源泉徴収票はいつ届く?見方や確認事項などを税理士が解説。
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※ 文章表現の都合上、生命保険を「保険」と記載している部分があります。
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会社員であれば年末に渡される源泉徴収票。隅々までじっくりチェックしたことはありますか? 源泉徴収票は「自分の所得を示す重要な書類」。じっくり眺めると、いろいろなことが見えてきます。
この記事では、日々多くの税務相談に対応している税理士の渋田貴正さんに、源泉徴収票の見方や、源泉徴収票を通じて考えるお金に関する視点についても解説いただきました。
目次
- 源泉徴収票は、給与と納めた所得税を記した大事な書類。
- 源泉徴収票はいつ届く?
- 源泉徴収票に記載されている主な項目とは?
- 源泉徴収票の押さえておきたい確認事項。
- 控除を理解することで、生活に安心を。
- 届いた源泉徴収票を確認して、資産形成に活用しよう。
源泉徴収票は、給与と納めた所得税を記した大事な書類。
源泉徴収票とは、会社が年末調整を行った結果を記した書類で、1年間に会社から支払われた給与などの金額や納めた所得税の金額などが記載された法定調書の1つです。自分の所得に関する情報がまとまって記されており、「給与所得者のための確定申告書の控え」ともいえるかもしれません。
年末調整とは、会社が代わりに行ってくれる確定申告のようなもの。
年末調整とは、会社が代わりに行ってくれる確定申告のようなものといえます。確定申告はその年の収入から所得と納税の額を計算し、税務署に申告する手続きです。
確定申告ではあらゆる所得を合算して行いますが、年末調整は給与所得に限定して1年間の所得税の額を計算します。
毎月給与から引き去られた源泉徴収税の総額より最終的な納税額が少ない場合は、差額が「還付」され、納税額が多い場合は差額が「徴収」されます。
なぜ、納税額に過不足金額が発生してしまうかというと、毎月の給与から引き去られる所得税は、あくまで概算で算出されたものだからです。そのため、その年の所得税が確定した年末時点で正確な所得税を再計算するといった手続きが年末調整では行われています。
会社員は還付となるケースが多く、還付額は12月~1月の給与と一緒に振り込まれます。還付額は、多くの会社では給与明細で「年末調整」と記されています。
年末調整のイメージ
取材内容をもとにミラシル編集部にて作成
源泉徴収票はいつ届く?
源泉徴収票は、毎年いつごろ届くのでしょうか。それぞれ見ていきましょう。
出典:国税庁「【手書用】令和 年分 給与所得の源泉徴収票(令和4年分以後用)」
正社員・公務員・アルバイト・パートの場合。
源泉徴収票は年間の所得の集計ですので、年間の所得が確定しないと作成できません。そのため、基本的には12月支給の給与明細や年末の賞与明細と一緒に届きます。
退職者の場合。
所得税法226条では、給与等の支払いをする者(会社など)は支払いを受ける者の退職日から1か月以内に源泉徴収票を交付しなければならないと定められているため、基本的には、最後の給与明細と一緒に届くことが多いです。発行されない場合は、退職時に請求しておきましょう。
参考:e-Govポータル「所得税法(昭和四十年法律第三十三号)」
個人事業主(フリーランス)の場合。
会社員のような源泉徴収票は届きません。
取引先が1月~12月に支払った報酬の額が確定したあと、源泉徴収額が記された支払調書として年明けに届きます。
ただし、報酬を支払った側に支払調書を発行する義務はないため、支払調書が届かないこともあります。支払調書がない報酬であっても、確定申告をする必要があります。
源泉徴収票に記載されている主な項目とは?
