大人も食物アレルギーになる?エビ・小麦・果物も?症状や対処法は?
大人になってから、小麦粉や果物、エビなどが原因で食物アレルギーを起こし、それらがいっさい食べられなくなったという話を聞いたことはありませんか?
場合によっては、救急車で運ばれたり、入院が必要になったりするほど悪化することもあるようです。
大人になって生じる食物アレルギーの特徴や、なりやすい人の傾向、治療法などについて、アレルギー専門の医師である福冨友馬先生に伺いました。
目次
- 大人の食物アレルギーの特徴は?
- 食物アレルギーの原因となる4つのケース。
- 大人がアレルギーを発症しやすい食物3選。
- 大人の食物アレルギーの診断方法は?
- 大人が食物アレルギーを発症したときの対処法は?
- 【まとめ】原因となる食物を避けることと体調管理が大切。
大人の食物アレルギーの特徴は?
子どものときには食物アレルギーがなかった人でも、大人になってから何らかのきっかけでアレルギーを発症することがあります。
実は、食物アレルギーはいつ誰が発症してもおかしくありません。大人の食物アレルギーの症状や原因を知っておきましょう。
食物アレルギーの症状は?
かゆみやくしゃみなどの軽い症状から、重症化するものまでさまざまです。
もっとも多いのは、特定の果物や野菜を食べることによって口やのどがかゆくなる症状(口腔アレルギー症候群/OAS)です。また、原因となる特定の食物を食べたあとにランニングなどの運動をすることで、全身にじんましんなどの皮膚症状が起こる場合もあります(食物依存性運動誘発アナフィラキシー)。
重症化すると、のどが腫れる・苦しくなるといった呼吸器症状や、腹痛・下痢などの消化器症状が起こり、入院が必要になることもあります。
食物アレルギーの原因となる4つのケース。
食物アレルギーの原因は、主に4つあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
ケース1:花粉症が原因で発症。
花粉症に悩まされている方は、非常に多いと思います。
花粉症の患者さんの一部が、食物アレルギーになることがあります。ただし、花粉症の原因として有名なスギ花粉の花粉症の方は、食物アレルギーになることはほとんどないとされています。
食物アレルギーになるのは、シラカンバやハンノキなどカバノキ科の花粉症の方、ブタクサなど草の花粉による花粉症の方が多くなっています。
ケース2:特定の食物で発症。
原因はまだはっきりとはわかっていませんが、特定の食物を頻繁に食べているうちに、食物アレルギーを発症することがあります。
ケース3:仕事でアレルゲンに頻繁にさらされて発症。
調理の仕事をしている人が、たとえば食材であるエビ・カニなどの甲殻類やそば粉に頻繁に触れ、扱い続けることで、食物アレルギーを発症することがあります。
調理師は手荒れを起こす人も多く、荒れた皮膚からアレルギーを引き起こす原因物質(アレルゲン)となる物質が体内に入り込んで発症しやすくなるのではないかと考えられています。
なお、家事程度で発症することはめったにありません。
ケース4:化粧品に配合される食物関連成分で発症。
石けんに含まれる小麦由来の成分が原因で、小麦アレルギーを発症する場合があります。また、小麦由来の成分入りのヘアトリートメントなどで発症する方もいます。
大人がアレルギーを発症しやすい食物3選。
大人の食物アレルギーは、子どもの食物アレルギーに多い卵や牛乳で発症することは極めてまれです。多くの場合は、次の3つの食物が原因となって発症します。
原因1:果物
もっとも多いのが、花粉症が原因の果物アレルギーです。
特にカバノキ科の花粉症の人の一部は、バラ科の果物(モモ・ウメ・リンゴ・ナシ・ビワ・サクランボなど)のアレルギーになります。
これは、本来反応すべきカバノキ科の花粉と、バラ科の果物のアレルゲンがよく似ているため、本来は花粉に対してつくられた体内の抗体が、果物に対しても反応してしまうことで起こります。これを「交差反応」といいます。
原因の花粉 | カバノキ科花粉 (シラカンバ・ハンノキ) |
草の花粉 (イネ科の植物・ブタクサ・ヨモギ) |
症状が出る食物 | バラ科の果物 (モモ・ウメ・リンゴ・ナシ・ビワ・サクランボなど) マメ科の植物 (大豆・ピーナッツ) セリ科の野菜 (ニンジン・セロリ) など |
ウリ科の果物・野菜 (メロン・スイカ・キュウリ) トマト・オレンジ・バナナ・アボカド など |
主な症状 | 口やのどがかゆくなる症状(口腔アレルギー症候群/OAS) |
※注 カバノキ科花粉・草の花粉が原因の食物アレルギーの場合は、アレルゲンは熱に弱いため、加熱・加工した食品(果物の缶詰・アップルパイ・梅干し・納豆・醤油など)ではほとんど症状が出ない。
参考:福冨友馬医師の監修をもとにミラシル編集部が作成
原因2:エビなどの甲殻類
甲殻類、特にエビは大人の食物アレルギーの代表格でしょう。原因ははっきりしていませんが、調理師など仕事で甲殻類に触れる機会が多い人の発症率が高いことがわかっています。
原因3:小麦粉
大人になって発症する小麦アレルギーでもっとも多いのは、「小麦依存性運動誘発アナフィラキシー」というタイプです。
小麦でできた食品を摂取したあと2時間~4時間以内に、運動をするなどの二次的な要因が加わると、かゆみやじんましんといった皮膚症状が起こると言われています。
重度になると血圧が低下し、意識障害を引き起こすアナフィラキシーショックに至るケースもあるので注意が必要です。
大人の食物アレルギーの診断方法は?
