上をはって乗り越えていく遊びなどを、ちょっと手伝ってあげながら楽しくトライさせてみても。「すごいね。できたね」とほめてあげると、赤ちゃんも「もっと動いてみたい!」と思うはずです。
安全な環境を整えてあげることが大切。
「ずりばい」をはじめた赤ちゃんには動きやすい服を着せて、自由に動ける安全なスペースをつくってあげることがとても大切です。リビングなど、赤ちゃんが動けるよう次のものには注意しましょう。
![安全な環境を整えてあげることが大切。](https://image.mirashiru.dai-ichi-life.co.jp/prod/sites/default/files/inline-images/img_2410_09_004.jpg?VersionId=L295my5tVl0EDvvsQX93tCWrk695ykmp)
1:階段やキッチンの入り口にはゲートを設置する。
2:加湿器など触ってほしくないものはサークルなどで覆う。
3:コンセントにはコンセントキャップなどでカバーをする。
4:床にはできるだけ物を置かない。小テーブル、ラック、ゴミ箱などもよけておく。ラグは「ずりばい」をする赤ちゃんの邪魔になることも。
5:大きめの観葉植物もリビングには置かない。もしくはサークルで覆う。
6:家具を足場にして窓の外へ転落する可能性があるため、窓の下には物を置かない。
また、赤ちゃん用のサークルを使えば、赤ちゃんの動けるスペースだけを確保することもできます。
赤ちゃんが自分なりの方法で動けるようになると、思いがけない事故のリスクが高まります。0歳の赤ちゃんの死因は、先天的な異常、周産期の異常、SIDS(乳幼児突然死症候群)に次いで「不慮の事故」が第4位。主な事故は家庭内で起こっています。
参考:厚生労働省「死因順位(第5位まで)別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合 」
赤ちゃんが自分で移動できるようになると、興味の対象へ自ら近づいて、触ったり舐めたり、なんでも確認してみたくなるものです。そのとき目の前にある段差や階段、触っては危ないものなどでもおかまいなし。興味の対象に猪突猛進してしまう赤ちゃんにとって、事故のリスクが増えてしまうことにつながります。
「ずりばい」をするようになったら、「つかまり立ち」をはじめたら、と赤ちゃんの動き方を想定して、手の届きそうなところには危険なものは置かないようにするなど、先手、先手で安全な環境を整えていきましょう。
「ずりばい」をしないのは運動や知的な発達状態に何か問題がある?
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先述したとおり、「ずりばい」も「ハイハイ」も、運動発達のいわばオプションのような位置づけ。しなくてもまったく問題はありません。一概に「うちの子は○○をしない」「○○が遅い」と心配するのではなく、赤ちゃんの日々の様子を、常に総合的に見守ってあげる姿勢が大事です。
【まとめ】「ずりばい」をしないことに過度な心配は必要ありません。
「ずりばい」は、赤ちゃんの順調な発達過程で必ずできないといけない運動ではありません。ですから、「ずりばい」をしないからといって、過度な心配をして、小児科医に相談する必要はありません。
また、児童館などで同じ月齢の子たちの様子をたくさん見てみましょう。子どもの個人差がよくわかりますよ。
写真/Getty Images、PIXTA イラスト/こつじゆい
【監修者】榊原 洋一
医学博士。小児科医。お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター教授を経て、同名誉教授。チャイルドリサーチネット所長。専門は小児科学、発達神経学、国際医療協力、育児学で発達障害研究の第一人者。著書は『ヒトの発達とは何か』(筑摩書房)など多数。
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