参考:国税庁「【手書用】令和 年分 給与所得の源泉徴収票(令和4年分以後用)」をミラシル編集部にて加工
源泉徴収票には、さまざまな項目が記載されています。中でも次の8つについて、それぞれの数字がどう関連しているのか、見てみましょう。
(1)支払金額
会社が支払った給与・賞与・手当(通勤手当を除く)・インセンティブの総額、いわゆる年収です。自分の税額が決まる基礎となる数字なので、源泉徴収票を受け取ったらミスがないかまず確認しましょう。特に、転職した場合はチェックしておくと安心です。
(2)給与所得控除後の金額
給与等の収入金額から給与所得控除の額を引いた金額です。給与所得控除の額は、年間の給与等の収入金額に応じて自動的に決められています。給与所得控除は会社員の必要経費といえます。
(3)所得控除の額の合計額
所得から引かれる控除の総額です。基礎控除や配偶者控除、扶養控除などの人に関する控除と(5)~(7)の所得控除の合計額です。
(4)源泉徴収税額
所得から算出された最終的な納税額です。ここに記載されている金額がその年の所得税となります。給与から引き去られた源泉徴収税の総額よりも少なければ還付、多ければ徴収されます。
(5)社会保険料等の金額
その年に支払った社会保険料の総額です。社会保険料は全額所得控除の対象となります。社会保険には以下のようなものがあります。
・健康保険
・厚生年金保険
・介護保険
・雇用保険
・労災保険(ただし会社員の場合は、全額会社負担のため社会保険料控除の対象外)
上記の社会保険のほかに、個人型確定拠出年金(iDeCo)に関する控除などが含まれます。
(6)生命保険料の控除額
1年間に支払った生命保険料から、所得控除が認められる金額です。いくら控除されるかは計算式によって決まっていますが、上限は旧制度(契約日が2011年12月31日以前)の保険で10万円、新制度(契約日が2012年1月1日以後)で12万円です。
参考:国税庁「No.1140 生命保険料控除」
(7)地震保険料の控除額
1年間に支払った地震保険料から、所得控除として認められる金額です。こちらも控除額は計算式で決まっています。
(8)住宅借入金等特別控除の額
住宅ローンの残額から計算されます。住宅借入金等特別控除は「所得控除」ではなく「税額控除」に該当します。税額控除は税額から直接差し引ける控除なので、税金が課される所得から一定額を差し引く所得控除よりも税制優遇される金額が大きなものになります。
源泉徴収票の押さえておきたい確認事項。
源泉徴収票は、自分の年収を示す重要な書類です。源泉徴収票のやりとりで押さえておきたいポイントを紹介します。
提出書類のコピーをとっておく。
年末調整が近くなると、会社から控除に関する証明書(原本)の提出を求められます。その際は、必ず手もとにコピーを保管しておきましょう。源泉徴収票の内容にミスがあった場合、コピーが手もとにないと証明書の再発行などで手間がかかってしまいます。
源泉徴収票の記載内容に間違いがないか確認。
源泉徴収票には上で解説した(1)~(8)の金額のもととなった、扶養家族や生命保険料などの詳細が記載されています。源泉徴収票が届いたら、自分が会社に申告した内容と合っているかチェックしましょう。
人が行うことなので記載ミスが起こることもあり得ます。そのままにしておくと誤った金額で翌年の住民税が算出されるなど、影響範囲が大きくなります。
退職した場合。
年末でなくとも退職した時点で、勤務先から源泉徴収票を入手しておきましょう。退職した年の年末調整は、以下になります。
退職した年に別の会社に再就職した場合。
年末調整は前職と現職をあわせて、現職の会社が行います。現職の会社に前職の源泉徴収票を提出し、合算した内容がその年の源泉徴収票となります。
退職した年に再就職しなかった場合。
前職の会社では年末調整を行わないため、確定申告を自分で行う必要があります。
源泉徴収票は保管しておく。
賃貸物件やクレジットカード、住宅ローンの契約などで収入証明書の提出が求められます。源泉徴収票は収入証明書に該当し、お金に絡む契約で必要となる大切な書類です。しっかり保管しておきましょう。
必要書類は期限内にきちんと提出。
年末調整の時期になると、総務や経理から必要書類を提出するように促されます。社員に代わって会社が手続きを行う年末調整は、大きな負荷がかかる業務です。会社がスムーズに納税できるように、必要な書類を期限内に提出するようにしましょう。
控除を理解することで、生活に安心を。
所得から差し引かれる控除には、さまざまなものがあります。たとえば、個人年金保険料税制適格特約が付加された個人年金保険に加入していると、個人年金保険料控除という税制優遇を受けられます。
控除される額に上限はありますが、契約後は保険料の一部が毎年控除の対象となります。将来に備えるための支出が、所得税や住民税などの税負担の軽減にもつながることを押さえておきましょう。
届いた源泉徴収票を確認して、資産形成に活用しよう。
参考:国税庁「【手書用】令和 年分 給与所得の源泉徴収票(令和4年分以後用)」をミラシル編集部にて加工
源泉徴収票を眺めると、ざっくりと以下のような内容がわかります。
・(1)支払金額(収入)-(5)社会保険料等の金額-(4)(最終的な)源泉徴収税額≒年間の手取り
・年間の手取り-年間の生命保険料-住民税(※)=年間に使える額
・年間に使える額-生活費=余剰資金
※ 住民税の額は別途、住民税決定通知書などで確認する必要があります。
これから資産形成を考える場合は、源泉徴収票から見えた余剰資金をベースにしてみてはいかがでしょうか。
源泉徴収票は1枚の書類ですが、それは凝縮された自分の所得証明といえます。単なる「年末にもらえる書類」で済まさずに、それぞれの項目をしっかりと把握し、ここから見えてくる自分の資産力をつかむことは、地に足のついた資産形成につながっていくことでしょう。
写真/PIXTA イラスト/オオカミタホ
渋田 貴正
司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士
2012年の開業以来、相続登記をはじめ相続関係手続きや、会社の設立など法人関係の登記に特化している司法書士事務所V-Spiritsの代表。また、V-Spiritsグループの税理士として各種税務相談にも対応している。
※ この記事は、ミラシル編集部が監修者への取材をもとに、制作したものです。
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