大人の食物アレルギーの診断は、血液検査と皮膚検査、および医師の問診を組み合わせて行います。
血液検査と皮膚検査。
血液検査は「IgE検査」ともいわれ、アレルゲンを特定する検査です。
果物・野菜や甲殻類・豆類・小麦など、思い当たる食物に対してアレルギーがないか検査します。皮膚検査は「プリックテスト」ともいい、アレルギーを引き起こすと思われる食材のエキスを腕などの皮膚に垂らして、専用の針でひっかくことで反応をみます。
ちなみに、実際に食品を食べてみる「経口負荷試験」は、子どもの食物アレルギーの場合はよく行われますが、成人の場合は問診である程度アレルゲンを推測できることから、行わなくてもすむことが多いです。
医師の問診。
医師の問診では、患者さんに食物アレルギーの疑いがある場合、「何を食べて、どのくらいあとにそうなったか」を聞き、疑わしい食品について検査を行います。
診察の際は、食物でアレルギー症状が出たときのことをメモにして持参すると、スムーズに問診が進みます。
大人が食物アレルギーを発症したときの対処法は?
食物アレルギーを発症したら、病院を受診して原因を特定し、適切な治療を行う必要があるでしょう。アレルゲンとなる食物をできるだけ避け、生活習慣にも気を配るなどの予防、対策が大切です。
まずはアレルギー科を受診。
最初はかかりつけ医に相談するか、または各都道府県にある「アレルギー疾患医療拠点病院」を受診するといいでしょう。
食物アレルギーの患者さんを多く診ている、経験豊富な医師がいる医療機関を受診することをおすすめします。
前もって受診したい医療機関に自分の症状を伝えて、対応できるかどうかを確認すると安心です。
食物アレルギーの治療法は?
食物アレルギーの治療の基本は「原因の特定と除去」。すなわち原因となる食物を特定して避けることが第一です。症状が改善する可能性は十分にあるので、「もう治らないのでは?」とあきらめる必要はありません。
ただし、いくら気をつけていても、気がつかないうちに食べてしまうこともあります。その際、症状を緩和するために、一般的なアレルギーの薬を処方する薬物療法が行われます。
特に血圧の低下や呼吸困難など、アナフィラキシーの症状で重症化するリスクがある患者さんには、症状緩和のためのアドレナリン自己注射薬を常に持ち歩くことをおすすめしています。
食物アレルギーの症状を防ぐための方法は?
一度発症した人が、症状を防ぐためにすべきことは、原因となる食物を徹底的に避けることです。
花粉症が原因の人は、花粉症が悪化すると食物アレルギーの症状も悪化しやすいので、できるだけ花粉に触れない環境に身を置くことが大切です。たとえば草の花粉症の人は、草が生い茂る川沿いのエリアに住まないようにするなど、気をつけたほうがいいでしょう。
なお、アナフィラキシーは疲れているときに起こりやすい傾向があります。食物アレルギー全般に言えることですが、普段から十分な栄養と睡眠時間を確保し、規則正しい生活を心がけましょう。
【まとめ】原因となる食べ物の回避と体調管理が大切。
食物アレルギーは、どんな人でも発症する可能性があります。もし思い当たることがあったらすぐに医療機関を受診し、原因を特定するとともに、原因となる食物を避けて生活しましょう。さらに、体調管理にこれまで以上に気を配ることをおすすめします。
写真/Getty Images イラスト/こつじゆい
福冨 友馬
1979年、山口県生まれ。独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター臨床研究推進部アレルゲン研究室長。2004年、広島大学医学部卒業。沖縄県立北部病院を経て2006年から相模原病院アレルギー科に勤務。2009年、同臨床研究センター研究員。2012年より現職。著書に『大人の食物アレルギー』(集英社新書)などがある。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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