子宮筋腫の原因や治療・手術の最新事情を医師が解説。
婦人科系疾患の代表格ともいえる子宮筋腫。命にかかわる病気ではありませんが、症状がひどくなると、日常生活に大きな影響がおよびます。手術して切除すべき? でも、費用も体へも負担がかかるし……と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。成城松村クリニックの松村圭子院長に、子宮筋腫の原因から症状、治療の最新事情まで教えていただきました。
目次
「子宮筋腫」にかかるのは、30代以上の4人に1人。
子宮筋腫は子宮の筋肉細胞が異常増殖してこぶ状の腫瘍ができる病気です。腫瘍といっても良性で、命にかかわることはありません。30代以上の女性の2〜3割に見られる婦人科系疾患です。
腫瘍が1個だけの場合もあれば、複数の場合もあります。だんだん大きくなりますが、悪性の腫瘍(がん)に変わることはありません。そのため、日々の生活に支障がなければ、特に治療をしない人も多い病気です。
子宮筋腫の原因。
子宮筋腫はなぜできるのでしょうか。諸説ありながらも、そのメカニズムについては明確にわかっていません。ただ、腫瘍の発達には女性ホルモンの「エストロゲン」が影響していることは明らかで、そのため閉経を迎えてからは腫瘍が小さくなっていきます。
初産年齢が若く、たくさん子どもを産んでいた昔の女性の生涯生理回数は約50回。一方、現代女性は初潮年齢が下がり、子どもを2人出産したとしても、生涯に迎える生理は約450回。さらに、妊娠・出産をしない人も増えています。
つまり、生涯において女性ホルモンを分泌している期間が長くなり、そのようなライフスタイルの変化と子宮筋腫の患者数は無関係ではありません。子宮筋腫は現代女性のリスクともいえるのです。
子宮筋腫の症状。
子宮筋腫は腫瘍ができる場所によって「筋層内筋腫」「粘膜下筋腫」「しょう膜下筋腫」に分類されます。症状は腫瘍ができた場所や大きさによって異なります。
筋層内筋腫
子宮の筋層の中に腫瘍ができます。子宮筋腫でもっとも多いのがこの筋層内筋腫で、大きくなると月経痛や過多月経といった症状が出ます。
粘膜下筋腫
子宮の内側に腫瘍ができ、小さくても強い症状が出ます。尋常ではない月経量のため、昼用ナプキンが1時間もたない、夜は介護用オムツを使うという人もいるほどです。ひどい生理痛に悩まされ、貧血になる人もいます。
また、筋層内筋腫と粘膜下筋腫は、子宮の内側に向かって腫瘍が大きくなるため、子宮内膜がなだらかではなくなり、不妊や流産、早産の原因になることもあります。
しょう膜下筋腫
腫瘍が子宮の外側にできます。かなりの大きさになるまで自覚症状が出ません。お腹の上から触るとしこりを感じたり、外見からもわかる大きさになったりすることも。腹部の圧迫感や重だるさ、頻尿、便秘などの症状が出ることもあります。
気づきにくい体の変化。
生理痛がひどい、経血量が多いと悩んでいても、人と比べることはできません。そのため、生理がとてつもなく憂うつ、貧血でつらいと思いながら、「体質だから仕方ない」とがまんしているあいだに、筋腫が大きくなっているというケースが多いようです。心配なことがあったら、気軽に婦人科を受診してください。
子宮筋腫は何センチで手術すべき?治療法はどう選ぶ?
子宮筋腫の治療法は、大きく外科手術と薬物療法に分かれます。「何センチくらいになったら、手術ですか?」と気にされる方もいますが、一概に大きさだけでは判断できません。
また、腫瘍が大きくても、日常生活に支障がなければ治療は行いません。定期的に検査を受けて経過を観察します。一方、腫瘍自体は小さくても、毎月、生理の経血量が多くて不快・不安、生理痛が耐えられない、ひどい貧血に悩んでいるなど、著しくQOL(Quality of Life)が下がってしまう場合は対処が必要です。
その際、どんな治療法を選ぶかは、年齢や症状、妊娠・出産の希望、子宮を残すか残さないかなど、患者さん1人ひとりの状況や考え方によって変わります。
子宮筋腫の薬物療法。
子宮筋腫自体を治す薬は残念ながらありません。そのため、薬は症状を和らげることを目的に使います。鎮痛剤を使ったり、鉄剤を服用して鉄分を補ったり。根本的な治療にはなりませんが、痛みや不安を軽減し、普通に生活できるという効果があります。
また、ホルモン剤で女性ホルモンの分泌をコントロールする治療法もあります。ただし、筋腫が小さくなっても完全になくなるわけではなく、更年期症状が出ることもあります。妊娠を希望されている人には向きません。
子宮筋腫の外科手術。
外科手術も、それぞれの患者さんの事情に応じて決めていきます。妊娠・出産を希望している場合は、腫瘍部分のみを取り除く「子宮筋腫核出術」が選択肢となるでしょう。妊娠・出産の希望、子宮を残したいという希望がない場合は子宮そのものを摘出する「子宮全摘手術」となります。
たとえば、閉経後の患者さんで、生理にまつわる不調はなくても日々腰痛がひどく、全摘出手術を希望される方もいます。どういう選択をするかは本人次第です。しかし、閉経前の場合、腫瘍は手術で取り除いても再発することがあります。さらに、手術は出血を伴い、ときには輸血が必要になることや術後の合併症などがないわけではありません。先を見据えながら、医師と相談することが必要です。
手術の費用と入院期間。
子宮筋腫の手術費用については、病院や選んだ術式、患者の症状によって異なるため、一概にはいえません。ただ、日本には高額療養費制度があります。年齢や所得に応じて、医療費の自己負担の上限が決まっており、限度額を超えた分は払い戻されます。
入院期間は、目安として、開腹手術が8~10日程度、内視鏡を使った腹腔鏡手術が5〜6日程度となります。
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以前は、腫瘍がある程度の大きさになると開腹手術しか手段がありませんでしたが、医療技術の向上により、ある程度の大きさのものも腹腔鏡手術で取れるようになりました。
さらに、新しい治療法も出てきています。たとえば、「子宮動脈塞栓術」は、子宮への血流を止めることで腫瘍を小さくさせる治療法で、外科手術ができない・したくない人には選択肢の1つになるでしょう。しかし、将来的な妊娠への影響についてはいまだ明らかになっていませんし、効果は一時的との指摘もあります。
また、超音波を当てて腫瘍を焼いて小さくする「集束超音波療法」は、日帰りでできる治療法です。ただし、保険外治療であり、対応できる医療機関も限られています。
【まとめ】子宮筋腫は、定期的な経過観察が大切。
子宮筋腫は、腫瘍を大きくさせないための生活習慣があるわけではなく、大きくなるスピードも人それぞれです。そのため、定期的に婦人科検診を受けて経過をみながら、症状とうまくつきあっていくことがなにより大切になるでしょう。
写真/Getty Images
松村 圭子
成城松村クリニック院長。日本産科婦人科学会専門医。生理や排卵日を管理できるアプリ「ルナルナ」の顧問医も務める。西洋医学だけでなく、漢方薬やサプリメント、各種点滴療法なども積極的に治療に取り入れ、アンチエイジングにも精通。月経トラブルに悩む若い世代から、更年期障害に苦しむ中高年層まで、女性の一生をサポートすべく、診療と情報発信を続けている。
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